『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第三十三話 守勢転換

 

 

 

 

 

「取り敢えず損傷艦を内地に帰還させるのは当然として……」

「捕虜……特にパイ中将をどうするかです」

 

 第三次ソロモン海戦と『ケ号作戦』が完了した後の12月上旬のトラック島。そこには聯合艦隊の主力部隊と機動部隊が停泊しており旗艦『大和』に将和らも会議で乗り込んでいた。

 そして議題に上がるのはやはり特別観戦武官となったパイ中将であろう。ヴィンランド人という事もあるが将官でもあるので何かと目につく光景になるが当の本人であるパイ自身は気にしておらず、むしろ毎日のように『大和』や『武蔵』、『出雲』が搭載する46サンチ砲を何処からか仕入れたライカのカメラで撮りまくっている程であった。

 

「まぁ特には問題無いだろう。お目付け役には宇垣に任せる」

「うぇッ!? 俺かよ!!」

「餅は餅屋、大砲屋には大砲屋だろ?」

「ちぇッ。良いんだけどよ……何か視線が怖いんだあの提督(ポソッ」

 

 頭をボリボリとかく宇垣はポツリと呟くがその呟きは将和には届いてなかった。

 

「取り敢えずはガダルカナルも静かになるだろう。その間に俺は一旦内地に戻る」

「講和ですか?」

 

 将和の言葉に第二航空戦隊司令官の楠木は期待しそうな表情で言うが将和は肩を竦める。

 

「一応はスイスのジュネーブで窓口交渉はしているが……あまり芳しくないようだ」

「当然ですわね。ヴィンランドはあくまでも葦原を無条件降伏にさせたいでしょうし……」

「だろうな。まぁそんなわけだ、機動部隊の指揮は楠木、お前に任せる」

「任せてね長官!!」

 

 斯くして将和は内地に航空機で戻るのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修理はどのような感じだ?」

「修理は来週にも終わります。今は同時に改装を施している最中です」

 

 横須賀工廠を訪れた将和は修理・改装中の装甲空母『ヴィクトリアス』を見学していた。

 

「どれくらいで改装は終わりそうなくらいだ?」

「少なくとも来年の光文18年3月まで掛かるのは確実です。佐世保にいる『サラトガ』は5月、呉にいる『ホーネット』も同じく5月と見込んでいます。それと『アトランタ』は2月に終わりますね」

 

 将和を案内する横須賀工廠の職員がそう言う。

 

「成る程な……」

 

 三空母は以下での改装予定であった。

 

 

 

 

 空母『ヴィクトリアス』(『雷龍』)

 

 基準排水量 32,000t

 全長 225m

 最大幅 29m

 機関 wikiと同じ

 出力 wikiと同じ

 最大速力 wikiと同じ

 武装 45口径12.7サンチ連装両用砲8基

    60口径40ミリ連装機関砲8基

    25ミリ連装機銃8基

    25ミリ単装機銃40基

 

 搭載航空機 零戦27機 彗星18機 彩雲6機

 

 

 

 

 

 空母『サラトガ』(『蓬莱』)

 

 満載排水量 48,000トン

 全長 280m

 最大幅 39m

 航空機用エレベーター×2基

 油圧式カタパルト×2基

 ボイラー 95式艦本式重油専焼水管缶×12

 機関 ヴィンランドのターボ・エレクトリック方式をそのまま使用

 最大速力 31ノット

 兵装 45口径12.7サンチ連装両用砲×10基

    40ミリ連装機銃×8基

    25ミリ単装機銃×48基

 

 搭載航空機 零戦54機 天山18機 彩雲6機(飛行甲板の露天54機)

 

 

 

 

 

 空母『ホーネット』(『鳳鶴』)

 

 満載排水量 32,000t

 全長 252m

 全幅 34m

 ボイラー ヴィンランドのをそのまま使用

 機関 ヴィンランドのをそのまま使用

 最大速力 32ノット

 武装 45口径12.7サンチ連装両用砲8基

    60口径40ミリ連装機関砲8基

    25ミリ単装機銃50基

 

