『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第二十六話 サボ島沖海戦

 

 

 

 

 

「そうか、第八艦隊は栄光を掴んだか」

 

 8月9日、トラック諸島で待機していた将和の元に第八艦隊の状況が届いた。

 

『第八艦隊、敵警戒部隊ヲ撃滅ス。敵輸送船団及ビ敵地上施設ニ砲雷撃ヲ敢行。此ヲ撃滅ス』

 

 サボ島北方から突撃してきた第八艦隊はまず最初にクラッチレー少将の南方部隊と激突、ほぼ奇襲攻撃により南方部隊は全滅し続いてリーフコール大佐の北方部隊と激突した。瞬く間に3隻の重巡を沈め警戒部隊はほぼ壊滅となった時、三川はこれに安堵して帰還を一瞬口にしたが『鳥海』艦長の早川大佐は反対した。

 

「敵の揚陸物資は是が非でも叩かないと今後の戦局に影響します。閣下が帰還を望むのであれば『鳥海』と一個駆逐隊を残して帰還して頂いても構いません。我等は後顧之憂を断つ所存です」

「早川艦長……」

「ソロモンの海は蒼い……ですが、此処で我々が引き上げたら紅く染まります!! 多くの将兵の命という血ですッ!! 今、我々が突撃しなければその将兵の命の血は更に流す事になります!!」

「……分かった。全艦、サボ島を周回し再度ガダルカナル島泊地へ突撃するよ!!」

 

 輸送船団を撃滅しなければガダルカナル島は葦原軍将兵の血に染まる。早川大佐はそう主張したのだ。三川中将は直ぐに帰還を撤回し早川艦長に謝罪をし再度サボ島を反転してからガダルカナル島泊地に突撃を開始したのである。そして第八艦隊は栄光を掴んだ。

 再度突撃してきた第八艦隊はガダルカナル島泊地に停泊していた敵輸送船団を発見して砲雷撃を敢行、敵輸送船団はガダルカナル島泊地にて壊滅したのである。

 更には敵飛行場にも艦砲射撃を敢行し三式弾を叩き込んで揚陸していた敵物資を燃やしたのである。

 

「さて……我々も第八艦隊の努力を無駄にしない為にもやらねばならんな……」

「ですが長官、ガダルカナル島へ戦艦部隊も突入させるなら空母の護衛艦艇が少なすぎます。これでは敵機動部隊と激突した時に味方対空砲火の支障が出ますわ」

 

 将和の呟きに副官の嶋野はそう反論する。傍らにいた第二航空艦隊司令長官の小澤中将と第一航空艦隊参謀長の宇垣も頷いていた。

 

「せめて巡洋艦も一個戦隊に駆逐艦も三個駆逐隊の護衛は欲しいね」

「同感だな」

「フム……やはり艦艇の数がネックか……」

 

 将和はそう言いながらお茶を飲む。将和は第一航空艦隊の戦艦が6隻もいるので空母からの援護をしつつ戦艦部隊を突入させ艦砲射撃を行う計画を思案したが、嶋野や小澤達は戦艦部隊を突入中にヴィンランド機動部隊が第一航空艦隊に対して側面攻撃を仕掛けてくるよ可能性を考慮し反対していたのである。

 

「何とか内地の踏ん張りで9月上旬には護衛用の艦艇もトラック諸島に到着するんだ。それまで待つしかないだろ」

「……まぁそうなるか……」

 

 結局、将和は早期出撃は取り止めて母艦飛行隊の錬成を進めるのであった。

 9月6日、トラック諸島には新規の艦艇郡が到着した。

 

「何とか数は揃いましたわね」

「それでガダルカナルの戦況は?」

「ブイン基地の零戦隊が踏ん張っているようですわ」

 

 ブイン基地に進出した台南空の零戦隊はガダルカナル島上空で活躍していた。なお、この零戦隊には「暇だからたまには」と将弘が零戦パイロットとして臨時に赴任してガダルカナル島のヴィンランド軍と空戦を展開しており既に28機の航空機を撃墜していたりする。

 

「それで陸軍は師団を出すと?」

「現時点では第二師団、第38師団を出す用意はしているとの事ですわ。ですが二個師団ともラバウルに到着するのは9月下旬から10月上旬予定になりますわ」

「フム……」

「だが二個師団を用意してもそんな大量のフネが無いぞ。輸送船団から引き抜くにしても時間が掛かるしな」

「今すぐに用意可能なフネはあるのかい?」

 

 宇垣はそう反論し小澤は嶋野に質問をする。質問された嶋野は書類をパラパラと捲り答えを見つける。

 

