ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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13話。 普通と違うと言うのは生きづらく。


同族

 

 特別医療室=独房に入れられて三日目か。 食事は美味しいけど手洗いに行くときは付き添われるし、メイドさんに何を聞いても答えてくれないし。 部屋内は殺風景で余りにも退屈だし。 身体の傷も治ってるし。 “相棒”も没収されているのか何もする事が無いわ。 そりゃ筋トレくらいはしてるけど。

 

 「暇ね。 誰か面会にでも来ないかしら」

 

 私はこの三日あの夢を考えていた。 母様と思っていた人が別の人に変わった夢。 余りにやる事が無いから嫌でも考えてしまう。 見覚えがある気がするけど誰だか思い出せない。 でも、何か懐かしい感じもした。 あの人と長い間一緒にいた様な気がする。

 

 「はー、考えても思い出せないわ」

 

 ベッドに身体を預けると天井を見る。 石で出来た部屋は天井も石で出来ている。 小さなヒビ割れを見つけるとそれをぼんやりと見つめた。

 

 「銀雪華、ちゃんと預かっててくれてるかしら」

 

 私は“相棒”の事を考えながらぼんやりとした時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 「この報告は確かか?」

 

 「はい。 同室の者から調書を取りました」

 

 「分かった。 下がっていい」

 

 「失礼します」

 

 ロザリーは自室に戻ると黄服メイドから報告書を受け取った。 それを険しい顔で見ると、メイドを下げ再度目を通した。

 

 「好物が蛙蚯蚓のステーキにコカトリスの卵の目玉焼き。 ダブルの特徴だな」

 

 報告書を机に放り投げるとロザリーは部屋に備え付けてある本棚から一冊のファイルを取り出した。

 

 「そもそも人間は魔物を食べたりしない。 いや、辺境では食べるという話も聞いたことはあるが・・・そんな物食べるのは同じ魔物かダブルくらいだが」

 

 ファイルを捲りながら目を走らせていく。 あるページで捲るのを止めたロザリーはその用紙にじっくり目を通す。

 

 「やはり辺境では食べる事もあるか。 一概にタブルと決めつけるのは早いか」

 

 私は思案すると、机の上に置かれたベルを鳴らす。 数秒もしないうちに黄服メイドの一人がノック後に部屋に入って来た。

 

 「受付を担当してるのは誰だ」

 

 「現在はクロウさんを筆頭メイドに。 数名が対応しています」

 

 「例の新入りを担当した者を此処に呼べ。 急ぐ必要はない。 此方も調べたい事がある。 三人が抜ける間は他のメイドが受付を行え」

 

 「分かりました」

 

 黄服メイドが部屋を出ると、ロザリーは椅子に深く腰を掛けた。 

 

 「正体を掴まなくては。 あの新入りが我が国にとって危険因子なのかどうか」

 

 

 

 

 

 「ロザリー様が?」

 

 「はい。 お呼びになられています。 急ぐ必要はないと」

 

 「もしかして例の件?」

 

 「何ですか? エルダさん何かしたんですか?」

 

 「私は何もしてないよ。 宿舎兵の錬磨場で暴れた奴がいるって話。 ザラ聞いてないの?」

 

 「全く。 あたし最近此処に詰めてますから。 クロウさん知っています?」

 

 「ドヤ顔でしょう。 聞いているわ」

 

 「え!? 受かったんですか?」

 

 「そう聞いているわ」

 

 「エルダとザラも呼ばれているわよ。 ここは私達が代わるから行ってきた方がいいわ」

 

 黄服メイドが交代要員を連れて受付でクロウ達に連絡を行った。 連絡を受けた三人は連れ立って城へと向かって歩いて行く。

 

 そんな中、エルダは心底嫌そうな顔で呟いた。

 

 「やだなぁ。 ロザリー様怖いから」

 

 「あたしが宿舎兵の時はしごかれました」

 

 「真面目な人だから。 遊びは無いわね」

 

 「そういえばクロウさんとロザリー様って同期ですよね。 クロウさんどうして部隊に入らなかったんですか?」

 

 エルダがそう問うと、クロウは手を振って来た小さな男の子に手を振り返しながら口を開いた。

 

 「この国が好きだから。 部隊兵になると外に出ないといけないから嫌なのよ」

 

 「でも向こうは既に第十部隊の部隊員。 クロウさんは受付メイドですよ。 いいんですか?」

 

 「クロウさんはそういうの興味無い人なんですよ」

 

 「あんたには聞いてないっての」

 

 「あたっ」

 

 軽くザラの頭をペシッと叩いたエルダにザラは膨れながら目を向けた。

 

