呪術縁起   作:生乾きの服

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感想ありがとうございます。

書き溜めはあるけど投稿しだすと粗が気になってきて修正に時間がかかります。
修正というかほぼ書き直し。


8.痕跡

 俺は今、深刻なストーカー被害を受けている。具体的には約1ヶ月前から、身長190オーバーの筋骨隆々としたパイナップルみたいな髪型をした大男が付き纏ってくるのだ。

 座学の時間中はともかく、休み時間、呪術の実習中、放課後、飯時に至るまで暇さえあれば俺の前に顔を出してくる。冷静に考えてこれ以上の恐怖はないだろう。

 

 

 『おお、心の友よ、今暇か?ちょっと相談事があるんだが。高田ちゃんのことだ』

 『陽明、飯いくぞー』

 『ハハハ、お前は昔から変わらんな!』

 『ここに2枚のチケットがある。そう、高田ちゃんの生ライブチケットだ。苦労して手に入れたものだが我が親友に1枚譲ろう』

 

 

 なんだろう、ここだけ切り取ると普通にいいヤツっぽいんだけど、アレだ。キッショい。

 距離感がとにかく近い。学校で人との距離の取り方とか学ばなかったのか小一時間問い詰めたい。基本的にパーソナルスペース広めの俺としてはちょっと許容できない事態だ。まあチケットが勿体ないので高田ちゃんのライブには一応行ったけど。

 

 ともかく奴は究極の自己中だ。もはや俺が何を言ったところで奴の脳内では願望に合わせた現実改変が起こり、前世からの親友という俺のポジションは揺るがないだろう。悍ましい…、何だよ昔の俺って、お前と知り合ってからまだひと月ちょっとしか経ってねーよ。事あるごとに親友とか心の友とか言ってくるのがもの凄く鬱陶しいよ。こういう頭のおかしさが術師としては最高クラスの適性をもたらしているというのがまた酷い。

 

 しかしこの閉塞した状況を打破するための手段はある。実行するのは躊躇われたが、もう我慢の限界だ、やるしかない。

 

 「メカ丸ー」

 「なんダ」

 「お前ってもう東堂と話した?」

 「いヤ。お前が付き纏われている姿を見てなるべく近寄らないように心掛けていル」

 

 賢い。ファーストコンタクトから避けるというのはいい選択だ。

 東堂の興味が俺に引かれている分、メカ丸はその他大勢として背景に同化してしまっている状態だろう。

 

 だが結局はそれも長くは続かない。俺に付け入る隙を与えただけだ。

 

 「なるほど。だけど今日の午後、お前と東堂ペアで学外実習だろ?」

 「アレ?確か俺は加茂とだった気ガ…」

 「いやさっき掲示板確認したら東堂とだったぞ。先生にも確認した」

 「そうだったカ。わざわざすまン」

 

 まあ元々三輪と東堂だったんだけどな。女子を東堂と組ませるのはちょっとあんまりだと思います!って訴えたら一発だった。あとはメカ丸が東堂に興味がありそうです、と言っておいた。

 

 「あ、そうそう。東堂って初対面のヤツに決まって質問するから、困ったら『ケツとタッパのデカい女』って答えたら(俺の)面倒がないぞ」

 「…?よくわからんがわかっタ」

 

 若干訝しまれたが俺は努めて平然とした態度を装った。

 

 よし、これでうまく行けばメカ丸の方に東堂の心友値が分散されるはず。

 本当にすまんメカ丸。俺の(カルマ)を一緒に背負ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 何の変哲もない平日の午後、俺は先輩呪術師を伴って学外実習に出ている。新入生の初心者呪術師がある程度現場を熟してきた上級生から現場での立ち回りを学ぶという体の毎年恒例行事。まあ俺にとっては全く必要ない行事ではあるが、ちゃんと真面目に参加しているのはこの先輩呪術師に用があるからだ。

 

