孫悟天に憑依したので最強を目指す 作:なっき
ぐ、ぐ……ぐぎぎぎぎぎぎ。
死ぬ気でバリアを展開しつつ、二人の動きを一瞬たりとも見逃すまいと目を血走らせて凝視する。
「いくぞっ! カカロット!!」
「ああ!! ベジータ!!」
そう言うや否や二人の姿が消える。
超サイヤ人2の自分ではその動きを追う事は出来ない。
二人の姿を見つける前に凄まじい気同士の衝突が衝撃波となってバリア全体を揺らす。
――――っ!?
その衝撃の大きさに意識が吹き飛びかける。
何とか意識を保ちつつ衝撃波の発生源に視線を向ける。
父さんとベジータさんは互いの拳を突き合わせる形で膠着状態にあった。
二人が互いにパンチを繰り出した結果だろう。
動きは止まっているが、二人の拳の間にはとてつもないエネルギーがぶつかり合っていることが、この嵐のようにまき散らされる気から容易に想像できる。
「負けるかああああああ!!」
「はぁああああああああ!!」
叫びながら、全身に血管を浮かび上がらせ絶対に負けないと言わんばかりに全力を込め続ける。
気合と気合のぶつかり合い。それは見ているこちらの戦闘意欲を刺激するほどのもの。
互いに一歩も譲らないその膠着状態は突如破られる。
一瞬。
ベジータさんが拳に込める力をほんの僅かに抜く。
全力がぶつかり合う中でのバランスの崩壊。下手をすれば自滅に追い込みかねない行為。しかし、ベジータさんは寸分の狂いなく思い描いた力配分を実現させる。
これにより、父さんの体勢が僅かに前傾に崩れる。
ドンッ!!!!!
そこへ、ベジータさんの渾身の膝蹴りが父さんの腹にモロに入り込む。
……ように見えた。
音で分かったが、ベジータさんの膝蹴りは空を破裂させたに過ぎなかった。
しかし、そこには確かに体勢を崩した父さんの姿があり、ベジータさんの膝蹴りは命中しているように見える。
ベジータさんはこの不可解な現象に顔を顰める。
――残像拳だっ!!
俺がその不可解な現象の正体を大興奮ながら突き止めたと同時だった。
いつの間にかベジータさんの後ろに回り込んでいた父さんは両腕を大きく振りあげ両手をハンマーのように組み、「はぁっ!!」という叫びと共に思い切り振り下ろす。
「ぐぉっ!?」
それがベジータさんの背中に見事命中。
そのまま吹き飛ばされると思いきや、ベジータさんは気を全力で解放し、意地でその場にとどまると、即座のカウンターに打って出る。
この動きは予想外だったようで父さんの反応が一瞬遅れる。
ベジータさんが繰り出した拳はそのまま父さんの顔に吸い込まれていき命中する。今度は残像ではない。
血を口から吐きながら、苦悶の表情を浮かべる父さん。しかし、こちらも同様、すぐさま反撃に打って出る。
そこからはやってはやられの応酬。
地球すらも揺るがす戦闘力の持ち主二人のぶつかり合う姿は神々しいとさえ感じた。
……はぁ、……はぁ、す、すごい……すごいっ!
俺の心臓が破裂せんばかりに鼓動する。
それはまるで全身が悦びに震えている様だった。
これだよ。これが見たかったんだ!!!!
これが超サイヤ人3!!
どうしても直接これを見たかった!!
何となく分かってきた、超サイヤ人3が!!
もう少し……もう少しで超サイヤ人3を掴めそうな気がする!
バリアを展開し続けている反動と興奮が最高潮に達した俺の目と鼻からは血が滴る。しかし、そんなことはどうでもいい。
今は戦いの行く末を最後まで見守ることだけに全力を注ぐ。
30秒が経過した。
それだけの短い時間に二人の攻防はいったいどれほど繰り返されただろうか。
「……こいつはどうかな?」
突如父さんから距離をとったベジータさんが不敵な笑みを浮かべ、右手を前に突き出し、親指、人差し指、中指の三本の指を真っすぐに伸ばし、父さんに狙い澄ます。
膨大な気を指先に凝縮させている。俺の気のコントロール力では同じ芸当はできない。
これは、対魔人ブウ(善)戦で見せた気を弾丸のように飛ばす技だろう。タフな魔人ブウを倒すために繰り出された極めて殺傷力の高い技だ。
それを父さんも感じているのだろう、警戒するようにベジータさんの出方を窺う。
次の瞬間。
ベジータさんの指先から気の弾丸が射出される。
「いっ!?」
俺には見えなかったそれを父さんは焦ったような反応を見せつつも反応し、上体を逸らして避けた。受けるのではなく避ける選択をした父さんは流石というべきだろう。ベジータさんの攻撃は父さんの顔を掠る程度に終わってしまう。
しかし攻撃は一撃で終わらない。避けられることも想定内とばかりにベジータさんは気の弾丸を次々と連射し続ける。
父さんはその場を離れて距離を取ると、気の弾丸を次々と弾き出した。もう技を見切ったらしい。天才かよ。
ちなみに弾かれた気の弾丸は全てバリアを貫通してしまった。とてもじゃないが防げるものでは無かった。地球に降り注ぐ軌道を描いていたものは兄ちゃんとトランクス君がうまく処理してくれた。
これ以上の攻撃は無駄と判断したベジータさんが攻撃を中断する。
一瞬、沈黙が二人の間に立ち込める。
残りは20秒ほど。
二人の視線が交錯した後、共ににやりと楽しそうに笑みを浮かべる。
まるで考えていることは一緒だなと言うように。
ベジータさんと父さんが大地へと降り立つ。俺も地上近くまで高度を下げる。
何をするつもりだ……?
