『三好in山本五十子の決断』リメイク   作:零戦

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第四十二話 九州沖防空戦

 

 

 

 

 

「フム……トラック諸島の基地機能は完全には奪えてはいないか……」

「は、やはり『フォレージャー』作戦は一時延期するしか……」

「いや、計画に変更は無い。むしろ前倒しだ」

「プレジデントッ」

「駄目だ……トメニアの侵攻計画は6月と決まった。大西洋と太平洋、どちらも同時に行う取り決めだ」

「ッ。では『オーヴァーロード作戦』が……」

「あぁ。本格的になっている、だからこそ一時延期もしないし前倒しだ」

「……しかし……」

「キング作戦部長の懸念も分かる……だからこそ陸軍航空隊が陽動作戦を行う」

「陽動作戦……まさかッ」

「そう、そのまさかだ。今は中華大陸の成都に待機しているが状況によっては漢口まで進出する予定だ。だが、大陸には期待していない。大陸を拠点にすれば撤退した葦原の陸軍が乗り出すだろう。だからこそ『超空の要塞』を拠点にする場所はマリアナ諸島なのだよキング作戦部長」

 

 今の時点でのB-29の生産は80機程であったが飛行トラブルが続いていた事もあり飛行可能なのは20機前後であった。

 

「発進基地予定のチャイナの成都の飛行場は今はまだ建設中ですが無茶をすれば15機前後の攻撃は可能です。チャイナから本土を空襲すれば葦原の猿は大陸に目を向けてマリアナの警戒も薄れるのではないですかな?」

 

 マーシャル陸軍長官も援護射撃とばかりにそう具申しローズンベルトは笑みを浮かべる。

 

「大統領、ですが……」

「多少の損失は構わない」

 

 ローズンベルトはそう決断するのである。直ちにルーズベルトの命令は成都に進出したばかりの第20空軍に日本本土爆撃の命令が伝えられるのである。

 

「海軍は万全を期すように頼むよ」

「……全力を尽くすよう伝えます」

 

 ローズンベルトの言葉にキング作戦部長はそう答えるのが精一杯であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月25日この時、海軍の大村基地には厚木の第302空から分派され新設された第334海軍航空隊が駐屯していた。彼女達の主力局地戦闘機は排気タービン過給器を搭載した『雷電』22型(通称『雷電改』)そして偶然にも334空はこの日、実弾飛行演習のため離陸寸前であったのだ。

 

「中華大陸から大型爆撃機が接近中!?」

 

 第334空飛行隊長の白根少佐は通信兵からの報告に冷や汗を流した。

 

(まさか……遂に来たのか……)

 

 唸る白根を他所に赤松飛曹長らは即時出撃を主張した。

 

「隊長、行きましょう!! 我々の女房である『雷電改』は此処、大村にしか無いんです!!」

「そうです!! 陸さんの『鍾馗』三型はまだ九州には配備されていません!! 九州の国民を守れるのは我々しかいないんです!!」

 

 彼等の主張は正しかった。陸軍も排気タービン過給機付の『鍾馗』三型を生産配備していたものの、配備されていたのは南京から関東地方に再配置された飛行第九戦隊と飛行第二二戦隊しかなかったのだ。

 しかし、大村にいた334空も完全配備ではなく2個中隊18機でありしかもそのうちの7機は発動機の不調で不稼働状態だったのだ。

 だがそれでも白根少佐は赤松飛曹長らの主張を受け入れ出撃を決断したのである。

 

「出せる『雷電改』は全て出します!! 噴進弾の搭載は怠らないで!!」

『オオォォォォォ!!』

 

 大村基地は慌ただしく動き回りやがては準備が出来た『雷電改』から次々と離陸していくのである。

 

「今日は発動機も調子は良さそうね」

 

 配属されたばかりの土屋二飛曹は上昇しながら呟く。彼女自身は第202空からの転勤での配置替えでありそれまでの零戦からの乗り換えには苦労すると思われたが土屋二飛曹は特に気にしなかった。

