ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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17話。 実はダリアは面倒見がいい。


ドヤ顔とダリア

 

 「リース様と錬磨する!?」

 

 「ドヤ顔ちゃん凄~い!」

 

 「ふふふ。 まぁ?私の実力を持ってすれば当然だけどね」

 

 部屋に戻り、ノーティスとエマに今後はリースさんと錬磨する事を伝えると二人は目を白黒させて驚いた。

 

 そりゃそうよね。 皆の憧れの幹部部隊長さんとマンツーマンの錬磨だなんて羨ましく仕方が無いわよね。 やっぱり“特別”な存在の私だからこそよね。

 

 「何がどうなってそうなったのよ」

 

 「だからー、私の実力を知ったリースさんが私を弟子にしたいって言ってきたのよ」

 

 「ありえないわ」

 

 「なんでよ。 あ、成程? 私がリースさんと錬磨するのが羨ましいんでしょ?」

 

 「当たり前でしょ! 幹部部隊長様が錬磨してくれる事なんて本来は絶対に無い事なんだから!」

 

 「ノーティスもエマも頼んであげましょうか?」

 

 「恐れ多すぎて無理よ!」

 

 「絶対に無理無理~! 話す事すらできないよ~」

 

 遠慮することないのに。 リースさんならいいよーって軽く返事してくれそうだけど。

 

 私は自分がトレブル(リース命名)って事は二人には言っていない。 リースさんが周りに言う事じゃないと言っていたから黙っている。 勿論リースさんがダブルだって事も話していない。

 

 「それにしてもいいな~ドヤ顔ちゃん。 あ~でも~リース様って自由奔放な方だからドヤ顔ちゃんも一緒に外に行くの~?」

 

 「うーん。 一応明日は朝からリースさんの部屋に来いって言われたから行くけど、暫くは此処で錬磨するんじゃないかしら」

 

 「何にせよ凄い事よ。 あなた、このチャンスを逃したらダメよ」

 

 ずいっと身を乗り出して私を見るノーティス。 そんなに羨ましいなら一緒に錬磨すればいいのに。 ほんと恥ずかしがり屋ね。

 

 「それより貴女、身体はもう大丈夫なの?」

 

 「あ、うん。 それは大丈夫。 旅してる時も結構怪我してたけど直ぐ治ってたし」

 

 「怪我が直ぐ治ったの? 変な身体してるのね。 それで? やっぱりあの時の記憶は無いの?」

 

 「うん。 全然。 ダリアを殺しかけたって聞いてけど、自分の身体よりそっちの方が心配よ」

 

 「凄かったんだよ~? ロザリー様の一撃も防いだんだよ~?」

 

 「全然覚えてないわ。 暗闇の中で何か暖かい感じと冷たい感じが混ざり合ってる感じがしたくらい」

 

 私の言葉にノーティスとエマは互いに目線を合わせると小さく頷いた。

 

 何よ二人してコソコソと。 どうせ調書取られた時に余計な事話すなとか言われてるんでしょうけど。 私も色々言われたし。

 

 「そういえばダリアが貴女に話があるらしいわよ」

 

 「ダリアが? 今は医務室なんでしょ?」

 

 「フレデリカが伝言に来てね~どうしても話したいんだって~」

 

 「なんだろう。 もしかしてまた嫌味かしら」

 

 「そんな感じではないみたいよ。 何にせよ貴女はダリアを殺しかけたんだから一度話すべきでもあるわ」

 

 「そう、よね。 私がやったんだもんね。 うん、行ってくる」

 

 「場所分からないよね~? 一緒に行こう~ノーティスちゃんも~」

 

 「私はいいわ。 部屋で戦闘シュミレーションの勉強でもしてるから」

 

 「そう? ならエマ、悪いけど案内お願いね」

 

 「うん~じゃ~行ってくるね~」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 エマと二人で部屋を出ると、二人で連れ立って廊下を歩き出す。 途中何人かの宿舎兵と会ったけど誰もが私達、というか私と顔を合わせずサッと端に避けていく。 ヒソヒソと私の事を言ってる声も聞こえて来る。

 

 そりゃそういう反応にもなるわよね。 覚えてはいないけど、ダリアを殺しかけたって事は事実な訳なんだし。 それにしても・・・。

 

 「いい気分しないわね」

 

 「仕方ないよ~」

 

 「そう、ね。 はー、本当ならファンが押し寄せてくる予定だったのに全くの逆になるなんてね」

 

