煉黒宿す少女   作:光炎の大龍玉

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今回はヤンデレとか少なめ。


思わぬ繋がり/個性把握テスト《前編》

これでよし。万が一でも実くんに悪い虫がついたらいけないから必要なこと。私が実くんを守ってあげなきゃね……♡ ……でも、いきなりは不味かったかも。とりあえず自己紹介して誤魔化さなきゃ。

 

「……えっと、江渡船 命波です。よ、よろしくお願いします……?」

 

あぅ……疑問形になっちゃった……うぅ、家族か実くん以外とこうやって喋るのなんていつぶりだろう……自己紹介で変に思われてないよね?

そんな事を思ってたら、白と赤のどこか見覚えがある髪色の男の子が近づいてきた。

 

「お前が、江渡船 命波なんだな?」

 

「あ…う、うん。そうだよ……?」

 

顔に小さな火傷痕がある男の子は目を大きく見開いていきなり肩を掴んできた。

彼の口から出てきたのは、すごく懐かしい名前だった。

 

「……なら、燈矢兄さんの事を覚えてるか?」

 

「燈矢兄さん……もしかして君、エンデ…じゃなくて、炎司さんの子供?」

 

「……あぁ、そうだ。……その、ありがとう。燈矢兄さんを助けてくれて」

 

エンデヴァーと言いそうになって慌てて本名の方で言い直した私は、燈矢さんの弟? に頭を下げられた。思い返せば私、あの時とんでもない無茶してたなぁ……。

それにしても、炎司さんが静岡に住んでるとはいえ、その子供が同じ学校の同じクラスって……世の中ってすごく狭いのかもしれない。

すると、実くんから紅白男の子との関係について聞かれた。嫉妬してる…訳じゃなさそう。単に気になってるだけだよね。

 

「……なぁ命波、こいつと知り合いなのか?」

 

「正確にはこの子のお兄さんとちょっと知り合いって感じかな? 小学一年生の夏休み、私が個性制御の為に静岡に行ってたでしょ? その時に色々あったの」

 

あの時の事は、炎司さんに口止めされてるから実くんにも伝えてない。本当なら個性の無断使用な上に、何より危うく死にかけたからね。死なないけど。……とにかく、そんな事を知ったら、多分実くんは私をヒーローの世界から遠ざけようとする。優しいからね。

でも私は欲張りさんだから、ヒーローになる夢も実くんへの恋も叶えたいの。

 

「えっと……名前聞いてもいい?」

 

「…轟 焦凍」

 

轟くんはそれだけ言ってさっさと自分の席に戻った。……シャイなのかな?

 

「ねぇ実く「机にに足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」「あ? んなこた思わねーよてめぇどこ中だ端役が!」……実くん、あれに近づいちゃダメ」

 

私が実くんに話しかけようとしたら、実くんの席の近くでメガネをかけた男の子と、試験の時助けてくれた男の子が口喧嘩をしていた。

あんな危ない場所に実くんを行かせられないから、私は実くんの手を掴んで止める。……手を繋いでるだけのはずなのに、すごくドキドキする。

一瞬だけ助けてくれた子と視線がぶつかったけど、すぐに睨まれた後逸らされた。

 

「命波、オイラ荷物置きたいんだけど……(はあぁぁぁぁ!? 命波のやつ無意識に恋人繋ぎしてるぅぅぅぅ!! ヤバいクソドキドキする!! お願いだからもってくれよ、オイラの理性と心臓……!)」

 

「だめ。実くんをあんな危険地帯に行かせるわけにはいかない。あと荷物なら私のとこに置けばいい」

 

「いや別に大丈夫だと思うぞ!? あと命波の所に荷物置いたらオイラ何も出来ないじゃないか!」

 

実くんが必死に荷物を置こうと私の手を引っ張ろうとした瞬間、少し気だるげな声が教室の入口から聞こえてくる。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け…ここはヒーロー科だぞ」

 

なんか寝袋に包まってる変な人がいる……あ、寝袋外した。

変な人はゼリー飲料を一瞬で啜ってゴミ箱に投げ捨てて、クラスのみんなが黙ったのを確認してから口を開く。

 

「……はい、静かになるまで10秒かかりました。この無駄な時間でゼリー飲料を2本飲めてしまうぞ。時間は常に有限…君達は合理性に欠けるね」

 

言いたい事は分からなくもない。10秒って短いようで長いからね。だって10秒あればいっぱい実くんを感じられるもの。……まぁ、この後の発言で私もすごく驚いたんだけどね。

 

「担任の相澤 消太だ。よろしくね」

 

そう、担任だった。……本当に担任だった。よくよく考えたら不審者が雄英にいるわけないもんね。

 

「早速だが、机の中にあるジャージ着てグラウンドに集合……ここの見取り図もあるからそれ見て来いよ」

 

それだけ言って相澤…先生はスタスタと歩いていく。

机の中を覗いてみると、制服と同様のオーダーメイドが施されたジャージが本当に入っていた。雄英ってすごい。

 


 

女子更衣室で着替えていると、浮いてる下着が話しかけて……いや、生命の光が足元の辺りからも感じられるから透明人間なのかな?