 「いいのよ。 ロザリー様は人を育てるのが上手い人。 部隊員でありながら外に派遣されずここで育成をされているから。 私は受付でその手伝いをしているだけよ」

 

 「成程、適材適所ですね。 しかし、ドヤ顔が受かるとはね、絶対落ちると思ったのに」

 

 「あたしは嬉しいです。 一緒に錬磨したかったからですから」

 

 「メイドにもなれるか分からないよ。 何せ全然駄目だし」

 

 例の新入りの話をしながら三人が城下町を歩いていると、一つの店に凄まじい数の人々が集まっているのが見えた。 

 

 「何ですかね、あれ」

 

 三人が人混みに近づくとエルダが一人の男に声を掛ける。

 

 「何の騒ぎです?」

 

 「あ、これはメイドさん! いつも綺麗ですね」

 

 「ありがとうございますー。 それで、どうしたんですか? 揉め事なら解決しましょうか?」

 

 「いえ、揉め事ではないんですか。 兎に角凄いんですよ!」

 

 男は興奮しているのか何がどう凄いのか説明しない。 エルダが痺れを切らすと周囲からどよめきの声と歓声が上がった。

 

 「また完食したってよ! これで四件目だぜ!」

 

 「すげぇ! あんな食いっぷり見た事ねぇよ!」

 

 どうやら大食いの者がいるらしい、それだけ聞くと三人は呆れながら城へ足を向けた。

 

 「お、出てきたぞ! 姉ちゃんやるなー! コックが泣いてるぜ!」

 

 「ちょろいちょろい。 さーて、締めのデザートでも食べに行こうかな」

 

 店から出てきた大食いの者をちらっと見たクロウは足を止め、驚愕していた。 そんなクロウを見たエルダとザラは同じく大食いの者を見ると完全に動きを止めた。

 

 「ん? お、クロウに受付メイドか。 アタシが城下町に入ったのを気づかないなんてまだまだ錬磨が足りないね」

 

 「な・・・リ、リース様!?」

 

 「ふふん。 丁度いい。 今からデザート食べに行く所なんだ。 一緒に来なよ」

 

 そういうとリースと呼ばれた大食い女は観衆を退かすと先に歩いて行く。 クロウは何とか動きだしたが、エルダとザラはポカンと口を開けたままその場から動けないでいた。

 

 

 

 

 

 「コーヒーを四つ。 ケーキはメニューの端から端まで持ってきて」

 

 「か、畏まりました」

 

 一つのカフェ兼デザート屋に入った途端、周囲の客や店員が騒ぎ出した。 そんな騒ぎもどこ吹く風のリースは店員にそう言うと前に座る三人に見ながら口を開いた。

 

 「楽にしなよ。 今はプライベートだからさ」

 

 「は、はひぃ!」

 

 完全に噛みながら答えるエルダは背筋をこれでもかと伸ばし冷や汗を流している。 ザラに至っては赤い顔でぼんやりとリースを見つめていた。

 

 そんな中、動かない二人を引きずりながらなんとか店まで連れてきたクロウが緊張気味に口を開く。

 

 「リース様。 私達はロザリー様に呼ばれているのですが」

 

 「いいのいいの。 どうせ大した話じゃないでしょ。 ロザリーよりアタシが上なんだし付き合いなよ」

 

 「分かりました。 それよりまだあの様な事をなされているんですか?」

 

 「ただの食べ歩きでしょ。 この前まで南の方で魚介類を食べたから今度はこっちで穀物を食べたくなってさ。 こっちは甘い物もあるしね」

 

 「相変わらずですね。 アンナ様が気にされていましたよ」

 

 「アンナー? いいよいいよ。 アイツは世話好きだから楽しんでるでしょ」

 

 「気苦労されてますよ」

 

 「クイーンがいるでしょ?」

 

 「今はロイヤルクラウンにはいらっしゃいません」

 

 「ありゃ、そうなの。 まぁ大丈夫でしょ」

 

 「お待たせしました。 残りはもう少々お待ちください」

 

 店員がコーヒーと様々なケーキを持ってくると、リースは待ってましたとばかりに嬉しそうに食べ始めた。

 

 「ほぉいえばさ(そう言えばさ)」

 

 「リース様。 飲み込んでからお話を」

 

 「ふるはいな(うるさいな)。 ん、そういえばさ、そこの二人は初めましてだよね」

 

 リースに目を向けられエルダとザラはビクッと身体を震わせた。 二人は急に立ち上がると焦りながら口を開いた。

 

 「え、ええエルダです! よろしくお願いしまひゅ!」

 

 「ふふん。 面白いね君」

 

 「は、はひぃ!」

 