 「リース様と錬磨するって言ったら集まってくるかも~」

 

 「それじゃ私の力じゃなくてリースさんの力じゃない。 それじゃダメなのよ。 私の力で皆を私のファンにしなきゃ意味ないんだから」

 

 「ふふふ~。 会った時のドヤ顔ちゃんのまんまで良かったよ~」

 

 「私は私でしょ。 変わらないわ」

 

 「でも~あの時のドヤ顔ちゃんは凄かったんだよ~。 凄く・・・怖かった」

 

 エマが呟くように言うと、歩く速度もそれに釣られて遅くなる。 

 

 私そんなに凄い事になっちゃってたのね。 記憶が無いといえ申し訳ない。 自分自身私がどういう人間なのかいまいち分かっていないんだし。 エマもノーティスも会って一日しか経ってなくて、他の三日は独房暮らしだったけどこんなに心配してくれてるなんて思ってもなかったな。 

 

 「ごめんなさいエマ」

 

 「何が?」

 

 「心配かけて」

 

 「ふふふ~。 ようやく聞けたよ~」

 

 「え?」

 

 「ノーティスちゃんも心配してたんだよ~。 折角同じ部屋になれたんだから私達は友達だし仲間だよね~。 友達に心配かけたら謝るのは一番最初にしなきゃだよ~」

 

 「ほんとそうね。 ありがとうエマ。 後でちゃんとノーティスにも謝ってお礼も言わなきゃ」

 

 「うん~。 あ~そこが医務室だよ~」

 

 ゆっくり歩いて来ていたが医務室は宿舎兵の居住区と同じ階にあり、階段を昇る事もなく到着した。 私は部屋の前で深呼吸するとノックした後に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 医務室の中は中央の通路を真ん中に、左右にベッドが規則正しく並んでいた。 ベッドの横には備え付けられたテーブルが置いてあり、水差しと薬草等が置いてある。 何人かベッドで横になっていたり同室の者であろう見舞い人と話をしている者もいる。

 

 結構怪我人って多いのね。 錬磨で自分の獲物を使ってるから当然かしらね。 えっと、ダリアは・・・。 いた。 一番奥にフレデリカと話してる。

 

 窓際の一番奥にいるダリアに向かってエマと近づくと、フレデリカがこちらに気づいてお辞儀をしてくる。 私も軽く会釈するとベッドで座るダリアの前に立った。

 

 「ダリア~身体は大丈夫~?」

 

 「貴女に心配される程の傷ではないわ」

 

 「ほんとに? 結構危なかったって聞いたわよ」

 

 「負かした相手の心配だなんて随分余裕ですこと」

 

 ぐっ、ほんとに嫌な女ね。 話があるからって言ってきたのはそっちなのに。 って、いけない。 元はと言えば私が原因な訳だし、こういう考えは良くないわよね。

 

 「そんなんじゃないわよ。 私の意思じゃないにせよ殺しかけたって聞いたし」

 

 「・・・フレデリカ、外してちょうだい」

 

 「はい。 エマさん、行きましょう」

 

 「うん~じゃ~フレデリカと行くね~」

 

 「うん。 ありがとうエマ」

 

 小さく手を振るエマに私はお礼を言うと再度ダリアに顔を向けた。 その時だった、ダリアは医務室から出ようとしているエマに声をかけた。

 

 「エマ! その・・・今まで御免なさい! 今度一緒に錬磨してあげるわよ!」

 

 ダリアのその言葉は医務室に響き、他の人も話を止め完全に此方に注目している。

 

 この女・・・。 可愛いとこあるじゃない。 顔も真っ赤だけどエマには私が壁になって見えてないわね。 あ、この女そこまで計算して言ったわね! もう、ずるい女ね。

 

 「うん~! お手柔らかにね~!」

 

 「ついてこれなかったら承知しないわよ!」

 

 「ふふふ~。 頑張るよ~!」

 

 そう言うとエマは嬉しそうに医務室を出る。 フレデリカも笑顔で共に医務室を出ると周りからヒソヒソと声が聞こえて来る。

 

 「聞いた? ダリアさんがエマに謝ったわよ」

 

 「それじゃーあの食堂のやり取りって本当だったんだ」

 

 「言ったでしょ。 でもあのダリアさんがねー・・・」

 

 等と此方を見てヒソヒソと声が漏れている。 真っ赤になったまま医療服のズボンをギュッと握るダリアを見て私は声をかけた。

 

