昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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至る道

 

「ホシノが……アビドスを去った。」

 

 

私の一言は、私達に重くのしかかる。

 

ホシノが退部届を出して去ったとされる日の翌日、いつもの様に定時会議を開いた。そこに集まる前に、私が退部届を見つけた。そして、今に至る。

 

ホシノが言っていた、黒服の仕業で間違いないだろう。アビドスをどうにかする、とは黒服の主張だが。あの雰囲気に口調、およそ、その言葉を実行するとの信頼に足るとは思えない。

 

アレは、何がなんでも欲しい物を手に入れんとする、大人の汚さであった。

 

 

「……皆、手掛かりを探そう。恐らく、黒服が関わっているのは間違いない。」

 

 

「…場所が分からないから、まずはって事?」

 

 

「うん、シロコが考えてる事で合ってると思うよ。居場所を突き止める。」

 

 

まずは、居場所を突き止めなければならない。ホシノは人質の立場にはあれど、私達の所存はあくまで二の次だと思う。もし私達が断るなら、恐らく黒服の胸の内の計画が進む。と考えると、あまり時間は残されていない。

 

アテはない。……なら。

 

 

「…他の学園に、援助を頼もうと思うんだ。」

 

 

「……私達だけでは、限界がありますからね。」

 

 

残念ではあるけど、私達だけでは限度がしれてる。人も少なければ、戦力も万全とは言い難い。だからこそ、頼らざるを得ないだろう。

 

こういう時にルシアがいてくれたら助かったとは思うけど、彼女も忙しいのは、知っている。だから、無理強いは出来ない。

 

頼れる綱だけで、渡っていくしかない。

 

 

 

──────

 

 

 

「断る。」

 

 

「そうですか、残念です。」

 

 

時は飛び、黒服の本陣と思われる場所で。私と黒服は交渉の場に立っていた。

 

私が援助をゲヘナとトリニティに頼もうか、などと考えを巡らせていた時に、突然意識が途絶え、気付けばここにいた。

 

そして、黒服が提案を持ちかけてきた。が、依然として信頼に足らない。もし言っている事が真なら、ホシノが黒服側に渡った段階でアビドスから手を引けばいい筈。

 

いくら邪魔だとは言え、カイザーコーポレーションを傘下に置いてる訳だから、さほどの脅威と認識する筈もない。

 

だからこその、この一言だった。

 

 

「それなら、今回はこれで帰って貰っても大丈夫ですよ。」

 

 

「……言われなくても。」

 

 

こんな場所に、長く留まってたまるか。こっちは一刻を争っているというのに。連れてこられたとはいえ、ここがどこであるのか、そのヒントは無い。

 

……クソッ!

 

 

「…あぁ!最後に一つ。」

 

 

何かと思えば、少し声を大きくした黒服がそんな事を一つ。敵である私に、これ以上何を言うのか。

 

 

「来て下さい、()()。」

 

 

「…………」

 

 

「……なっ!?」

 

 

潜影。こんな所で、見かけるなどとは露も思わなかった。まさか、潜影が黒服の仲間だったとは。

 

……まさか、キヴォトスの情報を集めて回っていた?だとすると、情報収集の一環で不良達を倒していたのだろうか。

 

…いや、呑気に考えている場合では無い。

 

 

「ますます、焦らざるを得なくなりましたね。」

 

 

黒服は、知っているんだろう。潜影が相当な実力者である事も、それが私達を揺さぶるのに、どれだけ効果的に働くかも。

 

先々を見据える黒服に、今の私は為す術も無い。

 

 

 

──────

 

 

 

「何故、私を呼んだ。」

 

 

「牽制の意味で、ですよ。」

 

 

「それは解っている。()()だ。」

 

 

はて、難解な質問を投げかけてきますね。デカルコマニーと話をしている気分です。ただ、その意図が分からない訳でもありませんが。

 

建前は聞いていない、と言いたいのでしょう。……いえ、厳密に言うと、少し違いますね。

 

()()()()()()()()()()()()のは何故か、恐らくそう聞きたいのでしょう。そもそも、手札は然るべき時まで隠しておくのが鉄則。それをみすみす見せびらかす事は、自身の首を絞めるに他なりません。

 

 

「……そうですね。反応が気になってしまったのと、もしかして貴女について何か分かるのではと思ったのが、主立った動機です。」

 

 

「…そうか。」

 

 

彼女の役割は、私の護衛。彼女の時々の提案はのむようにしていますが、役割としては護衛にしてある。私自身に戦闘力なんて、あってないようなものですし。

 

それに、私は彼女に関して深く詮索する事はない。皆無、とまでは言えないにせよ、あんなパンドラの箱、中身が分かってて開けるほどのバカでもない。

 

……恐らく、先生は援軍を呼ぶのでしょう。あの生徒数では、いずれジリ貧になるだけ。先生も、それは痛く解っている事でしょう。

 

 

そうすると。呼ばれるのはミレニアムやゲヘナ、トリニティ。他にもあった気はしますが、恐らく今挙げた辺りから来る事でしょう。カイザーコーポレーションという駒は失ってしまうにせよ、敵対勢力の実力を知れるのは、大きい。

 

 

「総力戦は近いでしょう。その時には……。」

 

 

「……指示には、従おう。」

 

 

本当に、従順ですね。手綱さえ握れれば、ここまで心強いとは。

 

愚直が過ぎるとは、思いますがね。

 

 

「…私は、もう行く。」

 

 

「分かりました。援軍がどの学園になるか、探れるなら頼みます。」

 

 

「……やれるだけ、やってみよう。結果は保障しないが。」

 

 

「構いません。あれば少し嬉しい程度の事ですので。」

 

 

私が言い終わる頃には、既にいなくなっていた。相変わらず、掴み所がないですね。あの感じ、雇い主には固執してないのでしょう。私以外でも構わない、そんな雰囲気を感じますね。

 

恐らく、例の条件をのむか否かが全てなのでしょう。それを考えると、()()()()()()()()()()()()でしょうし。そこが唯一の救いですね。気さえ変わらなければ、裏切りの心配もおよそしなくて良さそうですし。

 

 

「…………さて、こちらも準備を始めましょうか。」

 

 

とかく、彼女の事ばかりを考えていても仕方ない。他よりも安心できるのは変わらない以上、追々で良さそうです。

 

…さぁ、どうします?先生。

 

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