『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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もう一つオマケに投下


第二話 航空本部長

 

 

 

 

 

 伴天連歴1935年(光文10年)2月、将和が『加賀』ら艦艇と共にこの世界に来て一月が経った。この間に陸海軍は戦略の練り直しは元より政府も国内産業の向上と称して工作機械の大量輸入を決定し輸入を行っていた。その資金は皇室資金にも含まれておりむしろ陛下が使用する事を許可していた。

 その中で将和は正式に葦原中津国海軍に特別枠で入隊、海軍中将となったのである。そして初仕事として将和は航空本部長に就任したのであった。

 

「今の段階での葦原海軍の航空隊を見てきてほしい」

 

 航空本部長就任の際、将和は大角大臣からそう言われていた。つまり将和の本部長就任は急遽ではなく決まっていた事であった。

 そして将和の最初の仕事は2月4日に初飛行をする九試単座戦闘機を見に行く事であった。

 

 

 

 

 

「ウム。各務ヶ原も変わらんなぁ」

「そうなのか?」

「あぁ。向こうにいた時も実験航空隊があったからな……」

 

 将和は副官として小澤を伴い飛行場の滑走路にいた。なお、小澤はGF参謀長から将和の副官になっていた。小澤本人はまだ参謀長の職をしたがったが米内からは「小澤ちゃんが一番接触しているから仕方ないねー」と鎧袖一触であった。

 それはさておき、滑走路では九試単座戦闘機が翼を休めて待機をしている。

 

(相変わらず良い機体だ……)

 

 九試単座戦闘機を見つつ将和は頷き、ライカ(支払いは海軍省)で写真に納めるのである。そしてパイロットが乗り込んで発動機がコンタクトしプロペラが回り出す。九試単座戦闘機はあっという間に離陸していった。

 

「ほぅ……」

 

 飛行場の上空で九試単座戦闘機は飛行を繰り返しやがて着陸する。

 

「堀越技師」

「これは三好中将」

 

 将和は様子を見ていた堀越技師と握手をする。

 

「良い航空機ですな」

「お褒めに頂き恐縮です」

「機体にまだ燃料はありますかな?」

「えっ、えぇ。まだありますが……」

「なら次は自分が乗りましょう」

 

 将和の言葉に堀越技師や周りにいた将官達が目を点にする。それを他所に将和は飛行服に着替えて九試単座戦闘機に乗り込むと慌てて再始動した堀越技師らに止められる。

 

「ま、待って下さい三好中将!? と、飛ばせるのですか!?」

「無論です。これでもパイロットの端くれですからな。コンターック!!」

 

 そして勢いよくプロペラが回り出す。そのため堀越技師達も説得を諦めて機体から退避するのである。九試単座戦闘機は将和に操作されて離陸する。

 

「ほぅ……撃墜王だと言うのは伊達ではないか……」

 

 将和が操る九試単座戦闘機を見つつ小澤はそう漏らす。話には聞いていたが確かに操縦出来るのは事実だと小澤は認識した。そして将和は30分は飛行して着陸する。

 

「如何でしたか?」

「確かに良い飛行機ですよ堀越技師」

 

 笑みを返す将和だったが直ぐに表情を変える。

 

「ですが……この機体は採用出来ませんな」

『なッーーー!?』

 

 将和の言葉に堀越技師を初め小澤らも驚愕の表情を浮かべた。

 

「ど、どうしてですか!?」

「簡単な事です。堀越技師、この機体は量産出来るのですか?」

「量産……?」

「えぇ。特に発動機の『寿』。この機体のは600馬力だから243ノットは出ているが量産するとなれば現時点での『寿』は二型で500馬力も届かないでしょう?」

「ウッ……それは……」

 

 将和の指摘に堀越技師や三菱の関係者は気まずそうに視線を逸らす。そうなのだ、九試単座戦闘機が搭載している寿発動機は五型ではあり600馬力を出すが減速装置の不調と重量過大が改善されていないのだ。

 

「量産型となれば速度低下した機体で対応しなくてはならない……あんたらはパイロットを無駄に殺す気か!!」

『……………………』

 

 将和の怒号に堀越技師達は反論出来なかった。

 

「ですが……コイツは採用しなくちゃならんでしょう。いつまでも九五式艦戦を使い続けるわけにはイカンですからな」

「……はい。ありがとうございます」

「それと速度低下を防ぐ応急措置は出来るでしょう」

「応急措置ですか?」

「排気管を弄るんです。集合排気管から推力式排気管にすれば速度の低下はある程度は防げるでしょう。それに排気管口付近に耐熱板を貼り付けるといった対策もすれば大丈夫でしょう」

「あ、あぁ!? その手があったか!!」

 

 将和の指摘に堀越技師は叫ぶがその表情は納得していた。周りの三菱関係者も頷いていた。

 

「直ちに新しい機体を製作します。一月で完成させます!!」

「ん。楽しみにしていますよ」

 

 後にこれを元に同年6月には九六式艦上戦闘機一号一型として採用される。武装等は史実日本と同じだったが違う点があるとすれば排気管が集合排気管から推力式排気管に変更され速度も440キロを記録し速度低下もある程度は防がれたのである。なお、これが教訓となり後の零戦には最初から推力式排気管が採用される事になる。

 

「それで九六式艦戦は?」

「現在、量産型は『鳳翔』から順に配備しています。何とか年内には『龍驤』『加賀』には搭載したいところです」

「『加賀』については更なる改装が決定したよ」

「と言いますと?」

「20サンチ砲を取り除いて航空機の搭載を増やし後に油圧カタパルトを設置する。対空火器も両用砲を後々に搭載させる」

 

