昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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理想を求めて

 

「…………はぁ。」

 

 

「どうしたんですか、今日で13回目の溜息ですよ?」

 

 

……え?数えてたの?

 

今日は、どうしてもやらねばならない仕事があった為に、断腸の思いで書類と格闘している。今日の当番は、ルシア。

 

最近やる事が一段落したのか、ルシアが当番を務める日も増えた。ルシアと仕事をすると、妙に緊張する雰囲気と程よいリラックス感がある為、仕事が非常に良い進み方をする。変にサボる気も湧かず、そもそもサボろうと言う気に、何故かならない。

 

その上、ルシアの仕事の要領が良い。私さえしっかりしていれば、一般的に言う定時とやらの時間帯近く(或いはもっと早く)終わる。

 

しっかりと休息を挟んだ上で、である。決して、働き詰めで、という事は無い。

 

それはさて置き。ルシアに指摘された溜息についてである。先日、ホシノが(恐らく)黒服の元に行ってしまった。黒服の交渉を断り、ホシノを助ける判断をしたのはいいにしても。

 

その策が、ない。全くとまではいかないにしろ、著しく苦戦している。幸い、ゲヘナとトリニティの生徒に協力を仰ぐ事は出来た。人員に関しては、大方大丈夫なら気はするものの。

 

肝心の作戦は、未だない。幾つか考えてはみたものの、どうも現実的でないものばかり。

 

 

「いや、アビドスの件で……。かなり重要なところなんだ。」

 

 

「……事情を伺っても?」

 

 

…この際だ、ルシアにも案がないか、聞いてみる事にしよう。

 

 

 

──────

 

 

 

「……つまり、人員は解決したけれど、現実的な策が無い、と。」

 

 

事情を話し終わって、ルシアが要約した所で。改めてまとめてみると、あと一歩ってところで足踏みしてる気がしてくる。

 

と、言うより。潜影があっちに加担しているという事実が、何より重い。黒服の護衛や単なる情報収集だとかを任せてるならまだしも、戦闘メインを任せきっているとしたら、勝ち筋を見出すのは極端な高難度と化す。

 

私とシロコ達は潜影の実力を知っている。いや、この目で見た。そして、便利屋の子らも。他のゲヘナやトリニティの子が楽観視している可能性があるなら、まず、その先入観を変える必要がある。

 

 

「…………この際、トリニティの事は置いておきます。…潜影の戦闘力は?」

 

 

「うーん……学園中の精鋭を集めてどうなるか……って位だと思う。確実に負けるかと言われたら、そうとも言えない気はする。」

 

 

「勝てなくは無い……かもしれないと。」

 

 

それを聞き、うーんと声を出しながら考え出すルシア。ルシアが潜影の実力を見ていたりしたなら、もっと話は変わってくるかもしれない。けれど、その場にいない以上、聞いても仕方ないだろう。

 

 

「……策が無い訳ではないんですが、どれも現実的では無いでしょう。何せ、剣に銃が対抗するのは厳しいですし。私が行ければ良いのですが、重要任務があって行けそうに無いですし。」

 

 

やっぱりか。ルシアがいない事を想定で考えると、剣対銃という、何ともキヴォトスでは異質な対決を想定しなければならない。懐に入られるまでに無力化出来る相手ならまだしも、逆に掌で転がされかねない。

 

……いっその事、全く相手にしないとかは、どうか。

 

…いや、一番現実的じゃなさそうだ。相手がこちらに関心が無い事が分かれば効果的ではあるものの、そんな事が分かる手段なんて、無い。

 

黒服についたという事は、こっちへの敵対意識があると考えていいだろう。単なる利害一致だとしても、こちらを障害と思っているのは違いない。

 

……どうしよう。

 

 

 

──────

 

 

 

「反転?」

 

 

「そうだとも。ワシはどうも、自然発生に限られるものではないように思えて仕方なくてな。」

 

 

「つまり、神秘を引っくり返す方法が存在すると?」

 

 

「そうでも言わん限り、アレの説明がつかんだろう。」

 

 

私はファルストの元に行って、そんな話を聞いていた。元々そんな話をするつもりでもなく、単なる挨拶と思っていたのですが。

 

何でも、神秘を別の特性を持つ何かに変換する仕組みがあるのだとか。そして、人工的に可能なのではないか、と彼は言う。

 

……という事は、彼の言う事が本当なのだとしたら。少々面白そうではある。ただ、未だ証明出来た試しが無い上に、それを実行に移せる訳でも無い。

 

彼の目的も私達同様、”崇高”に至る事なのは事実。恐らく彼は、その反転とやらで至ろうとしているのでしょうか。……自身に神秘が無い事を加味しているのかは、些か気にはなりますが。

 

 

「嗚呼、そうでした。貴方から頂いたあの装置。かなり役に立ちそうです。」

 

 

「そうか。ワシは並行世界なぞ、興味無いからな。持っていても仕方ない。」

 

 

「だとしても、です。感謝していますよ。」

 

 

この間、彼からある装置の事を思い出し、彼に感謝を伝える。色々な方法を試したくなる私としては、ああいった装置というものは、出来る事の幅が広がって助かる。

 

 

「…先に言っておくが、ワシは例の総力戦に助力せんぞ。」

 

 

「勿論です。元より、貴方からの助力は望めないと思っていたので。」

 

 

「フン、分かってるじゃあないか。」

 

 

総力戦。()()()()()()()()()()()()。勝っても負けてもどちらでも良い、茶番戦。そうとも知らず、私に振り回されるカイザーと先生達。

 

─嗚呼、愉悦ですね。

 

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