お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
見えざる帝国に聳える巨城『銀架城』。
その最上階にある一室で、ユーハバッハは玉座に座り、目の前に映し出された映像を眺めていた。
そこに映っているのは、滅却師達を次々と斬り伏せていく一人の少年。
園原千弘。
その顔には一切の躊躇がない。ただ淡々と、楽しむように刃を振るっている。
「……ほぅ。此奴か。先日、此処へ迷い込んだという死神は」
「はい」
背後からハッシュヴァルトが答える。
「お前は此奴と接触したな。初めて見た時、どう感じた?」
「……ただならぬ威圧感と霊圧。そして、それを扱う技量を感じました」
ハッシュヴァルトは映像を見つめたまま続ける。
「奴は力を振り回しているわけではない。戦闘そのものを理解している。そして何より――」
僅かに目を細める。
「敵を斬ることに、一切の躊躇がありません。私が向かわなければ、星十字騎士団の大半が失われていた可能性もあります。潜在能力、戦闘力、判断力……どれを取っても、現在の特記戦力に匹敵、或いはそれ以上かと」
「ほぅ?そこまでか」
彼の言葉に驚いたユーハバッハは再び映像へ目を向ける。
千弘がまた一人、滅却師を斬り伏せた。
「千年もの間、これほどの者を見つけられなかったとはな……」
そして、僅かに口元を歪める。
「まあいい」
「如何なさいますか?」
「決まっている」
ユーハバッハは静かに告げた。
「我が新しいダーテンを伝えろ」
「園原千弘も――特記戦力の一人として扱う」
一拍。
「優先的に討てとな」
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ーー
場所は変わり尸魂界にて。
「ふんふんふ〜ん♪」
いつものように千弘は十ニ番隊の隊舎にて雑用として清掃作業に勤しんでいた。
その時であった。
「おやおや、相変わらず精が出るね。十二番隊隊士『園原千弘』くん」
「ん?」
背後から声が聞こえて、振り返るとそこには京楽の姿があり、それを見た千弘は即座に手を止めて頭を下げた。
「これはこれは京楽隊長!お疲れ様です!」
「いやいやい〜よ〜そんな堅苦しいの」
「あの、どうしてこちらに?」
「あ〜君に聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「うん。ここじゃあれだし、僕の隊舎においでよ。お茶も出すから♪」
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ーーー
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八番隊の隊首室にて___。
中机を隔てて、京楽とマユリが向かい合うようにして座っていた。京楽の傍には副隊長である七緒、対してマユリの両サイドにはそれぞれ千弘とネムの姿もあった。
「いや〜済まないねぇ突然と呼び出して」
京楽の気さくな笑みにマユリは表情を変化させることなく、その不気味な瞳を向けながら一蹴する。
「そんなものは良い。要件をサッサと済ませてくれたまエ。毎日毎日酒に入れ浸っている君と違って、私は忙しいのでネ」
「おやおや!これは手厳しい…。研究が続いてて疲れてるんじゃないの?少しゆっくりしてけばいいじゃない」
「休みなど既に取った。こんな酒臭い所にいると脳が腐ってしまうヨ」
「いやはや…涅隊長は怖いなぁ〜。まぁ聞こう」
マユリの言葉に笑みを浮かべていた京楽は、一瞬にしてその笑みを控えると、閉じていた目を開けてマユリへと向けながら問いかける。
「なぜ、頻繁に浦原くんと連絡を?」
「ん?」
その質問に対して、マユリは特に反応することなく首を傾げる。
「奴が私に研究資料を強請ってきたから、心を広くして対応してあげているだけだが、それが何か?」
「それにしても多すぎるよ。七緒ちゃん」
「はい」
京楽の指示に七緒は頷くと、抱き抱えていた資料をマユリの前に差し出す。そして差し出された書類のある部分を京楽は指で叩いた。
「ここ。この数ヶ月で君ら十二番隊の現世への渡航履歴なんだけどね。前よりも明らかに多くなってる。何かを隠しているにしか見えないよ」
「ほぅ?」
すると、マユリは目を細めて尋ねる。
「…で?そんなデータと疑いで、私に何を聞きたいのかネ?」
「単純に知りたいのさ。君らが何を企んでいるのか。それと、その子が何者なのか」
そう言い京楽の目が後ろでネムに抱き抱えられている千弘へ向けられる。
「えぇ!?私ですか?」
