大変お待ちした事、お詫び致します。一言で言うと、モチベが皆無でした。色々重なったのもありますが、その一言に尽きます。
学業が始まる前にもう一話は上げたいと考えていますが、今もモチベが回復しているとは言えない状況なので、声高らかに宣言する事は難しいです。他作者様の作品を見ながら、気長にお待ち頂けると幸いです。
では、どうぞ。
「アズサちゃん!そっちから手榴弾が!」
「っ!分かった!」
アズサちゃんがいた所には、手榴弾による爆破跡が残っていた。私達の目の前には、一向に数の減らないユスティナ聖徒。その数は、更に増しているのでは無いかと錯覚してしまう。
私だけでなく、既に他の皆も疲労が溜まっている。肩で息をしているのが、何よりの証拠。
他のトリニティの人達も応戦してるけれど、戦況が良くなっているとは思えない。現に、今も尚学園の至る所で音が止まない。
銃声、爆破音、悲鳴。そのどれもが、日常の音かの様に響いている。
「そこっ!」
コハルちゃんの一撃が敵にヒット。しかし、倒した以上の敵が顔を覗かせる。嗚呼、頭がおかしくなりそう。
こんな時、いつもなら「あーもう!キリがないんだから!!」と言い出しそうなコハルちゃんも、そんな愚痴を零す余裕が無いのか、何も言わない。苦しい顔を浮かべるだけ。
─随分と、苦戦しているな。
「っ!来ます!」
ハナコさんの焦った声が、辺りに響く。私達が一歩退いてすぐに、そこにはクレーターが出来ていた。
見覚えの無い、黒い剣が突き刺さっている。
「……弱い者共。持久力は並程度か。」
言葉の一つ一つが、酷く冷たい。身体が芯から凍っていくようだ。素顔を晒さない目の前の人は、無機質な瞳を私達に向ける。
そんなはずはないのに、喉にナイフを突き付けられている感覚に陥る。今にでも、喉が引き裂かれそうで。冷や汗が、止みそうに無い。
「だ、誰よ!?」
皆が何も言えない中で、コハルちゃんが問い掛ける。
……私には、一つの可能性が思い浮かんだ。状況的に、確実だろうと言える。しかし、そうあって欲しくなかった可能性。
いつの間にか抜いていた剣を私達に向け、静かに告げた。
─お前達の、敵だ。
不思議にも、その言葉は、私達に対してのみ放たれた言葉には感じなかった。
──────
「……荒れている。」
音が激しかったエリアを避け、奇襲を仕掛けた私達。それもそれなりに成功し、音が激しかった場所を通っている。
夥しい数の傷跡。戦闘の激しさを物語る、弾痕や切り傷。果てには、血痕まであった。私達が知っているトリニティの学園は、半ば廃墟と言っても差し支えない程に、荒んでいた。
警備隊が来るのも、時間の問題だろう。目的は達成したのだから、一早く去るのがいいだろう。結局、先に暴れていた者と邂逅する事も無かったな。
「っ!何かいる!」
ミサキがそう言う。敵襲かと思い、武器を構える。が、足音すらしなかった。警戒を緩めずに前に進むと、そこには人の姿が四つあった。
「…アズサ……。」
そこには、見慣れた
戦闘の跡を見るに、大人数の隊を捌き切れなかったのだろう。それにしても、随分跡の規模が大きいが。
「…………っ…み、んな……。」
そのアズサが、目を覚ました。言葉からも分かるように、満身創痍である。私達も、これ以上無駄な労力を割きたくない。あっちは対抗できる程の戦闘意思はないだろう。
「………!サオリ…!」
「…久しぶりだな。」
私は、その一言を絞り出すのに精一杯だった。他にも言葉はあったろうに、しかしそれしか出てこない。警戒心か敵対心か、私達に対する目は、一種の鋭さを持ち合わせていた。
「……誰に、やられた。」
「……アイツは…サオリ達の、仲間じゃない?」
アズサは、私の問いに返事をする事なく、そんな言葉を零した。
……待てよ?待て。
今、
「アズサ。お前達を襲ったのは、大人数の隊だろう?」
「…………
何だと?この惨状を作り上げたのが、たった一人によるものだとでも言うのか?
恐怖した。普段感じる事の無い感情。マダムから受ける罰の時ですら感じないレベルの恐怖が、私の中を蠢いている。
気付けば、私の手は震えていた。最早、身体の制御すら利かない。
「サオリ!」
姫が、私の下に駆け寄る。その後すぐに、二人も私の下に来た。アズサの瞳も、いつの間にか困惑に変わり果てているように感じた。
少なくとも私の知る限り、私達以外にトリニティの敵対組織がいるのか分からない。マダムはいない様な素振りをしていた。トリニティに対抗する為に色々と調べたものの、ある程度の規模の勢力は無かった。
そうなると、残る選択肢は二つ。
「……味方か?それとも…………。」
─第三勢力か。
────────
「…アレがいないだけで、ここまで落ちるものか?」
「貴方のタイミングが噛み合ったとは捉えないので?まぁ、褒める気はありませんが。」
「一言余計だ。」
潜影が奇襲を終えて独り言を呟いていた。それに軽口を返すも、一蹴。
……可愛くない下僕だ事。
それはともかく。口振りから察するに、おそらく成功したのでしょう。仮に失敗したとして、そこまで害を被る事も無いので、個人的にはどちらでも良かったのだけれど。
「正義実現委員会が本格機能する前に叩ききったからじゃないかな?」
「個人的には、お前も叩きのめしたかったがな。」
「えぇ〜?酷いなぁ……今は仲間なんだし、そんな事言わないで欲しいなぁ〜?」
「…そうだったから手を出さなかったんだ。有難く思え。」
「ちぇ……つれないの〜。」
突然現れたもう一人の駒と、潜影が会話を始める。……私のいる場所でしないでもらいたいわね。煩わしいったらないわ。
「……そう言えばベアトリーチェ。私の事はスクワッドには言ってないのか?」
「えぇ。スクワッドは私を裏切る可能性が捨てられないと踏んでいるもの。忠実な貴方について教えるつもりは無いわ。」
「……アイツら相手に、私が負けないと本気で信じているが故か。」
あら、理解が早い事。
私は、潜影に対して絶大な信頼を寄せていると言っていい。ここまで入れ込むのもどうか、とは自分で思う程には。目の前にいるトリニティや奇襲に行ったアリウスは、戦力という面でしか魅力を感じない。
そんな者を懐に入れている私は、言わば自ら寝首を掻かれる事をしているようなもの。戦力不足の為に仕方なく妥協している面は、ある。
しかし、彼は有り得ない。彼の仕草や感情、語気の強さのどれもが、それを物語っていた。
─そもそも、私がお前を欺いて斬る理由が無い。
契約の時にそう言われた時は、まぁ驚いた。「裏切るつもりは無い」とは契約の常套句だが、「極悪非道を行かない理由が無い」と、婉曲気味に言われるのは初めてだった。
だから、私は気に入った。その荒み具合が。その愚直さが。その達観具合が。
その憎しみが。
「フフフ…………」
「…その急に笑う癖、治した方が良いだろうに。」
素直じゃなくてイケ好かない所は、ちょっと嫌いではある。