ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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20話。 死人使いの恐ろしさ。


死人使い

 

 リースさんが私の錬磨を初めて三ヶ月が過ぎた。 当初、何度も気絶させられ、その度に水をぶっかけられてた私も今では何とか気絶する事なく、一日を終える事が出来るようになった。 それでも身体中バキバキで、錬磨を終えると泥の様に眠る私をノーティスとエマの二人は心配してくれていたけど、私は少しずつ自分の力が上がっているのを実感していたからそんな心配を他所に嬉しい気持ちで一杯だった。

 

 クイーンさんと総督のアルテアさんに会った時はアルテアさんからは精進するように言われ、クイーンさんはジッと私の事を見た後、リースさんに何か耳打ちした程度で、直接話した事はない。

 

 

 この三ヶ月で世界の情勢は変わって来てるとリースさんから聞かされた。 まず、北と南の大陸の国が次々に魔物の侵攻で落とされているという事。 小さな村からそこそこ大きな国まで侵攻され、今となっては北と南の大陸の人々が西の大陸に逃げ込んできている。

 

 

 西の大陸は東からやってくる魔物の侵攻を食い止めていたが、北と南の大陸が侵攻された場合、そちらからも魔物がやってくる為、ロイヤルクラウンではそちらの防衛にも人手を増やさないといけなくなってしまった。 現在は黄服以上のメイドも戦場に派遣する程人手が足りない。 早急にメイド及び部隊兵レベルへの底上げを必要とされていた。

 

 

 そんな中、宿舎兵に経験を積ませる為に部隊兵二名と成績上位の宿舎兵十名程が実際の実戦へと向かう事も増えてきている。 これは経験を積ませる事で少しでも早く宿舎兵からのレベルアップを目的としていた。

 

 

 

 「実戦兵に選ばれたの~? 今回は三人で行けるね~」

 

 「ふふふ。 まぁ、私なら当然よね。 リースさんからの許しも出たしね」

 

 「今回は私とエマも選ばれてるわ。 ロザリー様も“問題児部屋の三人が実戦兵になるとはな”って驚かれていたわよ」

 

 「問題児なんて失礼よね。 私達何も問題起こしてないじゃない」

 

 「貴女ねぇ。 入ってすぐダリアを殺しかけた人の台詞かしら?」

 

 「ぐ、それは言わないでよ。 それはそうとダリアも部隊兵かー。 先行かれちゃったわね」

 

 「ダリアはあなたを羨ましがってたけどね。 リース様と錬磨なんて羨ましいってね」

 

 「私もダリアちゃんと錬磨したけど~厳しかったけど楽しかったよ~もう気軽にダリアちゃんなんて言えないけど~」

 

 「ダリア様? いやーなんか嫌だわ。 ダリアって言えば、フレデリカはまだ部隊兵になれてないみたいだけど今回は実戦兵には選ばれてるの?」

 

 「いえ、前回の実戦兵に参加したから今回は行かないそうよ」

 

 「そっか。 久しぶりに話したかったんだけど」

 

 「喋りに行く訳じゃないのよ。 ほら、さっさと準備しなさい。 そろそろ集合時間よ」

 

 「三ヶ月経ってもあんたの母様は治らなかったわね」

 

 「うるさいわね! さっさとする!」

 

 私はノーティスに怒鳴られ渋々用意を始めた。 今回選ばれた実戦兵は私を含めて十二名。 この三ヶ月で沢山の仲間を得た私は初めて実戦兵として戦場に向かう事になった。 ノーティスは既に二回、エマは一回実戦兵として戦場に向かっていたが、二人共良い戦果は見られなかったようで、まだ部隊兵かメイドへの昇格は無い。

 

 「よし、準備出来たわ。 それじゃ行くわよ」

 

 「なんで最後に準備したあなたが仕切るのよ」

 

 「あはは~初めて三人での実戦だね~頑張ろうね~」

 

 三人で部屋を出ると、私達は集合場所へ向かった。

 

 

 

 

 「全員揃っているわね。 今回指揮する第八部隊部隊長のアリッサよ。 此方は部隊兵のミスト。 しんがりはミストが担当するわ。 貴女達は私についてきて」

 

 「「「「はい!」」」」

 