 「んで、そっちの子は?」

 

 「ざ、ザラと言います! よろしくお願いしましゅ!」

 

 「んー君は甘党っぽいね。 アンナの空気に似てる」

 

 「は、はい! 目がありません!」

 

 「よし。 好きなだけ食べな」

 

 「ありがとうございましゅ!」

 

 好物のケーキを目の間にしてるザラだが、緊張で全く喉に通りそうになかった。 そんな二人を横目に、比較的落ち着いているクロウがコーヒーに口を付けた。

 

 「リース様。 いい加減ロイヤルクラウンにお戻りください」

 

 「やだね。 アタシは好きに出来るって条件で入ったんだ」

 

 「第四部隊の部隊長がそれでは困ります。 それに最近周囲の魔物の動きが活発になっています」

 

 「はたひしかひないふたいだひ。 はもののふごきもひってるよ。 たへあるきでひろひろなとこにいっへるから(アタシしかいない部隊だし。 魔物の動きも知ってるよ。 食べ歩きで色々なとこに行ってるから)」

 

 「ですから飲み込んでから」

 

 「ん、ほんと真面目だな。 此処にいてもつまんないしね。 アンナみたいに誰かを育てたりそういうのはアタシできないし」

 

 「あの・・・」

 

 意を決してエルダが口を開くとリースは真っすぐに目を見つめてくる。 その視線に焦りながらも、エルダはなんとか口を開いた。

 

 「先程から親しい感じがするのですが、クロウさんとどういった関係なんですか?」

 

 「クロウ? んー、宿舎兵の時から知ってるよ。 当時はロザリーと並んで逸材って騒がれてたしね」

 

 「昔の話です」

 

 コーヒーを飲みながらクロウが答えた。

 

 「変な奴だろ。 腕はロザリーに劣らない癖にメイドしてるからね」

 

 「いい人です。 いつもお世話になっています」

 

 「おー、クロウ良かったね。 あの不愛想な奴にこんないい部下が二人もいるなんてアタシは嬉しいよ」

 

 「や、止めてください」

 

 珍しく赤くなるクロウを見ながらエルダは自分の事を褒められているように嬉しくなった。 エルダはふと、ザラを見ると、ザラはようやくケーキを口にしていた。 しかし目はリースを見つめている。

 

 そんなザラの視線に気づかない訳は無く、リースがザラに向かって口を開いた。

 

 「ザラはアタシの事が気になるみたいだねー」

 

 「え、あ、すいません」

 

 「いいよいいよ。 大方珍しい空気を感じたかな?」

 

 「は、はい。 その、違いはあるのですが似た空気の人を最近見たので」

 

 ザラの言葉にリースは口にしようとしていたケーキを戻し、鋭い目付きになる。 その瞬間、三人は何かに自分の命を鷲掴みされている感覚に陥った。 そんな中、四人を遠巻きに見つめていた周囲の客や店員は慌てて店から飛び出した。 一気に静かになった店内でリースが口を開く。

 

 「アタシに似た空気だって?」

 

 リースの言葉にエルダもザラも当然何も答えられない。 クロウでさえ汗を浮かべている。 丁度手にしていたカップも震え、コーヒーが零れても何の気にもならなかった。

 

 「どこで見た?」

 

 「せ、先日受付で」

 

 なんとかクロウが口を開くが上手く言葉が発せない。 だが、自分ではどうしようもなかった。

 

 「通したの?」

 

 「は、はい」

 

 「ふーん、まだロイヤルクラウンにいるの?」

 

 「しゅ、宿舎兵になったと・・・報告がありました」

 

 「名前は?」

 

 「ドヤ顔っていうことくらいしか・・・」

 

 「ドヤ顔? 変な名前。 まぁいいや、ところでクロウ。 あんたアタシがどういう奴か分かってるよね。 それで似たヤツを通したんだ?」

 

 「は、はい。 しかし、リース様とも違う空気です。 初めて見ます」

 

 「ふーん、で、試験官は?」

 

 「オリガ様が担当されたと・・・」

 

 「オリガー? アイツも通した訳? ふーん、成程ねー」

 

 そう言うとリースはケーキを口にし、何やら考えながら口を動かし、飲み込んだ後ニヤっと笑った。

 

 「ロザリーに呼ばれたって言ってたね。 アタシも付き合ってあげる」

 

 「えっ・・・しかし」

 

 「アタシに似たそいつを見てみたいしね。 もし“同族”なら仲良くしてあげたいでしょ」

 

 そう言いながらケーキを食べ始めたリースを見ながら三人はそれ以降口を開く事もなく何も喉に通らなかった。

 

 

 

 

 

 

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