昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

前回から日が空いてしまい、すみませんでした。が、この作品の投稿はしばらく休みとさせて下さい。

理由としては、他にやる事ができた事が主な理由です。完結までは永久的な失踪はしないつもりでいますが、現在時点でどうなるかは未定です。気長にお待ち下さい。

では、どうぞ。



断章Ⅱ
災禍の種、発芽の兆し


 

「アリウスの問題……エデン条約が一段落したと言えど、まだまだ先は長そうですね。」

 

 

「だね。……正直、まとまった休みが欲しいよ。」

 

 

「申請を出せば通るんじゃないです?流石に。」

 

 

今日も、書類とにらめっこ。外は雲もほとんど無い晴天。外に出て気持ちをリフレッシュするには、これ以上ないだろう。……目の前の夥しい量の書類が無ければ、今すぐにでもそうしたいところだ。

 

記憶に久しく、今日はルシアが手伝いをしてくれている。個人的に予定が立て込んでいたのか、最近はこうしてシャーレで顔を見るのも久しい。

 

どんな仕事をしてるのか気にはなるものの、いつも聞けずじまい。生徒のプライベートに踏み入ってる気がして、どうにも聞けない。ルシアは常識のある子だから、心配する必要は無いだろうけど。

 

 

「……どうかしましたか?私の顔に、何かついていますか?」

 

 

「…あ、ごめんごめん。考え事をしててつい……。」

 

 

「相当きてますね。私も口添えしておきますから、仕事が終わり次第打診してみては?」

 

 

「……そうしようかな。」

 

 

いつもなら大丈夫と言いながら誤魔化すのだけれど、どうやらそれをするにも億劫になっている。相当堪えているのだろう。ここまでになったのは、中々無い気もする。

 

…それに、ベアトリーチェやアリウス、そしてエデン条約が解決に向かっている。私も、休める時に休んでおかないと。こうした時にこそ、適切な休息は抜かりなくしなければ。勘のいい生徒は、見抜いてくるからね。

 

……まぁ、この書類の束がいつ無くなるのかは、最早考えたくない訳だけど。

 

 

 

────────

 

 

 

「サクラコさん!大変です!」

 

 

「…どうしましたか?」

 

 

「遺物が……預言の遺物が、消失しています!」

 

 

「……!?」

 

 

焦らずには、いられなかった。

 

何気ない一日が折り返した頃。ある生徒からそのような知らせが私に伝えられる。

 

教会に保管されていた”遺物”が、なくなったとの事。先生には「機密とは言っても、形のみではありますが。」といった旨の話をしたかもしれない。しかし、トリニティという勢力内では重要視されている。教会の権威の土台の一つとして。

 

それの喪失が何をもたらしかねないかなど、想像に難くない。

 

 

「盗難の痕跡はあるのですか!?」

 

 

「いえ……銃痕や保管器具の損傷は一つも……。”遺物”だけがなくなっていました…。」

 

 

……ますます、訳が分からない。

 

一旦、誰の犯行かは置いておく事にして。この人の言葉をまとめるに、”遺物”そのものはなくなっているが、それを保管する為のガラスケースや固定具は損傷がない。動かした形跡や、無理矢理奪っていった様子すらなかった。

 

…どうやって奪った?シスターフッドの規律では、もし持ち出すのであれば、その目的や持ち出す場所、おおよその時間を報告するよう義務付けている。とすると、(合法な手段においては)シスターフッドの誰かの紛失とは考えにくい。

 

そうなると、選択肢は誰かの盗難の線が濃くなる。しかし、盗難の跡は大小共に無かったとの事。……最近事件を起こした、七囚人の怪盗?いや、”遺物”は芸術品とは呼びがたい。

 

 

「……しばらく、教会内の監視を強化します。トリニティに広める事を慎むよう、他のシスターにも伝えて下さい。」

 

 

「は、はい。」

 

 

そうするうちに、私一人が残った。

 

再び、思考を巡らせる。誰が何の為に。トリニティの誰かが、シスターフッドの権威を陥れる為に仕掛けた事か?

 

だとしてもだ。態々こんな危険な事を犯すとは考えにくい。そのような行為に出たと知れ渡ってしまえば、犯人すらもタダでは済まないだろう。

 

 

「……分かりませんね。」

 

 

頭が、痛くなってくる。

 

 

 

────────

 

 

 

「……何て事をしてくれたんだ、ベアトリーチェ。」

 

 

「あら、他人のやり方に口を挟まない約束でしょう?それに、結果は大して差がないでしょうに。」

 

 

「……貴様のやり方には、美が無い。形式的な美も、何もかも。」

 

 

「言わんとする事は理解できますが、兎に角落ち着きましょう、マエストロ。」

 

 

ベアトリーチェの横暴にいちゃもんをつけるマエストロを、どうにか抑える事から始まったこの会議。マエストロの言いたい事は分かりますが、ベアトリーチェの言葉も的を射ています。

 

ベアトリーチェが痛感したと言っている、過程の差異と結果の一致、というやつでしょうか。我々は、”至った”後の世界を考えていません。その後に世界が滅んでしまおうが、我々は何とも思いません。恐らく、その事を指しているのでしょう。

 

ですが、想定外のやり方であった事は事実。このままでは、誰も”至る”事は叶わないでしょう。……さて、どうしたものか。

 

