ヘルライジングホッパーを活躍させたかったんだ…!

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夢に出てきたからっていう理由で書いた量じゃない(15730文字)


血より紅い戦士は英雄の夢を見る

 

 

「アハハハハッ!」

 

 魔女の、嗤い声が聞こえる。

 

 ここは地獄か、あの世か。いや、もうそんなもの関係ない。

 

「行きなさい!バーサーク・ライダー!すべて、己諸共まわりにある命全てを破壊するのよ!」

 

 パチパチと火が燃え盛る。命を薪の代わりにして死体を照らす。それは人を包む、地獄の業火。死臭をも掻き消す炎。後に残るのは人の形をした炭素だけ。

 

 痛い。痛い。誰か、誰か、誰か!誰か助けてくれ!誰か!俺を――!

 

『ヘルライズ…!!』

 

「変…身…」

 

『オーソライズ…!!』

 

…あ…あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

『プログライズ!!』

 

Hells energy as destroy the world.(世界を滅ぼす地獄の力!)

 

 

 骨が軋む。肉が裂ける。血が溢れ、鈍痛が脳を支配する。

 

 

『HELL RISINGHOPPER!』

 

 

 

『HEAVEN or HELL it doesn't matter.』

 

 

 決壊する。押し留めていたものが、ダメ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ呑まれる怖い怖い怖い怖い怖い――

 

 

 

 

 

 

 

 

 壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ

 

 

 

 


 

 

 第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン。

 

 竜の魔女ジャンヌ・オルタが召喚した多くの狂化が付与されたサーヴァントにより恐怖がばら撒かれたフランス。

 

 この特異点を修復するべくレイシフトした私達は現地で現界したルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクや他の様々なサーヴァントたちと共にこの特異点の元凶であるジャンヌ・オルタを止める為オルレアンへ向かっていた。

 

「ワイバーンの群れが多い…!」

「引き返すわけにはいきません!突破しましょう!」

「先輩は盾の後ろにいてください!」

 

 アマデウス、ジャンヌ・ダルク、マシュの順で言う。三人とも目線を空を埋め尽くすほどの大群で群れをなすワイバーンから離さず覚悟を決めているようだ。

 

「ギシャァァァ!」

「!ワイバーンに見つかりました!いっきに突っ込みましょう!」

『みんな!わかってると思うけどなるべく迅速にね!』

「後ろからまだまだ来るぞう!」

「――!戦闘隊形!ゲオルギウスさんを先陣に突っ走ろう!」

 

 近くに潜伏していたワイバーンに対応が若干遅れたがすぐに指示を出す。

 

「汝は竜――」

「ギシャァァァギシャァァァァァァ!ギシャ――」

 

 

 

 

 

「アアアァァァァァァァァァァァァァァアア!!!」

『ヘルチャージ!』

 

 

 

「ギャ?」

 

 

 

グ イ ン パ ク ト

 

ドゴォン!!!

 

「「「――!?」」」

 

 凡そ人のものとは思えない、まるで獣の雄叫びのような絶叫と共に飛来した禍々しい渦がワイバーンの群れとその先にあった丘を呑み込んだ。

 

「な…!」

『何が起きたんだい!?膨大な魔力の反応を感知したと思ったら地表が…それどころか幻想種まで消えて…!?』

『た、大変だ!抉れた地表から特異点の消滅を確認した!消滅速度はかなり遅いけど、このままじゃ特異点を修復する前に特異点が消滅して手遅れになる!』

「手遅れって…そんなにやばい状況なの今…!?」

 

 ロマニ達の通信に驚く。地面を見ると確かに抉れた箇所から塵になって宙に消えて行っているのが分かる。

 

「殺せ!殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!殺せぇ!」

『霊基確認!ライダーです!』

『ライダー…相当な量の宝具を所持している可能性がある!ライダーは多種多様な宝具を持っている事例が確認されているからね!臨機応変に、そして迅速に対応するんだ!』

 

 叫び声のする方角を見るとそこにいたのは人の形をした怪物。複眼のような瞳を持ち、血に濡れたような真紅の鎧を纏う戦士。

 

 その怪物が放つ異様なまでの禍々しいオーラに対し反射的にカルデアの戦闘服に備わっている機能を稼働する。

 

「来て!――――アルトリア!」

「――カルデアのモニターで状況は把握しています。急いでいるのでしょう?それなら――宝具を開帳しましょう」

「わかった!令呪を以て命ずる!『聖剣を解放して』!」

 

 私は元は一般人。カルデアに来る前までは魔術なんて関わったこともない素人なので魔力量が乏しい。だから魔力コストを削減するために戦闘時簡易召喚システムを使い、カルデアにいるサーヴァントを一時的に召喚し戦ってもらっている。

 

 私が呼んだのは特異点冬木で戦った黒いアーサー王ではない、青いアーサー王だ。

 

「これは、人理を護る戦いである――!」

「ガッ――ガァァァァァァァアアア!

 

 アルトリアの聖剣の光りが強くなる度に、怪物が産むドス黒いオーラは深く、深い闇になって行く。

 

 

 

約束された(エクス)――!」

「アアアァァァァァァァァァ!」

 

 

 

 

 

「――勝利の剣(カリバー)!!!」

 

 

 一筋の光の束が怪物を呑み込む。

 

「す、凄まじい威力です…!」

『流石、伝説の聖剣…』

 

 マシュ、ロマニが圧倒されたように言う。だが…

 

「…いいえ…まだ、まだ奴は生きています。マスター」

「…え?」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ、やめろぉぉ!

