ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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動き出す封印されし力

 

 

 「うあ・・・うっ」

 

 

 「起きた。  リース、ここからはお前の番」

 

 

 エマの姿から元の魔族の姿へと戻った女が目を覚ますと、そこは血塗られた部屋だった。  天井から吊るされた幾本の鎖からは血がポタポタと滴り落ち、魔族でさえ鼻を抑えたくなるような異臭と濃い血の臭いが蔓延していた。

 

 

 クラウディアが目を覚ました魔族の女から離れると、入れ替わりに死んだ筈の女が木で出来た椅子を手に持ち、それを鎖で縛られている魔族の女の前に降ろすと、ゆっくりと座った。

 

 

 「分かってるよ。  少しは見れる顔になったね。  おい、アタシが分かる?」

 

 

 「おっ・・・お前は、死んだ筈じゃ・・・!」

 

 

 “あの女”の情報では死んだ筈のリースが目の前に座っている事に驚愕した魔族の女の顔は、悲壮感と恐怖で引き攣っていた。  そんな魔族の女に、リースは口角を上げると、口だけの笑みを零した。

 

 

 「死んだ筈か。  そうだよ。  地獄が余りに退屈だからさ、這い上がって戻ってきたんだよ」

 

 

 「く、くそ・・・失敗か・・・」

 

 

 「アンタ、大方オルベルスの部下って所でしょ。  残念だったね」

 

 

 リースがそう言うと、魔族の女はリースを睨みつけながら数本しか残っていない歯を見せながら声を発した。

 

 

 「忌族風情がっ!」

 

 

 「クラウディア、聞いた?  忌族だってさ。  久しぶりに言われたよ。  あっちの方じゃ昔はそう言ってたけどね。  今はダブルって言う言葉があるんだよ」

 

 

 敢えておどけてそう言うリースに、魔族の女はペッと血と唾が混じり合った液を床に吐き捨てた。  そして、忌々しく言葉を発した。

 

 

 「くそぉ・・・!  “あの女”・・・!」

 

 

 「アンタには聞きたい事があるんだよ。  まず一つ目、エマは何処にいる?  どうせ殺しちゃいないんでしょ?  殺したら自分がずっと此処でエマとして生きて行かなくちゃいけないからね。  三秒以内に答えな」

 

 

 リースの言葉に魔族の女は答えない。  首を横に向け、リースの言葉等、耳に入れるつもりは無いといった態度を見せた。  そんな姿を見て、リースは椅子から立ち上がると、魔族の女の顔へと優しく手を宛がった。

 

 

 「ちっ・・・触るな」

 

 

 「いーち、にーい・・・さん」

 

 

 言葉と同時に、リースは魔族の女の片目に指を突っ込むと、その赤い眼玉をくり抜いた。  途端に、魔族の女の絶叫が部屋中に響いた。

 

 

 「いぎいい!!」

 

 

 「エマは何処?  三秒以内ね」

 

 

 声質に変化も無く、何事も無かったかの様にリースがそう言った。  魔族の女は激痛の恐怖で残る片目でリースに顔を向けた。

 

 

 「はぁはぁ・・・ま・・・待って・・・!」

 

 

 「いーち、にーい・・・」

 

 

 「じ、城内だ!」

 

 

 見下ろしながらそういうリースを見て、魔族の女は叫びながら言った。  それを聞いたリースは、一つ頷くと、更に口を開いた。

 

 

 「次、情報を誰に渡した?  仲介役の繋ぎの奴がいるでしょ。  あの女ってさっきから言ってるしね。  三秒以内」

 

 

 「うっ・・・くう!!」

 

 

 リースの問いに魔族の女は力を込めて鎖の拘束から逃れようと藻掻いた。  しかし、クラウディアの拘束からは逃れる事が出来ず、ジャラジャラと鎖の音だけが虚しく響いた。

 

 

 「いーち、にーい・・・」

 

 

 「うううっ!!」

 

 

 藻掻く魔族の女に、今度は比較的傷がない右足に優しく手を宛がい、容赦なくカウントを始めた。  そんなリースに、魔族の女は意を決して叫んだ。

 