やがて二人は同時に気を高め、ゆっくりと構えを取る。
こ、これは……『ギャリック砲』と『かめはめ波』……!?
まさか自分の目でこの技のぶつかり合いを見ることができるなんて。
「いくぞ!! カカロット!! これで最後だ!! 今度は絶対に負けんぞ!!」
「オラだって!! こんなワクワクする勝負、絶対に負けるわけにはいかねぇっ!!」
今日一の気の高まりにバリアを維持することが益々厳しくなっていく。とんでもない気だ。バリアをしているにも関わらず、地球全土が震えている。恐らく地球中パニックではないだろうか。
まるでこの世の終わりのようだ。
しかし、バリアを展開し続け全身が悲鳴を上げているにも関わらず俺の興奮も上限突破する。
「ギャリック砲っーー!!!!」
「かーめーはーめー波ぁっーー!!!!」
ベジータさんからはギャリック砲、父さんからはかめはめ波が打たれ、それが二人のちょうど中間地点でぶつかりあう。
ドオオオオオンンンン!!!!!
大爆音と共に衝撃波が周囲に伝搬していく。
バリアがもう限界だと言うようにどんどんとひび割れていく。もう持たない。
しかし、バリアが解除されてしまっては地球上への影響は甚大だ。
……ぐ、ぐぐぐぐ、あああぐぐぐぐ。
全身がバラバラになりそうだった。
体のあちこちから血が噴き出し、肉が千切れ骨もミシミシといつ折れてもおかしくない。これまで壮絶な修行を行ってはきたが、それでもこの苦しみに勝る経験をしたことはない。
兄ちゃんとトランクス君も後は俺達がどうにかやるから悟天は休めなんて言ってきているほどだ。
そんな状況であるのに。
いつ死んでもおかしくない状況なのに。
……は、はははは、なんて気だ!!!!
凄い……俺もこんなに強くなれるんだ……!!!!
俺は喜びに打ち震えていた。
自分が心からの笑顔を浮かべていることが分かる。
バリアを解くなんてとんでもない。
バリアを通して俺は二人の力を見極めてみせる。
例え瀕死になっても仙豆かデンデの回復能力でなんとかしてくれるだろう。
……いや、死んでも構わない。
ここで死ぬのなら俺はそれまでということ。
父さんとベジータさんは一歩も引かない。
全くの互角。
残りは10秒。
ぶつかり合う力はその中心部で、エネルギー密度を高めていき、どんどんと輝いていく。
残りは5秒。
父さんとベジータさんも限界に近いはずだが、決して力を抜かない。それどころかどんどんと力を増していく。これがサイヤ人としての底力なのかもしれない。
残り……
3秒
2
1
「うおおおおおおおおおおお!!!」
「はあああああああああああ!!!」
0。
二人の全身全霊の叫びと気の放出を最後に辺りが光で包まれる。
それを最後にあれほど感じていた気の奔流が止む。同時に俺もボロボロになっていたバリアを解き、地面に降り立つ。
血をだらだらと流し、意識が朦朧としつつも、戦いの結末がどうなったか見ていると、光が徐々に収まり二人の姿が見えてくる。
打ち消し合った互いの攻撃の残留がダイヤモンドダストのように降り注いでいる。
ベジータさんも父さんも超サイヤ人3の姿を解いていた。
そして二人とも疲労困憊で荒い息をついているもののしっかりと立っている。
引き分け……か?