「我が旗よ、我が同胞を守り給え!」

 

 

ヘ ル ヒ ー ト

 

 

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

 

 怪物の赤熱化した鎧から放たれる、大地を削りながら迫る熱波から私達を守ってくれたジャンヌの宝具。

 

 目の前で地面が消えて行く光景は見ていてゾッとするものだ。ジャンヌがいなかったら私達は地面と一緒に消えているんだぞと伝えてくる。

 

「コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ――!」

「先程の技を連続して放たない、ということは今が攻め時の筈です!勇者ジークフリート、合わせてください!汝は竜、罪ありき!

「承知した。邪悪なる竜は失墜し、世界は今洛陽に至る!

 

 先程の熱波の反動だろうか。怪物は動かない。その隙を突くようにゲオルギウスが怪物に竜属性を付与し、ジークフリートと共に左右から挟みながら接近する。

 

力屠る祝福の剣(アスカロン)!!」

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

 竜殺しの伝説を持った二人のギロチンが怪物に迫る。ゲオルギウスによって竜属性を付与された上、真エーテルを凝縮し剣に纏わせた宝具を受けるとなると怪物もひとたまりもない筈だ。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「ガ――ガァァァ!?」

 

 ガキン!

 

「なに!?」

「宝具を片手で防ぐか…!」

 

 二人の宝具を怪物は咄嗟に片手で防御し受けきった。宝具の中には特定条件を満たさないとダメージを与えることが適わないものがあるらしい――ジークフリートも背中に攻撃しないとダメージを与えられない――が、怪物もそういう宝具を所持しているのではないかと疑わしくなるほどの耐久力だ。

 

「あ…あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」

 

 けれど怪物は痛がっている。つまり、怪物にダメージは必ず入ってる…!

 

「…!痛がってるってことはダメージは入ってる筈!!アルトリア!追撃して!」

「わかりました」

「清姫とエリちゃんはジークフリート達の攻撃に巻き込まれないよう後ろにさがってて!念のため宝具を撃てる準備を!」

「「わかったわ子イヌ!/わかりました安珍様!」」

 

 

 


 

 

「あの…どんな願いでも叶えてくれるって本当ですか…?」

「えぇ、本当ですよ。貴方が死んでしまったのは私達の不手際です。お詫びとして転生特典をお付けする。そうお話しました」

 

 白く、何もない広い空間に二人。俺こと緋色アルトと、女神を名乗る奇麗な女の人。

 

「じゃ、じゃあ…『仮面ライダーに変身出来るベルト』ってのは良いですか…?」

「勿論です♪」

「本当に!?あ、いえ…本当ですか!?でしたらそれでお願いします!」

 

 俺は仮面ライダーに憧れる一般中学生。変哲もないただの学生だった。

 

 学校帰りの途中で事故に遭い、死んでしまった。

 

 だけど、本来なら俺はあそこで死ぬべきではなく女神様のミスで死んでしまったらしい。そこで女神様は俺を死なせてしまったお詫びに、別の世界に転生する権利を与えてくれるとのこと。

 

「俺、周りに子供みたいって嗤われるのが嫌だから言えなかったけど…正義の味方に憧れてるんです!」

「では、『仮面ライダーに変身出来るベルト』を転生特典にするということでよろしいですね?具体的にはどのようなベルトが良いですか?」

「あ、じゃあ…仮面ライダーゼロワンでお願いします!名前が同じなんで気に入ってるんですよ」

「わかりました」

 

 要望を女神様に伝えると、女神様は両手を合わせ目を瞑る。すると、突如光が俺の目の前に出てきて俺の胸の中に入っていく。

 

「お…おぉ…」

「はい。これで特典は与えられました。では、転生先の世界について説明しますね」

「あ、はい!」

 

 女神様曰く、俺が行くのはふぇいとぐらんどおーだーというゲームに似た世界らしい。なんでも、人理焼却という世界が滅びるレベルの出来事が起こっているらしい。

 

「貴方はその力を誰かのために使うのが良いと思ってこの世界に転生させることにしましたが…よろしかったですか?」

「はい!その世界でお願いします!」

「良かったです♪その世界には抑止力というものがありますので、そちらに保護してもらってください」

 

 抑止力…なにかの組織だろうか…?

 

「これで転生前の手続きは終了です。では良き人生を!」

 

 あ、抑止力について聞くの間に合わない、意識が薄れて――

 

 

 

 

 

 

”嫌だ…私は子どもたちを殺したくなんてない…!!”

 

 声が…聞こえる…ここは…どこだろうか?

 

“誰か…誰か…!!“

 

 ここが、女神様の言ってた『座』っていうところ…なのかな…?それじゃあこの声はさーゔぁんとさんの声…?