 同年11月、将和は伏見宮らと会合をしていた。

 

「軍も熟練工や研究者達優先して除隊させ工場に戻しているから生産力も向上している」

「工作機械の輸入も順調だ。まぁ各国から不審がられてはいるが許容範囲内だろう」

「成る程。陸軍はどうです?」

「チハの開発はまだ時間が掛かる。先に対戦車砲を仕上げるつもりだ」

「海軍は改装がしやすい5,500t型から改装を始めている」

 

 海軍は3月から『鈴鹿』(元『五十鈴』)『天龍』『龍田』の護衛巡洋艦への近代化改装を開始していた。特に『天龍』『龍田』は後に創設予定の海上護衛隊への編入を予定していたので先に行おうとなっていた。

 他にも一式対潜噴進砲や一式ソナーの開発も急がせていたが伴天連歴1939年までには完成採用予定だった。

 

「乙巡も1万トン級の『阿賀野』型に変更はしている。まぁまだロンドン軍縮条約を脱退していないから予算は組み込められないがな」

「まぁ脱退は翌年ので良いでしょう。水雷艇の計画中止はどうなりましたか?」

「あぁ。計画は中止した。その分の予算を『明石』型工作艦に回してある」

 

 海軍は『鴻』型水雷艇を史実通り建造しようとしていたが将和の具申もあり水雷艇建造は三番艦『隼』までとし四番艦以降の計画は中止としその分の予算は『明石』型工作艦に組み込まれ二番艦の建造が承諾される事になっていた。これにより『明石』型は『明石』『三原』の2隻となり後の大東亜戦争でもトラック諸島で葦原海軍の艦船修理を支える事になる。

 

「それで三好君。来年からは海に出るが本当に構わないのかね?」

「はい、構いません。後任の者でも直ぐに業務がやれるよう申し送りますんで。それに各航空機会社には発動機や機体を秘密裏に送っていますので」

 

 将和は来年(伴天連歴1936年)から新設される艦隊司令長官への内定が決まっていたのだ。

 

「フム、君がそう言うなら大丈夫だろう」

 

 会合はその日の夜遅くまで行われるのである。そして12月2日、後任の者がやってきた。

 

「初めまして!! 山本五十子です、貴方が三好中将?」

「成る程。君が山本中将か」

 

 将和は後任の航空本部長に就任した山本五十子中将と握手をする。

 

「何でもラ・メール症状を発症しないとか聞きましたよ。本当なんですか?」

「あぁ、本当だ。これでもパイロットの端くれだからトンボ釣りになっても死にはしないさ」

「え、パイロットなんですか?」

「まぁな」

 

 そんな話をする将和と五十子でありこれが二人の最初の出会いであった。そして翌年の1月5日、将和は新設された艦隊司令官に就任した。

 艦隊名は『第一機動部隊』である。

 

 

 第一機動部隊

 司令長官 三好将和中将

 参謀長 宇垣束大佐

 航空参謀 小澤智里大佐

 旗艦『加賀』(三好世界)

 

 第一航空戦隊

 『加賀』『龍驤』『鳳翔』

 第七戦隊

 『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』

 第十一戦隊

 『八雲』『和泉』

 第一護衛隊

 『五十鈴』

 第五水雷戦隊

 『由良』

 第一駆逐隊

 『神風』『野風』『沼風』『波風』

 第五駆逐隊

 『朝風』『春風』『松風』『旗風』

 第二十八駆逐隊

 『朝凪』『夕凪』

 

 

 

「なぁ小澤」

「何だい宇垣?」

「……何で肝心の司令長官がいないんだ?」

 

 参謀長に就任した宇垣は瀬戸内から出航した第一機動部隊の操艦をしつつ航空参謀に就任した小澤に問う。宇垣の問いに小澤は肩を竦める。

 

「戦闘機で着任するらしいよ」

「……は?」

 

 小澤の言葉に宇垣は目を点にする。その様子に小澤は溜め息を吐いた。

 

「だから新司令長官は戦闘機で着任するらしい。私もそこまでしか聞いてないから詳しくは知らないけどね」

「……男でラ・メール症状を発症しないとは聞いていたけどよ……ぶったまげているな」

「否定はしないね」

 

 そう言う二人であったが不意に見張り員が叫んだ。

 

「航空機の爆音!! 七時方向からです!!」

 

 単機で第一機動部隊の上空を飛来してくる九六式艦戦がいた。九六式艦戦は空母『加賀』上空を四周回するとそのまま『加賀』に着艦をする。しかも一段目の横索式のワイヤーに引っ掻ける程であり着艦を見ていたパイロット達も唸る程であった。そして操縦席から降りてきたのは飛行服に身を包んだ将和だった。

 

「第一機動部隊司令官に就任した三好中将だ。宜しくな」

 

 ニカッと笑い将和は久しぶりの『加賀』の飛行甲板を見つめる。

 

「久しぶりだなぁ……なぁ『加賀』」

 

 そう呟いて艦橋に向かう。艦橋に入ると宇垣と小澤が将和を見て敬礼をする。

 

「本当に男でパイロットなんだな」

「不服か?」

「否。むしろ面白くなってきたと思うぜ」

 

 将和の言葉に笑みを浮かべる宇垣である。斯くして将和は艦隊司令官としての勤務を開始するのである。

 

「よし、取り敢えずは対空射撃の訓練すっぞ。各空母は三時間以内に対抗攻撃隊を編成。第一機動部隊はこれを対空射撃で応戦するぞ」

『………………ッ………………』

 

 表情を切り換えた将和に宇垣と小澤、艦橋要員は冷や汗を流すのであった。

 

 

 

 

 




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