ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい   作:nagiayu

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守護者達vs侵攻者達

 

 「リズ!  東通りに名持ち!  来るよ!」

 

 

 「分かってる!  皆、名持ちが来たっ!  逃げ遅れた人達の救助を優先しつつ、城内にて怪我人の治療にあたりなさい!  名持ちには絶対に手を出すな!」

 

 

 「レア、嫌な空気が東通りに出たよ。  此方にも来るかも」

 

 

 「かも、じゃない! 十中八九来る! 数じゃなく質で来たって訳ね!」

 

 

 「カエデさん、分かっていますよね?」

 

 

 「名持ちですね。  シラベさん、私達は中央を守りましょう。  東通りにはメアリ様が直接動き出したみたいです」

 

 

 歴戦の名持ちの魔族が現れた事で、ブルデンバウム国内で魔物や魔族を押し返していた近衛六臣女達は直ぐに警戒力を最大へと引き上げた。

 

 

 名を持つ魔族と言うのは、それだけで脅威となる。  名を持つという事はそれだけ力を誇示してきた事でもあり、それぞれが各国の精鋭部隊の長と一戦を交える事が出来る程の力を持っている。  取り分け、歴戦の名持ちの魔族となれば、長く人間達の脅威になっており、その名前は、書物に載る程、歴史に名を刻んできた魔族達であった。

 

 

 そんな、歴戦の名持ち達が居ながら、何故世界は未だに魔族の物にならないのか。  そう疑問を持つ者もいるが、理由は簡単だった。  長く人間を喰らいたい。  唯、それだけで人間達は生かされてきた。

 

 

 しかし、その余裕とも取れる行動は、人間達を強くした。  これまでの戦いの知識を残し、武器を作り、練磨や研鑽を行う事で己達の身体を強くした。  今となっては、名持ちの魔族達でさえ、手練れの人間達と一戦交える事は、自分の命そのものを賭ける戦いになると分かっている。

 

 

 唯、それを楽しんでいる魔族もいるのも事実であり、それは遥か昔から存在する魔族の中の魔族。  純粋なる魔族。  今でこそ数は居なくなり、存在が確認されているのはたったの三人だけである。

 

 

 今、此処ブルデンバウムに現れた名持ちの魔族達は純粋な魔族とは程遠い存在であり、魔女が生み出した魔族達だった。  人間を無差別に喰らい、遊び、自分の欲の為に動くそんな存在であり、そこには魔族としての誇りの一つも持ち合わせてはいない。

 

 

 「いつまで食べてるのさ。  結構強い空気がいくつかある。  油断すると死ぬよ?」

 

 

 燃え盛る街並みを見渡しながらそう言うドルベルーダに対して、先程殺したロイヤルクラウンの兵を貪りながらフィングラスが顔を上げて口を開いた。

 

 

 「うっさいしー。  ってか笑える。  誰に物言ってんの?  あんたから殺してやってもいいけどー?」

 

 

 「や、止めなよ。  け、喧嘩は駄目だよ」

 

 

 不穏な空気を出す二人に対して、おどおどしながらそう言うログロムキッシュは三人の中で最も空気が濃い。  三人の中で見た目こそ小さいが、その実力は歴戦の名持ちにふさわしい物を持っているのが分かる。

 

 

 「ちょっ!  ドルベルーダ聞いた!?  今日初めて話した言葉がそれって!  キッシュちゃん笑えるー!」

 

 

 「殺る前からオドオドするなって言ったよね?  今まで散々喰ってきて人間の何がそんなに怖いのさ」

 

 

 馬鹿にしたかの様にログロムキッシュの頭をガシガシと撫でるフィングラスと、呆れた様に話すドルベルーダに対して、ログロムキッシュは倒れているロイヤルクラウンの兵に視線を向けながら口を開いた。

 

 

 「で、でも・・・此処にいる人間達・・・つ、強いよ」

 

 