 「可愛いとこあるじゃない」

 

 「貴女との賭けの結果でしょ!」

 

 「そうだったわね。 でも結構元気そうで安心したわ」

 

 私はそう言いながらテーブルと一緒に置かれた椅子に腰をかけるとダリアを見つめた。

 

 顔の赤さは大分取れたわね。 よし、まずは───。

 

 「ごめんなさい」

 

 「何故、貴女が謝る必要があるのかしら?」

 

 「あの時あんたを倒したのは私じゃない。 ううん、身体は私だけど中身は違ったと思う」

 

 「貴女二重人格なの?」

 

 「ちょっと違うと思う。 でもあれは私の実力じゃ───」

 

 「ふざけないでちょうだい。 どんな事情があったか知らないけど、あれは貴女で私は貴女に負けた。 例えそれが貴女の実力じゃなかったとしてもそれだけの事よ」

 

 「でも」

 

 「今度こそ本当にその顔を人前に出れない様にしてさしあげましょうか?」

 

 ダリアが私を睨みつける。 その目には本気の怒気を含んでいた。 

 

 なんてプライドの高さ。 いや、これはきっと自分の力への自信から来るものよね。 それが、入って来たばかりの新入りに負けたとあっては我慢がならないわよね。 私に対してじゃなく、自分自身に苛立っているのが分かるわ。

 

 それからお互い何も言わず、ただ視線を絡ませる時間が過ぎた。 どれくらい経ったか、ダリアは視線を外し、握りしめた自身の手を見つめて口を開いた。

 

 「悔しかった・・・」

 

 「・・・」

 

 「ずっと一人で錬磨してきて、メイドになれるって言われたけど私は部隊兵に、部隊長にそしていずれは幹部になるって決めて入隊したの」

 

 「うん」

 

 「それが昨日今日入隊した貴女に負けて。 私はこんな所で躓いている場合ではないのよ!」

 

 「あんたさ。 すっごい性格悪いよね」

 

 「っ!」

 

 顔を上げたダリアは唇を噛みしめながら睨みつける。 自分でも思う所があるのだろう、何も言わず睨む目には悲しみと怒りが織り交ざっている。

 

 「でも、悪い奴じゃない」

 

 「・・・」

 

 「あんたは人一倍プライドが高いのね。 あんたと模擬戦闘して分かったわ。 やろうと思えば一瞬で私を倒せたのにそうしなかった」

 

 「貴女がしつこいから・・・」

 

 「違うわね。 あんたは私に錬磨をつけてたんでしょ。 エマに突っかかるのも強くなってもらいたい気持ちから来てる愛情の裏返しでしょ」

 

 「違う! 私は本当にあの子が!」

 

 「違わないわよ。 初めはこんな嫌な女がなんでロイヤルクラウンにいるのかって思ったけど、でもあんたはあんたなりに他の子の事も考えてたんでしょ」

 

 自分の中にあった小さな気持ちを言い当てられたからか、ダリアは俯き何も言わずただズボンを握りしめていた。

 

 「でも、あのやり方じゃ敵を作るだけでしょ」

 

 「じゃない・・・」

 

 「何?」

 

 「仕方ないじゃない! 友達なんていなかったからどうすればいいのか分からなかったんだから!」

 

 ダリアの大きな言葉に周囲の人がまた此方に注目する。 

 

 こいつほんと・・・。 可愛いわね。 友達の作り方が分からないってどういう生き方してきたらこうなるのよ。 もしかしてお嬢様とか? なんか気品があるし可能性はあるかも。

 

 「フレデリカがいるじゃない」

 

 「フレデリカは付き人。 友達じゃない」

 

 「そう? 私から見たらフレデリカはあんたの友達に見えるけどね。 それに接し方を変えれば直ぐに出来るわよ」

 

 「接し方?」

 

 「そ。 とりあえず───」

 

 私は周囲を見ながら此方にを見ていた人に声をかけた。 友達の作り方なんて簡単よ。 

 

 「ねー、ダリアに聞きたい事あるって人いるー? 錬磨の事とかなんでもいいわよー?」

 

 「ちょっ・・・ちょっと!」

 

 私の腕を掴んで止めにくるダリアを無視し、私は更に続けて声を掛けた。

 

 「なんかないー?」

 

 「あ、じゃあ私いい?」

 

 「お、こっち来てー」

 

 おずおずと手を上げた子を此方に呼ぶと、その子はダリアに話しかけた。

 