 「状況を説明するわね。 今回は大陸の移動は無し。 クローリアに向かうわ。 クローリアの村周辺で魔物が増えていると報告があり、私達はそこに蔓延る魔物の殲滅及び周辺の探索に入るわ。 急な魔物の襲撃も考えられる為、各々気を抜かない様に」

 

 「「「「はい!」」」」

 

 「それでは、進軍開始!」

 

 先を行くアリッサさんについていく私達はノーティスとエマと話しながら目的地へと向かった。

 

 やっぱりノーティスとエマがいてくれると楽しいわね。 他の皆と仲が悪い訳じゃないけれど、二人は同室だし、ついつい楽しくなっちゃうわ。

 

 「クローリアって三日くらいかかるわよね?」

 

 「そうね、然程遠くはないわね」

 

 「そんなとこに強い魔物っているのかしら」

 

 「正直あまりいないと思うわ。 私達の実戦勘を育成するものだからあまり遠くにも行かないし、とんでもない強さの魔物の所には行かない様にしてるのよ」

 

 「それなのに部隊長さんと部隊兵さんの二名も付けるの? なんか勿体無い気がするんだけど」

 

 「貴女も知ってるでしょ。 前は黄服メイドさんだったんだけど、かなり強い魔物と戦闘になって宿舎兵の人が何人か重症になってしまったって」

 

 「あ、聞いたわ。 そっか、それで万全を期してるのね」

 

 「ドヤ顔ちゃんの言う通り~今の世界情勢で部隊長さんと部隊兵さんを私達の育成に付けるのは勿体無いけど~総督が先の事を考えての事だって~」

 

 ふーん。 一度しか会って話した事ないからよく分からないけど、凄く優しそうで暖かい感じがしたからいい人だって分かるけど。 先の事を考えて・・・か。 そう言えばリースさんも私を錬磨するのも先の為の保険って言ってたわね。 

 

 「ほら、話してないで周りの警戒もする。 いつどこで魔物が襲ってくるかわからないぞ」

 

 しんがりのミストさんが咎めると、私達は肩を竦めて辺りの警戒をしながら先に進んだ。

 

 私此処まで旅してきたからそれなりに経験はあるんだけどね。 でも、久しぶりの外だし、少しワクワクするわね。

 

 

 進軍は順調に進み、三日目の朝。 雨が降る中野営から出発し、半日程で目的地であるクローリアの村に到着した。

 

 因みに、野営中の食事は持ち回りで行われ、二日目の夜は私とノーティスが担当だった。 私は一人旅の経験からそれなりに料理も出来たから少しは自信があったけどノーティスの腕は凄かった。 プロ顔負けと言わんばかりの料理にアリッサさんもミストさんも、他の宿舎兵の皆も手放しに褒めていた。 褒められたノーティスは赤くなりながら恥ずかしがっていた。 

 

 因みにエマは料理は全くダメらしく、野菜を切るのすら上手く出来ない程だ。

 

 そんなこんなで私達は大きな戦闘も無く、クローリアの村へと到着した。 今は部隊長のアリッサさんが村の村長と話をしているのを待っている。

 

 

 「よし。 村長との話は終わったわ。 此処までは大した魔物の襲撃も無かったけど、周辺の空気からしてあの山中に魔物の気配が強いわね。 これより殲滅に向かうわ。 ここからは各自警戒を更に強めて」

 

 「「「「はい!」」」」

 

 

 いよいよ魔物の討伐に向かう私達を村の人々が見送る。 私達を応援する小さな子達に手を振り返した私は気合を入れて山中に向かった。

 

 

 

 

 

 山中の魔物は大したことは無かった。 見た事ない魔物でも私達でも倒せる程で、部隊長と部隊兵がいる状態で私達は負けようが無かった。 私もリースさんに錬磨された事を生かし、それなりに魔物を狩り、アリッサさんに一時的に指揮を任せられたノーティスも周囲の仲間へ的確な指示を出し、エマは即席で作った武器を仲間に渡してサポートしていた。

 

 殲滅が完了すると、私達はアリッサさんとミストさん以外警戒を無くし山を降りた。 村であの子供達の笑顔が見れる筈だった。 あの、忌まわしい事が無ければ。

 