 加茂憲紀。呪術御三家の一角である加茂家の嫡男、加茂家次代当主となる予定の男。加茂家は上層部保守派の中核として大きな発言権を持っている。将来利用するために友好関係を築いておくことはマスト、俺が京都校に入学した理由の一つでもある。

 そしてどうやら彼は東堂が苦手、あるいは嫌いらしく、入学以降俺が東堂につきまとわれていたせいで中々関わる機会が持てなかった。ということでこの学外実習を利用してお近づきになろうという魂胆である。メカ丸に犠牲になって貰ったのはついでだ。ついででスマン、今度オイル奢るから。

 

 

 「君のような優秀な術師には私が教えることなどないだろうな。入学時に既に1級昇格が約束されている者など五条悟以来だろう」

 「時期の早い遅いとかあんまり関係ないと思いますけど。加茂さんこそもうすぐ1級への推薦が貰えそうって話じゃないですか」

 「ふ、将来加茂家を担って立つ者として頑張らなければならないからな」

 

 京都の街中を歩きながら雑談に興じる。

 

 この俺の隣を歩く不審者が件の加茂家嫡男。

 加茂家のしきたりか何かは知らないが、平安装束の狩衣をイメージしたような改造制服を身に纏い、長い前髪を両サイドで横に垂らして纏めた妙ちくりんな髪型をしている。あと糸目。ちょっと全体的に平安とか陰陽師なんかを意識しすぎでは?傍から見たらコスプレ野郎にしか見えんのだが。

 

 別にいいんだけどさぁ、俺の主義としてなるべく任務とかでは人の印象に残らないようにしたいんだよね。呪詛師とか相手に警戒されないようにするために。だから制服はノーマルなものに口元と頭を隠すためのフードを付けている程度だ。

 ということで実はこういう目立つ奴とはあまり行動を共にしたくなかったりする。

 

 

 「ところで君は呪術だけでなく座学も成績優秀らしいな」

 「まだ中間テストもしてないですけど」

 「中学の時のだよ」

 「え、何で知ってんですか」

 「期待の新入生のことを調べるのは先輩、ひいては御三家の一角を率いる者として当然のことだ。ましてや君は禪院家に迎えられたのだから」

 

 いや怖いよ。普通わざわざそんなどうでもいい情報なんか調べねーよ。やっぱコイツも頭オカシイ系術師か。

  

 なんか最初は頑張って取り入る気満々だったんだけど、この人勝手に自分から御三家の仲間意識出してグイグイ来るもんだから全然苦労しなかったんだよね。東堂もだけど、呪術師は案外みんな寂しんぼなのかもしれん。東堂と違って害にはならなさそうだからいいけど。

 

 

 取り敢えず目的を達した以上加茂のことはもうどうでもいい。

 俺たちはこれから『窓』の一人に会いに行く。街中で起きている異常の調査に向かうために。

 

 急を要する任務などは補助監督が事前に概要を纏めておいたりしてくれるのだが、呪術師と同じく彼らも数が足りておらず人手不足なのは同じだ。学生の方がまだ時間が余っている可能性があり、一見して緊急性がなさそうな異常の調査、呪術関係の相談事などは低等級の学生が使いっ走りに行かされることもままある。

 今日は最初の実習としてそういったことを経験させられるというわけで、危険性はほとんどないと言っていいだろう。

 

 

 しかし危険がないからといって軽く考えることはできない。

 

 『窓』は呪術を観測する人々で高専の協力者。術師のように呪力を扱えないが呪力を見ることは出来る非術師のことを言う。先天的に見える者もいれば、臨死体験などで精神的、肉体的に強い負荷を受けて後天的に見えるようになる者もいる。

 彼らは呪霊を目撃したり呪術関係と思われる事件についての情報があったら一目散に高専に連絡する。報奨金が出るわけではなく、事故や火事があったら警察消防に連絡するのと同じ。ただそれらと少しだけ違うのは、彼らの内の潜在的な恐怖心が呪術師に助けを求めているということ。