 

『困ってるの?』

 

“だ…だれだ…!?“

 

『困ってるなら、助けてあげるのが正義の味方だよね…』

 

“た…助けてくれるのか…!?恥を忍んで頼む!お願いだ!私を助けてくれ!“

 

『わかった。いいよ』

 

“本当か!“

 

『誰かの助けを求める声に応えるのが、仮面ライダーだからね』

 

“仮面…ライダー…?“

 

 俺は声のするほうの反対側に向かい、7つある扉のうちの一つを開いた。

 

『それじゃあ…行ってきます!』

 

“こど…も…?ま…待ってくれ!まさか、助けるというのは私の代わりに――!?“

 

 

 

 

 

「誰か…助け…」

「お母さん!お母さんってば!起きて、起きてよ!」

「悪魔だ!みんな逃げ――」

 

「…え?」

 

 俺は、助けを求める人をこの手で殺した。

 

 

 

 


 

 

 

「ふふふ…()がミスをするなんてあるわけ無いに決まってるじゃないですか。それを知らずに…かわいい…そんなあなたにヘルライズプログライズキ―をプレゼント♪『どのフォームに変身するか』は指定されてないですし♪」

 

 

 


 

 

 

 体が勝手に動く。

 

 俺は今、拷問器具を纏った殺戮マシーンになった。

 

 腕を振るうだけで誰かの臓物が弾け飛び。一歩踏み出せば誰かの脳髄を踏み抜く。

 

 腕を振るうだけで自分の筋肉が軋む。一歩踏み出せば足の皮膚が剥がれ落ち爪が肉に食い込む。

 

 誰かを殺す感触と、気絶することさえ許されない程の激痛を同時に味わう。

 

 やがて耐えきれなくなり、破壊衝動に呑まれる。

 

 痛みを感じながらも全てを破壊することしか考えられなくなる。思考が働くようになった時には町を一つ滅ぼしていた。

 

(なんで…俺は、こんなことをするために仮面ライダーになったんじゃないのに…)

 

 近くに転がっていた、とっくに息絶えている男の頭を片手で握りつぶす。ドロッと目玉や脳漿が手にこびりつき離れない。

 

 

壊せ

 

 

(また、か)

 

 意識が鮮明なうちは抵抗して体の動きを鈍らせることができた。

 

 

壊せ

 

 

 だが、破壊衝動に吞まれたらこの体はバンバン必殺技を放つ。死者が大量に出る。

 

 

壊せ!

 

 

(嫌、だなぁ…)

 

 別に、ヘルライジングホッパーを使用する反動で体が痛いのが嫌とかそんなことじゃない。

 

 

 

 

「俺が殺したのに、殺した人の顔もわからないなんてそんなのないだろう…!」

 

 

 

 

 

 

 

「――勝利の剣(カリバー)!!!】

(痛い痛い痛い痛い!なんだ!?今まで破壊衝動に呑まれたら時間経過でしか目が覚めなかったのに、痛みで目が覚めるなんて…何が起こっているんだ!?いや、今大事なのはそこじゃない!まずい!このままだと…辺り一帯が吹き飛ぶ!)

 

 鎧からでる熱を感知して相当拙い状況ということがわかった。

 

(必殺技が…ヘルヒートバーンが放たれようとしてる…!)

 

 劇場版仮面ライダーゼロワンのボスライダーとして登場したほぼ不死身と言える『仮面ライダーエデン』を余波で変身解除まで追いやった必殺技『ヘルヒートバーン』。劇場版で見たとそれはそこまで広く威力が及ぶわけではなかったが、今の俺の体は映画のそれとは比べものにならないレベルで赤熱化している。

 

(グゥッ…!さっきの痛みによる覚醒…もしかして膨大な、それも()()()()()()()並のエネルギーを受けたのか!?止まれ!やめろ!これ以上、犠牲者を増やさないでくれ…!!)

 

 

 

「ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ、ヤメロォォ!

 

 

ヘ ル ヒ ー ト

 

 

 

「コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ――!」

 

 誰か、誰か…俺を殺し(止め)てくれ…!!

 

「先程の技を連続して放たない、ということは今が攻め時の筈です!勇者ジークフリート、合わせてください!汝は竜、罪ありき!

「承知した。邪悪なる竜は失墜し、世界は今洛陽に至る!

 

(騎士…?無茶、だ…仮面ライダーはt単位の力を持つヒーロー…そこらの剣じゃこの鎧に火花を散らせることも出来ない――ガッ!?)

 

力屠る祝福の剣(アスカロン)!!」

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

「ガ――ガァァァ!?」

 

 ガキン!

 

 体が勝手に剣から身を守ろうと二本の剣をそれぞれ片手で受け止め防御する。

 

 俺はあの『ジル』という黒衣を纏った男がかけた『魔術』みたいなもの…というか『魔術』で体を自分の意志で動かすことができない、周りにいる『()()()()()を破壊する』といった趣旨の命令に従わさせられている。だから攻撃をベルトに受けて変身解除するのも出来ない。さいごまで戦うだけ。殺しつくすだけ。俺が…仮面ライダーが負けるなんてことは起こりえない。

 

「あ…あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」

 

 防御の際に折れた骨の痛みに悶える。ヘルライズプログライズキ―は本来変身を想定していない、人間が使うことを想定していないプログライズキーだ。当然人間に都合に良いようにできておらず、動く度に体中の骨や筋肉の繊維にダメージを与えるような欠陥品だ。

 

「…!痛がってるってことはダメージは入ってる筈!!アルトリア!追撃して!」

(違う…違うんだ!君たちの攻撃に痛がっているんじゃない!俺自身の力に苦しんでるだけだ!)

「っ…!っ…!!!」

 

 騎士たちの指揮官らしき人の勘違いを正そうとしても口が動かない。時々体の支配が薄まって口が動く時があるが肝心な時に動かない。

 

「がぁぁぁぁぁぁ!」

(この傷はすぐに回復してしまう!早く逃げるんだ…!…くそっ!叫び声しか出ない!こんなときに女神さまが言ってたさーゔぁんとさんがいれば…!)

