昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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邪なる母

 

「黒服、少し聞きたい事があるのだけれど。」

 

 

「おや、私と話したがらない貴女が……珍しいですね。」

 

 

「…その遠回しな言い草が、嫌だと言ってるのよ。」

 

 

これはこれは。申し訳ない事をしましたね。止める気はありませんが。というより、私の癖の様なものなので、許容していただけないものか。

 

そう思いつつ、同胞であるベアトリーチェの話に耳を傾ける事にした。

 

 

「貴方、優秀な駒がいるのでしょう?アレ、貸してくれないかしら?」

 

 

「本人次第ですね……と、言いたい所ですが。」

 

 

「随分、煮え切らない言い方ね。」

 

 

おや、また出てしまいましたね。口調が若干サバサバし始めました。

 

私は、これまでの事情を話す。ベアトリーチェの探す駒は、既に解約して別々になっている事。所在を、私も理解していない事。その他エトセトラ。

 

それを聞くと彼女は、私に聞こえないように舌打ちをする。……まぁ、聞こえたんですが。

 

 

「少し遅れたわね。あの駒は後々使えると思っていたのに……。」

 

 

「……確実にいるかは保障出来ませんが、顔を出すであろう場所なら。」

 

 

「それを早く言いなさい。」

 

 

おっと、やたら食い気味ですね。そんなに彼女が良いのですか。まぁ、確かに優秀ではありますが。

 

そうなると、絶対的な戦力がいないのか?……いえ、アソコを抑えている彼女がその結論に至るとは、およそ思えませんね。……ふむ、難しい。

 

 

「そうですね……ミレニアムの近くにある廃墟。あの辺りを、誰かが行き来してると聞きましたよ。」

 

 

「そう。それが聞ければ良いです。」

 

 

そう言い、すぐさま私の前から去る彼女。

 

……はて、どうしてあんな所を行き来しているのでしょうね。まさか、私の知らない重要な何かがあるのでしょうか。調べてみる価値は、ありそうですね。

 

……それにしても。

 

恐らく、彼女も潜影を味方につける予定なのでしょう。しかし、私はどうもそれが得策でないように思えて仕方ない。彼女の周辺には、あの問題が取り巻いている。

 

 

彼女に起こりうる事を、どうやら憂いずにはいられないらしい。

 

 

 

──────

 

 

 

「…………」

 

 

「はぁ……はぁ……黒服の言う事とは全然違うじゃないの!」

 

 

「私に言うな。そもそも、黒服が私だと言ってもいないのだろう。」

 

 

……ムカつきますね、コイツ。生意気な言動と視線、そして何より、ただただ正論を突き付ける事が。黒服とは、まるで逆。黒服が懐疑と難解でできているとするなら、コイツは愚直と単純明快でできているとでも言うべきかしら。

 

ただ、解る。並の人間では無い事が。

 

姿や振る舞いという単純な事に留まらず、オーラや奥底の感情、まだ見ていないはずの実力も。その姿を通して、見せられているような。

 

 

「……アナタ、黒服の駒だったと伺っていますが?」

 

 

「……敬語は要らん。契約でもしに来たんだろう。」

 

 

そこまで読まれるとは。私はコイツと接触した機会も無かった。行動心理から分析でもしたというのか。

 

が、話が解っているならば早い。黒服が言うに、「私のお気に入りですよ。条件さえ守れば忠実に動いて、しかもより良い物も持ってきますから。」だそう。

 

それだけ聞くと、かなりの優良物件でしょう。しかし、条件が難関。私の管轄問題は、自然とその条件に抵触しかねない。

 

……いえ、四の五の言ってられませんね。

 

 

「ええ、そうです。それで?返事は?」

 

 

「…条件さえ守るなら、誰でも何でもいい。」

 

 

本当に承諾するとは。

 

黒服から聞くに、この潜影はキヴォトス側の人間だとか。その天敵とも言える私達に対し、こうも快く契約を引き受ける事は、最早奇妙の領域のそれでしょう。

 

私も、かなり奇妙ではあった。

 

 

「……条件は、知ってるか?」

 

 

「えぇ。黒服から聞きました。」

 

 

「ならいい。……が、今日は帰らせてもらう。明日、ここで詳しい話を聞こう。」

 

 

「いいでしょう。明日、私の目的や貴方の役割を伝えましょう。」

 

 

逃げないように、とは言わなかった。あれだけ分かりやすく()()()()()()()()()()人間なら、そんな脅しも意味をなさないでしょう。

 

潜影が姿を消した事を確認して、私も踵を返す。

 

 

「……フフフ。楽しみね。」

 

 

今日の私は、どこか上機嫌だった。

 

 

 

──────

 

 

 

「潜影関連の事件が減った?」

 

 

「うん、そうなんだ。」

 

 

偶然廊下であった私と先生は、シャーレの一室でそんな話をしていた。……傍から見て、女子生徒を空き室に連れ込むという、確実に事案だろうと呼べる状況には突っ込まない。何せ、私が嫌だと思えば、いくらでも退ける事が出来るからである。気にしても、仕方ない。

 

話を戻すとして。先生が言うに、アビドスの件が一段落してから、潜影の噂を生徒から聞いたりする機会が減ったとの事。先生は、未だに唸りながら、理由を捻り出しているように見える。

 

 

「考えるも何も……その時に負けて、プライドでも傷付けられたとかではないので?」

 

 

「そんな理由なら、まだいいんだけど……。」

 

 

どうもそんな気がしない、そう言いたげな表情を浮かべながら、先生はまた思案に暮れる。何故、私を呼び止めたのかは謎である。考えるなら、一人で良いではないか。

 

まぁ、確かに。プライドなどという主観的極まりない理由は、検討のしようがない。それに、そうであるという確証を握るのは至難だろう。

 

不安になるのも分かるが、そこまで分からない事だらけな事を、そんなに長々と考えていても仕方ないように、思うのだけれど。

 

 

「今考えても仕方ないでしょう。アリスとゲーム開発部についての問題解決がある訳ですし。」

 

 

「……それもそうだね。」

 

 

ルシアに言われ、ハッとする。確かに、現に潜影は出てきていない訳だし、今考えるだけ余計な労力を使うだけかもしれない。考えるにしても、せめてもう少し安心出来る状態になってからの方が良いだろう。

 

…少しの不安を払い、アリス達の事に思案を巡らせる事にした。

 

 

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