 彼女はミッドウェー海戦にも参加しており『蒼龍』乗組の零戦パイロットだった。SBDの急降下も飛行甲板で目撃しており急上昇でSBDを撃墜してやれたものをと悔やんでいた中での『雷電改』との出会いだった。

 

「この『雷電改』があれば今度は守れる」

 

 土屋はそう言う程であった。11機の『雷電改』隊は高度1万2000まで上昇すると五島列島方面に向かう。白根少佐は奴等の爆撃目標を粗方読んでいたからだ。

 

「恐らく大型爆撃機は北九州の八幡製鉄所をやる筈よ。我々は待ち伏せをしてそこを叩く!!」

 

 その一方で機上対空電探(十八試空二号無線電信機)を搭載した第765空(第765実験航空隊)の九六式陸攻による実験哨戒飛行(十八試空二号無線電信機の実用化の為にたまたま飛行していた)が五島列島方面から接近する大型爆撃機の編隊を探知したのである。

 

『此方実験飛行中の鯨1、五島列島方面から本土に向かう大型爆撃機の編隊らしきモノを探知。繰り返すーー』

(当たりね)

 

 無線からの報告に白根少佐はニヤリと笑みを浮かべて無線機のスイッチを入れた。

 

「此方、第334空の犬鷲1。犬鷲1以下11機は高度1万2000にて飛行中。大型爆撃機の情報を逐次頼む」

『此方鯨1、了。情報についてはーーー』

 

 斯くして白根少佐ら334空の『雷電』隊は待ち構えるのである。そして彼女が発見したのは正しく超空の要塞であった。

 

「ッ、隊長。十時下方!!」

 

 発見したのは土屋二飛曹であり白根少佐が十時下方を見ると銀色のジュラルミンを纏った大型爆撃機の編隊であった。

 

「あれが……B-29というの!?」

 

 この時、日本本土に迫ろうとしていたのは成都の航空基地から飛び立った第20航空軍所属のB-29 25機であった。彼等のB-29が今現在運用出来る最大の数でもあったりするがそれでも爆撃機のパイロット達の士気は高かったのである。

 

『隊長、自分に先陣を斬らして下さい!!』

「土屋、まぁ良いわ。貴女が突っ込んだところを我々も突っ込み掻き乱す!! 良い皆!! 奴等を本土に入らせさせるな!! 奴等を此処で全滅させろ!!」

『オオォォォォォ!!』

「土屋行け!!」

『了解!! よぉぉぉぉっし、イッケェェェェェェェェェェェェ!!』

 

 土屋機の『雷電』22型は『ハ42-21ル』を最大公称馬力近くまで唸らせ土屋機は急降下を開始したのである。

 その一方でB-29隊も警戒はしていたが、彼等が警戒していたのは下方からであった。

 

『此方、上部銃座異常無し……あれはッ!?』

 

 銃座員が気付いた時には土屋の『雷電改』は距離1000を切っていた。

 

『ろ、六時上方から葦原の戦闘機!!』

『寝惚けるな!! 私達は今高度1万を飛んでいるんだぞ!!』

『しかし、葦原の戦闘機です!! う、撃ちます!!』

 

 銃座員は12.7ミリ機銃を撃ち出す。様子を見ていた主パイロットは戦闘機を見て叫んだ。

 

『NO!! 葦原の新型機よ!!』

『そ、そんな……う、撃て撃て撃て!!』

 

 B-29隊は慌てて射撃を開始するが土屋二飛曹は先頭にいるB-29に照準したのである。

 

「イッケェェェェェェェェェェェェ!!」

 

 土屋は叫びながら三式一番二十八号噴進弾一型(トメニア空軍のR4Mをライセンス生産したモノ)のスイッチを押すと左右の主翼から1発ずつ発射された。B-29に向かって飛翔し、1発は左翼付け根に、1発は外れてその下方を飛行していたB-29のコックピットに命中した。

 