 

 すぐ近くに自分を害し、殺しうる化け物が潜んでいる。それなのに見えるだけで触れられず、抵抗もできないという恐怖はどれほどのものだろう。見えなければ、知らなければ安穏とした日々を過ごせていたのに。

 だが俺から言わせれば認知できるだけまだマシだ。彼らは逃げたり、助けを求めたり、住処を変えたりと、自分の意思で運命を変えうるだけの選択肢を持つことができる。

 

 見ることすらも適わない人たちが、超常の力に引き裂かれ、すり潰される。なぜ自分が死ななければならないのかわからないまま。

 その時の苦痛と恐怖と絶望を想像するだけで俺は…。

 

 

 「陽明、どうかしたか?」

 

 加茂から声をかけられ、ふと我に返る。

 

 「…何でもありませんよ、加茂さん」

 

 少し油断するとスルスルと思考の深みに嵌っていってしまう。悪い癖だ。

 後ろを見ても何も残ってないんだから、俺は前だけを向いていればいい。

 

 

 

 丁度先方との待ち合わせ場所の喫茶店に着いた。

 

 「ところで、高専に相談持ちかけてきた窓の情報全然知らないんですけど、教えてもらえます?」

 「ああ、そういえば本来君は担当じゃなかったな。この近辺の高校生らしい。名前は…」

 

 しかし加茂が名前を言う前に。

 俺たちが扉を開けて店内に入る前に、後ろから声をかけられた。

 

 「あれ、もしかして御門くん?」

 「…お前、三島か?」

 

 

 

 

 

 奥行きのある店内。レトロかつ清潔な感じで雰囲気は悪くないのだが、昼時にも関わらず全く人がいない。

 まあ相談事には都合がいいかも知れない。奥の席はマスターらしきオッサン店員が居座るカウンターからも遠い。

 

 取り敢えずコーヒーだけ頼んで口に含む。

 

 「…何だこれ、まっず」

 

 店員に聞こえないように呟く。物凄く苦いとかではなく普通に不味い。

 英国人はコーヒーなんて泥水だと言って揶揄するらしいが、これは正しく泥水と呼ぶべき代物だ。

 加茂も同じことを思っていたみたいで思わず顔を見合わせてしまった。よくこんなんで店開こうと思ったな。

 

 しかし対面の相談者はそんな様子はおくびにも出さずに美味しそうに飲んでいた。

 馬鹿舌が集う店ということか。

 

 

 泥水のことは早々に頭から除外することにして、さて何と言って話を切り出そうかと考えていると、かろうじて俺の知り合いと呼べる目の前の少年が先に口を開いた。

 

 「君が急に引っ越して行ったきりだったけどすぐわかったよ。君って滅茶苦茶目立つし」

 「ああそう…。まあそうだよな」

 

 願望とは裏腹に、俺の容姿は人目を引くらしい。平安衣装も着てないのに。それなら目隠しをしていて白髪で東堂より長身の例のあの人は一体どれだけ目立つのだろうか。

 

 

 三島茂夫という名のこの少年は俺が東京にいたときの、小学校のときの同級生だ。コイツも親の都合かなんかで京都に転校したらしい。別に特段仲が良かったというわけではないが互いのことは覚えていたようだ。

 向こうが俺を覚えていた理由はともかく、俺は一度見聞きしたことをほとんど忘れない。呪術師になる前のことは特に、鮮烈な記憶として脳裏に刻まれている。彼のような俺にとってのモブが成長した姿でも分かるくらいに。

 

 「それにしても御門くんが呪術師だったなんて、知ってたら色々相談出来たのにな」

 「こうして相談してるだろう。それで」

 「あっ、妹ちゃんは元気?1年生なのにしょっちゅう3年生の教室に遊びに来てたよね。よく覚えてるよ」

 「…そうだったか?小さい頃のことなのによく覚えてるな。そんなことより」

 「またまた、滅茶苦茶仲良かったじゃない。だから尚更目立ってたっていうのに。そう言えばさ…」

 

