ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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 一方的な蹂躙。  プラムベティの当初の思惑ではそうなると思っていた。  しかし、その思惑は打ち砕かれた。  レディを筆頭に、オリガ、イディスと幹部の部隊長には劣るが、三人を相手にするのは骨が折れた。

 

 

 (驚きましたね。  私に此処まで追いすがってくるとは・・・)

 

 

 「くらえっ!」

 

 

 三人と戦闘を行うプラムベティにノーティスがナイフを投げつける。  しかし、そのナイフはプラムベティに当たる前に焼け爛れ、溶けてしまった。  これで通算十五回目の攻撃は、またしても意味の無いものになった。

 

 

 (あの娘のナイフは何も気にする必要はない。  問題は───)

 

 

 「レディ(さん)!」

 

 

 「分かってる、よ!」

 

 

 (この三人。  一人一人は私の力に及ばない。  しかし、上手く連携を図る事で何倍もの力を出している。  これが、人間の強さ、というものですか)

 

 

 オリガとイディスが対峙していたプラムベティの前から姿を消すと、上空から降って来たレディがその金棒を振り下ろした。  しかし、プラムベティは頭上で腕をクロスさせ、両手で受け止めると、身体から発した火球を作り出し、レディへと放った。  当然、レディの金棒を受け止めた際、プラムベティの足が大地にめり込み、周囲にクレータを作り出していた。

 

 

 「はぁはぁ・・・危ない危ない」

 

 

 火球を躱し、大きく距離をとるレディの傍にオリガとイディスが立った。  歴戦の三人が息を切らしている所からして、相手の強さを物語っていた。

 

 

 「外れましたね。  残念です」

 

 

 プラムベティはいくつもの火球を周りに浮かび上がらせ、レディの金棒を受け止めた際の手の痺れを感じながら視線を三人に向けた。

 

 

 (あの距離で躱した。  それにこの力の強さ。  情報通り、幹部級に匹敵する強さを持っている。  オリガとイディスはそこから一段下、といった所でしょうか)

 

 

 「はっー・・・ふぅ。  レディさん、分かっているとは思いますけど、あれに一発でも当たったら丸焼きですからね」

 

 

 「丸焼きで済まない」

 

 

 「あんなのくらったら溶けて無くなるよ」

 

 

 (この火球の威力も目算で測れますか。  “本気”を出して一気にカタをつけてもいいですが・・・。  しかし、実に惜しい。  この力、上手く使えれば“馬鹿共”を始末するのに使えるのですが)

 

 

 再度、三人はそれぞれに散った。  オリガとイディスは上手く連携を図りながら、一撃必殺を狙うレディに合わせながら武器を振るった。  悉く防がれ、躱されてはいるが、それでも攻撃する手を休める事は無かった。

 

 

 (仕方が無いですね。  流石に私が出張って来て誰も殺せないとなると、お姉様の不信感も募るでしょうからね。  人間の性、というものを利用させてもらいましょう。  さて、誰が“犠牲になるでしょうか”)

 

 

 一瞬、動きが止まったプラムベティをレディの金棒は見逃さなかった。  叩きつぶされたと思われたプラムベティだったが、その姿は幻炎と化し、レディの一撃は空振りに終わった。

 

 

 「!!」

 

 

 「しまった・・・!」

 

 

 「ノーティス!」

 

 

 散り散りになった炎がノーティスに迫りながらプラムベティの姿を作り出していく。  そして、ノーティスに対して、炎を帯びた突きを放った。  そんな一瞬の出来事にノーティスは全く反応も、視認する事も出来ていなかった。

 

 

 

 

 

 

 ノーティスが気づいた時、自分の目の前に白銀の鎧が立った。  炎を纏った突きは、白銀の鎧を貫き、イディスの身体を赤く染めた。  イディスから飛び散った血が、ノーティスの顔を叩いたが、一瞬の出来事に、ノーティスは目を瞑る事も、逸らす事も出来なかった。

 

 

 「貴女でしたか。  そう、貴方達の誰かは必ず“そういった行動をする”と思っていました」

 

 

 「ごぶっ・・・!!  だ、だから・・・逃げなさいって・・・言ったでしょ・・・」

 

 

 「イディスー!!」

 

 

 オリガの叫びが響いた。  ノーティスはその叫びを聞き、我に返ると、自分を守る為に盾となったイディスへと震える手を向けた。

 

 

 「イ、イディス・・・様」

 

 

 「次は、貴女です。  っ!?  腕が・・・!」

 

 

 プラムベティが腕を引き抜こうと力を込めた時、自身の腕が動かない事に驚愕した。  イディスはプラムベティの炎の突きで身体を貫かれ、傷跡を地獄の業火に焼かれながらもプラムベティの腕を掴んでいた。

 

 

 「・・・ない・・・はなさ・・・ない」

 

 

