煉黒宿す少女 作:光炎の大龍玉
雀のさえずりがオイラの意識を覚まさせる。とりあえず空いてる方の手で頬をつねる。……今日も夢じゃない。
「……おはよう命波」
「えへへ…おはよぉ実くん…♡」
今日もひたすらに耐える一日がやってきた。もしかしたらオイラは心臓の過労で死ぬかもしれない。あとオッパイを触らせられるのはもう諦めた。
「……その、命波。手、放してもいいかな?」
「だーめ♡ ぜったい離さないんだから♡」
命波はオイラのお願いを却下したどころか、更にオッパイを押し付けてきた。揉まなくても分かるわ。世界一柔らかいよチクショウ。
オイラは高校生活でも手にオッパイの感触が残ったまま授業を受けなければいけないんだ……! いやまぁ嬉しいけど! でもそれだと勉強に集中出来ねぇ!!
あと布団の中だと大胆になるくせして、いざ起きると途端にしおらしくなるのは反則すぎる。ギャップ萌えすぎる!!
正直なこと言えば死ぬほど役得なんだ。でもだからといって襲うのはオイラの矜恃に反するんだ。つまりオイラは何がなんでもこの魅惑的すぎる誘惑に耐えなきゃいけないんだ……!!
「えへへ……ぎゅー♡」
あっバカ! 太もも絡めてくるな! そのムチッ♡ムチッ♡って音がしそうな太ももを絡めるなぁぁぁ!!
今日からアパート生活だから到せないのも辛い。辛すぎて修行僧にでもなってしまいそうだよチクショウ……!!
アパートを出た私達は、雄英の制服を着て登校している。肩車は実くんにダメって言われた。だったら放課後、お部屋で実くんのこといーー……っぱいハグしちゃうんだから……ふふっ♡
「実くん、遂に高校生活が始まるね!」
「そうだな。うん……」
……あれ、実くんにいつもみたいな元気がない?
不思議に思った私が実くんの赤くなってる顔を覗き込むと、すぐにそっぽを向かれてしまった。
「実くん、緊張してるの?」
「あー、いや! 大丈夫だぞ? 緊張はしてない、から……」
と思ったら、私の事チラチラ見てる。……そんなに私の制服、変?
私の制服は完全オーダーメイドで、背中側に翼を通すための穴とジッパーがあるの。あと、マグマの体液とかの熱を耐えるために私の剥がれた鱗や甲殻、皮膚組織を繊維状にして編み込んでるんだって。ボタンとかも塗料を塗りこんでるけど、それが剥がれたら私の甲殻を加工したものが出てくる。
培養までは無理だったらしいから、コツコツと集めていたものを提供させたの。
今まで着ていた普通の耐火服だと煤がついたり、中でマグマの体液とくっついたりしてたけど……この制服ならそんな事は起きない。
ちょっとサイズオーダーを微妙に間違えたせいか、少しパツパツだけど……パジャマみたいなものだよね。
「遅れたらまずいし、早く行こうぜ!(なんだよそのスケベすぎる制服はぁぁぁぁ!!! これ本当に改造制服じゃないんだよな!? 主に胸の辺りが悲鳴上げてるしスカートは長いはずなのに命波の脚が長いからむしろ短く思える!? オーダーメイドとはいえ清楚とスケベを両立するなんて欲張りすぎるだろぉぉ!!?? フゥー……落ち着け峰田 実! 心頭滅却、南無妙法蓮華経!!!)」
「あ…そ、そうだね! じゃあいつもみたいに肩車しよっか!」
実くんが急かすように私の袖を引っ張ってきた。むぅ……でも目を逸らしてる。なんで私から目を逸らすんだろう……嫌ってるわけじゃないのは何となく分かるんだけど……
「……あーいや、流石にダメだからな? オイラちゃんと歩くから!」
「私の肩車…イヤ?」
私の中でドス黒い感情が渦巻いてくる。
実くんに嫌われるのだけはイヤ……! 私を見てくれる実くんがいない世界なんて意味が無いもん……あぁ、私って最低な女だよね。こんな重い感情ばかりぶつける子なんて、誰だって好きにならないもん……