 私達が村に向かう途中、アリッサさんとミストさんが急に立ち止まった。 

 

 「何・・・あの空気」

 

 「アリッサ様。 これは・・・」

 

 「ミスト。 後をお願い。 私が行くわ」

 

 「・・・分かりました。 皆此処から動くな! 空気を消せるものは出来るだけ消せ!」

 

 ミストさんの声が掛かると、私達は一斉に身を落とし、気配を消す。 そんな中アリッサさんは一人村へと走った。 私には消えた様にしか見えなかったけど。

 

 「どうしたのかな~?」

 

 「分からないわ。 でも村で何かあったのかもしれない」

 

 「何かって?」

 

 「分からないって言ってるでしょう。 兎に角ミスト様の言う通り此処で待機よ」

 

 瞬間、村の方から轟音が響く。 その音を聞いて舌打ちしたミストさんは一度私達の方を振り返るとノーティスに視線を送った。

 

 「ノーティス! 宿舎兵の指揮を取れ! 全員を裏のルートから逃がせ! 北に二日走れば近隣の村がある! そこでロイヤルクラウンへの援護を要請させろ!」

 

 ミストさんは苦々しくそう言うとその場から消えた。 村の方から更に轟音が響いてくる。 誰かが戦っている。 十中八九アリッサさんだと予感した私はノーティスに声を掛けた。

 

 「どうするのよ!」

 

 「全員撤退よ! 裏のルートから抜けるわ! ついてきて!」

 

 先頭に立ち、走りかけたノーティスを私が引き留めた。

 

 「撤退ってアリッサさんとミストさんはどうするのよ!」

 

 「ミスト様の命令よ! それに私達じゃどうしようも無いくらいわかるでしょう!?」

 

 「だからって逃げる訳!? そんな事出来ないわ!」

 

 言い合う私とノーティスに、エマが真剣な眼差しで口を挟んだ。

 

 「ドヤ顔ちゃん。 今は逃げるべきだよ。 アリッサ様とミスト様が敵を抑えてくれてる。 戦場では生き残る事を一番に考えなきゃ駄目なんだよ」

 

 エマの言葉に私はハッとする。 リースさんからも言われていた。 どんな時も自身の命を一番に考えろと。 例えみっともなくても良い。 それでも生き残る事を考えろと何度も言われていた。

 

 〈今の指揮官はノーティスでしょ? 命令違反は出来ないし〉

 

 〈ミストさんの焦り様から私達じゃどうにもできないよ。 行こうよ〉

 

 〈リース様との錬磨をしたあなたでも無理だと思うわ。 エマの言う通り生き残らなきゃ!〉

 

 他の宿舎兵からも撤退に賛成の意見が出る。 私は一度村の方に振り返ると、唇を噛みしめてゆっくり頷いた。

 

 

 悔しい。私がもっと強かったら何が起こってるのか分かるのに。 私も一緒に戦えるのに。

 

 

 

 雨の中走り続ける私達は森の山の麓にある森の中にいた。 少しでも魔物から姿を隠せる様にだ。 山を大きく迂回して行くため、時間は掛かるが安全策を取っての行動だった。 これもノーティスの指揮の元行っている。

 

 どれ程走ったか、皆の息が切れ始めた頃、先頭を走るノーティスがピタリと動きを止めた。 それに釣られて後ろを走る集団も足を止めた。

 

 「ふう・・・どうしたのよ」

 

 「少し・・・ハァハァ、ペースを落としましょう」

 

 「落とす!? 直ぐに援護要請をしないとアリッサさんとミストさんが!」

 

 「分かっているわ。 でも、そろそろ皆スタミナにバラツキが出始める。 此処で離れたら状況は悪くなるわ」

 

 「それはそうだけど・・・」

 

 私は横にいるエマを見下ろしながら息を整えていく。 エマは膝に手を当て荒い呼吸を整えていた。 見渡すとまだスタミナに余裕のある者からかなりきつそうにしている者もいる。 宿舎兵となればまだまだ錬磨も足りない。 個人のバラツキが大きいのも当然だった。

 

 ノーティスの言う通り、ね。 皆結構疲れてるし、此処で無理しても逆に次の村まで到着が遅れるかも。

 