 業火に焼かれながらも、最早、生きる事を選ばなかったイディスは、その手に全ての力を込めた。  そんな、自身の命を懸けたイディスの執念の目を見たプラムベティは大きく目を見開いた。

 

 

 (これが、覚悟を決めた者の目、ですか。  お見事、ですね)

 

 

 「っぐあ・・・!」

 

 

 瞬間、プラムベティの視覚外から金棒が直撃した。  プラムベティは咄嗟に残った腕で金棒を防いだが、凄まじい破壊力に片手では流石に耐えきれなかった。  バキッボキッという鈍い音がすると、プラムベティは岩山を破壊しながら吹き飛んだ。

 

 

 「イディス!!  目を開けろ!」

 

 

 「姉さん・・・。  もう・・・無理よ。  感覚が、無い・・・もの」

 

 

 「駄目だイディス!!  駄目だー!!」

 

 

 倒れるイディスを抱き起おこしたオリガが必死に声を掛けた。  身体の中でも重要な臓器が丸ごと焼き焦げたイディスは、傍から見ても助からない事が分かっていた。  オリガ自身もそんな事は頭では分かっている。  しかし、それでも必死に助けようと傷跡に手を当て、叫び続けた。  そんな二人へノーティスが震えながら近づいて行く。

 

 

 「イディス様・・・何故、何故私なんかを・・・!」

 

 

 唇を噛みしめ、涙を流しながら振り絞ったノーティスの声に、イディスは笑みを浮かべながら静かに答えた。

 

 

 

 「ノー・・・ティス。  強く・・・なりな、さい。  あ、と、ドヤ顔に・・・謝って、おい・・・て」

 

 

 「何を・・・ですか」

 

 

 「れん・・・ま。  みて・・・あげ・・・ごめ・・・」

 

 

 その言葉を最後に、イディスの命が終わった。  最愛の妹を亡くしたオリガはイディスを強く抱きしめた。  その目には涙は無い。  震える様に、それでも強く抱きしめたオリガはソッとイディスを横に倒すと、戦斧を手に、仇敵の方へ目を向け、口を開いた。

 

 

 

 「レディ。  ノーティス。  お前達はロイヤルクラウンへ行け」

 

 

 「一人で相手するの?  無理だよ。  僕も、残る」

 

 

 「いいから行け。  今のノーティス一人ではまともに走る事も出来ない」

 

 

 「イディス様・・・うっ・・・うああ・・・!」

 

 

 泣きながらイディスの顔に触れていたノーティスを見て、レディが溜息をついた。  ノーティスと口を聞き始めて、言っていた事を思い出す。  イディスとオリガにはロザリーと同じ位に扱かれた、と。  イディスとオリガはノーティスやエマ、他の者達の錬磨を見てやっていた。  互いに錬磨をし、偶に寝食を共にした者との別れ程、辛い物は無い。  レディもそんな経験があるのか、何も言わず、ノーティスの腕を引っ張り立ち上がらせると、オリガへと振り向いた。

 

 

 「君も、覚悟の上だよね」

 

 

 「行け」

 

 

 「うん。  “オリガ”“イディス”。  ありがとう」

 

 

 「お前の尻拭いは慣れている。  レディ。  後は、頼む」

 

 

 レディの言葉にオリガはそう言うと、戦斧を構えた。  ただならぬ空気と、その後ろ姿から、オリガはもう、ロイヤルクラウンへと戻る事は無いと、レディは確信した。  今までも、いくつか見てきた姿。  死の覚悟をした者の、本物の覚悟。

 

 

 レディはノーティスを背負うと、その場から姿を消した。

 

 

 (二人共、いつも一人の僕に根気強く話しかけてくれたね。  もっと、話しておけば良かったよ。  最後まで、迷惑かけちゃった・・・な)

 

 

 

 

 

 

 「つぅ・・・!  流石に効きますね。  はあ、左腕は駄目ですか」

 

 

 崩落した岩を炎で溶かすと、プラムベティが姿を現した。  レディの一撃を受け止めた左腕をプラプラと動かすと、腕としての役割を果たしていない事に気づき、軽く息をついた。  そして、彼方へと目凝らした。

 

 

 (二人は・・・逃げてますね。  残った一人は私の足止めを担ったという訳ですか)

 

 

 心の中でそんな一人言を言いながら歩くプラムベティの傍に、一匹の魔族が現れた。  羽と角を生やし、魔族らしい魔族の女がプラムベティへと声を掛けた。

 

 

 「キシシ。  プラムベティ様、苦戦なさってますね。  お怪我までされているとは」

 

 

 下品な笑い声を上げながら話す魔族に、プラムベティは目もくれず、オリガの元に歩みを止めなかった。

 

 

 「怪我の内に入りません。  下がっていてください」

 

 

 「キシ、キシシ。  えーえー、下がっていますとも。  私じゃあの女には勝てませんから。  私は殺した後のお零れを貰えればそれで。  灰にはしないで下さいよ。  キシシ」