 

 「それだけはっ!  言えない!」

 

 

 「・・・さん」

 

 

 「がああっ!!」

 

 

 同時に右足を握り潰すと、夥しい血液がリースと部屋に飛び散った。  そんな返り血を浴びながらも、リースの表情は変わらなかった。  絶叫する魔族の女に、リースは冷たく、暗い声を堕としていった。

 

 

 「誰に渡した?  三秒」

 

 

 「いひぃ・・・ひぃ・・・!  もっ、もうやめてくれっ・・・!」

 

 

 「いち、に、さん」

 

 

 リースは魔族の女の腹部に手を徐々にめり込ませていった。  ズブズブと肉を引き裂き、血液が流れ落ちる様を見ながら、リースは少しずつ力を込めた。

 

 

 「かっ・・・っ!!」

 

 

 ビクビクと痙攣しだした魔族の女を見て、リースは一度腕を引き抜くと、クラウディアが投げ渡したタオルで手を拭きながら口を開いた。

 

 

 「うん。  うちに入り込むだけでも対したもんだし、中々口を開かないその忠誠心も立派。  エマの居場所を簡単に言ったから時間が掛からないと思ったんだけどね。  意外に難しいね」

 

 

 「殺しそうになってどうする。  こうすればいい」

 

 

 代わりにクラウディアが魔族の女の前に進み出ると、顔を何度も殴りつけた。  飛び散った血液がドス黒い壁に吸い込まれ、新しい黒い壁を作り上げていった。

 

 

 「ぶあっ!  あぐっ!!」

 

 

 クラウディアは適度に力を制御し、死なない程度に殴りつけると、魔族の女の髪を鷲掴みし、顔を上げさせた。  クラウディアの処置で一時的に少しは原型が戻っていた魔族の女だったが、ノーティスにやられた時と同じくらいの酷さになっていた。

 

 

 「うああっ・・・」

 

 

 「言え。  誰が繋ぎ?」

 

 

 「ぐっ・・・うう」

 

 

 「成程。  久しぶりに楽しめそうな玩具」

 

 

 クラウディアが言いながら髪を話すと、台に置いてあったメスを手に、魔族の女の元へと歩み寄った。  しかし、そんなクラウディアをリースが制した。

 

 

 「いいよ。  アタシがやるから。  アンタさ、オルベルスに逆らえれば殺されるんでしょ?  此処で話しても繋ぎの奴に殺される。  話さなければアタシに殺される。  ただ、同情はしないよ」

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

 「アンタ等魔族に同族意識なんて無い。  仲間だとも思っていないし、力と恐怖で抑えつける。  悪いとは言わないけど、ね。  それも一つの方法ではあるだろうさ」

 

 

 リースの言葉に、魔族の女が小さく呻いた。  思い当たる事があるのか、血が流れ落ちる中、魔族の女は何も言わなかった。

 

 

 「うう・・・」

 

 

 「どうしてそんな所から逃げ出さなかったのさ。  アンタ姿を変えられるんでしょ?  空気も殆ど人間と変わらない様に出来るんでしょ?  アンタなら逃げ出せたでしょ」

 

 

 このリースの言葉に、魔族の女がボロボロになった口を開いた。  それは女を縛り付ける“者”への恐怖と恨みの言葉だった。

 

 

 「・・まえに・・・」

 

 

 「・・・」

 

 

 「お前に・・・分かるか!?  生まれた時から、戦闘の力なんて無かった!  あると・・・すれば姿を変えれる、特異体質だけだ!!  かはっ!  はぁはぁ・・・そ、そんな私に!  目の前の天蓋の化け物が口を開いて言うんだ!」

 

 

 「うん」

 

 

 「死にたくなければ配下になって人間の世界に入り込め!  はぁはぁ、情報を抜き出してこい!  そう言うんだ!!  生きるにはそうするしかないだろう!?  相手は化け物なんだ!  どうする事も・・・できないじゃないか・・・」

 

 

