ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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3話です。 ドヤ顔、頑張ります。


ドヤ顔、試験を受ける

 

 

「何?」

 

「ダロです。 ダロの村から来たんです」

 

「ダロの村。 ボルム山脈?」

 

「はい! 凄い辺境なんですけど、足には自信があったので!」

 

「一月駆けてロイヤルクラウンへ?」

 

「はい! 途中魔物や盗賊と一戦交えたりしましたけど、この“相棒”と乗り越えて来たんです」

 

「そう」

 

 背中の“相棒”を担ぎ直しながらドヤ顔で語るのは私。 

 

 今、私がいるのは石造りの建物の前。 女性門兵さんについていった先は庭園だったんだけど、城の庭園の凄かった事。 街にあった程の大きさはなかったけど、立派な噴水もあったし、生垣に花壇に色とりどりの花達! それを世話する黄服のメイドさん達! なんかもう幻想的すぎて眩しかったわ。 ボケーとそんな光景を見てたら女性門兵に声をかけられたからついて行った先がこの建物の前。

 

 女性門兵さんが建物前にいた赤服メイドさんに、私のカードを手渡すと、赤服メイドさんは一礼し、別の建物に入って行った。 そんなこんなで待ち時間に女性門兵さんと話をしてたって訳。

 

「それにしても凄い広さですね。 ここも凄い大きさ」

 

「錬磨場。 普段錬磨を行う。 今回の試験場」

 

「こんな凄い所で試験するんですね。 ちょっとワクワクしてきました!」

 

「・・・」

 

 試験会場も大きいし、ここに来る間の道も綺麗だし目の保養になるわね。 ほんと言うことなし! やっぱりあれかしら、私みたいな実力者だと、其処辺で試験って訳にもいかないのね。 わざわざ私の為に錬磨場を貸し切りにするんだし、強いって罪ね。

 

 ドヤ顔になりうんうんと頷く私を見ていた女性門兵さんは、いつの間にか現れた赤服メイドさんと話をしている。 

 

 もう驚かないわよ。 あの赤服メイド(ザラ)さんはメイド長ね。 つまりロイヤルクラウンの最高戦力ってやつね。 赤服メイドさん達と橋での重圧からこの女性門兵さんに勝つのはちょっと先延ばしかな。 門兵って言ったら一番大事な守衛場だものね。 そりゃあ最高戦力で守る物だしね、うん。

 

 

 そんな私を一瞥すると、女性門兵さんは建物の中に入って行った。 私も慌ててその後に続いた。

 

 

 「なんでドヤ顔・・・?」

 

 

 残った赤服メイドは首を傾げながらそう呟いた。

 

 

 

 

 薄暗い通路を女性門兵さんの後について行く私。 

 

 暗っ。 でも先に小さな光が見える。 あの先で試験が始まるのね。 試験官が誰か判らないけど、私の実力なら赤服メイドさんとか、この女性門兵さんみたいな最高戦力じゃないなら合格間違いなし! さしずめこの道はこれから誕生する私という英雄の道ね。 ちょっと暗いけど・・・。  

 

「うわ・・・すっごい」

 

 暗い道から明るい開けた空間に出た私の目に飛び込んだのは、高い壁に阻まれた広い石造りの舞台と、とんでもない数の観客席だった。

 

 いやいや、どんだけの大きさよ! っていうか天井はないのね? 空が青いわねー。 じゃなくて! あの観客席の数、数千近くあるんじゃない!? ロイヤルクラウンって選ばれた者が集まる精鋭団って聞いていたけどそんなに人がいるのかしら? 

 

 困惑しながら辺りを見回していた私の耳に、ドンッという音が届く。 音の方へ目を向けると、いつの間にか舞台に上がっていた女性門兵さんが戦斧の柄尻を舞台の上に落としていた。 衝撃で柄尻を落とした舞台にはヒビが入っていた。

 

「え・・・あの、試験官さんはどこに?」

 

「私」

 

「へ?」

 

「私」

 

 それだけ言うと、女性門兵さんは戦斧をグルリと回転させ、握り直した。 いや、恐らくそうしたと思う。

 

 余りの速さに手の動きが全く見えないんだけど? 何より戦斧を振り回しただけで突風が吹くってどういう事よ? 筋力がおかしいんじゃない?