 「北の大陸最大の国だからね。  手練れはそれなりに多い。  それに此奴等はロイヤルクラウンの奴等さ。  下っ端の奴等だけど。  ブルデンバウム直属の兵となるともっと楽しめる」

 

 

 「うちは勝手にやらせてもらうしー。  城の中にぷんぷん人間の匂いが───あー・・・我慢できなーい!」

 

 

 食事を終えたかと思ったフィングラスがそういきり立つと、猛スピードでブルデンバウム城に向かって飛び出した。  しかし、そんなフィングラスが突如ドルベルーダとログロムキッシュの傍に突っ込み、地面を抉った。

 

 

 砂煙が舞う中、ドルベルーダは小さく笑い声を出し、ログロムキッシュは砂埃で咳き込んでいた。    煙が晴れると、顔を抑えたフィングラスが忌々しい顔つきで自分を叩き落とした人物へと目を向けた。

 

 

 「うっ・・・ぎ!  痛ったー・・・!  誰ようちを足蹴にした奴!」

 

 

 「なんだ生きてたの。  死んでたら面白かったんだけど」

 

 

 「うっさいよドルベルーダ!!」

 

 

 「け、喧嘩しないでよ」

 

 

 顔を抑えながら忌々しくドルベルーダにそう言うフィングラスだったが、その口からは血が流れていた。  そして、そんな三匹の前に立ったのは、メアリだった。  手にした鎌は鋭く美しく、燃え盛り、赤く染まった街並みの中、異質を放っていた。

 

 

 「此処から先には行かせない。  私が来た以上、好き勝手出来ると思わない事ね」

 

 

 メアリの言葉に、ドルベルーダが口元を歪めると、一人前に躍り出て口を開いた。

 

 

 「どうやら一番強い奴の登場らしい」

 

 (強いね、こいつ。  ソフィアとやらが居ない今が攻め時だとアルメリアに聞いてはいたけど・・・まだこんな奴がいたなんて)  

 

 

 「こ、この人・・・強い・・・怖いよ」

 

 

 メアリを上目遣いでおどおど見るログロムキッシュだったが、後ろから頭をガシガシと撫でられると、眉間に皺を寄せながら口角を上げたフィングラスがメアリを警戒しているドルベルーダより更に前に出て来ると、その舌を伸ばした。

 

 

 「キッシュちゃーん!  びびりすぎでしょー!  あんた等、手出したら駄目だよー?  うちを蹴ったんだから・・・うちが喰わなきゃ割に合わないでしょー!?」

 

 

 大袈裟に手を広げ、そう言うフィングラスに、ドルベルーダは呆れた顔で小さく呟いた。

 

 

 「勝手にすれば?  で、勝手に死んだら?」

 

 

 「いちいち一言多いんだよ、あんたー!!」

 

 

 魔族達のやり取りに興味等無いかの様に、メアリは鋭い目つきを向けた。  そして、中央に立つフィングラスの方を見ながら決意を口にした。

 

 

 「時間が無いの。  さっさとやりましょう」

 

 (私じゃ“この魔族”一匹抑えるのが精一杯。  “此奴”かなり強い)

 

 

 手練れのメアリが自分を見据えてそう言った事で、フィングラスの表情が変わった。  心底楽しそうに、舌を出しながら体制を前屈みにすると、その長い爪を更に鋭く尖らせた。

 

 

 「あっは!  食べ応えありそうじゃん!  うちが───」

 

 

 「誰もお前に言ってないわ」

 

 

 「は?」

 

 

 メアリの言葉に、フィングラスは呆気に取られた。  明らかに自分の方を見ているにも関わらず、そう言うメアリの言葉の意味が分からなかった。  そんなフィングラスを見ている様で見ていないメアリは、更に言葉を紡いだ。

 

 

 「聞こえているでしょう?  地に潜っている“そこの魔族に言っているのよ”」

 

 