「!!!!! あー、そんな事はねぇけどよ? ……その、流石にいい年した高校生がアレを人前でやるのはどうなのかなーと思うんだ、うん(そんな今にも泣いちまいそうな顔されたら嘘でもノーだなんて言えるわけねぇよぉぉぉ!!! 地元じゃ小さい頃から肩車されてたから受け入れられてたけど! ここは神奈川じゃなくて静岡なんだよ!県またいでるんだよ! しかも超注目される雄英生なんだよ!!! 命波はともかく、絶対オイラが変な目で見られるって!! 全国の老若男女に見られる存在なんだよ!!! ごめんな命波………後でいっぱい飯奢ってやるから、肩車だけは勘弁してくれ……!)」
実くんがまたそっぽを向いちゃった。私の中でドス黒い感情が濃くなってくる。ダメ、もう抑えきれない……そんなに断られちゃったら私、もう我慢できないよ……
「!? いきなりどうしたんだよ命波! は、離してくれよ! 流石に(オイラの理性が)ヤバいって!」
私は後ろから実くんを抱きしめてそのまま抱っこする。実くんが暴れるけど、私は構わず抱きしめる力を強めて、実くんの顔を胸元に埋める。
「だめ……こうやって実くんに触れてないと、私が安心できないの。だから…もっと実くんを感じさせて……?」
すごくドキドキする……絶対、実くんに心臓の音聞かれてる……でもこうして実くんと触れ合ってると、同時に湧いてくる安心感が急速にドス黒い感情を塗りつぶしてくれる。
……だから、これでいいの。実くんにこんな感情をぶつけちゃダメだから。
結局、私が実くんを解放したのは校門の前だった。周りに見られてて恥ずかしい……。
──────────
────────
「えーっと……あった! よかった、実くんと同じクラスだ……!」
よかった……実くんが同じクラスじゃなかったら、私何するかわかんなくなっちゃうし……あれ?
なんで実くんの席が私の隣じゃないの?
席順表を見た私の身体中でマグマの体液が煮えたぎる。よし、直談判しよう。先生にお願いすれば席の一つや二つ、すぐに変えてくれるよね。
「実くん、先に教室行ってていいよ。私職員室に用ができたから」
「命波!? や、やめような? 入学初日に職員室に突撃するのは不味いから! ほら行こうぜ! な! な!?」
実くんがそれだけはやめてくれと強くお願いしてきた。袖も引っ張って行かせまいとしてる。でも……これだけは、これだけは譲れないの。
「やだ」
「今回ばかりは命波がどれだけ嫌でもダメだから! 下手すりゃ命波が退学処分になるかもしれないんだぞ!?」
……それはもっとイヤ。……離れ離れの席はイヤだけど、退学はもっとイヤだから仕方ないけど我慢する……でも席替えの時は何がなんでも実くんの隣にしてもらうんだから……!
───────
───────────
A組の教室前に着いた私達は、5mはある大きな扉の前で立ち止まる。あ、これなら私が実くんを肩車しても余裕をもって通れるね。
「あ、見ろよ命波! このドア下にも取っ手がある! これならオイラも自力で開けれるぜ! 流石は雄英だな!」
実くんがはしゃぎ気味に下の方に付いてる取っ手を指さす。実くんは身長の関係上、中学校の頃はどれだけ背伸びしてもドアに届かなかったからね。よく私が代わりに開けててたなぁ……思い出したらなんだか無性に実くんを抱きしめたくなっちゃった。
「……実くん、ぎゅー♡」
「!?!?!? やめろ命波ぃ! いきなりは心臓に悪いから! (不意打ちは聞いてないぞぉぉぉ!!)」
「だーめ♡ 実くんが可愛すぎるのがいけないんだから……ね?」
……あれ、なんだか視線がいっぱいあるような……ってドア開いてる!? うぅ……なんだか気まずい。
たぶん、私が思い出にふけてる間に実くんがドアを開けてたんだと思う。
「……」
「「「「……」」」」
周りの子と目が合った。すごく気まずいけど……女の子がいっぱい。だったら絶対に、これだけは宣言しないとね。
「……私の実くんは誰にも渡さないから」
「「「「!?!?!?!?」」」」
(拝啓お母様。オイラは今、惚れてる幼馴染にとんでもなく重たい感情を向けられています……助けてください……)
問:なんかちっこいやつが入ってきたと思ったら高身長むちむち女の子がそいつにハグからの激重感情と共に束縛宣言されたのを見る羽目になったA組の心情を答えよ。