 

 

 虫唾が走る声でそう言った魔族は、姿を消した。  そんな魔族に対してか否か、プラムベティは切った口から血をペッと吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 「貴女は逃げずに私の足止めですか?  あまり、感心しない作戦ですね。  私を一人で止められるとでも?」

 

 

 「お前は、私が殺す」

 

 

 「良い目ですね。  仲間をやられた敵討ち、といった所でしょうか」

 

 

 「姉妹、だ」

 

 

 「道理で似ていると思いました。  それは、お辛いでしょうね」

 

 

 他人事の様に話すプラムベティに、オリガは殺意の目を向けた。  そんな悍ましい空気を浴びながら、プラムベティは口を開いた。

 

 

 「貴女まで殺したくはありません。  どうか、退いてもらえないでしょうか」

 

 

 「そんな、事・・・出来ると思うか」

 

 

 オリガが握る戦斧に力が込められていくのが分かる。  オリガの答えに、一度目を閉じたプラムベティは、ゆっくりと目を開いた。

 

 

 「残念です。  ならば、死んで頂きましょう」

 

 

 「死ぬのは、お前だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私を相手に、一人で良くやったと思います」

 

 

 「ひゅー・・・ひゅー・・・ぐっ・・・」

 

 

 平地には、プラムベティが発した炎が所々に燃え盛っていた。  しかし、寝かされていたイディスの周囲だけには炎の一つも上がっていなかった。  プラムベティが意識してそうしたのかは、対峙するオリガにも分からなかった。 

 

 

 首を掴まれ、持ち上げられたオリガには、もう既に反撃をする力も残ってはいなかった。  今まで、共に死線を潜り抜けてきた戦斧も、へし折られ、刃の部分は溶けてしまっていた。

 

 

 (成程。  人間というのはその時の感情で大きく力が変わる様ですね。  私が手負いとはいえ、あの二人が逃げる時間を稼ぐとは思いませんでした)

 

 

 「・・・す」

 

 

 「はい?」

 

 

 「お前・・・は・・・殺・・・す」

 

 

 血塗れになりながらも、オリガは殺意の目をプラムベティに向けた。  その目を見た時、プラムベティは柄にもなくゾクリと寒気を覚えた。

 

 

 「惜しい、ですね。  果ては最上なる戦士になれたでしょう」

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

 プラムベティがオリガを地面に仰向けに落とすと、オリガはその顔を寝かされていたイディスへと向けた。  霞む目には、確かに最愛なる妹が映っていた。

 

 

 (イディス・・・。  すまない。  あの娘との・・・約束、守れなかった)

 

 

 「・・・」

 

 

 そんなオリガとイディスを見て、プラムベティは何も言わず、炎を宿した右腕を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 「キシシ。  終わった様ですね。  流石は三美凶」

 

 

 下品な笑い声を上げながら近づいて来る魔族に対して、プラムベティは止めを刺したオリガの上に立ち、その最後をジッと見つめていた。  プラムベティの表情は、オリガへと俯き、黒髪に隠れて見えなかった。 

 

 

 「これ程の腕の者、それも二匹。  キシシ。  これは食いでがありそうだ」

 

 

 何も反応しないプラムベティを他所に、魔族がオリガへと手を伸ばした瞬間だった。

 

 

  「ぷがっ!!」

 

 

 プラムベティが魔族の顔を掴むと鬼の形相で口を開いた。

 

 

 「この者達に、触るな。  下衆」

 

 

 「ぎっ・・・!  な、何を・・・!」

 

 

 プラムベティの怒りは凄まじく、手から発する炎は燃え盛る赤から、全てを“破壊”する青へと変わった。  一瞬の内に灰と化した魔族に目めくれず、プラムベティは周囲の炎を操り、消滅させた。  そして、高温と化した周囲の温度が下がるまでその場に立ち尽くしていた。

 

 

 ポツポツと小さな雨がプラムベティを叩き始めた時、プラムベティはゆっくりと動き出した。

 

 

 数十分後、プラムベティが見つめる先には、地で作られた二つの小さな墓であろう物があった。  寄り添う様に隣同士に並ぶそれに、プラムベティは折れた戦斧を拾い上げると、その墓の前に静かに置いた。

 

 

 三美凶と呼ばれ、強さだけではなく、美しさを兼ね備えた者の手は、土と砂にまみれていた。  力を使えば、墓穴を開ける位、容易く行えたが、プラムベティは動く右腕だけを使っていた。  強くなった雨が、二つの墓の前で立ち尽くすプラムベティの顔を容赦なく叩いていった。

 

 

 「だから、あまり表には出たくなかったのですが・・・。  戦闘は、好きになれません、ね」

 

 

 プラムベティはそう言うと、影に入る事も無く、自身の足で歩き始めた。  降り注ぐ雨は、暫く止みそうに無かった。

 

 

 

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