「ニミッツ長官、ノイス司令より電文です。『イラストリアス』共に撃沈されたとの事です。また、『サラトガ』『ホーネット』『ヴィクトリアス』が鹵獲されました。他にも護衛空母3隻が撃沈、1隻大破です」
「………………」
10月26日、南太平洋で将和と小澤の二個機動部隊とキンケイドらの機動部隊が激突していた。だが、残っていた空母はブリトンの空母も含めて撃沈又は鹵獲されたのである。
「……これで……」
「はい、これで無事に『ガダルカナル島救援輸送船団』はガダルカナル島に到着します」
セシリアの言葉を引き継ぐように情報主任参謀のミリーナ・レイトン中佐はそう答える。その表情はホッとしたような表情であった。
「リー少将の部隊は?」
「先にガダルカナル島泊地に到着しています。ですけど……ハルゼイ長官には伝えなくて良かったのですか?」
「……フレンダには申し訳ないとは思うわ……。でも今の葦原は異様よ。だからこそ敵を欺くためにはまず味方から……そういう事よ」
セシリアは真珠湾から異様になった葦原軍を強く警戒するようになった。だからこそ持てる戦力を全て動員するためにブリトンから空母を借用したり大西洋艦隊から艦艇を引き抜いたりしていたのだ。
「ですがブリトンは空母喪失に文句を……」
「11月に護衛空母が4隻、工事を繰り上げて早期に就役するわ。キング部長はそれをカードにしてブリトンに売却する予定にしているのよ」
「……成る程。数的にはプラス2ですか……」
「でも……これで……」
セシリアはそう呟きながら真珠湾を見る。まだ真珠湾攻撃の爪痕は残っていたがそれでも活気はあった。だが停泊する艦艇は殆どが出払っているのでいなかったのである。
「今回の海戦は葦原の勝ちね……だけど、ガダルカナル島を死守する意味ではヴィンランドの勝ちよ」
「何!? ガダルカナル島泊地に戦艦5隻を確認しただと!?」
「は、はい。他にも護衛空母3隻が確認されてますわ。それに伴い敵飛行場にも100機以上の航空機が確認されてます。なので第二師団も総攻撃を中止しましたわ……」
ガダルカナル島近海を航行していた第一航空艦隊旗艦『加賀』の艦橋で将和は嶋野からの報告に目を見開いた。隣にいた宇垣でさえも驚愕の表情を浮かべていた。
「そんな馬鹿な事があるのか……」
「……嶋野、彩雲を用意してくれ。写真撮影だ」
「分かりましたわ、直ちに用意します」
斯くして急いで彩雲が発艦をしガダルカナル島へ向かうのである。そして写真撮影後、直ぐに現像されたのが将和の手元に届く。
「……こいつは『ワシントン』『サウスダコタ』それに『インディアナ』もいやがる!?」
「それとこれは『コロラド』型じゃないか!? とするとこれは『コロラド』か!? コイツも『ニューメキシコ』型だぞ!?」
「長官……」
将和は驚愕するが次第に笑みを浮かべ肩を震わせる。そしておもむろに笑い出したのである。
「……ククッ……ククッ……クフッ……ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
「長官……?」
「アーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!! ヒーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!!!!!」
笑うあまり机をバンバンと叩く将和である。その様子に宇垣と嶋野はどう言うべき迷った。だが直ぐに将和は笑いを収めた。
「ハー……ハー……いや笑ったよ笑った。あーやられたやられた……………よし、全艦艇はトラックに引き揚げだ。帰るぞー」
「えッ!? ひ、引き揚げるのか?」
「長官、やはり航空隊での攻撃を……」
「それでは被害が大きすぎる。パイロット達の無駄な戦死を増やすだけだ」
将和はそう言って指揮棒でガダルカナルをトントンと叩く。
「恐らく……この5隻は常時ガダルカナル島に張り付けになるだろうな。これだと戦局は泥沼化になる」
「では此方も……」
「そうなると『アイアンボトム・サウンド』になるぞ?」
「ウッ……」
「それに戦艦は出せる事は出せるが……彼処の海域は戦艦を大量に動かすにはちょっと難がある海域だ」
下手に動けば第三次ソロモン海戦になるのは必須であった。
「だがよ長官、確かに戦艦は一戦隊の5隻は無論だが二戦隊の2隻は35.6サンチ砲艦だけど砲弾は……」
「あぁ、砲弾は確かに大重量砲弾の四式徹甲弾を搭載はしている。だが装甲は? 特に『比叡』『霧島』は元は巡戦上がりなのは葦原海軍(お前ら)は周知しているんじゃないのか?」
「うっ……」
将和の指摘に宇垣は図星であったのか視線を逸らしてしまう。確かに砲撃能力であれば葦原とヴィンランドは同等だった。というのも宇垣が発言した『四式徹甲弾』とは元は三好日本が開発した超重量砲弾であった。
この開発により46サンチ砲弾は1760kg、41サンチ砲弾は1220kg、35.6サンチ砲弾は965kg、20.3サンチ砲弾は155kgと超重量砲弾に交換しており、その交換が完了していたからこそ将和の日本海軍はあのマリアナ沖大海戦に行き着く事が出来たのだ。
無論、転移してから四式徹甲弾の設計図はあったので一式徹甲弾よりも生産を続けられており、開戦時には数は少なかったがミッドウェー後は各艦艇に配備されてはいたのだ。だが、将和が言うように装甲に関してはどうしようもなかった。『金剛』型等は近代化改装はしてはいるがやはり装甲がネックであった。良くて航空戦艦に改装した『伊勢』型は新しく41サンチ用の装甲を搭載したが逆に防空高速化した『扶桑』型や『金剛』型では到底無理があった。