 「ダリアさん、獲物は旋棍だよね? 実は私も同じ棍なんだけどちょっと躓いてて・・・良かったら教えて欲しいんだけど・・・」

 

 「え・・・あ・・・」

 

 「何どもってるのよ。 ほらほらあんたの得意の獲物の事聞いてきてるんだから答えてあげなさいよ。 あんた、宿舎兵の中でも一、二を争う強さなんでしょ?」

 

 「黙ってなさい! えっと・・・棍は二本持ちかしら?」

 

 「うん。 でも上手く扱えなくて。 威力が上がらないの」

 

 「今度見せて貰ってもいいかしら? もしかしたら互いの重さのバランスが悪いのかもしれないわ。 自分の筋力にあった重さにするだけで随分変わる筈だから」

 

 「右手と左手の棍の重さのバランス? でもそれなら直してるよ?」

 

 「そう。 なら旋風の速さが問題か・・・。 それなら───」

 

 やっぱり。 プライドが高いって事は人に教えたがり。 それに加えて元々面倒見はいい性格だ。 やり方を知らなかっただけで。 フレデリカはそれが分かっててダリアに付いて来てたのね。 

 

 「ねぇ、私も聞いていい?」

 

 「ダリアって話しにくい雰囲気あったけどそうでもないのかな? ついでにあたしも聞きたい事あるんだよねー」

 

 「私もいいですか? ダリアさん私達の中でも一番くらいの強さだしいろいろ聞きたかったんです」

 

 一人と話しているとゾロゾロとダリアの周りには人が集まってくる。

 

 皆聞きたかったけど聞けなかった訳ね。 色々な質問にもしっかり答えてるし、これなら心配ないかしらね。

 

 私はそこから気づかれない様に抜け出すと医務室を出ようとした。 その時、ダリアの声が響いた。

 

 「ちょっと! まだ話は・・・!」

 

 「また来るわよ“ダリア”。 しっかり答えてあげなさいよ」

 

 「・・・ありがとう」

 

 ダリアの呟きは私の耳には届かなかったが、気持ちだけが私の心に響いた。

 

 

 

 

 

 所変わり、南の国 辺境

 

 「逃げろー!! 魔物の軍だー! 早く教会へ急げ!!」

 

 「あんたらの出番だぞ! 高い金で雇ったんだ! 頼んだよ!」

 

 一つの村が魔物の群れに襲われ、人々が逃げ惑っていた。 そんな中、四人の傭兵達が魔物の群れに向かって駆けだして行く。 姿からして、それなりに修羅場をくぐってきたのか、一人一人に高い経験値が伺えた。

 

 「カルム! 俺達の出番だ! ロイヤルクラウンだけが傭兵じゃないって見せてやろう!」

 

 「ああ! 準備はいいな? エクシード! イザベラ! ボルクス!」

 

 「よっしゃー!」

 

 「任せて!」

 

 「おう」

 

 騎士の一人がそれぞれに指示をだし、素手で魔物と対峙する若者や巨大な体格に見合った鉄根を持った男、弓矢を構える女性達がそれぞれに連携を取って動き出した。

 

 そんな者達がいる事は初めから分かっているのか、魔族の女性が部下の魔物達へと号令をかけた。 隣に立つ魔族の男はそんな魔族の女性を黙って横目で見ているだけだった。

 

 【へえ、こんな村に結構な手練れがいるみたいー。 でも、一人も逃がしちゃダメだよー?】

 

 「ギギィ!」

 

 号令を受けた魔物達が数の暴力で襲い掛かっていった。 しかし、手練れの傭兵四人に手も足も出ず、途端に魔物達の数が減っていった。

 

 

 【ちょっとー、こんな村にどれだけ時間かかってるのよー】

 

 「先遣隊はやられましたな」

 

 【ま、空気からあんな下っ端の魔物じゃ相手にならない事は分かってたけどねー。  いい男もいるみたいだし、私がいっちゃおうかなー?】

 

 「またお遊びですか」

 

 【いいじゃないー。 男は美味しいからさー】

 

 「どうやら三人いるようですが?」

 

 【ンフフ。 好みの男はいるかなー? 行ってくるねー】

 

 「主のウィンクドレス様と同じでお遊びがお好きだなカリテス様は」

 

 

 

 

 「よし! この辺りの魔物は仕留めた! エクシード! イザベラ! そっちはどうだ!?」

 

 「こっちも殲滅した! コイツら大したことないぜ!」

 