「やったか!?」

 

 左翼付け根に命中爆発したB-29は左翼付け根がバキッと折れて海面に向かって落ちていく。コックピットをやられたB-29も同様であった。

 

「全機突撃!! 土屋に戦果を持って行かれるわよ!!」

『あいよォォォッ!!』

 

 土屋の2機撃墜を見て白根少佐は突撃命令を出し赤松らも突撃する。『雷電改』隊は噴進弾を発射しまくり、B-29隊は混乱に陥るのである。

 

『助けて!! し、死にたくない!!』

『隔壁がやられたわ!! 消火器を持ってきて!!』

『全機、編隊を密にせよ!! 繰り返す、編隊を密にせよ!!』

『恐ろしく脚の速い奴等よ!!』

『私、これが終わったら結婚しようとアリゾナにいるティアナに……』

『あぁ、ジェニーがやられたわ!?』

『落ち着いてジニー!! 貴女が指揮を引き継いで!!』

 

 B-29隊は1機、また1機と撃墜されていく。噴進弾を撃ち尽くした『雷電改』隊は16機のB-29を撃墜していた。残る9機のB-29は遁走を図っていたが排気タービン過給機付の『雷電改』はあっという間に追いついて今度は20ミリ機銃弾をB-29に叩き込む。

 20ミリ機銃弾は空気式信管のマ弾も搭載しているので効果は大であり場合によっては1発の被弾で飛行不能にまでなる機体もあったりする。

 

「最大速度で逃げるのよ!!」

 

 B-29隊は何とか逃げようとするも『雷電改』隊の方が速度は上であり向こうは戦闘機である。

 その最後の1機も最大速度で追い付いた土屋機に撃墜される事になるのである。

 

「もうちょい……もうちょい……撃ェッ!!」

 

 下方からの銃撃にB-29は左右内のエンジンが火を噴き、あっという間に爆発四散したのである。斯くして日本本土に迫ろうとしていたB-29 25機は第334空の『雷電改』隊によって全機撃墜という被害を受けたのである。

 

(マジか、まさか全機撃墜とはな……)

 

 柱島泊地に停泊する旗艦『大淀』の作戦室で将和はホッとした安堵の息を吐いていた。なお、将和自身は第765空で試験飛行中でもある『震電』に乗って出撃したかったらしいが……。

 

「しかしよ、奴等何処から来たんだ?」

「恐らく発進基地は成都でしょう」

「ん。動向は分からないが暫くは九州は空襲を受ける可能性も否定は出来ないな」

「帝都にいる『雷電』隊を九州を回しますか?」

「万が一もあるから駄目だな……だが厚木の『天雷』隊を回しても良い」

 

 五十子の問いに将和はそう言う。史実の双発局地戦闘機『天雷』は『誉』発動機によっての妨害によって採用されなかったが此処では排気タービン過給機付である『ハ-43-11』を搭載した事で復活し採用され今は厚木空に10機程度が配備されているのに留まってはいるが軍令部は『雷電改』と『天雷』を本土防空の任務に就かせようと模索しているのである。

 

「軍令部の一部が今回の空襲に備えて大陸に重点を置くべきではないかという声がありますな」

 

 同じく横須賀から柱島泊地に出向いてきた福留もそう報告する。

 

「大陸は上海事変でこりごりしているけどな」

「その通りです。豊田呉鎮守府司令長官らが聞けばまた激怒しそうですな」

「豊田の言い分も分かるけどなー。まぁ良いさ」

 

 福留の言葉に苦笑する将和であった。その一方でヴィンランドはB-29隊の全滅に驚愕していた。

 

「そんな馬鹿な!? 幾ら何でも全滅は無いでしょ!?」

 

 キング作戦部長らも報告を聞いて唖然とした。B-29が全滅したのならマリアナ攻略も頓挫するのではないかと危惧したがローズンベルトからは「マリアナは予定通りに行うように」と言われたので不安しかないのであった。

 

 

 

 

 

 




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