「このトラックには輸送船8隻、ラバウルには3隻はいますわね」

「……船団を出すにしてもまずは敵機動部隊を撃滅するのが優先だろうな」

「ですが川口旅団と陸戦隊だけではヴィンランド軍が反攻した時には支えきれません」

 

 ガダルカナル島守備隊だった川口旅団と陸戦隊はヴィンランド軍海兵隊が上陸した時には戦闘をせず、予備陣地であるタサファロング泊地方面に後退し防衛戦を展開していた。幸いにも糧食や武器弾薬等は将和らの指示で前もって輸送されていたので史実に於ける飢餓状態になる事はなかった。

 しかし、ヴィンランド海兵隊が数を頼りに押し切れば戦線が崩壊する可能性も0では無かったのである。

 

「……嶋野、『第1号』型輸送艦と『第101号』型輸送艦の所在を教えてくれ」

「『第1号』と『第101号』型ですの?」

「あぁそうだ」

 

 将和に言われて嶋野は再度パラパラと書類を捲る。

 

「トラックには3隻、ラバウルに2隻いますわ」

「……よし、先に糧食を送る。第八艦隊は輸送艦の護衛に当てるとする」

「あー、成る程。先に食糧を送っちまえばいいわけか」

「備蓄はしてるしそう簡単には腐らないだろう。……問題は敵機動部隊の動向だな」

「ニューカレドニア方面には伊号潜が7隻、哨戒に出ていますが敵機動部隊の発見にはまだ……」

「ニューカレドニア方面の伊号潜は輸送船狩りに出撃しているんだろ? 輸送船優先で構わんさ。それとラバウル航空隊への援軍はどうなっている?」

「第202空、第252空、第705空、第707空の4個航空隊が9月上旬までには進出しますわ」

 

 第202空と第252空は改良型零戦に機種変更を完了させた戦闘機部隊であり、彼女達の空戦の腕はラバウル航空隊と同等であった。

 

「ん」

 

 嶋野の報告に将和は頷いて全員を見渡す。

 

「……敵機動部隊での決戦は10月26日とする」

「10月26日……?」

「それは……」

「『南太平洋海戦』……」

 

 戦闘詳報と史実の海戦を将和から聞いていた嶋野と小澤はハッとして将和を見る。

 

「時を待てれば此方の艦艇も増えて有利になるが向こうも修理を終わらせてミッドウェーで討ち漏らした空母らも繰り出してくるだろう……だが此処で一気に奴等を叩かないと奴等は大規模攻勢に出てくるのは明白だ。ならばッ」

「だからこその10月26日……」

「そうだ。これは葦原海軍の……いや、君たち葦原機動部隊が越えなければならない通過点だ」

 

 将和は見据えて……小澤を見る。

 

「小澤、第二機動部隊司令長官の役職……やってくれるな?」

「……もしかして長官、君は……」

 

 将和の言葉に小澤は将和の意図に気付き将和に視線を向けるが将和はウィンクをする。

 

「なに、お前なら大丈夫だ。申し訳ないとするなら二航艦が解体され格下げされる事かな」

「……フフ、将和の頼みなら仕方ないな。なら私に任せてもらおうか」

(……だが……)

 

 将和の言葉に小澤は笑みを浮かべた。斯くして9月12日、更なる改装が終了しトラック諸島に来航してきた第五航空戦隊の『翔鶴』に智里の将官旗が掲げられた。同日に第五航空戦隊を主力にした第二機動部隊が発足されたのである。

 また練習航空戦隊である第50航空戦隊『阿蘇』『生駒』が第六航空戦隊となって第二機動部隊入りを果たしたのである。その第50航空戦隊も『鳳翔』『龍鳳』が編成替えとなるのであった。

 

「うーん……寿子ちゃん。『金剛』型の改装状況はどうかな?」

「第一小隊の『金剛』『榛名』は完了してインド洋にいる南雲中将の南遣艦隊に向かっています。第二小隊の『比叡』『霧島』は三好長官が予定する10月26日までには何とか間に合うとは思います」

「その前に間に合いそうかな? ギリギリだと智里ちゃんも艦隊運用が難しいかもしれないしね」

「分かりました。軍令部と交渉してみましょう」

 

 五十子の言葉に寿子はそう答えた。その間にもヴィンランド軍は航空戦力を回復させていた。9月19日には『サラトガ』が23日には『ホーネット』が修理を完了し戦列化していたのだ。なお、ブリトン海軍は借用した2空母の返還を求めたがセシリア・ニミッツ大将は「まだ返還すべきではない」として反対したのでアニー・エンプレス海軍作戦部長も反対を表明したので返還は延期されたのである。

