12月も31日になり葦原も年末の行事で大忙しであった。その中で将和はトラック諸島でヴィンランドの出方を見る為に待機をしていた。
「来ると思うか?」
「五分五分だな。だが、ヴィンランド国民の士気をもう一度上げさせる必要があるとしたら内地かトラック諸島への空襲だろうな」
パイ中将の言葉に将和はそう返す。トラック諸島には1個機動部隊程度の艦隊が停泊していた。
三好機動部隊
司令長官 三好将和大将
参謀長 草鹿峰少将
第一航空戦隊
『加賀』
【烈風36機 彗星36機 天山36機 彩雲12機】
第三航空戦隊(603空)
『赤城』
【烈風27機 彗星18機 天山18機 彩雲6機】
『土佐』
【烈風27機 彗星18機 天山27機 彩雲6機】
『蓬莱』(『サラトガ』)
【烈風27機 彗星18機 天山18機 彩雲6機】
第五航空戦隊(652空)
『雲龍』
【烈風27機 彗星18機 天山18機 彩雲6機】
『天城』
【同上】
『葛城』
【同上】
第一戦隊
『武蔵』『出雲』
第七戦隊
『最上』『三隅』『那智』『足柄』
第十二戦隊
『球磨』『長良』
第三水雷戦隊
『川内』
第12駆逐隊
『叢雲』『東雲』『薄雲』『白雲』
第13駆逐隊
『磯波』『浦波』『綾波』『敷波』
第20駆逐隊
『朝霧』『夕霧』『天霧』『狭霧』
第三護衛戦隊
『阿武隈』
第六十五駆逐隊
『山月』『浦月』『青雲』『紅雲』
第六十六駆逐隊
『春雲』『天雲』
また、この編成を見て将和は思わず苦笑してしまう。
(この編成……空母とかの一部を除けばトラック諸島沖海戦と同じだな)
将和があの時代を過ごした時、マリアナ沖大海戦が始まる前に米軍はトラック諸島の航空戦力と基地機能を喪失させるために史実と同じく『ヘイルストーン作戦』を敢行、再編成された米機動部隊はトラック諸島を空襲するもトラック諸島上空で待ち構えていたのは500機余りの日本陸海軍戦闘機であり米攻撃隊は300機余りを喪失してトラック諸島の航空戦力と基地機能喪失は失敗したのである。また、この300機余りの喪失はマリアナ沖大海戦にも響くのであるがそれは日本海軍にも同じであり海軍は戦艦『武蔵』以下の艦隊がトラック諸島に接近してきたリー中将の戦艦部隊と艦隊決戦を敢行、米戦艦部隊は5隻の戦艦を喪失するも日本海軍は『武蔵』を筆頭に『最上』『三隈』等も喪失し艦隊司令の白石少将も『武蔵』と運命を共にしたのである。
だが、『武蔵』らの犠牲もあったからこそ将和は日本陸海軍はマリアナ沖での勝利を掴めたのである。
(だからこそ……だからこそかもな……なぁ八百万の神々よ……? アレを回避させてみろという事だろ?)
将和は編成を見た瞬間に八百万の神々からの宿題を申し付けられた気持ちになった。つまりはあの編成に近い形で今度は勝てという事であった。その為に将和は準備をしていた。
まず、空母の艦上戦闘機は生産が始まったばかりの烈風11型で編成され対艦上戦闘機用では有利に立てる筈である。更にトラック諸島の航空戦力も増強していた。
春島第一飛行場
第七五二空 一式陸攻36機 『銀河』36機
第七五五空 一式陸攻36機
第五五二空 『彗星』36機
竹島飛行場
第201空 零戦72機
第204空 零戦72機
第501空 『彗星』36機
楓島飛行場
第五五一空 『天山』36機
第二五一空 『烈風』72機
第九三八空 『強風』27機 一式水戦27機
春島第二飛行場
第205空 零戦72機
第三二二空 『雷電』54機
第1200空(新設偵察隊) 『彩雲』45機
夏島水上飛行場
第902空 水偵32機 『瑞雲』27機
以上の航空隊が展開していた。特に第二五一空は零戦だった戦闘機を『烈風』への機種変が完了しておりその性能は見違えるモノである。また、トラック諸島に停泊していた『明石』等の支援艦艇に民間船や海上護衛総隊の護衛艦隊等も軒並みパラオ方面に退避しており停泊するのも三好機動部隊くらいであった。
だが、本日は大晦日であるが故に警戒待機はするが当番以外の者は休みになっていた。かくいうパイ中将も非番であり水着姿で将和の元に来ていたのだ。
「それでパイ中将、泳ぐなら行ってきた方がいいぞ」
「無論、それはアドミラル・ミヨシもだぞ」
「そうだ長官」