 チッ、よく喋る奴だな、鬱陶しい。一体ここに何しに来たんだコイツは。

 確かに全く偶然に再会した奴が窓だったっていうことには俺も驚いたが、それにしてもはしゃぎすぎだろ。

 無理やり切り上げないと永遠に話し続けそうだ。

 

 「悪いけど、俺たちもそんなに暇じゃないんだ。用件をさっさと話してくれ」

 「いや、今日の午後はこれしか用事は入ってない。私のことは気にせずに昔話に興じてくれていいよ」

 

 空気読めよ平安野郎!俺は昔話なんてせずにさっさと終わらせたいんだよ!

 

 

 

 少々イライラしながら話を進めていくと、三島はようやく本題を話し始めた。

 

 「実は高校に入学してすぐ、呪霊に憑かれてる同級生を見つけてね。見た感じ4級くらいだったからしばらく様子見てたんだけど、やたら寒気がするし体調も段々悪くなってきたっていうんで流石に高専に連絡しようと思ってたんだ」

 

 「その言い方からしてまだ何か?」

 

 加茂からの質問に、三島は難しい顔をして答えた。

 

 「なんか僕が報告するまでもなく祓われてたんだよね。で、ちょっと聞いてみたら、何か怪しげなセミナーみたいなとこに行ったら急に調子が良くなったって言っててさ。これって呪術師が祓ったってことでいいの?」

 

 

 成る程、直接的な被害ではなく不審な出来事ついての相談か。しかしこれは重要な情報だ。

 

 話を聞いてすぐ、俺も加茂もそれが呪術師の仕業でないことは分かっていた。

 術師ではあるが、少なくとも呪術師ではない。

 

 「怪しいセミナー…まあ黒だな」

 

 「…基本的に呪術師が個人として営利目的で呪霊を祓うのは禁止されてて、祓除依頼は全て総監部の許可の元で任務として行うことになってる。そうしないと秘匿にも抵触し得るし呪詛師崩れ連中の詐欺紛いの悪行が横行しかねない。霊感商法みたいな感じでな」

 

 「へーなるほどね」

 

 まあそんな権力と利益の一極集中が業界を腐らせる一因にもなっているんだが。さらに呪術総監部は政府の中の一行政機関ではあるが、基本的に不透明な組織構造だし恐らく大部分が世襲。腐ってくださいと言わんばかりの風通しの悪さだ。今は関係ない話だったか。

 

 「とにかく“処分”とまではいかないが、拘束されて財産没収はあるな。お縄頂戴案件だ。そのセミナーをやっていた団体がどこかわかるか?」

 

 「あーっと、団体の名前は覚えてないけど、セミナーは星の精から力とか健康を貰うどうのこうの…みたいな感じだったかな」

 

 「あやふやだな…」

 

 ていうかその同級生大丈夫か?精神状態的な意味で。

 

 まあ情報は全く足りていないが、そういうイベントが開催されていたという事実がわかれば十分収穫だ。

 

 「三島、お前はその同級生から詳細を聞いてくれ。最低限そのセミナーがあった場所さえわかればいい」

 

 「オーケー、任せといて」

 

 話が大体纏まったので互いに連絡先を交換し合い、俺は強制的に場をお開きにした。

 なかなか有益な情報だったけど、コイツとお喋りするのはもう沢山だ。

 

 

 三島と別れてから加茂と一緒に帰路に着く。

 実習というか、結局ただのお茶会だったな。肝心のお茶がクソ不味かったけど。

 

 「取り敢えずあの店にはもう二度と行かん」

 「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、東堂とメカ丸は…。

 

 「メカ丸とか言ったな。一応聞くが、お前はどんな女がタイプだ」

 「(キタ!)…け、ケツとタッパ?の大きい女性ダ」

 「!!」

 