 さて、機動部隊決戦は10月26日と決まったがガダルカナル島への二個師団の輸送や糧食輸送は実施されていた。特に『第1号』輸送艦や『第101号』輸送艦は使い勝手が良く第八艦隊司令長官の三川中将も「もっとこの輸送艦を建造してほしい」と要望していた。

 そんな中での10月11日、サボ島沖で葦原・日本海軍とヴィンランド海軍が激突したのである。

 この時、葦原海軍はタサファロング泊地に補給物資を輸送するためとヘンダーソン飛行場を砲撃する企図をしていた。

 

 輸送部隊

 

 第十一航空戦隊

 『千歳』『日進』

 第一輸送戦隊

 『第8』号 『第11』号 『第123』号

 第九駆逐隊

 『朝雲』『夏雲』

 第19駆逐隊

 『綾波』『敷波』『磯波』『浦波』

 第八艦隊附属

 『花月』

 

 支援部隊

 

 第六戦隊

 『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』

 第八駆逐隊

 『朝潮』『大潮』『満潮』『荒潮』

 第20駆逐隊

 『天霧』『狭霧』『朝霧』『夕霧』

 

 

 

 

「水上電探に反応!! 右舷二時方向!!」

「え、味方じゃないの?」

「違います、大型艦艇多数の反応です!! これは敵艦隊です!!」

「ッ砲雷撃戦用意!!」

 

 六戦隊司令官五藤少将は直ちに戦闘命令を発令した。作戦会議では輸送隊は後方に位置する筈なのだから右舷にいる筈はなかった。先入観が大きすぎる事に五藤少将は無意識に舌打ちをするが六戦隊はギリギリ間に合った。

 2141、砲身は敵艦隊に向けられた。

 

「砲撃始めェ!!」

「撃ェ!!」

 

 『青葉』から砲撃を開始した。次いで改装したばかりの両用砲から星弾(照明弾)が撃ち上げられ敵艦隊ーーノーラ・スコット少将の第64.2任務部隊の全容が写し出される。

 

「敵、甲巡4(『フェニックス』『ヘレナ』の誤認)、駆逐艦6!!」

「此方と同数か、撃ち負けないで!! 六戦隊は先に敵先頭艦を集中砲撃!!」

 

 六戦隊は先に第64.2任務部隊の先頭艦ーー『サンフランシスコ』に砲撃を集中した。砲撃を集中された『サンフランシスコ』は瞬く間に炎上、艦橋にいたスコット少将は砲弾が直撃爆発して戦死する。

 続いて『ソルトレイクシティー』に砲撃を集中させるも『ヘレナ』の砲弾が『青葉』の艦橋に直撃した。砲弾は不発弾だったものの、五藤少将以下六戦隊司令部を死傷させたのである。

 

「『青葉』被弾!! 以後は『衣笠』が指揮を継承する!!」

 

 『衣笠』艦長沢雅美大佐は『青葉』の被弾を見て直ぐに指揮権継承を発令した。これにより混乱は最小限に食い止められ砲撃を集中させ『フェニックス』『ヘレナ』を炎上させるのである。第64.2任務部隊は人事不省となり完全に敗走してしまうのであった。

 海戦自体は葦原海軍の戦術的勝利であり輸送も成功したので戦略的勝利でもあった。だが翌0600、『青葉』の艦内で重傷だった五藤少将は出血多量で戦死するのである。

 だが、六戦隊の活躍でヴィンランド海軍は更なる任務部隊を繰り出す必要になったのであった。

 その一方、南方のシンガポールでは南雲中将を司令長官とする南西方面艦隊(南遣艦隊司令長官兼務)が発足し電令作第174号により『インド洋方面海上交通破壊戦』(B・作戦)が実施されようとしていたのである。

 

 

 

 

 南西方面艦隊

 司令長官 南雲汐里中将

 

 旗艦

 『扶桑』

 第二戦隊

 『扶桑』『山城』

 第七戦隊

 『最上』『三隈』

 第十四戦隊

 『神通』『長良』

 第三航空戦隊

 『龍驤』『隼鷹』『飛鷹』『龍鳳』

 第六航空戦隊

 『天城』『葛城』

 第三水雷戦隊

 『川内』

 第7駆逐隊

 『潮』『漣』『曙』『朧』

 第11駆逐隊

 『吹雪』『白雪』『初雪』

 第12駆逐隊

 『叢雲』『薄雲』『東雲』『白雲』

 第21駆逐隊

 『初春』『若葉』『子日』『初霜』

 

 伊号潜水艦×20隻

 

 

 

 

 

 




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