「良いさ、責任は俺が取る。小澤の第二機動艦隊にも連絡。全艦艇は直ちにトラックに帰隊する。まぁ土産の空母もあるからな」
「……分かりましたわ、直ちに伝えます」
「此方も皆に伝えるぜ」
嶋野と宇垣はそう言って将和に頭を下げて部屋を出る。出るのを確認して足音が遠くなっていくのを確認した将和は机を思いっきり叩きつけた。
「……セシリア・ニミッツか……中々どうして……やるじゃないか」
将和自身、ライバルはいなかった。いや、いたとしても向こうのニミッツやハルゼーではあるもののライバルとはいえなかったのもある。だが、将和は明確にセシリア・ニミッツをライバル視したのであった。
なお、後に色々と色んな意味で生涯に渡りそうなるのだが……。
「……良いだろう……今回についてはお前の勝ちだ。だが次は無い!!」
将和はニヤリと笑うのである。その後将和は部屋から出てくるまで何かを書くのであった。その後三個艦隊は土産の2空母と共に無事にトラック諸島に帰還するのであった。
そしてトラック諸島に戻るとGF司令部と一戦隊の『大和』ら5隻が出迎えてくれた。
「三好長官、お疲れ様でした」
「あぁ山本長官、ありがとう。だが肝心のガダルカナル島は奪回出来なかった」
「そういう事もあります。予測はしていても想定外の事は起きるからね」
「ですが、2空母を鹵獲したのは凄いと思います」
洋平はそう言う。洋平は少佐待遇となりGF司令部の特務参謀として五十子をサポートしていた。
「まぁ……あれは運が良すぎたな」
『ホーネット』『レンジャー』の第17任務部隊を攻撃後、第一航空艦隊は別方向からの敵攻撃隊の攻撃を受けた。これは後から判明したのだが、ブリトンの機動部隊から発艦した攻撃隊であり戦闘機はF4F(ブリトン側の呼称は『マートレット』)にTBFの混合でありこの攻撃は上手く迎撃は成功していた。しかし続く攻撃隊が出現した。これは護衛空母4隻から発艦した攻撃隊だった。
この迎撃も最初は上手くやれていたが雲を利用して接近したSBD 8機が七航戦の『笠置』『阿蘇』を襲った。
二空母は回避運動をするも『笠置』は3発、『阿蘇』に2発の1000ポンド爆弾が命中して炎上したが沈む事はなかった。これを受けて将和は直ちに攻撃隊を編成させてブリトンの機動部隊を攻撃、『イラストリアス』を撃沈させ『ヴィクトリアス』が大破した。
また、将和は第二艦隊の近藤中将に第17任務部隊への前進を指示させた。この頃に小澤の第二機動艦隊が第17任務部隊へ攻撃隊を出しており炎上していた『レンジャー』を轟沈させ甲巡『ポートランド』『ペンサコラ』をも撃沈させ『ホーネット』を大破させたのである。
その為、将和は近藤への前進指示を出したのだ。また、第一機動艦隊は引き続き敵護衛空母群を攻撃し3空母を撃沈し1隻大破とさせたのである。
そして将和は宇垣に命じて『比叡』『霧島』らの部隊を前進させブリトンの機動部隊に向かわせた。というのも空母(『ヴィクトリアス』)が第一機動艦隊側へ向かっていたのだ。
これも鹵獲してから分かった事だが『ヴィクトリアス』は攻撃された時に機関室と舵に魚雷が命中して直進しか出来なかったのだ。その為に第一機動艦隊の方向へ向かっていた。それを確認した将和は宇垣を向かわせたのである。
「敵機動部隊を砲雷撃によって攻撃。空母は出来たら鹵獲」
この命令は第二艦隊にも伝えて報告を受けた近藤中将も苦笑するしかなかった。だが空母を鹵獲したらタダで空母が貰えるのだから仕方ない。
第二艦隊が『ホーネット』を確認した時は右に傾斜して炎上していた。取り巻きの駆逐艦を砲撃で追い払い近づくと『ホーネット』は突如発生したスコールに身を包まれスコールが開けると火災が鎮火に向かっていた『ホーネット』がそこにいたのである。
「こりゃ曳航可能だね。『高雄』に曳航させようか」
斯くして第二艦隊も空母を鹵獲する事に成功する。しかし、ガダルカナル島の総攻撃は敵戦艦部隊が増援部隊と共に張り付いたので延期したのである。
「敵将のニミッツは中々のやり手だな」
『大和』の作戦室で報告を終わらせた将和はそう呟いた。
「ガダルカナルも増援が来たせいで安易な総攻撃は出来なくなったね」
「……五十子さん、此処はガダルカナル島から撤退したらどうかな?」
「………………(ほぅ……)」
そう口を開いたのは洋平だった。その様子を見て将和はニヤリと笑う。
「史実だとガダルカナルで陸軍は三個師団相当を失うし兵員や物資弾薬を運ぶ輸送船も大量に失っている。それに海軍も艦艇は元より戦闘機パイロットを多く失っているんだ。だからこそ此処は撤退するべきだと思うんだ」
「洋平君……」
洋平は史実の知識を用いてそう主張する。
「それに例えガダルカナルを奪回したとしてもFS作戦はやらないんでしょ? そうですよね三好長官?」
「(洋平……やるな)まぁそうだな」
確かに4月辺りでの作戦思案ではFS作戦はやらないと名言していた。洋平はそれを知っていたので此処で主張したのだ。
「ん……まぁ撤退の方がいいだろ」
「三好長官ッ」
「陸さんには俺から説得しよう。序でに内地に戻って清と会う必要があるからな」
「長谷川長官に……?」
「ん。まぁちょっと必要になるからな」
そう言う将和であった。そして翌日、将和は嶋野を伴い二式大艇の空路で内地に向かうのである。
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