 「私達の連携なら当然よ! このまま残りも一掃しましょう!」

 

 「ボルクス!」

 

 「今、終わった。 相手にならん」

 

 「いいぞ! 皆一度集まって───!」

 

 騎士が仲間を集めた時、四人の前に一人の魔族の女性が降り立った。 先程までの魔物達とは違い、禍々しい空気を醸し出している。

 

 【やってくれるねー。 少しは楽しめるかなー?】

 

 「っ! なんて空気・・・」

 

 「コイツがボスみたいだな」

 

 「一気にいくぞ!!」

 

 「ぬぁっ!」

 

 巨体の男がその手に持つ鉄根をカリテスに振り下ろしたのが開戦の合図となった。 四人の傭兵達は息のあったコンビネーションで攻め立てるが、カリテスはひらひらと交わし、その顔には笑みさえ浮かべていた。

 

 【おっーいいコンビネーションだねー】

 

 「クソ! 当たらねぇ!」

 

 「私が動きを止めるわ! その間に・・・あがっ! ・・・かふっ」

 

 傭兵の女性が弓を構えた瞬間、カリテスが首筋に牙を立てていた。 強烈な痛みと苦痛に悲鳴を上げた女性は、そのまま首筋を噛み千切られ、遂に事切れてしまった。

 

 【んー、ンフフ】

 

 「イ、イザベラ・・・!」

 

 【んーやっぱり女の肉は不味いー】

 

 カリテスが口の中でもごもごと肉片を転がすと、ペッと吐き出した。 そして、次に狙われたのは巨体の男。 男は魔族の女性と目が合った瞬間、鉄根を振り上げたが、気づいた時にはカリテスの腕が男の心臓を貫いていた。

 

 「お・・・あ・・・!」

 

 【お前は好みじゃないからー、いらないー】

 

 そのまま倒れ、動かなくなった巨体の男を見て、残された二人の内の一人は素手でカリテスへと向かった。 仲間をやられた怒りからか、その表情は鬼気迫る物があった。

 

 「うおぉ!!」

 

 「待てエクシード!! お前では・・・!」

 

 騎士が必死に声を掛けるが、若者の耳には届かない。 若者が力を込めて放った一撃がカリテスの顔面に直撃した。 しかし、カリテスは全くダメージを受けておらず、笑みを作り出すと、若者の首を鋭利な髪で刎ね飛ばし、噴き出た血を飲み始めた。

 

 【熱い男って好みじゃないんだよねーやっぱりイマイチー】

 

 「く・・・くそ・・・」

 

 残った騎士が剣を構えるが、恐怖からか、小さく震えているのが分かる。 そんな騎士を見て、カリテスは血濡れのまま笑みを浮かべた。

 

 【ンフフ。 あんたいい男だねー私の家来にしてあげようかー?】

 

 「ふざ・・・けるなぁ!!」

 

 騎士は意を決して攻め込んだが、切りつけたカリテスが残像の様に消えていった。 そして、騎士の背後に回り込むと愉快な声で口を開いた。

 

 【残念ーそっちは外れー】

 

 「ぐあっ!!」

 

 強烈な蹴りを繰り出し、騎士は民家に激突する。 衝撃で家屋が崩壊する中、カリテスが騎士の元に近づいてくると、座り込む騎士の前にしゃがみ込んだ。

 

 「うぐっ・・・く!」

 

 【まだ生きてるー?】

 

 「殺せ・・・だが村の者には手を、出すな」

 

 騎士は息も絶え絶えになりながらも、カリテスに向かって言葉を紡いだ。 魔族の者に懇願する等、あってはならない事だが、傭兵として、何としてでもこの村の者達だけでも守る。 それが騎士にとっての役目である。 己の恥等どうでも良かった。 

 

 【んーいい男の最後の言葉くらい聞きたいよねー。 お前達】

 

 「ギギッ?」

 

 カリテスが周りの魔物に声を掛けた。 それを見て、騎士は小さく笑みを浮かべると、己の首筋を差し出した。

 

 「言ってみるもの・・・だな。 俺の命で村の者達を・・・」

 

 【教会に大量の空気がある。 全員皆殺しにしろ。 女子供も一人残らずだ】

 

 「きさまっ・・・!!」

 

 カリテスの言葉に騎士が激昂したが、騎士が聞いた最後の言葉は無慈悲な物だった。

 

 

 

 【人間なんて餌に過ぎない】

 

 

 南の国のある村がまた一つ消えた。

 

 

 

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