「ウチの問題児がなんだネ?何者かなんて、霊術院の名簿を調べれば分かる事じゃないかな?」
「調べた上でだよ。彼の住んでいたのは流魂界でも特に治安の悪い『更木』更木隊長と同じところ…。それなのに霊術院ではずっと中間のクラス。卒業後は即座に十二番隊入り。しかもその日から君の黒い噂は少しずつだけど業を潜めた。
それはつまり、人体実験もやっちゃう君が、それすらほっぽり出すほどのモノをその子は秘めている………としか考えられなくてね。
それに何よりも、藍染惣右介の口から、彼の名前が出た。
これ以上の事はない」
「それだけかナ?それだけの情報なら奴は___」
「いや、待った」
マユリが答えようとした瞬間 京楽は手を前に出す形で遮る。そして、目を細めると、今までで最も疑わしい情報について尋ねる。
「先にもう幾つか、疑問に思うことを伝えておくよ。何なら、これが本当に聞きたかったんだ。
まず1つは千弘くんのような強さを持つ死神を…なぜ今まで発見できなかったのか、卯ノ花隊長ならそんな情報聞くや否や飛び出す筈さ。
2つ目は、千弘くんが霊術院に入学した日…それは霊圧の乱れが生じた日だ。
そして3つ目…___
______千弘くんから僅かに『地獄の燐気』を感じたこと…」
そう口にした京楽と、隣で聞いていた七緒も息を呑む。核心を突くかのようなその質問に、マユリの反応を見ていた。
「涅隊長なら、何か知ってるんじゃないかな…?それに、仮にその子が地獄と関わりがあるとして、そんな子がなぜ涅隊長に従っているのか、そして何を研究しているのか?」
だが、マユリは驚くどころか、目の色一つ変えなかった。
「…」
その反応は、
“何を言っているのか?”と本当に知らなかったのか、
はたまた
“そんな事か”と当たり前かのように思っているのか__。
「(どっちなんだい…?)」
どちらとも取れぬその様子に、確証が掴めない京楽は組んだ両手に顎を置きながら伺う。
すると
「はぁ〜やれやれ。そこまで知られているのならば、話さなければ後々、面倒になりそうダ。仕方ないから教えてやろう」
「…!!!」
溜め息と共に、マユリの口から告白の言質が出された。そして了承したマユリは様子を変えることなく、語り出した。
「まず我々が行おうとしているのは_____」
その時であった。
『隊長!!!』
突如としてマユリの持つ通信機から着信音が鳴り響き、マユリは説明しようとした口を止めると、ボタンを押して通話に出る。すると、その通信から阿恨の声が聞こえてきた。
『緊急事態です!今すぐ研究室へ!!』
「なんだね。私はいま忙しいのだヨ?用件を言いたまえ」
『魂魄のバランスが…大きく狂っています…!!』
「なに…?」
その通信を聴いた直後、すぐさま通信を切るとマユリは椅子を立ち上がる。
「話はまた別の機会に頼むヨ。まさか、引き止めるなんて、ないよネ?」
その疑問に対して京楽は落胆しながらも頷く。
「あぁ。だけど、いずれ必ず話してもらうよ?」
「分かっているサ」
その口約束を守るかは疑わしいが、彼が了承の声を上げることを確認すると、京楽はマユリを見送った。
そんな中、京楽の目に、マユリの跡をついて行く千弘の姿が目に止まる。
「千弘くん」
「…はい」
声を掛けると、千弘はゆっくりと振り返る。その雰囲気は先程とは一変していた。それは、自身が彼の地獄の燐気について触れた時からだ。
その反応から読み取れるのは___
____確実に地獄と関わりがあるという事だ。
だが、見せた表情からまるでそれについて触れられた事を不快に思っているかのようであった。ここで無理に言及するのではなく、敵対させないように、優しく声を掛ける。
「やむを得ない事情があるんなら、それも正直に話してね」
「…はい」
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「ぷはぁあああ!!!」
マユリがいなくなると、京楽はその場に倒れ込み大きく息を吐いた。
「隊長!?大丈夫ですか!?」
「あぁありがとう七緒ちゃん…どうも緊張の糸が切れちゃってねぇ」
駆け寄ってくる七緒の手を握る形で、体勢を直した京楽は、濡れタオルで額を拭う。
「信じられないよ…まさか身内にこんなとんでもない逸材がいたなんてね…藍染元隊長が名前を出すくらいの事はあるよ…」
「…私もです」
同意する七緒の額からは、大量の冷や汗が流れ出ており、目も震えていた。
「よく耐えてられたね」
「はい…自分でも意識を保っていられたのが不思議で…」
京楽は先程の千弘から感じられた霊圧を思い返すと、額に敷いた濡れタオルを持ち上げる。
「こりゃまた…一悶着ありそうだよ」