 

 ヘルライジングホッパーは体内に膨大なエネルギーを有する。その過剰エネルギーによって動く度に体中の骨や筋肉の繊維にダメージが与えられるのだが、同時にこのエネルギーによって身体の損傷も回復してしまう。中途半端な不死身だ。それも人には制御しきれない残酷なもの。痛みと再生を繰り返す拷問マシーンだ。これを倒すのは女神さまが言ってたさーゔぁんとさんしか出来ないだろう。

 

風王結界(インビジブル・エア)!はぁぁぁあ!」

 

 キィンキィン!

 

 火花が散る。もしかして斬られたのか?剣がまったく見えない。それだけ素早く斬られているのか。

 

(もしかして剣が本当に見えないようになってたりして…そん有るわけ無いか。精神的にまいってるのか…いや、ここは魔術があるファンタジー世界なんだ。剣を見せなくする魔術があってもおかしくない)

 

 だけどそんなしょぼい魔術では俺を殺すことなんてできない。現に痛みを全く感じないのがその証拠だ。一般騎士…いや、魔術を使えるから魔術剣士か。一般魔術剣士では相手にならない。

 

「がぁぁ!」

「「くっ!?」」

「なっ――重、い!?」

 

 身体が勝手に横にいた騎士を吹き飛ばし魔術剣士にパンチを叩き込む。魔術剣士は剣らしきものでガードし二人の騎士と同じく吹き飛ばされるが、剣が折れなかっただけマシだ。剣が折れていたら60tのパンチを体にまともに受けて死んでいた。

 

『竜属性を付与された状態でジークフリートとゲオルギウスを吹き飛ばすなんて無茶苦茶だ!それにアーサー王を軽々しく…筋力はAクラス相当だ!』

「あぁさぁ…?」

 

 アーサーって、イギリスの王様だよね…?でもここフランス…まぁここソシャゲに似た世界らしいからアーサー王なんて言うビッグネームと同じ名前の人いてもおかしくないか。

 

「ちょっとロマ二!?あの怪物の名前まだ特定できないの!?」

『あんな近代兵装の英霊なんて見当もつかないよ!身にまとっている鎧は明らかに機械、それもオーバーテクノロジーだ!今歴史書や神話を漁ってそれらしき人物を探しているが、期待しないでくれ!』

 

 それにしてもこの声どこから…いや、そんな事どうでもいい。この騎士たち一向に撤退する気配がない。ここで俺を倒すつもりなんだ。

 

「行くわよ子イヌ!」

「それでは、私も」

徹頭徹尾の竜頭蛇尾(ヴェール・シャールカーニ)!」

転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)!」

「ご!?がぁ!?」

 

 突如として現れた二匹の竜のうち一匹に尻尾で叩きつけられ下半身が地面に埋まる。さらに身動きの取れない状態でいる俺にもう一匹の竜が火を噴き俺をあぶってくる。

 

(まずい、揺れは直で伝わるから脳が揺れて…意識が…)

 

 尻尾の叩きつけにより脳震盪が起きたらしい。火炙りによる痛みで意識は何とか保てたが朦朧とする。あ、ほんとにやば…意識を保てな――

 

 

 

 

 ヘルライズ空間、展開。

 

 

 


 

 

 

 

「ゴアァァァァァァ!!!」

「「「!?」」」

 

 怪物の雄叫びが聞こえた瞬間、『世界が変わる』。

 

「わおっ!?どうなってるんだいこれ、一面真っ暗になって…まさかっ!?」

「落ち着いてくださいアマデウス殿。これは恐らく――」

『世界の塗り替えを確認した!固有結界、ないしそれに限りなく近い大魔術だ!立香ちゃんは詳しくわからないだろうが説明は後!速くライダーを倒すんだ!』

 

 先程までの草原は何処へやら。辺り一帯真っ暗になった。少し先も見渡せない暗闇、別世界だ。

 

「マシュ殿は下がっていてください」

「ゲオルギウスさん…?」

 

 いつの間にかエリザベートと清姫の宝具チェインから抜け出した怪物を睨みながらゲオルギウスさんがマシュに下がるように言う。ゲオルギウスさんの目は先程までの戦闘中よりも鋭くなっていた。

 

「えぇ、それが良いでしょう。どうやら私達は手加減されていたようです」

「アルトリア…?それって…今までのは本気じゃなかったってこと…!?」

 

 アルトリアの言葉に驚く。複数のサーヴァントを相手にしていただけでもすごいのに、あれで本気じゃなかったってこと…?

 

「ふん!どうだって良いわよ、倒せば良いのよ結局――」

「ァァァァァァァァァアアアアアア!」

「――ぶべらっ!?」

「エリザベート!?」

 

 エリザベートが話している最中なのに、怪物はそんなの関係ねぇと言わんばかりにエリザベートを殴る。腕には禍々しい黒色のエネルギーを纏っており、かなりの威力なのがわかる。

 

「はぁっはぁっはぁっ…ああぁぁぁあああ!」

「さっきまでの速さと全然違う…!」

 

 さっきまでは目で追える範囲の速さだったのに、英霊であるエリザベートが対応できない程度に速くなっている。

 

「マスター!魔力支援を!約束された勝利の剣(エクスカリバー)をもう一度あのサーヴァントに喰らわせます!」

「そうですね。あの強固な守りを破るには宝具しかないでしょう」

「了解、それなら僕は君たちの支援をするとしよう」

 

「ああぁぁぁあああ!壊す!壊せ!壊れろぉおおおおお!あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」

 

「…僕何時死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)したっけ?」

「それになんかさっきより喋るようになったね…」

 