 メアリの言葉で、三匹の魔族の後ろからズルりと地から現れた存在があった。  赤い液体から現れた女は、不気味な程に静かだった。  空気こそ前にいる三匹の魔物程無いが、その存在の不気味さが異質を放っており、その異質さは数々の修羅場を潜って来たメアリにも、姿だけで警戒心を最大限に引き上げた。

 

 

 そんな赤い液体の魔族に、ドルベルーダが言葉を告げた。

 

 

 「ベルビューヌ、此処はあんたに任せたからね」

 

 

 そう言うと、ドルベルーダはその場から一足飛びに姿を消した。  中央通りに向かう空気を視認しながらも、メアリは追撃する事が出来なかった。  目の前にいる赤い液体の魔族がそれをさせまいと、不気味に静かにメアリを見据えていたからだった。

 

 

 「わ、わたし・・・向こうに行くから・・・」

 

 

 ログロムキッシュもそう言いながら姿を消した。  空気の動きからして、西通りに向かったのが分かった。

 

 

 「ちっ・・・つまんない。  あーつまんない!!」  

 

 

 最後に不機嫌にそう言いながら飛び立ったのはフィングラスだった。  南通りに向かうその空気は、明らかに禍々しく、空気だけでその者の機嫌の悪さが見て分かる程だった。

 

 

 「さっきの女が貴女に手を出さないと言う事は、貴女、相当の力を持っているわね」

 

 

 【皆、死ぬ】

 

 

 「あの三匹に殺られるって?  ブルデンバウムを舐めないで欲しいわね。  あの三匹も・・・貴女も此処で終わるのよ」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 鎌を構え、戦闘態勢を取るメアリに、ベルビューヌは己の身体の半身を赤い液体へと変貌させた。  

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 「ジュナ、急ぐ」

 

 

 「分かっています!」

 

 

 ブルデンバウム国の周囲には岩石地帯が広がっているが、その地帯を“二つの”影が凄まじい速さで砂埃を上げながら移動する影があった。

 

 

 ブルデンバウム最強の剣士であり、最高戦力とされるソフィアとその付き人であるジュナ。  ソフィアはロイヤルクラウンからの援軍要請で西の大陸と東の大陸を繋ぐ地域の守護を任され、ジュナはそんなソフィアの付き人をしている為、二人してブルデンバウムを離れていた。

 

 

 「レイメイ様は大丈夫でしょうか!?」

 

 

 「問題ない」

 

 

 二人が話すレイメイだったが、当初、ロイヤルクラウンからの援軍としてソフィア、ジュナと共にブルデンバウムを目指していたが、その途中、疎開していた人々を襲う大規模な魔族と出くわした事で一人残り、其方を片付けてから向かう事から、離れていた。

 

 

 「強さはそうでもないですが、数が凄かったです!  時間がかかるかもしれません!」

 

 

 「レイメイ様なら直ぐに追いつく」

 

 

 話しながら走る二人の速度は落ちない。  ソフィアの速さについていけているジュナは、強さその物はソフィアには遠く及ばないが、その速さだけは違った。  そして、その速さを買われ、ソフィアの付き人をしている。

 

 

 「この丘を越えれば、見えてくる筈・・・そんなっ!  火が!!」

 

 

 「っ!」

 

 

 岩石地帯を走り、緩やかな丘を越えた先には、ブルデンバウムの街並みが見えてくる筈だった。  しかし、二人の目に映ったのは、見慣れた街並みと城ではなく、燃え盛る街並みだった。  その光景を目にした二人は、更に速度を上げた。

 

 

 しかし、そんな二人がブルデンバウムへと足を踏み入れる事は直ぐに出来なかった。  ブルデンウムへと近づくにつれ、巨大な嫌な空気がその前に鎮座していたからだった。

 

 

 「ジュナ!  制止!」

 

 

 「っ!!」

 

 

