「急な会合の参加して頂きありがとうございます」
11月3日、内地にて将和は清、南条らを集めての極秘の会合を開いた。
「三好長官、いきなりで極秘との事だが……何かあったのかね?」
「……ガダルカナルの事です」
将和の言葉に南条達は表情を変える。
「まずいのかね?」
「あぁ、説明不足でした。奪回はしませんが、向こうの兵力がちと厄介でして……」
将和はそう言ってガダルカナルに張り付いた5隻の戦艦の話をすると米内でさえ顔色を悪くする。
「下手に動けば……此方がやられるわね」
「それだけではない。ガダルカナルに上陸した第二師団に川口旅団をどう引き揚げさせるかだ」
「それについては些か案があります」
「あるのかね三好長官?」
「はい。陸軍はほぼ無傷で撤退出来るでしょう」
「……陸軍はという事は海軍で海戦をすると?」
「その通りです」
「しかし、ガダルカナルには戦艦が……」
「目には目を、歯には歯を……です」
「……まさかッ」
米内の言葉に将和はニヤリと笑う。そのまさかであった。
「それと杉山総長にお願いがあります」
「ん、願い?」
「ニューギニア戦線の全面撤退を願います」
『ニューギニア戦線を!?』
将和の言葉に南条や杉山ら陸軍関係者は目を見開く。ニューギニア戦線はポートモレスビーも占領していたから特に連合軍が動く気配は無かった。
「し、しかしニューギニアは……」
「分かっています。だからこそニューギニアは撤退しラバウルで敵を食い止める必要があります」
将和はそう言ってニューギニア、ラバウル周辺の地図を出す。
「予定ではガダルカナルに張り付く戦艦群を攻撃中に陸さんにはポートモレスビーからの撤退を願います」
「しかし三好長官。ポートモレスビーで我々が粘るからこそ敵は東南アジアに迫らないのではないのか?」
「いえ、むしろ敵は東南アジアを切り捨てます。特にコーンパイプの目立ちたがり屋はね」
将和はそう言ってるラエ、サラモア、ウエワク等の地域にお猪口を置く。
「『飛び石作戦』奴等は補給を遮断するようにニューギニアへの上陸を行い、史実で陸海軍は飢えに苦しみ、人は倒れ地に帰りました。『ジャワは天国、ビルマは地獄、死んでも帰れぬニューギニア』とさえまで言われました。だからこそ海上護衛がしっかりしている今のうちにニューギニアから撤退するのです」
「成る程……」
「また、撤退して温存出来た戦力は比島やマリアナに振り分ける事も可能です」
「フム……では君はまさか……」
「はい。マリアナで大海戦を挑み、そこでヴィンランド海軍を撃滅し和平に導くしかないでしょう」
将和はそう言う。将和らの日本もマリアナ沖で『大和』らの戦力と引き換えに講和のテーブルへとアメリカを引きずり出す事に成功した。だからこそのマリアナ沖だった。
「しかし三好長官、奴等がマリアナ沖で負けたとしても講和に乗るかね? 乗らずに比島に来るかもしれぬ」
「その可能性もあるでしょう。そのためにも陸さんにもマリアナ、比島……そして沖縄の守備陣地構築をお願いしたいと思います」
「沖縄にもかね?」
「沖縄だからこそです」
将和はラバウルの地図を下げて沖縄周辺の地図を出す。
「見て下さい。地政学的にも沖縄は大陸を抑え込める島です。史実でも戦後に米軍が沖縄に駐屯し続けるのは太平洋に進出したい大陸の奴等を抑え込める役割が沖縄にあるからです」
「成る程。戦後を見据えての沖縄か……」
杉山は将和の言葉に頷き将和を見る。
「良かろう、何とか此方もやってみよう。必要な兵力は以下程になるかね?」
「サイパン地上戦で3個師団に2個戦車連隊、グアムも1個師団に1個戦車連隊。航空隊は3個飛行師団は必要かと。その前に工兵隊の大量派遣も必要です」
「分かった。何とかしてみよう」
「海軍も設営隊を数個出そう」
「あ、それと清。お前のーーー」
斯くしてマリアナーー特にサイパンとグアムの要塞化は決定され陣地構築が開始される事になる。また、ニューギニアの放棄も決定され順次ラバウルに向けての撤退が開始されるのである。そして将和は再びトラックに戻り五十子らに作戦を説明するのであった。
「じゃあガダルカナル撤退のために海戦をするんですね」
「そうだ。陸軍約2万名を撤退させるにはそれしかない」