 血反吐を吐きながらそう言う魔族の女に、リースは冷酷な言葉を掛けた。

 

 

 「同情はしないって言ったでしょ?」

 

 

 「死ぬのは・・・・嫌だ・・・」

 

 

 ガチガチと震えだす魔族の女を見て、リースは溜息をつきながら口を開いた。

 

 

 「散々人を喰っておいて死ぬのが嫌だ?  虫がいいね」

 

 

 「リース。  また壊れる」

 

 

 「もういいよ。  柄じゃなかった。  苦しませて悪かったね」

 

 

 近づくリースを見て、魔族の女が血涙を流しながら懇願した。  それは、魔族であろうが人間であろうが、最後の命乞いは一緒だという事が分かる言葉だった。

 

 

 「嫌だ・・・殺さないでっ!」

 

 

 「・・・そう言ってきた人々を何人喰って来た?」

 

 

 魔族の女が最後に聞いた言葉は、自分のこれまでの行いのツケが回って来た言葉だった。  因果応報。  全ては回り回って己自身に跳ね返ってくる。  魔族の女は、リースにとって掛け替えの無い者に手を出した時、こうなる運命が決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 「分かった事は変化されたオリジナルは城内にいるくらい」

 

 

 「うん。  あの女ってのが誰か分からないのは厄介だね。  でも、私が死んだ事になってるのは好都合かな」

 

 

 そう言いながらリースはこと切れた魔族の女の瞳を手で優しく閉じた。  リースに先程までの冷酷な姿は無く、魔族の女を大事に抱えると、ベッドに寝かせた。

 

 

 「苦しませちゃったね」

 

 

 「同情はしないんじゃ無かった?」

 

 

 「同情じゃないさ。  こいつはこいつでそうするしか無かったんでしょ。  生まれながらの体質ってのは変えたくても変えれないからね」

 

 

 言いながらリースは椅子に座り込むと、大きな溜息を付いた。  そんなリースに、クラウディアが水が入った桶を渡した。

 

 

 「洗って」

 

 

 「ん、ありがと。  こいつ、素体にしないでよ。  燃やしてやって」

 

 

 「折角の面白い素体。  勿体無い」

 

 

 「お願い」

 

 

 そう言い、受け取った桶に手を入れ、ジャブジャブと洗い流すと、リースは自分の手を見つめながら小さく呟いた。

 

 

 「一歩間違えたら“この娘”みたいになってたな・・・アタシ」

 

 

 その言葉はクラウディアにも聞こえていたが、クラウディアは敢えて知らない振りをし、魔族の女を葬る為、歩みを進めた。

 

 

 数時間後、エマが城内で発見された。  身体中傷を負っていたが、命に別状は無かった。  話を聞いたノーティスが安堵と嬉しさから泣き出し、それを受け止めたロザリーも内心では胸を撫でおろしていた。

 

 

 

 

 

 そんなロイヤルクラウン内での出来事が起こっている中、月夜となる時刻、南の大陸と東の大陸の境では魔族同士となる大規模な戦闘が起こっていた。  砂漠化した地域に大きなクレーターを幾つも作り上げ、周囲には魔物や魔族の死体がそこかしこに散らばっていた。  無数にある死体は、どれも何かに押しつぶされたかの様に拉げてしまっていた。

 

 

 そんな中、この惨劇を作り出したベスキュビアが干し肉を齧りながらニヤニヤと笑みを零した。

 

 

 「残ったのはお前だけだなあ?  何て言ったっけ?」

 

 

 「・・・っ」

 

 

 「おい、話せないのか?  あー、そうか。  お前が牡丹って奴の後釜か?」

 

 

 「・・・」

 

 

 対峙するもう一人の魔族が牡丹の花弁を撒き散らし、爆発させた。  砂埃が舞う中、干し肉を齧っていたベスキュビアが傷一つ無く立っていた。

 

 

 「おい・・・折角の肉を砂まみれにするんじゃねえよ」

 

 

 「!」

 

 