何故か水着姿の峰もおり、泳ぐ準備完了であった。
「『加賀』の周辺であれば問題はありませんでしょう」
航空参謀達もパイと峰の援護射撃をする。彼女達も将和がここ最近、徹夜をしてトラック諸島の防備計画を練っていたのは承知であり彼女達も将和を休ませたい一環であった。それでも渋った将和であったがそれを打破したのはパイ中将であった。
「ダァァァッ!! 行くぞアドミラル・ミヨシ!! 私の背中を塗ってもらうからな!!」
「あ!? それは私もだぞ!!」
「ちょ、ま……」
業を煮やしたパイ中将がヒョイと将和を抱き抱えてそのまま艦橋から出てそれを峰も追い掛けて行くのである。なお、残った航空参謀達はやれやれとばかりに仕事に取り掛かったのであった。
「全く、たまには休むのも仕事とは以前に言っていたじゃないか」
「それは下の者達にだよ。俺みたいなのは働かないとお釣が出ないからな」
『加賀』の艦首に近い飛行甲板で将和はパイと峰と共に日光浴としていた。パラソルではないが日傘等で代用して飛行甲板にはシートを敷いている。
「アドミラル・ミヨシ、ほら」
「……塗れと?」
「さっき言ったではないか」
パイ中将は将和に日焼け止めのクリームを渡しシートにうつ伏せとなる。
「ほら、頼みましたよ。胸のヒモも外して下さいね」
「えぇ……」
「次は私だからなッ。クソ、ジャンケンで負けるとは……」
ブツブツと小言で何か言う峰を他所に将和は溜め息を吐いてうつ伏せに寝るパイの横に歩み寄って座り、パイのビキニの胸のヒモを外してクリームを塗っていくのである。
「何処までだ?」
「全部ですね」
「ハイハイ……」
将和は背中を塗り終わると多少尻を塗りつつ両足にクリームを塗っていく。
「んっ……んぅっ……」
(変に感じるのやめてくれんかね……)
そう思いながらも両足を塗り、ビキニのヒモを結び直す。
「ほら、終わったぞ」
「……まだ前が残っているぞ……」
「ッ」
パイの言葉に将和は思わずパイに視線を向けると顔を赤くしながらも将和を見ていた。
「……分かったよ」
将和が折れる形で仰向けになったパイの身体の全面も塗るのである。なお、胸を塗る時は夕華や智里達よりも大きいパイの胸は非常に堪能したらしい。(後でクリームを塗ってもらった峰からの証言)
その後、三人は日光浴をし大晦日ではあるが将和も休みを満喫したのである。
「済まなかったな二人とも。ありがとう」
時刻が0時を指す前の2358頃、将和は自室に二人を呼び晩酌をしていた。
「なに、アドミラル・ミヨシの気分転換になれば良いのです」
「そうだぞ長官」
ラム酒を飲む二人は顔を赤くしていたがそれはアルコールでなのかそれとも将和に褒められて嬉しかったのかは本人達にしか分からない。ちなみに三人には年越し蕎麦も用意されており晩酌のモノは年越し蕎麦だったりする。
「それとだアドミラル・ミヨシ、私の事はサタリーでいい」
「それは……」
「Noとは……言わせないからなッ」
ニヒッと笑うパイーーサタリーに将和は苦笑し肩を竦めるのであった。そして時刻は0000を指し、伴天連歴1944年の幕は明けたのである。
「成る程、マーシャル諸島も撤退していたのですか……」
ハワイオアフ島にあるヴィンランド太平洋艦隊司令部でセシリア・ニミッツ大将は眉を潜める。マーシャル諸島攻略作戦である『フリントロック作戦』は史実より少し早い1月中旬から開始されていた。
しかし、ヴィンランド海兵隊が上陸すると葦原は一発も撃って来なかった。そう、葦原は既に撤退していたのである。
(妙な撤退ですね……奴等の目的は……)
そう思慮するがどうも答えは出てこない。見かねたマクモリクス参謀長が口を開く。
「長官、此処はやはり……」
「……葦原の出城であるトラック諸島……ですね……」
トラック諸島攻撃である『ヘイルストーン作戦』はレナ・スプルアンス中将の下で準備が進められていたのである。
「……アドミラル・ミヨシ……葦原の出方を探りましょう。レナには作戦を決行せよと伝えて下さい」
「サーッ!!」
斯くしてヴィンランド海軍によるトラック諸島攻撃ーー『ヘイルストーン作戦』は実行されるのである。
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