「じゃあ投入するのは機動部隊を?」
「いや……『大和』型と『長門』型を全て投入する」
『なッ!?』
驚く五十子らを他所に将和は作戦案の書類を五十子に渡す。
『ケ号作戦』(第一段階)
前衛隊
司令長官 三好将和大将
第一戦隊第二小隊
『出雲』『長門』『陸奥』
第七戦隊第二小隊
『鈴谷』『熊野』
第二水雷戦隊
『能代』
第八駆逐隊
『朝潮』『満潮』『大潮』『荒潮』
第十五駆逐隊
『黒潮』『夏潮』『親潮』『早潮』
第三十一駆逐隊
『長波』『早霜』『秋霜』『清霜』
本隊
司令長官 山本五十子大将
第一戦隊第一小隊
『大和』『武蔵』
第三戦隊第二小隊
『比叡』『霧島』
第四水雷戦隊
『那珂』
第二駆逐隊
『村雨』『夕立』『春雨』『五月雨』
第四駆逐隊
『萩風』『嵐』『野分』『舞風』
第九駆逐隊
『夏雲』『峯雲』『山雲』『朝雲』
支援機動部隊
司令官 楠木多恵少将
第二航空戦隊
『蒼龍』【零戦36機 九九式艦爆9機 九七式艦攻9機 彩雲9機】
『飛龍』【同上】
第二防空隊
『瑞鳳』【零戦27機 彩雲3機】
第八戦隊第二小隊
『筑摩』
第一護衛戦隊
『五十鈴』『名取』
第六十一駆逐隊
『秋月』『照月』『涼月』『初月』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
第二護衛戦隊
『長良』『名取』
第六十三駆逐隊
『天雲』『照月』『初月』『新月』
「この3個艦隊……まぁ機動部隊は突入しないが、2個隊が突入してヴィンランド艦隊を撃滅後に輸送艦と駆逐艦を主力にした撤退艦隊を派遣させる」
ケ号作戦(第二段階)
撤収隊
『長波』以下駆逐艦32隻
第『一号』型輸送艦×10隻
第『二百一号』型輸送艦×6隻
支援機動部隊
司令官 楠木多恵少将
第二航空戦隊
『蒼龍』【零戦36機 九九式艦爆9機 九七式艦攻9機 彩雲9機】
『飛龍』【同上】
第二防空隊
『瑞鳳』【零戦27機 彩雲3機】
第八戦隊第二小隊
『筑摩』
第一護衛戦隊
『五十鈴』『名取』
第六十一駆逐隊
『秋月』『照月』『涼月』『初月』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
第二護衛戦隊
『長良』『名取』
第六十三駆逐隊
『天雲』『照月』『初月』『新月』
「以上の作戦案だ」
「成る程……亀ちゃん、早速検討してみて」
「しゅぴ~……分かりました……しゅぴ~……しゅぴ~」
「この撤収の為に陸軍の飛行戦隊もブインやムンダ等に一時的に進出させてもらうつもりだ」
「成る程。航空戦力を補ってもらう為だね」
「その通りだ」
「ですけど三好長官。史実では駆逐艦だけの編成で喪失も確か1隻だけだったと思います。輸送艦がやられる可能性も……」
そこへ洋平がそう指摘する。洋平も特務参謀としての意識がしっかりしてきたようである。
「その為の一戦隊の投入だよ洋平。ガ島に張り付いた戦艦はどれも41サンチ搭載艦と35.6サンチ砲艦、此方は46サンチ27門もある。まともに当たれば軍配は此方に上がる」
「射程距離のアウトレンジですか?」
「いや、超重量砲弾」
「あー、あれですね」
洋平も四式徹甲弾を思い出して納得するのであった。そして右隣にいた智里が将和に耳打ちをする。
「じゃあ長官。作戦が決まるまではトラックで待機だよね?」
「ん? まぁそうなるな」
「成る程、じゃあ……暫くは休暇だね」
笑みを浮かべる智里にその真意を気付いた将和は苦笑する。
「まぁそうなるな」
将和の言葉に智里は元より同席していた嶋野や草鹿は笑みを浮かべる。なお、左隣にいた宇垣は首を傾げるのである。その後五十子は2日間検討するという形で会議を終わらせるのであるが翌日には将和の案で決定されトラック出撃は5日後となったのである。
そして案決定の翌日、将和の部屋をノックして入る者達がいた。
「泳ごうか長官」
「だろうと思っていたよ」
水着姿で入ってきた智里らに将和は苦笑しつつも準備していたパラソル等を抱えて部屋を出るのであった。なお、一航艦は元より二航艦でも半舷上陸の措置が行われていた。
「ちなみに五十子さんらにもバレてね。皆で行くんだ」
「んー、まぁ大丈夫だろ」
「何か案でも?」