 

「えーと・・・あなたが試験官ですか?」

 

「そう。 オリガ」

 

「オリガ?」

 

「名前」

 

「あ、オリガさんって言うんですね。 私は───」

 

「ドヤ顔」

 

「へ?」

 

「ドヤ顔。 此処へ」

 

「いや、私はドヤ顔じゃなくてですね───」

 

「此処へ」

 

 会話にならない! なんでよ! さっきまである程度普通に会話してたじゃない! 試験官なんだから此処から先は私情抜きって事!?  それでもなんとか時間を稼いで・・・その間に策を練らないと!

 

「私の名前なんですけど・・・」

 

「此処へ」

 

 先程より少し強い口調で言われた私は、策を練る間も無くトボトボと舞台に上がる。 舞台に上がった私は冷や汗が止まらず内心涙目になった。

 

 なんでこーなるのよ! 私が何をしたっていうのよ! こんな化け物と試験とかありえないんだけど!? 私が最高戦力に勝てる訳ないでしょうが!

 

「試験開始」

 

「え、ちょ・・・待ってください!」

 

「何?」

 

「えっと・・・そのー・・・ご、合否判定は何ですか!?」

 

「一撃当てる」

 

「オリガさんにですか?」

 

「そう」

 

「私が?」

 

「そう」

 

「・・・」

 

「試験開始」

 

「待ってください!」

 

「何?」

 

「そのー・・・お祈り! お祈りの時間を下さい!」

 

「祈り?」

 

「はい! 私、戦闘前にはお祈りをしてから戦うんです!」

 

「それ、戦場では死ぬ」

 

「わかっています! でも今回は憧れのロイヤルクラウンの試験なんです! お祈りしてからでもいいですか!?」

 

「・・・」

 

「お願いします!」

 

「早く済ませて」

 

「ありがとうございます!」

 

 私の訳の分からない言い訳に、オリガさんは握り直した戦斧の柄尻を呆れながらな感情を込めてドンッと舞台に落とした。 オリガさんのそんな姿を見て、私は荷物を漁る。 漁っても試験に使えそうな物が無い事は分かっている。でも───。

 

 

 冗談じゃない!! 橋のとこの重圧は普通の人間なら白目向いて倒れるわよ! あの赤メイド長(ザラ)さんですら橋には足を踏み入れて無かったからね! それだけヤバイって事でしょう!? 私だったからあの程度で済んだけど! それに何よあの風は! 戦斧を振り回したら突風が起きる!? 普通の人間なら錬磨場の外まで吹き飛ばされてるわよ! 私だったからなんとか耐えれたけど!

 

 

 涙目になりながらゴソゴソと荷物を漁っていた私だったが、強烈な視線を感じると、恐る恐るその視線に目を向けた。 兜で顔は見えないけど、分かる。 絶対睨んでいる。

 

「・・・」

 

 ああ、私の夢はここで潰えるのね。 お爺ちゃんごめんなさい。 私ロイヤルクラウンに入れなかったよ。 村の皆ごめんね。 期待してくれたのに応えられそうになくて。 天国の母様ごめんなさい。 不出来な娘でした。

 

 

 ・・・っていうか・・・

 

 

 

 大体なんであの門兵さんが試験官なのよ! 最高戦力が試験官なんてズルくない!? 

 

 

 あんな化け物相手にどうやって一撃当てろと!? 最初っから合格させる気なんてないんじゃないの!? あの赤服メイドさんも他のメイドさん達も私の強さ(凸凹コンビ戦)は見ていた筈でしょ!? 試験免除でもおかしくないよね!? 私の強さを───。

 

 

 ん・・・? 私の強さを見ていた? 待って待って。 確か凸凹コンビを倒した後に周りからも私のファン(勘違い)から歓声が上がっていたよね? それにあの時チラッと見たけど、黒服メイドさんも紺服メイドさんも口に笑みを浮かべてたよね? それはつまり・・・

 

 

 私が強すぎて感動してたってこと!? そして余りの強さに最高戦力の方くらいしか試験できないって事!? ・・・フッ。 そういう事ね・・・成程? それならば納得だわ。 つまりこの試験は仮に一撃当てれなくても私の強さは分かっているので無条件に合格ですよって事ね。 なーんだ、それなら合点がいくわ。 

 

 

 涙目だった私は己を納得させると、ドヤ顔でオリガさんと対峙した。

 

「ありがとうございました! 始めましょう!」

 

「・・・」

 

 私は“相棒”を鞘ごと放り投げ、柄頭に付いた紐を引っ張り長刀を抜く。 長刀を左手に持ち、落ちてきた鞘を右手に受け取り、再度背負い直す。 

 

 

 

「試験開始」

 

「行きます!」

 

 私は自分を鼓舞し、勢いよくオリガさんに向かっていった。

 

 

 

 

 

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