 エリザベートを殴った腕を抑えて蹲る怪物。さっきから怪物の様子が色々と変わりすぎて困惑してしまう。

 

「勇者ジークフリート殿、私がまず先陣を切ります。宝具の開放は可能ですか」

「十数秒ほど時間があれば可能だ」

「では私がアスカロンで時間を稼ぎましょう。――行くぞ!幻影戦馬(ベイヤード)!」

 

 霊体化を解除して現れた馬に跨ったゲオルギウスさんが怪物めがけて駆ける。

 

力屠る祝福の剣(アスカロン)!!」

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!消えろぉぉおおお!」

 

 ゲオルギウスさんは凄まじい勢いでアスカロンを投擲し、怪物は真っ向からそれを受け止める。アスカロンの勢いは完全に抑えられダメージは入ってないようだ。だが、

 

「ハァッ!」

 

 騎乗しているベイヤードで怪物に体当たりし、アスカロンを奪い取って怪物を何度も切りつける。

 

「壊す…壊す…!コワス!!

幻影戦馬(ベイヤード)の体当たりを受けて五体満足とは…ですが狂化を付与されている以上私が有利です」

「ガッ!?」

 

 ゲオルギウスさんはつかみかかろうと迫ってきた怪物の腕をベイヤードから飛び降りることで回避、飛び降りる際に怪物を斬りつけ怪物を翻弄している。

 

「攻撃も見切ることは安易、こちらから攻撃できる程度に隙もある。頑丈すぎなのが問題ですね…」

「ちょ、ゲオルギウスさん!?何で立ち止まってるの!?後ろ後ろ!」

「安心してくださいマスター、なにせ十分に――」

 

 棒立ちしているように見えるゲオルギウスさん。怪物に背を向け歩き出すので思わず叫んでしまうがゲオルギウスさんは飄々とした様子。

 

「私は時間を稼げましたので」

「アアアァァァァァァァァァァァァァァアア!!!」

 

 ざっ…

 

「その通りだマスター」

「ジークフリートさん!」

 

 ジークフリートが私の前に踏み出し剣を構える。

 

(そっか、ゲオルギウスさんが隙を見せたのって怪物の注意を引くためだったんだ…)

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

「アアアァァァァァァァァアア!?」

 

 背を向けるゲオルギウスさんに襲い掛かろうとしている怪物に魔力の波が放たれる。

 

「一足遅かったらライダーの攻撃を受けることになっていたが…」

「もちろん、あなたなら間に合わせてくれると信じての行動ですよ勇者ジークフリート。あなたなら私に宝具を間違えて当てるということもないでしょうし」

「…そうか…」

 

 なかなか無茶な賭けをしているゲオルギウスさん。

 

「ぐ…がぁ…!!!」

 

 だがその賭けのお陰で怪物はジークフリートさんの宝具を受けて硬直している。弱っているのかな?今なら…

 

「アルトリア!宝具を開放して!」

「わかりました!」

 

 生命力を魔力に変換してアルトリアの宝具を解放させる。今度こそライダーも倒れる筈だ。

 

約束された(エクス)――!」

 

 アルトリアの宝具が放たれ――

 

 

『ヘルチャージ!』

 

「…え?」

「シ、ネ。コワレロ」

 

 目の前に現れた血走った瞳のような複眼を持つ異形、先程まで硬直していたはずの怪物がこちらに腕を伸ばしてきた。

 

(え?なんでここに、え?ジークフリートさんの宝具で動けないはずなんじゃ?どうして?それに更に速度が上がってる。なんで?)

「――!?マスター!?」

「せ、先輩!!」

(アルトリアはもう宝具が発動して身動きが取れない。宝具を放ったら私も巻き込むから宝具を放つこともできない。マシュは動けるけどマシュじゃこの怪物には勝てない。強すぎる。それにマシュが駆けつけるより先に私が死ぬ。間に合わない)

 

 

 終わった。

 

 どうして近くにいたゲオルギウスさん達じゃなくて私を狙ったのとか宝具を受けて瀕死だったんじゃないのとか、思うことはある。

 

 けれど怪物の手が私に迫る最中、私が思ったのはこれだった。

 

 

(呆気ない、なぁ…)

 

 呆気なさすぎる。これは、あまりにも酷いよ。走馬灯を見る暇すらない。

 

 特異点修復でサーヴァントの近くに立ち、危険な目に遭うことは覚悟していたけれど、こんなのってないじゃない。

 

 まだ、第一特異点。人理修復の旅は、始まったばかり。

 

 けれど、始まったばかりだけれど、私はここで終わる。私は悪くない。運が悪かった。一瞬の隙と油断を綺麗に突いてきた怪物をどうやって対処するかなんて考えつかない。遭遇してしまったことが、運の尽きだったんだ。

 

 

グ イ ン パ ク ト

 

 

「アアアァァァァァァァァァァァァアアアアア!!!」

 

 

 瞼を閉じ怪物の拳を受け入れる。

 

 

 

 ドスッ!