「まぁ……プライベートビーチという奴か。内火艇を1隻一泊二日で借用しているからそれに乗って行くぞ」
「成る程。なら行きましょうッ」
遊ぶ気満々の嶋野を先頭に艦尾に行く一行である。その後、五十子達を乗せて内火艇は春島から約30分程で小さな無人島に到着した。
「此処は……」
「婚島だよ。洋平にはジープ島と言えば分かるんじゃないか?」
「あ~、確かに聞いた事はありますね」
「まぁコテージぽく建ててるし二泊程度なら普通に泊まるよう準備はしてある」
「用意周到だね」
「いやこれ……元は清が井上中将の為にとコッソリと作ってたんだよ」
「えっ? 長谷川長官が?」
「そう。しかも自腹で」
なんだかんだで仲が良くなってきている清と井上中将の二人である。(何らかの接点はあった模様)そしてプライベートビーチとして清がコッソリと島を整備していたのだ。それを将和も知っていたので内地に戻った時に清から借用したのだ。
「というわけでパラソルとかは洋平と準備しとくから遊んでこい」
その言葉に女性全員が海に駆け出すのである。その間に数個のパラソルを地面に刺して準備をする将和と洋平である。
「これも男の性ですか?」
「違うな、男の特権だよ」
将和は海に指差すとそこには遊ぶ五十子達がいた。無論、全員が水着である。(五十子達は原作仕様。智里達は前回の水着)
「……かもしれませんね」
洋平は顔を赤くしつつチラチラと五十子を見ている。
(青春だなぁ)
「三好長官、オイルを塗ってほしいですわ」
「あ、狡いぞ嶋野さん」
「早い者勝ちですわ」
「んっ」
「宇垣さんに先を越されましたわ……ッ!?」
「おっと、僕を忘れちゃ困るな」
嶋野、智里、宇垣、草鹿の四人は将和にオイル塗りを依頼し五十子は五十子で洋平にオイル塗りを依頼するのであった。
その日の皆が寝静まった夜中、将和は砂浜に腰を降ろしてラム酒で飲んでいた。
(……せめて戦艦の喪失は避けたいが……)
ガダルカナルに張り付いた戦艦を引き剥がすにはやはり戦艦しかない。航空機を使用してもいいが5隻となると対空砲火はやはり侮れないだろう。
(どうなる事やら……)
そう思いながらラム酒をチビチビ飲んでいると足音がして振り返るとそこには草鹿がいた。水着ではないものの肌が露出している服装ではある。
「眠れないのかい?」
「いやなに、BBQ奉行をしていたからな」
なお、夕飯は焼き肉であり将和がBBQのセットをして焼いていた。特に食べていたのは宇垣であり酒も入った状態で今は嶋野の顔面を蹴りつつ高いびきをかいて爆睡している。
「GF参謀長はどうだい?」
「まだまだだよ。機動部隊の参謀長をしているのがよっぽどいいし何より君がいる」
そう言って草鹿は将和の隣に座り将和は未使用のコップを出して氷を入れラム酒を注いで草鹿に渡す。
『乾杯』
クイッとラム酒を飲むと腹にカァッと熱くなるのを感じる。草鹿もケホケホと少し咳き込むが表情は嬉しそうだった。
「中々強いラム酒だね」
「俺のお気に入りの一つだ」
「成る程」
チビチビと飲む草鹿だが不意に口を開いた。
「智里とはまだ続いているのかい?」
「そりゃあな」
「成る程。近くにいればそうか」
自嘲気味な言葉に将和はムッとして草鹿を抱き寄せる。
「ッ」
「あのな……俺だってお前を手放したくはないんだ。でも俺達は戦争をしているんだ、勝つにはあらゆる事をしなければならない。だからこそお前をGF参謀長に推薦したのもそうなんだ」
「……捨てられたのかと思ったよ」
草鹿の目には涙が浮かんでいた。世間からすれば栄転かもしれないが草鹿からすれば左遷だったのかもしれない。
「んなわけないだろ。惚れた女なんだ、捨ててたまるかってんだ」
「ッ……フフ、嬉しいとはこの事かな」
草鹿はそう言って将和にキスをする。ただ口と口を合わせるだけのキスだったがそれだけでも草鹿は十分だった。しかし将和は十分ではない、そのまま舌と舌を絡ませるディープキスまでするのである。
「……何処までやる気かな?」
「無論……峰が満足するまでッ」
そう言って将和は草鹿ーー峰に覆い被さるのであった。その様子を祝福するように上空には満天の星々があったのである。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m