 

「ところで黒服、アレはいつ頃に?」

 

 

「……ベアトリーチェが呼び寄せたものの事を指しているのであれば、一月もないでしょう。早くて二週間後でしょうか。」

 

 

「……我々にとっても、今滅亡されるのは困る。どうにかならないものか……。」

 

 

マエストロの言葉に、反論をする者は誰一人いない。アレを退けるのは、それだけ困難な事なのだ。

 

 

「……おい黒服、面白い事が分かったぞ。」

 

 

「…あぁ、ファルストですか。」

 

 

思考にふけっていた私の意識を呼び戻したのは、ファルストだった。少し前から頼み事をしていたのですが、どうやら進展があった模様。

 

「貴様が難しい顔をするとはな。」等と言われるのは、些か不服ではありますが。

 

 

「別世界…いわゆるパラレルワールドについてだが……お前が考えている事が何とかなるかもしれんぞ。」

 

 

「……なんと?」

 

 

せいぜい何かの役に立てばと思い、調べるよう言っていたのですが。そこまでの成果を持ってくるとは、私も思いませんでした。流石、研究について誰よりも精通しているだけありますね。

 

彼曰く、アレは直接手を下す必要はないと判断する可能性があるとの事。その証拠に、アレの遣いのような誰かがこちらに来訪する道筋になっているかもしれないのだとか。まるでその現場を見たかのような説明に感じますが、この際どうでもいいでしょう。

 

……とはいえ、一体どんな研究をしてるのでしょう。私も他のゲマトリアも、彼の研究室らしき場所に足を踏み入れた事はない。「入ろうとするなよ。面倒な事を起こしかねん。」と釘を打たれてから、入ろうとも考えませんでしたし。

 

私よりも、余程怪しい研究をしているのでしょうか?……いえ、考えても答えは出ないのですし、考えるだけ無駄でしょうね。

 

 

「感謝しますよ、ファルスト。アレに終わらされて、我々の目的が誰一人も達せないなどという一番の胸糞は回避できるでしょう。」

 

 

「ふん……これから私は別の研究に移る。これ以上は介入するつもりなど無いからな。」

 

 

そう言い、すぐさまいなくなる彼。成果の大小に驕る事無く研究に没頭する姿勢は、大変な事ですね。私としては、もう少し様々な言葉を交わしたいところですが。

 

 

「……それで黒服、結局どうするので?」

 

 

「…そこまで難しくはないでしょう。これから少し話をしますが、今日は早めに切り上げる事にしましょう。細かい事は、追って連絡します。」

 

 

そうと決まれば、切り詰めていかなくては。幸い、彼のおかげでこちら側の負担はかなり楽なものになりましたし。

 

今回ばかりは、しっかり働くとしましょうか。

 

 

 

────────

 

 

 

「…………おい、潜影。あの情報は確かなのか?」

 

 

「…少なくとも、大幅にズレる事は無い。」

 

 

「そうか。……にしても、お前が私と契約をするとはな。例の件で、ゲマトリアは信用ならんのではないのか?」

 

 

「……あくまで、ベアトリーチェだけだ。実際、黒服は条件を守りきった。」

 

 

……使える、かつ信用に値するものは使い潰す主義か。嫌いじゃない。私と似通ったものを感じる。

 

 

「……それにしてもだ。その情報が確かだとするならば……ワシらはそれをどうにかせんとならんが?」

 

 

「…お前が動く必要は、ほとんど無い。研究に明け暮れるも良し、研究し甲斐があると思えば介入するも良しだ。が、条件は守れ。」

 

 

「あんなヤツと同格に見るでない。」

 

 

ベアトリーチェと同列に見られるなど、心外も甚だしい。あんな滑稽な末路は追いたくないわ。

 

それはそれとして、コイツが態々厄介事に絡みに行くとはな。自分の目的とそぐわない事には、一切興味を抱かないものとばかり思っていたが。

 

……いや、ワシが知らないだけで何かあると踏んでいるのか?最も、深みに突っ込もうとは思わんが。

 

 

「好きにしてくれ。ワシの依頼は、その都度知らせる。その間は好きにすればいいだろう。」

 

 

契約したのはワシの判断だが、コイツは手に負えそうにもない。野放しが一番良いだろう。実際、コイツは下手な奴よりもずっと賢いからな。その点を買ったとまで言える。

 

 

「……これだけ聞きたいのだが、いいか?」

 

 

「…………何だ。好きにしろと言ったばかりだろう。」

 

 

一線を超えるかどうか、ちと怪しいのだが。興味が尽きないのでな。恐らく、即排除にはなるまい。

 

 

「何故、シャーレを選ばなかった?」

 

 

「…………それか。」

 

 

ワシが気になっていた事。ゲマトリア側に付くよりも、どう考えてもあっちに与した方がやりやすい事も多かろうに。

 

ゲマトリアは、言わばキヴォトスの敵。こちらに付く事は、キヴォトスの凡そ全てを敵に回す事を意味する。コイツの行動の広さからして、あっちの方が楽だろうに。

 

 

 

─赦されぬと解っていながら、ソレに縋る程狂ってはいない。

 

 

 

何故か、その言葉が頭から離れなかった。

 

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