 

「………あ…あれ…?」

 

 いつまでたっても痛みを感じない。かといって死んだから痛みを感じないというわけではなく、今もバクバクと波打つ心臓の音が聞こえる。心臓が動いているということはまだ生きているという事。

 

「なんで、まだ私生きて…」

 

 ゆっくり、瞼を開く。もしかしたらゲオルギウスさんたちが止めてくれたのではないか。二人が違うなら清姫が助けてくれたのか。そんな希望を抱いて。

 

『これは一体…どういうことだい?』

「何という事だ…」

「……」

 

「え?なん、で?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんが困惑したように、ゲオルギウスさんが嘆くように言う。ジークフリートさんは一度目を見開いたあと顔を顰めて怪物から目を逸らした。いや怪物と呼ぶのは正しくない。

 

 私が今まで怪物と呼んでいたサーヴァントは、小さな少年だった。

 

「がっ…ぐ…間に合っ……」

「え?え?なん、さっきまで私より背が高かったのに、え?」

 

 動揺してうまく喋れない。だってそうでしょ?さっきまで2メートル近くはある怪物が、一瞬で私より小さな中学生くらいの普通の男の子に変身したんだから。

 

 その男の子が自分で自分の心臓を貫いてるんだから。

 

 

 

 


 

 

 

 

 意識が戻って、目の前に妙な白い服を着た女の人がいることを確認して。『この人を手にかけたら、本当に終わりになる』と悟った。

 

 

 

 いま、ここで――

 

 

 

 全身をヘルライジングホッパーの回復能力が追い付かないほどに負傷し、神経もボロボロで至る所火傷だらけ。本来なら、というより今までと一緒で、体を動かすこともままならない状態だった。

 

(このひとはたすからない)

 

 諦観。多くの救うべき人たちを惨たらしく殺し、生きようと抗った人たちの救われない最期を見てきた俺はそう決めつけた。

 

(なんでおれはこのひとをころしたらもう()()()っておもったんだろう)

 

 自分の腕が上がり、女の人に向けて振り下ろされようとしているさなか。ふと疑問に思った。

 

 この女の人は多分、さっき俺を倒そうとして立ち向かってきた騎士たちの指揮官…だったと思う。破壊衝動に呑まれたので記憶が朧気だがおそらく間違いない。

 

(たちあがったんだ。かめんらいだーみたいに。せいぎのひーろー(架空の英雄)みたいに)

 

 仮面ライダーなんて所詮妄想、物語のなかの存在。手を伸ばしても決して届くことは無く、だけど物語のなかの存在だからこそ現実ではありえないほどに強い存在。

 

 その『仮面ライダー(絶対的強者)』に負けないよう『仮面ライダー(正義のヒーロー)』のように立ち向かう。

 

(そうか。このひとがしゅじんこうだったんだ)

 

 物語という運命に味方された選ばれし者。大衆に受けがいいように作られた主人公(偶像)。人をあまりにも多く殺しすぎた俺では成りえない、正義の味方。

 

 この世界はあるゲームに似た世界。つまり主人公がいてもおかしくはない。

 

(うらやましいよ、あんたが)

 

 全身ぼろ雑巾になって、骨が砕けて、内臓がぐちゃぐちゃになって、血反吐を吐いて、仮面ライダー(正義のヒーロー)の力で多くの命を奪っている俺とは違う。選ばれた人間。

 

 どうして、俺はこんな目に合ってるのにあなたは指揮するだけなんだ。俺はこんなに苦しんでるのに。

 

 なんでこんなに違う。どうしてこんなに遠い。

 

 妬ましい恨めしい殺したい壊したい。

 

(もういっそ、ぜんぶ『こわしてしまおうか』)

 

 全部壊してしまおう。それがヘルライジングホッパーの本来のあり方なんだから。

 

 この破壊衝動に抗うことは諦めよう。俺は世界に抗う主人公(正義のヒーロー)ではないのだから。

 

 

 

 

 

 

「俺は…俺たちは諦めない…!」

 

 突如思い出すはある男の…いや男達の、守りたいもののために戦う勇姿。

 

 

 は

 

 

 はははははははははははははははははは!

 

 諦める?そんなこと、仮面ライダーがすると思うか?

 

 俺はどうやら血迷ってたらしい。

 

 諦めず、誰かのため、なにかのために戦う。それが仮面ライダーなのに。自分から夢を汚そうとしていた。

 

 力だけでも、ガワだけでも。俺は今、仮面ライダーだ。誰かの平穏と、命が脅かされているのに諦めるなんて、絶対にあってはいけないことだ。

 

 そう。そして、俺は仮面ライダーだ!ヒーローも挫折はする。だけどいつかは立ち上がる!お前にとって今が、立ち上がる、その時!そうだろう?俺!

 

 

 

俺はもう迷わない…迷っているうちに…人が死ぬのなら!

 

 

この体、この新しい生。いくらでも捧げるさ!

 

 

 

グ イ ン パ ク ト

 

 

 腕に力を込める。この腕を振り下ろす相手はこの女の人じゃない。人を助ける、その道を諦めていた俺だ。これは、俺への制裁の意味もある。

 

「アアアァァァァァァァァァァァァアアアアア!!!」

 

 付与された狂化に抗う。体の奥底にある何か(霊基)にピシピシッとヒビが入り、体が悲鳴を上げる。

 

(こんなもの、ヘルライジングホッパーの力の反動で慣れた!それに、誰かを傷つけるときのほうが、心が痛い!)

 

 俺に残った、最後の力を振り絞る。そして――

 

 ほんの一瞬、ほんの僅か。俺の体を縛る狂化が緩んだ。この僅かな緩みでは三秒主導権を握るのも無理だ。だが、俺にはこれで充分。三秒も必要ない。

 

 

 

 ドスッ!

