不穏分子
「…っ!先生!」
「ハスミはそっちを支援!アコはこっちの支援を!」
「分かってます!」
私達は、戦闘に出ていた。とは言っても、ソレはいつものモノとは毛色が違う。何でも、
今までは、不良生徒やカイザーの傭兵といった、今ばキヴォトスにいる人達との戦闘が普通だった。しかし、今対峙している敵は、およそ私の見た事の無い敵だった。
無機質な羽を生やし、ヘイローとは違う、天使の輪のようなモノを頭の上に浮かせている。持っている武器は銃であるものの、どうもキヴォトスでは見かけないような見てくればかり。
「先生、殲滅終わったよ。」
「よし。皆、お疲れ様。」
激しい戦闘をした皆に、労いの言葉をかける。今日集まったメンバーは学園が違う子が多く、連携面で少し心配だった。が、杞憂に終わった。私の思う以上にしっかりとした連携で、正直驚いた。私情は挟まない、という事だろうか。有難い事には有難いのだが。
少し落ち着いた所で、再び考えを戻す。
この敵は、何だろうか。ヒマリに解析を頼んではいるが、未だ結果は来ず。手こずっているのだろうか。それに、気がかりな事が、一つ。
「……先生、
そう、倒れた敵だったり、機械の欠片すら残っていない。損傷した装甲の一つや二つ、サンプルとして持ち帰ろうとしていたのだが、そうはいかないらしい。
数え切れない例外が、私達を困惑させる。
アリスの件が落ち着いてから、少し経ってこの敵が出てきた訳だが、キヴォトスの誰かが関係しているのだろうか。だとすると、大問題なのだが。
……もしかして、ゲマトリアか?アイツらなら、こんな敵を用意しかねない。特に、掴み所の無さすぎる黒服なら。
「皆、それぞれの学園に戻っていいよ。私は、やる事があるから。」
「先生は帰り、どうするの?私達がいないんじゃあ、先生の身が危ないよ?」
「この後、ルシアが来てくれるから。」
そう言うと皆は納得したのか、それぞれ帰っていく。が、全員がいなくなってはマズいと考えた結果、シロコだけ、ルシアが来るまで残る事になった。
「……先生は。あの敵について、どう考えてるの?」
静寂を破る様に、シロコがそう尋ねてくる。
「そうだね……分からない事が多過ぎるから、何とも言えないかな。」
「…私と、同じ。」
この会話を機に、再び静寂がこの場を支配する。
何とも、広がらない話題である。アビドスやアリスみたいな出来事の前触れともとれれば、ゲマトリアが動いたとも取れる。それに、私達の知らない何かが迫ってるとも考えられる。
つまり、選択肢が多過ぎるのだ。これだと言えない程、択が多い。絞る事も、証拠が少ない故にままならない。
何か強い違和感がある事だけは、否定できないのだが。
「先生、ルシアです。」
ルシアが来た。何分急に呼んだ為、少し息が荒い。急いで来てくれたらしい事が、そこから分かる。後で、お礼をしないと。
「シロコさん。先生の護衛、感謝します。」
「ん……やりたくてやっただけ。」
「それでもです。シャーレまでは、お任せ下さい。」
「うん、よろしく。……先生、またね。」
ありがとねと、ポツリ呟いた。軽く頷いたシロコは、そのまま踵を返していった。
「それにしても……随分急でしたね、今日は。」
「ゴメンね。皆用事があるみたいだったから。」
私の確認ミスで、どうやら今日来てくれた全員、どうにか時間を作って来てくれたらしい。私をシャーレに送る時間はおろか、作戦に充てる時間もギリギリの中で来てくれた。だから、無理を言ってシャーレまで同行させるのは、気が引けたのだ。
ルシアも、その事情を察し、納得した様子でいた。「先生の護衛以上に大事な用事……」とボソボソ呟いているのは、聞かなかった事にしておこう。
「ルシアってさ、天使みたいな敵って知ってる?」
「いえ、全く知らないですね。どうかしたのです?」
「うん。さっきまで、ソレと戦ってたから。」
色んな事を知ってるルシアなら、もしかしたら。そんな淡い希望から聞いてみたはものの、知らないとの事らしい。即答だった辺り、知ってて黙っているとかでは無いと思う。
……本当に、何だったんだろう。分析しようにも、物的証拠が無い上に少しの映像しかない。いくらヒマリが天才だとはいえ、これだけであの天使について把握するのは難しいのではないだろうか。
ヘイローが無い事が分かっただけでも、成果だろう。少なくとも、キヴォトスの誰かがあの天使の正体だ、という事にはなりそうにない。もしなっていたら、当人を探さなくてはならない訳で。
「もし余裕があったら、ルシアにも探って欲しいんだけど……良いかな?」
「そうですね……余裕があれば、で良ければ。」
「うん、ありがとう。」
ルシアは私達が知らない事や、探ってる事の核心をつく事を持ってきてくれる事がある。どこで知ったのかを聞いていないから何とも言えないけど、正確性は確か。
もしかしたら、凄い事実が分かったりして。
そんな淡い望みを、私は抱いていた。
──────
「……大丈夫なのでしょうか。」
「あちらが何かしない限り、大丈夫でしょう。こちら側も、無駄な労力をこれ以上費やすのは現実的ではないですから。」
「だといいのですが……。」
──────
「トリニティと手を取り合う、ねぇ。」
「未だに反対の意思が強い生徒が多いですね。」
「止める訳にもいかないがな。」
──────
「フフ……」
「……何だ、急に笑って。」
「手始めに、あの日に試験しましょう。面白い光景が見れるでしょうし。」
「あくまで遊戯感覚……中々イカれてるな。」
「貴方に言われたくないわね。」
─思惑と特異が、交差する。