「……これで、ゲーム開発部関連は落ち着きそうですね。」
ネルとの戦闘を終え、開発部が”鏡”を手にした。その前に私は別の場所に行ったので、そうなったかの客観的証拠は無い。が、あの開発部の事だ。きっと手に入れた事だろう。
ネルさんには、勝った。私の貢献云々はさて置き、開発部の実力は確かだった。特に、アリス。あの大きな銃(最早”砲”と言った方が納得できるアレ)でネルの攻撃を受けていた。機動力で大幅なアドバンテージを取られていたというのに、大したものだと感心した。
ゲームをやって、戦闘における頭のキレが育まれたのかもしれない。
……それにしても、だ。
「……どうして、
自分の行動に疑問を持つのは、実におかしな話だ。が、現在に至るまで、
それに、どうしてネルがいる所が分かったのか。それ以前も、何故アビドスと便利屋の戦闘場所が分かっていたのか。後々に考えると、訳が分からない。
思い出そうと思慮を深めるも、深い霧の中に何があるのかを見極めるくらい、全く鮮明にならない。そのせいか、最近はやる事なす事のほとんどに身が入らない。
何故だろうか。見落としがあると思うのに、何も分からない。
「…………こんな難題、初めてですね。」
何度も、難しいと言われるモノを解いたりしてきた私は、それなりの賢さを自負していた。が、こうも分からないとは。
今は、思い出さない方がいいのだろうか。いや、私が思い出していないが故かも分からないのだが。考えれば考える程解らなくなるとは、正しくこういう事を指すのだろう。
シンプルに、疲れそうだ。
「…一旦忘れましょう。これ以上考えると、糖分を過剰摂取したくなりそうですし。」
そんな戯言を呟き、私は宛もなく歩き回っていく。
──────
「そういえば。貴方の至り方は、かなり変わっていましたよね?」
「何だ急に。…まぁ、否定こそせんが。」
唐突に、黒服がそんな戯言を言ってくる。……本当に急である。
我々ゲマトリアは、”至る”事を目的とした者の集まり。しかし、手段やアプローチはそれぞれ違う。マエストロは分かりやすく、芸術。デカルコマニーらはテクストだろう。ベアトリーチェと黒服は……正直、掴みあぐねている。
ワシが言うのもおかしな話だが、コイツらは変だ。
ベアトリーチェは、まだ分かりやすい。言葉通りの”暴君”であり、”理不尽”、そして、”超合理主義”。そんな言葉を足した存在が、あの女である。
対して、目の前のコイツはさっぱりだ。至る過程すら分からず、動機も知らん。やり方も時々に違い、先生に異常な執着を抱いている。本人から否定の言葉を聞いたが、同じ”外の世界”の知り合いなのではないか、と勘繰りたくなる。
一応敵では無いにしろ、気味が悪い。
「そんな事を言いに来たのか?なら、帰れ。ワシは今それなりに忙しいからな。」
「まさか。本題は別ですよ。つれないですね。」
よく、その信用に値せん口からそんな言葉が出るものだ。藪から蛇とはよく言うが、どんな蛇が出るかも分からんヤツがいる藪なぞ、こっちから願い下げだ。
それにしても。用事とはなんだ。くだらない事を宣った日には、全力で追い出してやるとしよう。
「貴方が今研究しているソレ、ですよ。私もその技術に興味がありましてね。」
「…………ほぉ?」
何とも意外……ではないな。コイツの動機は、興味が多い。先生にファーストコンタクトしたのも、興味からだと聞いた。いつぞやかに、「知的好奇心にはどうしても。私も弱いものでしてね。」とか何とか言ってた記憶がある。
……案外、”至る”動機も興味だったりしてな。
「並行世界に、少々興味がありまして。貴方の研究を活かせたら、面白い事になると思うんです。」
「……ワシも研究の最中だ。お前の望む形に会得出来るかすら分からんぞ。」
「構いません。元より、あったらもっと面白い位のものですので。」
「そうか。なら、ワシの邪魔をしない限りで好きにしろ。」
「ありがとうございます。が、今日は一旦帰らせてもらいます。」とだけ言い、黒服は去った。……何だったんだ、アイツは。
それはともかくとして、今は研究を進めなければ。アイツら以上に”至る”のに近いのは、今や私やもしれん。アイツらや私とは違う、
見れるやもしれない。
─神の降臨が。
ファルストの一人称は、私/ワシです。無意識に使っているので、これといったミスだったり伏線ではありません。