 岩石地帯にポツンと置かれ、その場に似つかわしくない豪華な椅子に座る女に、ソフィアは鋭い視線を向けた。  チラリと足元を見れば、数名の兵が倒れており、その鎧には見覚えがあった。  祖国であり、仲間であったブルデンバウムの兵を足蹴にし、ティーカップを持つ女の空気は、異質を放っていた。

 

 

 その隣に佇む魔族の女も空気からして唯の魔族では無く、異質な空気を出す女の御付きだと言う事も、そして、それだけの力を有している事も分かった。

 

 

 「あらあ。  面倒くさい女が帰って来たわねえ」

 

 

 「アルメリアは一人しか削れませんでしたか。  お仕置きですね」

 

 

 「初めから期待していなかったけどねえ?」

 

 

 女はソフィアとジュナを見ながらカップに口をつけると、中に入っていた赤い液体を飲み干し、カップを叩き割った。

 

 

 「横の雑魚は貴女に上げるわあ」

 

 

 「此処だと巻き込まれそうで怖いですから。  私は中に入らせて貰います」

 

 

 そう言うと、女の傍にいたもう一人の女はジュナに対して、挑発する様に指をクイクイと動かすと、燃えるブルデンバウムへと飛び立った。  そんな御付きの女を見て、ジュナが飛び出そうとすると、それをソフィアが制止した。

 

 

 「ソフィア様!?」

 

 

 驚きと、戸惑いを見せるジュナに、ソフィアは何も言わず、その手に小さな袋を渡した。  それを見たジュナはソフィアを見て頷くと、小さく言葉を発した。

 

 

 「ご武運を───ソフィア様」

 

 

 それだけ言うと、ジュナは先の女を追う様に地を蹴った。  だが、ジュナが女の傍を通った時、女はジュナへと視線を送り、ニヤリと笑った。  そして、ジュナは唯それだけで、自分が唯の餌に過ぎないと、力の差を痛感させられた。

 

 

 「うっ・・・!」

 

 

 「ジュナ!!」

 

 

 地を駆ける足が震えた瞬間、ソフィアの一括がその足を動かした。  ソフィアの言葉はいつもそうだ。  いつもジュナに力を与えてくれる。  ジュナはそんなソフィアの言葉を聞き、力を込めて地を抉り蹴った。

 

 

 

 「酷い・・・こんな事っ!」

 

 

 ブルデンバウムの街並みに入ったジュナが目にしたのは、燃え盛る街並みと、倒れている兵や街の者、魔物、魔族だった。  生き物の焼ける臭いが鼻を突き、歯軋りするジュナの身体を火が照らした。  熱さは感じない。  己の中でそれ以上の怒りの熱さが籠っていたから。

 

 

 そんな熱さをぶつける相手はジュナの目の前にいた。  目の前にいる御付きの魔族はジュナを目視すると、その手に持っていた本を閉じた。

 

 

 「漸く付きましたか。  遅すぎて読み終わる所でした」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 そう言いながら本を一瞬で灰にすると、自身の力を発生させた。  バチバチとその手に宿る赤黒い電撃は美しくもあり、ジュナの喉をゴクリと鳴らした。  しかし、ジュナの顔に焦りは無い。

 

 

 「いいんですか?  その本、勿体ないのでは?」

 

 

 「もう何度も読んでいます。  私が“敬愛する”あの方のご趣味と思い、真似していますが、人間共の作るこんな物のどこが面白いのか。  理解するには時間がかかりそうです」

 

 

 「なら、一生理解する事は出来ませんね。  貴女は此処で私にやられるんですから!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「雑魚は雑魚同士楽しめればいいのだけどねえ」

 

 

 「お前は、殺す」

 

 

 「殺すですってえ?  このビクトリア様を?  遊び相手にしかならないと思うけれど?」

 

 

 「否。  必然に殺す」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 剣を構えたソフィアに、ビクトリアは口元を歪めると、己の身体から、その不気味すぎる力を使って事切れている兵を持ち上げた。

 

 

 「貴女も直ぐにこうなるのよ。  殺れるものなら殺ってみなさい、人間」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

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