筆が思いの外進んだので、二本投稿です。以降あるか分からない事だけ、先んじて伝えておきます。
では、どうぞ。
「先生!あの射撃は……!?」
「…トリニティの皆だ!」
カイザーの兵を襲う鉛の雨。トリニティの支援射撃だった。総力戦の最中であるにも関わらず、嬉しさのあまり喜びを吐露せざるを得なかった。
これまでの戦闘で、潜影が姿を見せる事は無かった。戦いが終わるまでは油断出来ないものの、少し拍子抜けではあった。一応、有事を想定してゲヘナの風紀委員会の皆に待機してもらっている。
後でヒフミ達にお礼を言おう、そう思いながら、歩を進めようとした。
「……!前方より、敵性反応!」
「ッ!まさか……!」
「…………」
潜影。油断した所に来るとは。が、奇襲はされなかった。何故だろう。
「……私は、お前達に用は無い。後ろに用がある。どけ。」
後ろと言われ、考える。ヒナ達の事だろうか。……或いは。
どちらだとしても、答えは同じではある。
「断る。通す訳には、いかない。」
「その満身創痍な身体で立ち塞がるか。勇気と無謀を履き違えているな。」
ホシノの元に急ぐのが、合理的な判断だと。そんな事は分かっている。が故に、潜影の正論が私の心を乱してくる。皆に任せてはどうか。皆を信じてはどうか。
─皆を、裏切ってはどうか。
ならない。あってはならない。私にそんな実力がなくとも、零してはならない。誰も、見捨ててはいけない。
ヒナ達やトリニティの皆に任せたとして。勝てるのか。いくら大勢とは言え、相手はほとんど最強に差し支えない一人。私が戻った時には、皆が…………どうなってるか分からない。
「立ち塞がるのならば、お前らをねじ伏せるまで。」
「先生!!」
緊迫したようなシロコの声。それも、潜影の方への意識に沈んだ。……が、潜影は後ろに下がる。
銃撃の方を見ると……。
「…先生、行って。アイツは、私達が抑える。」
「ヒナ!」
「……チッ。」
ヒナ達であった。さっきの一撃は、ヒナのSRからだったのだろう。あれが無ければ、私はどうなっていたか。アロナの支援があるとはいえ、タダでは済まなかったかもしれない。
潜影の意識は、すっかりヒナ達に向いていた。私達など、眼中に無いと言いたげな。
「任せた!」とだけ伝え、私達は走る。……ホシノ。待ってて。
──────
「…ゲヘナ。いつも邪魔してくれるな。」
「……先生達を追わないの?」
「アレは逃していいらしい。私の仕事は、そっち陣営に被害をもたらす事だそうだ。」
と言い、見た事のない銃を構える。一瞬ルシアの銃かと思ったが、違う。ルシアの銃は黒と紅だったのに対し、潜影の銃は黒一色。造形も、結構違う。
……そういえば、ルシアは何をしてるのだろう。緊急事態だというのに、参加していないとは。先生からは、一人で沢山仕事をしてるらしいから、来れない時が多いとは聞いているが。
……いや、今は潜影。どうやら今の所、例の剣は使わないらしい。舐められているのか、銃の方が使い慣れているのか。様子見が賢明だろうか。
「…考え事は終わったか?」
その一言が、私を覚ます。皆に声をかけ、戦闘態勢に。
……潜影、ここで倒す!
「戦闘……開始!」
『はいっ!』
──────
「……潜影。」
先生に依頼され、支援としてここに来たものの。カイザー兵はかなり数を減らし、潜影はゲヘナが引き付けている。支援射撃を行おうと思ったものの、誤射の可能性を考えてしまい、未だに実行に移せずにいる。
ゲヘナとトリニティの敵対心は深い。故に、「これを機に風紀委員会を……。」と考えている人もいるかもしれない。非常事態である以上、そうであって欲しく無いとは思うが。
生徒会長として、最善を尽くさなければ。
「ナギサさん、支援射撃はしなくてよろしいのですか?」
「必要なら、あちらから要請するよう言われていると聞きました。私達は待機です。本当に窮地になったと判断したら、都度連絡します。」
「分かりました。」
そういえばと。
先生から、私に銃を向けた彼女の名前を聞いた。祟落 ルシア、と記憶している。その名前を聞いて、私は「そんな生徒がいたとは。」と思った。所作はトリニティのそれと引けを取らない程でありながら、ミレニアムに身を置いている。
ただ、トリニティにそのような生徒がいた記録は無い。私が覚えていない訳では無い。意図的に誰かが改ざんしたとなれば、話は別になるが。
あれ程憎まれる覚えは無いが、恐らくトリニティの誰かがあの人に無礼を働いたのでしょう。探してはいますが、何も掴めず。
……と、ゲヘナ達の方を見る。若干ゲヘナが劣勢に見える。様子見をしてるのだとは思うが、それでも押している。話に聞いた事はあったが、あの人数を一人で抑えるのは相当である。「決して油断しないでね。」と先生が仰っていた理由が、よく分かった。
……時折、こちらを見ては憎悪に満ちた表情を浮かべる潜影。まさか、視えているとでもいうのか。ゲヘナを下し終えた後、こちらに来るのは自明の理。
ここまで、ゲヘナを応援したくなるのは、先にも後にも、初めてでしょう。自分の身可愛さが故なのが、何とも腐ってしまったと思わざるを得ない所です。
──────
「…良かったのか?」
「ホシノさんが助けられるのは、想定内でした。ホシノさんを傭兵にしたいのは本当でしたが、それ以上の収穫があったので。」
「そうか。」
私達の
……ただ、彼女が文句を言いに来なかったのが意外です。結局、ゲヘナの相手をしている間に私から撤退命令が来たらしいですが、二つ返事でした。
「手こずった……いや、様子見を長くした私に非がある。」とは言っていましたが、本当にそれだけなのかと、流石の私も疑いたくなります。
「……契約は、どうする。」
「このまま続投、でもいいのですが……貴女も縛られない時期が必要でしょう。貴女の意思を尊重しますよ。」
正直、今回の件以降どうするかを深く考えていませんでした。好奇心から切り出した話でもあるので、続けるつもりしかなかった、という訳でも無いので。しかし、仮にも彼女はミレニアム生。彼女も、長期間予定があって疑われるのは避けたい事でしょう。
私としても、そこからボロを出して私達の事を口走られても困りますから。……まぁ、彼女がそんなヘマをするような人だとは思えませんが。
「……なら、一旦は破棄としよう。時期と条件によっては、再度も考えてやる。」
「おや、随分高評価ですね。嬉しい限りです。」
「……何を考えてるかは把握しきれんが、話が解るヤツだからな。」
「それはそれは。」
良かったです。アレを敵に回したくないのは勿論、後々再契約を結ぶかもしれない相手ですからね。印象が良くて何よりです。
そうしているうちに、潜影は姿を消していた。恐らく、帰ったのでしょう。
……にしても、よくバレませんでしたね。疑う人間がいたのかは知りませんが、本人の様子から察するに、全く勘づかれていないような感じでしたし。
…………およそ、年相応とは思えませんね。せっかくですし、潜影について、改めて調べるとしましょうか。