昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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虚ろな繁栄、終末の根城

 

「……こっちの準備は、思いの外早めに終わったか。」

 

 

想定していたより早く、事が片付いてしまった。喜ばしくはあるのだが……何をしたものか。

 

正直な所、ミレニアムについては干渉する必要は皆無。私の計画には、殆ど関わりも無い。……厳密に言えば、あるにはあるのだが。”用が済んでいる”と言えば正しいか。

 

例の人物を巡る、少し泥臭い輝かしい青春の物語。そんな思い出に茶々を入れないという選択肢を、今なら取ってもいいだろう。

 

既にヒトデナシに成り果てた自分に、僅かに残る情状酌量。それに、自分が驚いているのは、墓場まで持っていくとして。

 

 

「……いや、待てよ。」

 

 

…待てよ?敢えて関わるのも、ありか?感性が壊れつつある今の私であれば、関わってから起こる事を愉悦する余裕はあるだろう。それを、目的達成時の歓喜のスパイスに出来るのではないか?

 

それは良い。

 

どうせ、私は死ぬべき異分子。言うなれば、ゲマトリアと大して変わらない存在。ただ、目的が違うだけ。大人か子どもかが違うだけ。()()()()()()()()()()()()()()ではないか。

 

……長年の習慣が、今日まで抜けていなかったか。

 

丁度いい。目的を果たす最後の時くらい、私が私でなくてもいいだろう。目的さえ持てていれば、何でも構わない。

 

 

「…っははは!!楽しくなってきた……!」

 

 

最後に笑った記憶は、もう忘れた。が、ここまで笑ったのが久々である事だけは、明確に理解出来た。

 

 

 

────────

 

 

 

「ふむ……これはまた、随分と巨大な物を作ったものですね。」

 

 

ミレニアムにて、何やら騒動が起こっていると聞いた。どんなものかと見に来たものの、最早大都市が築き上げられていた。煌びやか……とまではいかないにしろ、近未来を彷彿とさせる、そんな都市。

 

しかし、そこに活気は無い。それもそうでしょう、ミレニアムの地下に作った秘密裏の都市なのですから。荘厳にそびえ立つ建造物の数々とは裏腹の、酷い寂しさ。

 

幽霊都市。そんな言葉が合致してしまうような。そんな場所でしょうか。

 

 

「……勿体ないですね。私であれば、より有用に使えると言うのに。」

 

 

子どもには、勿体ない代物である事は確か。こんなもの、精々要塞としか運用出来ないでしょう。彼女らの事ですし、労働力を呼び込んで様々と搾取する、等という運営はしまい。あぁ、勿体ない。

 

それにしても。この都市の電力などはどこから来ているのでしょう?こんな膨大な都市の電力を賄えるだけの資源が、果たしてミレニアムだけにあるのでしょうか。……それを知ったところで、私には何も益は無いでしょうね。探るだけ無駄でしょうか。

 

さて、そろそろお暇しましょうか。見たいものも見れましたし、ここにいる意味も無いですし。

 

 

「……珍しいもの見たさで来たか。」

 

 

「………おや、まさか貴女までいらっしゃるとは。」

 

 

ここを後にしようと思ったところに掛けられる声。振り返る必要もありませんね。何せ、知っていますし。

 

 

「何か用でもあったので?潜影?」

 

 

「……まぁ、な。アイツらの青春ごっこを、少しかき混ぜたくなっただけだ。」

 

 

「フフ……貴女も随分と悪趣味ですね。」

 

 

私が言えた義理もありませんがね。

 

ですが、私と行動を共にしていた時にはそんな素振りはしませんでしたね。新しい側面が見れた嬉しさはありますが、どこか寂しさを感じますね。何故でしょう。

 

彼女は確か、キヴォトスの中では味方なのでしたね。……いえ、もしかすれば潜影として参加するのかもしれませんが。どちらにせよ、後々キヴォトス側に同情したくなる事には変わりありませんね。

 

……それにしても。

 

 

「貴女の目的は、終ぞ知る事が出来ませんでしたね。私やマエストロ、デカルコマニーまでもが分からないときました。……ここで会ったのも何かの縁でしょうし、教えて貰えません?」

 

 

「…………ふむ。ここまで来たならもういいだろう。」

 

 

おや、随分軽々と教えてくれるのですね。もしかすると、もう少し早い段階でも教えて貰えたかもしれませんね。失敗したかもしれません。でも、知れるだけよしとしましょう。

 

 

 

─俺の目的。それは──

 

 

 

……ほう。それはまた、随分と壮大ですね。

 

…ゲマトリアの皆に、共有しておきましょうか。一応、何かしらのアクシデントに備えておきましょう。

 

あの口振。()()()()()()()()()()()()()()()()()()様子でしたし。

 

 

 

────────

 

 

 

─アリスは、どうしたらいいんですか!

 

 

─アリス……。

 

 

私達は、閉ざしてしまったアリスの心にダイブして、説得を試みている。勇者になりたいと願っていたアリスだからこそ、自分の力がいわゆる”魔王”の側である事が許せないのだろう。或いは、戸惑っているのか。

 

私達は、そんなアリスを受け入れる。その覚悟もある。が、簡単にはアリスに伝わらない。

 

……どうしたものか。

 

 

─魔王?そんな程度でか。…片腹痛い。

 

 

─…誰っ!?

 

 

突然聞こえる、ここにいるはずも無い声。モモイが問い掛ける。それに合わせて、私も振り返る。

 

……何故、こんな所にいるのか。有り得ない。

 

 

─潜影…っ!?

 

 

─天童。お前はその力を、魔王と言うのか?

 

 

─…魔王だと。そう言っていました。

 

 

そうじゃないと言い続けてきたが、それでもアリスの重荷は下ろす事が出来なかったらしい。それを知って、悔しい思いになる。振るう先の無い拳を、強く、握る。

 

 

─……そんな心の弱さで、魔王等という肩書きを持てると思うな。第一、その言い分だと、力を持つ者全員が悪だと言っている事になるが。

 

 

─そ、そんな事は…!

 

 

─いいか、天童。魔王って言うのはな……。

 

 

急に、視界が揺れる。身体の力も、いつの間にか抜けていた。力が入る気配も無い。気合いで、モモイやアリスの方を見る。既に意識が無い子もいれば、私の様に耐えようとしている子もいた。

 

潜影の方を見る。相変わらず、仮面のせいで何も見えない。けれど、笑んでいるように感じた。

 

どこか、この状況を楽しんでいるような。

 

そして、意識は落ちた。

 

 

─こういう奴の事を言う。

 

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