俺がそう思った次の瞬間だった。
父さん……孫悟空が片膝をついた。
「――え?」と、父さんは驚愕の表情を浮かべ自身の膝をついた足を見つめている。
何が起きたのか理解できない、というように。
意識せずに勝手に体が勝手に動いたのだ。
体が自然と、ベジータさんに負けたことを認めたのだ。
天国で修行を続け、疲れづらい死後の体を持つ父さんにベジータさんが勝ったのだ。
一方のベジータさんは、そんな父さんを見て目を見開き驚いている。
ベジータさん自身も信じられないといったように。
やがて事態を理解できたのだろうベジータさんは静かに天を仰いだ。
ベジータさんがどんな表情を浮かべているのかは見えなかったが、ベジータさんの目のあたりで太陽光が何かに反射してキラリと光ったのが見えたような気がした。
そんなベジータさんの姿を見たのを最後にとうとう俺の体力が限界を迎える。
……ああ、この戦いを見れたことに感謝だ。
この世に来れて良かった……。
そんな感想を想いながら、倒れた。
意識が途切れる寸前兄ちゃんが駆け寄ってきてくれるのが見えた。
「……は、ははは、参った……ベジータ……おめぇ、本当に強くなったな」
悟空がどかっと地面に座り、乾いた笑いを零しながら、ベジータに称賛の言葉を投げかける。
「……ふん、当然だ。俺は誇り高きサイヤ人の王子なんだ」
そう答えながらベジータは悟空の元に歩きながら近づく。その表情はいつもの力のこもったベジータのそれだった。
「……へへへ、そうだな。オラも負けてられねえな。もっと修行して強くならないと」
「……それよりもだ。悟天に早く仙豆を食べさせてやれ。死ぬぞ」
「えっ!?」
悟空がベジータの指さす方に視線を向けると、そこには血まみれになった悟天を抱き上げ慌てて悟空の元に駆け寄ってくる悟飯の姿があった。
「と、父さん!! 早く仙豆を!! 悟天が死んじゃいます!!」
「お、おう、そうだな。確かにやべーな」
そう言った悟空が懐から袋を取り出し仙豆を手の平に載せる。それを急いで悟天に食べさせようとした時、悟空の動きが一瞬止まった。
その理由は、悟天が満面の笑みを浮かべて気絶していたから。
これだけの傷。全身には苦痛以外の感覚は無いはず。それなのにこの表情。
悟空は全身に電流が流れる様な感覚に襲われる。
……悟天、おめえは、やっぱりオラの息子だ。
悟空が心の中でそんなことを想いながら仙豆を口に入れて無理やり飲みこませる。するとたちまち、悟天の傷が癒えていく。
「二人とも、いくら全力で戦いたいからって悟天のことも考えてください! あんな戦いを悟天のバリアで防ごうとするなんて!!」
すると普段温厚な悟飯がベジータと悟空に激しい怒りを見せる。
「……俺は悟天ならできると思って頼んだんだ。……それにこれは悟天、そしてトランクスが強くなる為でもある」
怒る悟飯を前にベジータは淡々とそう答えると、「俺は戻る。ブルマが怒るだろうからな」そう言い残し、飛び立ってしまう。
「あ、ベジータ、オラの瞬間移動で……っていっちまった……」
悟空がしょうがねえなと言うように悟飯のほうに振り返る。
「……あー、まあオラも悟天には申し訳ねえと思ってるよ。でもオラもベジータと同じだ。悟天なら問題ないと思った。それに悟天も喜んでいるようだったしな」
そう答える悟空に悟飯は「まったく二人は……」と言いつつも悟天の嬉しそうに寝ている姿を見て怒りを収めた。
「あー、でも悔しいな……。オラ、本当にいっぱい修行したんだけどなー……。次目指すのは超サイヤ人4なのか? そんな形態があるのか分からねえけど……」
そう言いながら悔しがる悟空の姿を悟飯はじっと見つめ、考える。
そして質問する。
「父さん、一つ聞いてもいいですか?」
「ん? どうした悟飯?」
悟空が悟飯を見つめる。
悟飯は改めて悟空を顔をじっと見つめた後、意を決して問う。
「あの超サイヤ人3という形態のことです。あれがサイヤ人の正しい進化だと思いますか?」
質問を受けた悟空はキョトンとした表情を浮かべる。
そして悟飯の質問の意図を理解してかしていないのか、悟空は嬉しそうな表情を浮かべる。そしてこう答える。
「……少なくともオラにとっての最善の進化は超サイヤ人3だと思う。悟飯、おめえはどう思うんだ?」
今度は悟空からの質問。
それに対し、悟飯は考えながら答える。
「分かりません……。ただ、僕は超サイヤ人3になろうと思えばなることができると思います……」
……っ!?
悟飯の答えに満足した悟空はごろんと寝転がる。
「ははは、流石悟飯だ。オラがあれだけ苦労してなった超サイヤ人3にあっさりなれるって言うんだからな……。でも悟飯、おめえがそんな質問をするってことは思うことがあるんだな?」
「……どうなんでしょうか。何か違和感があるんですよね……。すみません、こんな曖昧な質問をしてしまって。自分でもよく分からなくて」
悟飯がなんとも言えない表情を浮かべて歯切れ悪くそう言う。
そんな悟飯に向かって悟空は、やはり嬉しそうにワクワクするようにこう続ける。
「正直オラには悟飯がどんな世界を見ようとしているのか分からねえ。ただ、その違和感はしっかりと調べた方がいいと思う。これは父ちゃんの勘だ!」
「あはは、父さんの勘なら馬鹿にできませんね。……ありがとうございます。少しスッキリしました。父さんに聞いて良かったです」
悟飯が笑顔を浮かべて悟空にそう答える。
……おいおい、まじか。
凄い話聞いちゃった……。
とっくに意識を取り戻していた俺は兄ちゃんの腕の中で密かに興奮していた。
……お久しぶりでーす。
相変わらず投稿頻度がくそで申し訳ないです……。
続けたいと言う想いはあります……。