 ダメージがまるで無いベスキュビアに、牡丹が後退りながら汗を垂らした。  そんな牡丹を見て、ベスキュビアは干し肉を放り投げると、笑いながら声を発した。

 

 

 「ははっ。  お前みたいな“ガキ”でも恐怖が分かるのか。  まあ、私は“魔女擬き”を見に行こうとしたんだがな?  そんな私に会ったお前、運が無いよ」

 

 

 「!!」

 

 

 瞬間、何かに押しつぶされる感覚になった牡丹だったが、その力に抗い、必死にその場に耐えた。  ズシッと足が砂漠に吸い込まれて行き、メキメキと身体全体が重い何かに潰される中、牡丹は必死に花弁をベスキュビアへと放った。

 

 

 しかし、花弁はベスキュビアに当たる前に急に潰された。  見えない何かに潰された花弁が爆発する事も無かった。

 

 

 「おー、良く耐えるじゃねえか。  いいぞ、足掻いてみせろ」

 

 

 「っ・・・あ!」

 

 

 ベスキュビアが力を込めると、牡丹の足が更に砂漠へと埋まっていった。  メキメキと骨が砕ける寸前までくると、牡丹は自分の傍に花弁を撒き、地を吹き飛ばした。

 

 

 「ガキの癖に頭は回る様だな」

 

 

 「くあっ!」

 

 

 地を吹き飛ばした事で自身にダメージが合ったが、それでも牡丹はベスキュビアの不気味な圧力から逃れる事が出来た。  牡丹は、距離を取る事を止め、手に花弁で出来た剣を作り出すと、ベスキュビアに向かって迫った。

 

 

 「おいおい。  か弱い私に物騒な物向けるなよ」

 

 

 「っ!  くっ!」

 

 

 凄まじい速度の剣撃を悠々と躱しながらベスキュビアがそう言うと、牡丹は準備が出来たとばかりに、一気に距離を取った。  そして、掌に牡丹の華を作り出すと、それを握り潰そうとした時だった。

 

 

 「駄目だな。  接近戦に見せかけて狙いは“こっち”だろ?」

 

 

 そう言ったベスキュビアが自分を含めた周囲に巨大なクレーターを作り出した。  ズンッと何かが上空から降って来たかの様な、見えない圧力が地に埋め込まれた花弁事押しつぶした。

 

 

 「重・・・力?」

 

 

 「気づくのが遅え。  しかし、最近の魔族はつまらない奴等ばかりだな。  こんな見え透いた攻撃で私を殺れると思ったか?  ははっ」

 

 

 「もう・・・一度」

 

 

 花弁を周囲にばら撒き、更に花弁の剣を手にする牡丹に対して、ベスキュビアは悍ましい視線を向けた。  戦闘力だけなら十分にある牡丹だったが、生まれて日が浅い為か、その経験と、恐怖を始めて知った時、その場に尻もちをついた。

 

 

 「お前じゃ腹の足しにもなりゃしねえ。  “本物の魔族”を舐めるなよ。  ガキ」

 

 

 ベスキュビアが力を込めると、等々牡丹がその場に潰された。  巨大なクレーターの中、倒れる牡丹にベスキュビアが近づくと、懐から別の干し肉を取り出し、それを齧りながら口を開いた。

 

 

 「まだ生きてるな。  オルベルスの差し金だけあってしぶといな」

 

 

 「ぅ・・・っ」

 

 

 「何だ?  何か言いたいのか?」

 

 

 「オル・・・」

 

 

 そこまで言うと、牡丹は更に見えない何かに潰された。  完全に押しつぶされた牡丹を見て、ベスキュビアは干し肉を食らいつくすと吐き捨てる様に言葉を放った。

 

 

 「五月蠅え、馬鹿。  ちっ、やっぱりこんなガキじゃ腹も膨れねえ。  さーて、魔女擬きは何処かな」

 

 

 ベスキュビアはそう言うと、空を見上げた。  そして、瞬く星を見ると、不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 「あー、星の位置からすると、あっちが北か。  ドレスの奴はキレるだろうが、つまらない奴なら喰っちまっていいかな」  

 

 

 

 

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