 

「初めましてだね江渡船ちゃん! 私は葉隠 透! 見ての通り透明人間なのです! よろしくね!」

 

「よろしくね、葉隠ちゃん。……その、ひとつ聞いていい?」

 

私は恐る恐る、自分の見た目について聞いてみる。

葉隠さんは無邪気そうに手をブンブン動かして興味深そうにこっちを見ている……気がする。透明人間だから雰囲気と熱の流れでしか分からない……

 

「なになに? 気になった事ならなんでもどーぞ!」

 

「……私が怖くないの?」

 

「え?」

 

私の質問を聞いた葉隠ちゃんだけじゃなく、周りの子まで信じられないという顔でこっちを見てきた。

信じられない。こんなの嘘だ……

私はグランが起こしたあの事件について話す。

 

「……みんな、10年前の火山龍事件は知ってるよね」

 

「あー……かなり前だからうろ覚えだけど、飛行機事故の影響で女の子の個性が暴走して、静岡まで火山みたいなドラゴンが泳いできた……っていう事件だよね。それがどうしたん?」

 

イヤホンジャックのような耳たぶが特徴の女の子が、グランの起こした事件の詳細を言う。10年前の事件なのに、よく覚えてるね……まぁ、それだけグランのインパクトは強かったんだと思う。

 

「あの時の女の子が、私なの。ほら…火山龍そっくりの翼でしょ? ……それで、みんな怖がっちゃったの。実くんだけは怖がらなかったけど……とにかく、私を怖がらないのが不思議でならないの」

 

私はそう言いながら背中にある重翼をみんなに見せる。今は活性化を止めてるから、岩肌みたいな雰囲気に見える。私の鱗や甲殻を気味悪そうに見ていた子もいた。なのに……

 

「えー、そんな事ないよ! だって江渡船ちゃんかっこいいもん!」

 

「ウチも小さい頃はアレ見て怖いと思ったけど、今は江渡船ちゃんがそんな悪い子には思えんわ!」

 

「ケロ、ただの気負いすぎだと思うわよ」

 

みんな、私を怖がるどころか好意的に見てる……? 怖がらない子はいたけど、それでも好意的な目は無かった。こんなの、はじめてだよ……。

 

「早くしないと先生に怒られそうだし、急ごっか」

 

「そうだね! 急げ急げー!」

 

私は困惑を打ち消そうと話を無理矢理切り上げて、さっさと着替える。あ、翼が引っかかっちゃった……ジッパーを下ろして……よし。

 

 

 


 

「「「「個性把握テストォ!?」」」」

 

グラウンドに集められた私達は、相澤先生の言った事に思わず叫んでしまう。

私が想像していたのは入学式の校長先生の長話や委員長とかを決めるガイダンスだったのに、いきなり個性把握テストとやらをするのは想像も出来なかった。ヒーロー科ってどこもこうなのかな……

 

「中学の時、個性禁止で体力テストやったろ? 今からあれを個性アリでやってもらう。そうだな…爆豪、お前中学の時ソフトボール投げ何mだった」

 

「ソフトボール投げか? …67m」

 

どうやら試験の時助けてくれた男の子は爆豪って名前みたい。相澤先生が爆豪君に中学時代の記録を聞いてきて、そのまま彼にソフトボールを投げ渡した。

 

「お前の個性が1番分かりやすそうだし、今からそのボールを個性使って投げてみろ。円から出なけりゃどれだけぶっぱなしても構わねぇ」

 

「そんじゃまぁ……死ねぇ!!」

 

爆豪君は変わった掛け声でおおきく振りかぶり、掌から爆風を起こして凄まじい勢いの投球をした。

ソフトボールは見えなくなるほど遠くに飛んで、かなり先の方で着弾して土煙をあげた。

 

「記録、705m。まずは自分の最大限を知る…それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

相澤先生が見せてきた電子機器にもしっかり細かい記録がされていて、文字通りの桁違いな記録にクラスの何人かは楽しそうにはしゃぐ。

実くんは逆に不安そうにしていたから、抱っこして頭を撫でてあげる。あ、照れてて可愛い……♡

 

「なんだこれ!!すげー面白そう!」

 

「705mってマジかよ!?」

 

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」

 

楽しそうな声のみんなとは裏腹に、相澤先生は眉をひそめて2段階ほど低い声で呟く。

 

「面白そう…ね。そんな甘っちょろい心構えでヒーロー科を受けるのか? ……よし、ならトータル最下位の者は見込みなしとして、除籍処分とする」

 

……一瞬、最低最悪のもしかしたらを考えてしまうけど……私に隠れてトレーニングを積み重ねていた実くんならきっといける。もし、万が一、ありえないだろうけどそれでもダメだったら……私は火山弾で相澤先生の頭を吹き飛ばしてしまうかもしれない。

 

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