 搭載航空機 零戦36機 彗星27機 天山27機 彩雲6機

 

 

 

 

 

 

 

(さてさて……決戦までには何とかしたいもんだが……)

 

 将和は改装中の『ヴィクトリアス』を見つつそう思うのであった。その後、将和は大本営に向かう。大本営で杉山らがいて会議の予定だったのだ。

 

「それでは、会議を始めます。議題についてはマリアナ諸島での決戦についてです」

 

 司会進行役として軍令部の福留が行う。すかさず口を開いたのは第八艦隊参謀から再び中央に戻ってきた神中佐(水路副部長)であった。

 

「マリアナ諸島での決戦には反対です!! 仮にマリアナが占領されれば本土に近く新型爆撃機の行動半径に入るではありませんか!!」

「では貴官は何処で決戦しようと言うのか?」

「無論、マーシャル諸島です。マーシャル諸島にはマリアナ諸島にも匹敵する程の島数がありこれらの島々に航空隊を配置しあえば勝てます!!」

 

 そう意気込む神であったがその様子を見ていて将和は溜め息を吐いた。

 

(此処の神は史実と同じか……うちの神は多少はマトモだったんだがなぁ……)

 

 なお、将和世界でのマリアナ沖大海戦で実施された南雲中将の第二艦隊が行った輸送船団への攻撃は元々作戦予定の一つに思案されており輸送船団への攻撃を策定したのはGF参謀に就任していた神大佐だったりする。(本人は『山城』をサイパンに固定させて不沈砲台にさせたかったらしいが……)

 それはさておき、白けているので誰も反論しようとしない。長の米内すら神の長ったらしい演説に溜め息を吐いている。そこで将和は伊藤に視線を向けて神を追い払うような仕草をすると伊藤も頷いて立ち上がり神の方に行く。

 

「神中佐、別件で仕事が入ったみたいですので至急仕事にお戻り下さい」

「な、何と!? 分かりもした、直ちに戻りますッ」

 

 神は慌てて部屋を出るが全員が溜め息を吐いた。

 

「……次からアイツは呼ぶな。というか関係者以外禁止としておけ」

「はぁ……それが神は関係者だからと言って……」

「なら()を書いておけ。誰々禁止とかしてな。それでも文句言ってきたら左遷させておけ」

「それが一番だな」

 

 将和の文句に隣にいた清が煎餅をボリボリと食べながら賛同するのである。

 

「そうしておきます……それで決戦場所ですがマリアナ諸島で想定、異論はありませんか?」

『異論無し』

 

 福留の問いに将和ら出席者達の意見は一致していた。

 

「分かりました。それでーーー」

 

 その他の報告が行われていき内地の局戦隊の話になった。

 

「厚木の302空に量産された雷電が配備され始めました。現在は1個中隊12機です」

「ム、配備されたか」

 

 雷電は史実のような紡錘形胴体の機体ではなく、むしろ二式単戦『鍾馗』のように発動機直後から急に細く絞り込んでいた。また、発動機もハ-42-21を搭載しているので速度向上も良かったのである。

 

 

 

 

 局地戦闘機『雷電』11型

 

 全長 9.7m

 全幅 11.8m

 全高 3.945m

 主翼面積 20㎡

 正規全備自重 4,600kg

 発動機 『ハ-42-21』(離昇2,400馬力)

 最大速度 650キロ

 航続距離 1,900キロ

 武装 20ミリ機銃4門(内門200発 外門250発)

 

 

 

 

 

「雷電隊を率いている赤松少尉によれば頗る快調との事です」

「松ちゃんが言うなら大丈夫だろうな」

「それに三菱側によれば排気タービン付の試作機も良好なようです。早ければ夏頃には制式採用されて量産が始まると思われます」

「ん。震電の方は?」

「試験飛行を続けていますが順調のようです」

「烈風は?」

「堀越技師を中心にやっていますが来年2月に試験飛行は行えると思われます」

「そいつは何よりだ……ところでだ吉田」

「ん、何ですか?」

 