 メカ丸が言い慣れない言葉を少し吃りながら答える。

 恐る恐る、腕を組んで考え事をしている東堂の様子を窺う。

 

 そして言い終わってから冷静に考え直してみた。

 

 (アレ?そういえば陽明は何でこのよくわからん問いの正答を知ってるんだ?………あっ)

 

 自分が陽明に、対東堂のスケープゴートとして仕向けられたのだということに気づいた時には遅かった。

 東堂の閉じていた目がカッ!と見開かれる。

 

 

 「メカ丸よ…。何故だ?」

 「ハッ?」

 

 

 しかし東堂の反応はメカ丸が想像していたものとは異なっていた。

 何故とは何のことなのか。全然要領を得ない質問に戸惑っていると、東堂は呆れたような表情を作った。

 

 「その答え、お前自身の内から出たものではないな?」

 「…あ、ああ、実ハ」

 「いや、みなまで言うな、俺はもう全てを理解している。我が親友の心遣いだろう。魂の友を求める俺の渇いた心を慰めてくれようとしているんだ、あの粋な漢は」

 「……ある意味合ってるしもういいやそれデ」

 

 嘘を即座に見抜くくらい無駄に鋭いくせに、肝心なところで自分が望むように現実を曲解する。

 東堂という男の面倒臭さを眼前で味わったメカ丸は必要以上に彼と絡むことをやめようと思った。

 陽明に対しては自分がハメられたことへの恨みより憐れさの方が勝ってしまった。

 

 「いいや良くないぞ、メカ丸よ」

 「!」

 「性癖を誤魔化すということは自身の心に嘘をつくということ、やめた方がいい。呪術師として、人として碌な結果にならない。人生の先達として忠告しよう」

 「……そうだナ。忠告、痛み入ル」

 

 痛いところを突かれたというようにメカ丸が鋼鉄の渋面を作った。

 

 なんかいい感じに尤もらしい助言を授けられて、メカ丸は少し東堂を見直していた。

 基本的に彼は素直で純朴な男なのだった。

 

 

 「では改めて問おう。お前の女の好みは?」

 「…正直、よくわからなイ。女性とまともに関わりだしたのはつい最近だシ、この通り俺は呪骸を通してしか人と関われないからナ…」

 

 「そうか。ならばその答えを探すのが学生生活におけるお前の仕事だ。女の好みも答えられないようでは一人前の呪術師にはなれんぞ」

 「…ああ!そうだナ!」

 

 珍しい東堂の先輩ムーブを受けて、メカ丸の中では東堂株が急上昇していた。思っていたよりもずっとイイヤツじゃないかと。

 

 (人を見かけや評判で判断してはいけないな。直接接してみなければわからないこともある。いや直接ではないが…)

 

 東堂はメカ丸の肩にポンと手をおいて、颯爽と歩き出していった。陽明がいそうな方角へ。

 取り敢えず陽明の作戦が失敗したことだけは確かだった。

 

 

 「アレ?実習ハ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、俺は三島から連絡を受けて、彼から教えられた場所に向かった。件の団体の名前も調べてみたが何にもヒットしなかった。架空の団体だろう。

 

 

 駅からしばらく歩いたところにある雑居ビルの地下。人の気配はなく、暫くの間人がいた形跡もない。

 

 その扉には鍵が掛かっていたが無理やり蹴破る。

 広くて暗い室内に埃が舞った。人はおろか物資も何もない。蛍光灯すらついていない。

 予想通りもぬけの殻だったが、とある痕跡だけは残っていた。

 嫌でも目についた。

 

 

 呪力の残り香と、微かな血痕。

 

 

 見つけた瞬間、腸が煮え繰り返る。

 非術師(弱者)に仇なす害虫の印だった。

 

 

 「絶対に見つけ出す」

 

 そして必ず潰す。

 

 

 

 

 

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