 「分かったわ。 少しペースを落としたがいいわね」

 

 「ええ、五分休憩! 各自離れないでその場で休みを取って!」

 

 ノーティスの言葉に各々が座り込み、休憩を取る。 そんな中私は立ったまま辺りの警戒を行った。 先見眼が無いため目と耳に頼ることになるが、そういうやり方をリースさんに教わっている。

 

 「ドヤ顔ちゃん・・・凄い・・・疲れてないの?」

 

 「疲れてるわよ。 でもリース様の錬磨で鍛えられたからね。 まだまだいけるわ」

 

 「ただのバカから体力バカに格上げね」

 

 「うるさいわね。 ま、辺りの警戒は私に任せて───」

 

 その時、雨で更に暗い森の奥から何かがやってくる音を聞いた私は“相棒”を手に暗闇の先に構えた。

 

 暗闇から現れたのは、一目見ただけで分かる程生気が感じられない女性だった。

 

 

 

 

 「ごめんなさい。 驚かせてしまって」

 

 「・・・」

 

 「ごめんなさい。 これあなた達の仲間でしょう? 届けて上げなくてはと思って」

 

 そういって女性は手に持っていた物を私の前に放り投げた。 それは頭だけとなった見知った二人の頭だった。

 

 「アリッ・・・ミス・・・ト・・・さん」

 

 〈そんな・・・〉

 

 〈いやぁ!!〉

 

 先程まで一緒に魔物と戦い、褒められ、三日間という短い時間の中でも共に戦ってきた仲間の死を間近に見た私は、その女性に憎悪の感情を抱き睨みつけた。

 

 「ごめんなさい。 そんな顔しないで」

 

 「お前ェ!!!!」

 

 怒りに任せ、私が走り出す瞬間、女性から邪悪な威圧を感じた。 吐き気さえ起らないものの、強烈な死への圧に私は一歩も動けなかった。

 

 

 ヤバイ・・・この女ヤバイ!! 身体の震えが止まらない。 嫌だ、この女から一秒でも早く離れたい。 でも、離れる事さえできない。 

 

 

 

 ───ダメダ ワタシハココデシヌ

 

 

 

 そんな中、女からの威圧が収まった。 その時、私の周りを暖かい何かが包み込んだ気がした。 私は、少し体が動かせるようになった際、何とか仲間の状況を見えようとゆっくりと振り返ったが、そこには同じく恐怖で動けない者や中には失禁している者もいた。

 

 「ごめんなさい。 どうしてもこの子達があなた達と遊びたいって言っているの」

 

 「何の・・・こと───」

 

 

 

 “メイク・ザ・アンデッド”

 

 

 女性がそう呟き、禍々しい剣を地面に突き刺すと、地面からモコモコと何かが這い出て来る。 人間の様に見える“それ”の姿は姿は悍ましく、身体は腐り落ち、周囲に悪臭を放っていた。 明らかに知性が無い様に見えるが、女の傍から離れない様子から服従の姿が伺えた。

 

 【ヴヴァヴァ】

 

 【ヴァレリ・・・アーナ ザマァ・・・ガンジャジマズゥ】

 

 「ひっ・・・」

 

 何なのよこいつ等・・・まさか死人!? 死人を召喚した訳!? 

 

 誰かの息を飲む音が聞こえる。 こんな悍ましいもの見た事が無かった。 

 

 女性が更にブツブツと何か呟くと、死人共は私達を取り囲む様に動き出す。 死人の癖に素早い奴もいる。 気づくと何人かの仲間も立ち上がり武器を構えている。

 

 あの女、威圧を解いたわね。 こいつ等が遊びたいって事はワザとね。 兎に角こいつ等をどうにかしないと───。

 

 「ノーティス!!」

 

 「皆円を組んで敵に当たるわ! 互いに背中を守るのよ! エマ! あなたは円の中からサポートをお願い!」

 

 「や、やってみるよ!」

 

 それぞれ正面の死人に武器を構える私達は一斉に襲い掛かる死人達に立ち向かった。

 

 

 「ごめんなさい。 此処で死する事を悲しまないで。 私が直ぐに迷える命を救ってあげるから」

 

 

 

 

 

 

 

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