 不意に将和は政府外交担当で出席している吉田真紅に視線を向ける。

 

「ヴィンランドとの和平交渉はどうなっているので?」

「……相も変わらずだね。向こうは葦原の無条件降伏の一点張りだ」

 

 スイスのジュネーブにて葦原はヴィンランドと和平交渉を秘密裏に開始してはいたがヴィンランド側のアレン・ダレスはただ一つの主張であった。

 

「我がヴィンランドが求めるのは葦原の無条件降伏。これのみである」

 

 無論、これはヴィンランドの大統領であるローズンベルトの意向でもあった。

 

「今、奴等との和平を認めるわけにはいかないッ」

「しかしプレジデント。向こうは現占領地域は元より中華大陸、満州の撤退をも通知しています」

「だが、奴等の本土には精鋭の陸海軍がいるではないかッ。奴等を野放しにしては背中からナイフでやられるではないか!!」

 

 軍の高官達にローズンベルトはそう主張して腰を下ろす。

 

「……私とて和平が望む。しかし、軍は連戦連敗でありガダルカナルも結局は無傷で葦原のサルが撤退したからこそ手に入れているに過ぎん!!」

「プレジデント、海軍としましては大反攻作戦をしたいと思います」

「大反攻作戦?」

「ハッ、マリアナ諸島を占領し開発中のB-29で葦原の本土を空襲して焼け野原にするのです」

「爆撃のみで葦原が屈服すると思うのか? やはりマッカーサー元帥が主張するニューギニア・フィリピンを抑えてからオキナワを攻略すべきだ」

「フィリピン、オキナワは葦原の陸軍が大量に駐屯しているところだぞ。無闇に出しては損害が出る、欧州の損害を忘れているのか?」

 

 議論が議論を呼んでしまい、さしものローズンベルトも収拾がつかなかった。だが、議論の中でも一つだけはハッキリと承認されていたモノはある。

 葦原との和平交渉はしない、つまりは戦争の継続であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぁ~、トラックに戻ったか」

 

 将和はトラックに向かう二式大艇に便乗してトラック諸島に戻っていた。その足で『大和』の司令部に戻ろうとして内火艇に乗り込んで行き先を告げようとしたがドカドカと数人の海軍乙女が内火艇に乗り込んできたのだ。

 

「何だ……淵田じゃないか、どうした?」

「どうしたやありまへんよ三好の旦那」

「山本長官の事で……」

「五十子が? 五十子は洋平といつもイチャイチャしているだろ?」

「それが……」

 

 将和の言葉に村田少佐は言いにくそうな表情をするが淵田がハッキリと告げた。

 

「あのな旦那……山本長官、制海錠の服用しとるんや」

「何だと?」

 

 制海錠はラ・メール症状を抑える薬である。但し副作用として強力な眠気が襲ってくるのだ。そして淵田の報告ーー繋がるのはただ一つであった。

 

「五十子がラ・メール症状を発症してるか……」

「それしかないねん。探らせたら最近の山本長官、居眠りする回数が多なっているらしいねん」

「ソイツは厄介だな………ん?」

 

 だが、将和は気になる点があった。五十子が発症しているなら……?

 

「嶋野も発症している可能性がある……か?」

 

 しかし、将和が内地に戻る前に嶋野は欠伸、居眠り等はしていなかった。

 

「……調べる必要があるな」

 

 そう言う将和であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで旦那? 旦那の息子の将弘はん、もう我慢出来ひんから食べてもええ?」

「食べていいぞ」

「マジでッ!?」

「やった、旦那の言質取りましたよ!!」

「そうと決まりゃあラムネを携えて吶喊でぇい!!」

 

 

 

 

 

 




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