 

 拳が深く胸に刺さる。ズキズキと鈍痛が少し()()()()()

 

 このまま俺は死ぬんだろう。だけど、これでいい。ベルトからヘルライジングホッパーを引き抜いても狂化に呑まれて再び変身してしまう。今、ここで終わらせるんだ。

 

「あ…あれ…?」

 

 アーマーが光り輝き、パッと消える。目線が少し低くなった。本来の俺の身長は150センチ。仮面ライダーゼロワンヘルライジングホッパーは197センチ。大きな差がある。女神様は俺が戦えるよう変身時は身長が伸びるようにしたと言っていたので、身長が元に戻ったということは変身解除したのだろう。

 

 アーマーが消えた瞬間、俺を縛っていた狂化もスッと消えた。もう俺の(霊基)はボロボロ。狂化も一緒に壊れてしまったのだ。

 

 ヘルライズ空間が解除され、黒一色の何もない世界が草と青空のある元の世界に戻る。

 

「なんで、まだ私生きて…?」

 

 アーマーが消えたので体から流れスーツの中に溜まっていた血が溢れる。

 

 溢れた血は血溜まりになり、草と大地を真紅に染める。

 

『これは一体…どういうことだい?』

「何という事だ…」

「……」

「え?なん、で?」

 

 驚き、困惑。そんな感情を宿した視線が突き刺さる。当然だ。今まで戦っていた化け物が12才の子供に変わったのだから…いや、違うか。今の俺の有り様に驚いてるのか。

 

 足の指は有り得ない方向に曲がり爪が割れて肉に食い込み、腕には至る所に裂傷がある。青く腫れ、見ているこっちが痛くなる…って俺が負った傷だから俺が痛いのは当たり前か。

 

「がっ…ぐ…間に合っ……」

「え?え?なん、さっきまで私より背が高かったのに、え?」

 

 「間に合って良かった」、そう言おうと口を開いたまではいいものの、心臓まで腕が突き刺さっているので喉まで血が溢れて声が出ない。

 

「英霊には様々な者がいる。老人から少年まで様々だ。だから、この特異点でサーヴァントが召喚され狂化で無理矢理従わさせられていると聞いてこうなることは予想していた」

「ジークフリート…さん…?じゃ、じゃあ…私達が今まで戦っていたのは…」

 

 耳が聞こえない…耳に血が入ったか?

 

「なんでこの子はこんなにボロボロなの…?平気そうに動いてたよね…?」

「狂化で無理矢理動かさせられていたのでしょう。霊基が自壊しています。狂化に抗ったか、宝具の代償か。或いはその両方か」

「こんなのって…」

 

 何じっくりとこちらを見つめてるんだ。君達はまだやることがあるんでしょう?竜の魔女を倒して、明日を生きるという目標が。なら、ここでゆっくりしている時間はないはずだ。

 

はやく…行っ…ッ!

 

 必死に声を出そうとしても掠れた声が絞りでるだけ。やがて足に力が入らなくなりふらっと倒れてしまう。

 

「あっ…!大丈夫!?」

「マスター!?危険です!あまり近づかないでください!」

 

 あぁ…やっぱり、この人は主人公だ。人の、さっきまで自分を殺そうとしていた人間を本気で心配している。だけど、まだ20歳(はたち)にもなってない俺が言うのは可笑しいかもしれないけど、この人の在り方は危うい。

 

 この人は主人公だけど、ごく普通の人間だ。俺みたいにヒーローに憧れているわけでもなく、心が強いわけでもない。主人公(ヒーロー)になりたくてなったわけでもない。この人はただ生きる、そのためだけに戦うんだ。

 

 

 

 

 よし、決めた!

 

これ…あげ…ゴフッ!これを…渡す…

「え…」

 

 ショートし壊れてしまったベルトからヘルライズプログライズキーを引き抜き、主人公に押し付けるように渡す。

 

俺…は…仮面ライダー…緋色ァルㇳ…カハッ!……貴方のために、貴方を守るために…貴方の未来をぎりひらぐ…だめに…あなだの力に…なりたい…」

「無理しなくて喋らなくていいよ!」

 

 主人公が駆け寄ってきたが、この距離でも声は聞き取れない。もう手遅れだろう。もう体中の痛みも感じなくなり、感じるのは血の池の生暖かさだけ。地面に血が染みて泥になり、俺の体を深く包み込む。血みどろの俺が血泥のベットに…面白くないな。コレ。

 

「はやく…ぃって…りゅうのまじょ…たおして…」

「…!…わかった…私の名前は藤丸立香。カルデアで待ってるね」

 

 なんて言ったんだろう…ふし…?藤…藤丸…?貴方藤丸って言うのね。なんて――

 

(あー、やば…眠くなってきた…これだけでも伝えなきゃ…)

「ふじまる…助けが必要になったとき…いつでも俺を呼んで…力になる…」

 

 こんなボロボロで、格好いいことは言えないけれど。

 

 俺が殺してしまった人たちの分、絶対償うから。

 

 だから、貴方を守らせて欲しい。それだけ。

 

「…行こう、みんな!」

「…!はい!わかりました、先輩!」

 

 

 

(一人で死ぬのは前世と変わりないのに、ここまで寂しいのはどうしてだろうか)

 

 そして、彼女らはオルレアンの白へと向かい駆けていった。何故いつでも呼んでと言ったのか、俺でも分からないが…きっと、また会える…そんな気がしたから――

 

 

 

 

 

(きれいだ…)

 

 俺が最期に見た空は、青く美しかった。

 

 


 

 

「ライダー、緋色アルト。アルトって呼んでください」

 

 

【キャラクター詳細】

史実や神話、伝承などから生まれたサーヴァントでも実際に2016年以前で活躍した人物が英霊となったサーヴァントでも何でもない、15にもなっていない少年の見た目のサーヴァント。彼自身の特性で、受肉した状態で現界している。

 

 

来たる2020年、彼の真実と願いが明かされる。

 

 

 

【出典】???

