昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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堕天せよ、蹂躙せよ

 

「……こんな事を言うのは、虫が良いと分かっている。だが、頼む。」

 

 

「先生、この者達は早急に拘束すべきです。」

 

 

何故こんな事になっているのか。かく言う私も、頭の整理が追いついていない。あまりにも急だったために。

 

状況整理をする為に、私は少し前に遡ってみる事にした。

 

 

 

────────

 

 

 

「先生、トリニティへの支援についてなんですが……。」

 

 

ノアを当番に、仕事をこなす。先日、トリニティがアリウスに襲撃されるという事件が発生。被害は甚大で、多くの生徒が重症を負い、補習部もかなりの療養が必要なレベルの怪我を負っていた。

 

その電報を聞き、私はすぐに応援を出した。彼女達が着いて最初の報告は、「…既に戦闘は終了してました。被害、甚大です。」だった。

 

あまりにも残酷で、無慈悲な言葉の羅列。しばらく、頭から離れそうにはない。

 

 

「近々、アリウスとの戦闘が発生する事を懸念した方が良いと思う。被害が甚大な今、あちらが攻めてこない理由が無い。」

 

 

「ですね。迅速な復興が必要なのは、私も同意見です。」

 

 

エデン条約関連で、各学園(主にゲヘナとトリニティ)の緊張が膨らむ中ではあるものの、アリウスという新勢力が牙を向いた。敵の敵は味方、とはよく言ったものである。一時的ではあるものの、ゲヘナとトリニティは停戦及び協力体制を敷いた。

 

ゲヘナには支援を主立って行ってもらい、ミレニアムでアリウスの行く先を追っている。しかし、アリウスの本拠地までは特定出来ずにいる。分かっているのも、トリニティを追われたという事くらいだ。

 

そういえばナギサから、友達の一人が最近姿を見る頻度が減っている気がするとか言っていた気がする。……流石に関係無い…よね?

 

 

「先生!」

 

 

「あらユウカちゃん。廊下は走っちゃダメなんじゃないの?」

 

 

「ノア!それどころじゃないのよ!」

 

 

何やらただならぬ剣幕で執務室にやって来たユウカ。いつもは廊下を走る生徒を咎める立場の彼女が、逆にからかわれるという構図に。それも、ユウカの言葉によって終わったのだが。

 

ユウカがここまで焦る姿は、正直に言うと異常だ。シャーレに身を置いてから一度も無かったように思う。その言動を見て意識を切り替える私とノア。

 

 

「アリウスと名乗る人物が、先生に会わせろと言っているんです!」

 

 

どうしたのか、と聞く間もなくユウカが一言、そう言ってのけた。

 

アリウス?……あの?いやいや、新手の詐欺か何かではないのだろうか?第一、アリウスが私と接触して何になるというのか。寧ろ、下手に刺激する点を考えると、どうも悪手なのではとすら思える。

 

 

「……その人はどうしてるの?」

 

 

「抵抗の意思を見せなかったので、拘束してますが……。」

 

 

よかった。放置して被害が発生、なんて事はあってはならないからね。思わず、安堵の息が漏れる。

 

…さて、どうしようか。一番賢明なのは、一度確認してから判断を決める事。勿論、私が襲われるというリスクはあるけど。確認もせずに何か課すのは、何を敵に回すかが分からない以上は得策ではないだろう。

 

拘束したまま放置するのも、良くないだろう。囚人(仮)が校内に留置されていると知られ渡ると、ミレニアムの立場も危ういだろう。かと言って、七囚人と同じ場所に置くのは重すぎる。

 

 

……よし。

 

 

「ユウカ、そこに案内して。話を聞かないと。」

 

 

「……分かりました。」

 

 

変な事が起こらないと、良いけれど。

 

 

 

────────

 

 

 

「…君が、アリウスの?」

 

 

「……あぁ。錠前 サオリだ。」

 

 

どうやら三人程拘束したらしく、それぞれ別の場所に留置している。そのうちの一人が、目の前にいる錠前 サオリ。

 

何でも、エデン条約の際の爆破テロを行った一人だと言う。その証拠と言い、テロがどのように行われたのかを鮮明に語る。その情報は、中にはアリウスの関係者でないと知らないような情報もあった。

 

間違いない。彼女は、アリウスの関係者だ。

 

 

「何でここに?」

 

 

「……頼みがあって来た。」

 

 

頼み。身構えるには、十分過ぎる一言だった。

 

 

「…姫を……秤 アツコを助けて欲しい。」

 

 

「……姫?」

 

 

果たして誰だ?サオリが言った人物に、皆目見当もつかない。姫と秤 アツコが同一人物なのは分かるものの、それ以外はてんで理解が追いつかない。

 

私の表情から汲み取ったのか、赤裸々に語り始めた。何でも、アリウスはマダムに支配されており、マダムがよからぬ企みを試みようとしているのだとか。その駒として、自分達は作戦を行ってきた事も、付け加えるように言った。

 

 

「マダムのやろうとしている事は、どうも嫌な予感がしてならない。それに……姫は私達の大事な仲間だ。」

 

 

そう語るサオリの表情は、嘘偽りの無い、酷く寂しいものだった。未だに疑念を向ける生徒達を他所に、私は真逆の心情を抱く。

 

 

「……こんな事を言うのは、虫が良いと分かっている。だが、頼む。」

 

 

「先生、この者達は早急に拘束すべきです。」

 

 

私の答えは、最早一つしか無かった。

 

 

 

────────

 

 

 

「……もうじき、始まるか。」

 

 

「…これから作戦だっていうのに、そんな事気にしてていいの〜?」

 

 

「作戦に支障はきたさない。特段問題ないだろう。」

 

 

「……やっぱり、貴方好きじゃないな〜。」

 

 

言ってろ。好かれる為にやってる訳じゃ無い。それに、私だってお前は好かん。任務でもない限り、同じ志の下にいたくも無い。

 

……が、この作戦が成功すれば。私の望みに大きく近付くだろう。だからこそ、この作戦を成功させる必要がある。たとえ、このいけ好かない女と行動を共にしなければならなくとも。たとえ、きな臭い作戦であっても。

 

 

「……そろそろ来るぞ。」

 

 

「はいは〜い!貴方は後ろから援護よろしく!」

 

 

……本当に、いけ好かない。

 

 

 

────────

 

 

 

「この先を曲がるんだっけ?」

 

 

「あぁ。とは言え、まだ少し距離はあるが。」

 

 

サオリの案内で、カタコンペの最深部に向かっている。かれこれ、足の疲れは既に限界に近い。それでもサオリは、まだ着きそうにないと言う。

 

つくづく、子どもの体力に驚かされるばかりだ。

 

サオリ達だけでは不安だと言われ、何人か別学園の生徒を連れている。マダム……ベアトリーチェとの戦闘になった時や道中での戦闘において、かなり安心感が生まれると思う。

 

トリニティの皆から、敵の対処については教わったから、他学園の生徒でも恙無く戦えるだろう。

 

……ただ、ベアトリーチェ。情報が、あまりに少ない。今でさえ情報が少ないのに、これから接敵するベアトリーチェへの対処をどうしたものか。

 

 

「…………っ!避けろ!」

 

 

突如、サオリの声が響く。私の身体は、いつの間にか動いていた。

 

 

─ドォォォ!!!

 

 

その数瞬後。私達がいた所に、爆撃が一つ。その衝撃の強さに、身体が飛ばされてしまいそうで。それでも、私の足は割と根性があって。

 

 

「あれ?思ってたより沢山いるや。」

 

 

そんなアレコレは、目の前の景色を見たら吹き飛んで。

 

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