 

【CLASS】ライダー

 

【真名】緋色アルト

 

【性別】男

 

【身長・体重】145cm・42kg

 

【属性】秩序・善・人

 

【ステータス】筋力A+ 耐久A+ 敏捷EX 魔力EX(C相当) 幸運E- 宝具A

 

 

 

クラススキル・スキル

 

・狂化E-

戦闘中に発揮するスキル。少し痛みが鈍くなるだけで殆ど効果はない。()()鈍くなるだけ。

「え?あんなに怪我してるのに痛くないのかって?えぇっと…平気だよ!」

(清姫さんいなくてよかった…)

 

・道具作成B

飛電ゼロワンドライバーの持つ能力の一つ。作れるものは限られているが数秒で作成できる。

「荷物重たい…ってアタッシュカリバー!?何でここに!?ま、まぁ丁度入れ物が欲しかったけど…ってこれ剣やないかーい!はい!アルトじゃー(以下略)」

 

・対魔力C+

ゼロワンのアーマーの性能が良すぎて魔術に耐性ができてしまった。並大抵の魔術では死ぬことは許されない。

「やっぱ魔法って憧れるなー。琵琶湖にいる指輪の魔法使い!…え?琵琶湖に魔法使いがいるわけないって?ダジャレにそんなに怒らなくてもいいいじゃん…」

 

・騎乗A+

竜以下の何にでも乗れるスキル。やっぱりライダーって言ったらこれっしょ。

「え!?カルデアってお馬さんもいるの!?…あ、いやはしゃいでるわけじゃなくて…やっぱり触ってもいい?」

 

・神性B

女神の加護が魂に結びつき混ざるレベルで一体化してしまった故のスキル。常に女神に監視されている。

「女神様、俺を生まれ変わらせてくれてありがとうございます…よし!今日のお祈り終わり!」

(私が悪意100%でヘルライズプログライズキーを渡したのに気が付かないなんて…なんて…なんて…なんて可愛い(愚かな)の!?惚れ直しちゃう!)

 

・自己回復(魔力)EX

ゼロワンのアーマーの持つ能力の一つ。所有するエネルギーが多すぎて破壊と再生を体内で繰り返す生き地獄となる。

「アアアァァァァァァァァァァァァアアアアア!!!」

 

・単独行動―

受肉しているので効果が全くない。

「ふふ♪英雄は一人で戦い、一人で守り抜き、今日も大切な人たちを思い浮かべながら一人傷つくのでした♪」

 

・加虐体質B

ゼロワンのアーマーの持つ能力の一つ。変身時に時間が経つほど変身者の精神を汚染し、破壊衝動に駆られる。

「シネ!コワレロ!!」

 

・転生主人公(偽)―

『転生』即ち新たな体と生を持って生まれ変わること。受肉した状態で召喚されるので並大抵のマスターが召喚しようとすると魔力が枯渇して死亡する。主人公(ヒーロー)になろうとするアルトを表したスキル。

「誰もがその人生の主人公。なら、俺は?」

 

・戦闘続行EX

ヒーローは、何度でも立ち上がる。

「だれが、諦めるもんか…!!」

 

 

 

宝具

 

ヘルライズプログライズキ―&飛電ゼロワンドライバー

 

ランク:A

種別:対自身宝具

レンジ:0

最大補足:1

『仮面ライダーゼロワンに変身できる転生特典』を持つ緋色アルトのみが使える宝具。変身する際と変身している間想像を絶するような痛みが使用者に与えられる。一度使うとこの宝具が壊れるか使用者が死ぬまで解除出来ない。自滅用宝具とも。女神はヘルライズプログライズキー以外のプログライズキーを渡していない。

 

 

アタッシュカリバー

 

ランク:C

種別:対人宝具

レンジ:50

最大補足:1

カバンから変形する剣。切れ味は良さそうに見えないが以外にスパスパ切れる。

「スパスパ切れる…スパルタクス…はっ!閃いた!」

 

 

ヘルライジングインパクト

 

ランク:A

種別:対人宝具

レンジ:10

最大補足:1

手足に禍々しいオーラを纏い、高速で動き回って殴りまくる。

 

 

ヘルヒートバーン

 

ランク:B+

種別:対城宝具

レンジ:10〜99

最大補足:500

体内で生成されるエネルギーを暴走され爆発させる。体内のエネルギー量によって爆発の威力は変動する。

 

 

ヘルライズ空間

 

ランク:A

種別:対界宝具

レンジ:99

最大:1000

外からの侵入を防ぎ閉じ込める宝具ではなく、入ってきたもの入っているものを殺すための場を用意するための宝具。外からの侵入は自由だが脱出するのは不可能。入ったが最期、怪物とのデスマッチが始まる。

 

 





あるとくん
女神様を盲信しすぎてヘルライジングホッパーにしか変身出来ないことに疑問を抱かない。
「アルトリア?あぁ、生身で俺と戦った凄い人のことだよね?本当に凄いよあの人…え…?彼女はサーヴァント?そんなわけないに決まってるじゃん。サーヴァントなら俺を一撃で倒せるほど強いはずなんだから」
女神がサーヴァントの説明をするときに「彼らはものすごく強い存在です」と言ったため自身に苦戦したアルトリアたちのことをサーヴァントだと思っていない。

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