昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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取り留めのない日常

 

「ふむ……見た所、そこまで弄る必要がないように感じるけれど、何を所望かな?」

 

 

「この機能の仕組みと、新しい改修を頼もうかと思いまして。」

 

 

「仕組みを聞きたいなんて、随分と変わってるじゃないか。ここに来る人の殆どが聞きたがらないのに。」

 

 

ある休日、ウタハさんの下に来た私は、そう頼んだ。銃の仕組みを聞きたがる人がいない事もあり、私に対して一瞬怪訝そうな表情……どちらかと言えば、引いているような表情を浮かべている、と言うべきでしょうか。

 

…せめて、本人のいない所でやって欲しいんですがね。そこまで露骨な表情を向けられると、何だか変な事をしてるみたいに感じて、落ち着かない。

 

……まぁ確かに、いつもは何でも(ほとんどの場合長時間)解説したがる人がいるので、大方その人のせい……と言い切るのは、流石に言い過ぎでしょうか?ただ、その人が起因している事には違いないでしょう。ミレニアムであの人の名前を出すと、露骨に渋い顔を浮かべる人が多いので。

 

 

「知識は沢山欲しいので。あるに越したことはないですから。」

 

 

「ふむ…是非ともうちに欲しい人材だね。どうかな?」

 

 

「……少し魅力的ではありますが、まだやらないといけない事が残ってますので。」

 

 

「おや、残念だ。……そうだね、まずは改修案から聞いておこうか。」

 

 

 

────────

 

 

 

「……まさか、こんな機能を入れて欲しいとは。流石の私達でも、これは骨が折れそうだ。」

 

 

「出来ないと言わない辺り、不可能ではないんですね?」

 

 

「…まぁ、出来なくはないな。ただ、それなりに時間が欲しいね。」

 

 

ルシアが持ち込んできた改修案。それを見た私は、驚きを隠せなかった。

 

()()()()()()()()()()。驚かない方が、およそ無理がある。

 

超巨大銃合砲とは、あくまで私の中での呼び名。正式なものではない。彼女曰く、「今持ってる私の銃と余剰パーツで組み上がる、巨大な砲へ変形する機能が欲しい。」との事。いつか先生が見せに来た、アニメの武装した艦船の主砲とやらに並ぶ大きさ。

 

 

「銃の大きさを変えずに、その機能を取り込むのは出来なくはないけど……余剰パーツの大きさを変えるのは厳しいかもしれない。」

 

 

「なら、こういう案はどうです?」

 

 

「……ほう、考えたね。」

 

 

「案を持ち込むからには、用意は周到でなければいけないでしょう。」

 

 

提示された案を見る。飛行可能な機械を作る。それに、砲の一部になって貰う。この砲を完成させるには、かなり現実的な案と思われる。それに、私の製作意欲もそそられる。

 

ただ、これを作ろうとすると……

 

 

「…それなり等とは言えない程の費用がかかるが……大丈夫かな。」

 

 

「どれくらいで?」

 

 

即答で無理と返さない辺り、相当な予算を組んできたのかな。……どこでそんな資金を集めたのかが気になるが、詮索するのも野暮か。

 

私はそこらにあった紙に、およそこのくらいだろうという見積もりを書き記していく。…書いている私が思うのもどうか、とは思うが、とても個人に向けた額ではない。

 

これくらいになる、と彼女に言ったが、軽く見た彼女は「大丈夫そうです。」と。割と即答だった事もあり、彼女への疑問がより募っていく。

 

 

「それなら問題ない。……ところで、一つだけ聞いても?」

 

 

「?何でしょう?」

 

 

「この改修、君の腕前なら必要ないように感じるんだが。」

 

 

そもそもである。彼女がミレニアムにやって来て少し経つ頃、どうやら模擬戦をやったらしく、その噂が忽ちミレニアム内に広まっていった。その時聞いたのは、「新入生は強いらしい」「機動力で多人数を翻弄した」との声。勿論、私もそう聞いている。

 

であるとすれば。こんな巨大兵装、使う時が来るとは考えにくい。強い生徒の鎮圧に行くにしても、こんな兵装はかえって邪魔ではないか?

 

それこそ、巨大兵器……ケセドやビナー辺りでも相手にしないと、だろう。

 

 

「ロマンですよ、ロマン。ウタハさん、そういうの好きでしょう?」

 

 

…はぐらかされた気がする。気のせいだと、いいのだが。

 

 

 

────────

 

 

 

「うーん……どうしたものかなぁ。」

 

 

「どうましたか、先生。」

 

 

いつも通り、書類と格闘中の私。エデン条約とアリスの件が落ち着いた影響か、仕事量も少し減ったように感じる。

 

……減った気が、するのだ。()()()()

 

というのも、最近ある類いの報告が増えてきている。普段通りの仕事が減った代わりに、少しずつその報告の処理に追われているのだ。

 

 

「いや……この手の報告書、最近よく聞くなぁって。」

 

 

「これは…未確認の敵、ですか?」

 

 

そう、今まで見かける事の無かった敵の報告があがっているのだ。それも、各学園で。緊急性が高いかと言われれば、まだその域には達してないように感じる。が、嫌な予感が走っている。具体的な対策がある訳ではないので策を決めあぐねている、のが本音。

 

これといった発見時の共通点もなく、大型の敵を見かけた訳でもない。心配するには、あまりに些事過ぎる筈なのだが。

 

 

「確か、トキも見かけた事あるんだっけ?」

 

 

「はい、任務中に何度か。突出する程強い事もありませんでした。」

 

 

「…そっかぁ。」

 

 

はぁ、と。小さく零れる溜め息。

 

アリウスやミレニアム、潜影。ここの所、とても小さいとは言えない事が起き続けているのもあって、内心辟易している。

 

それに…………。

 

 

─その時まで、死んでくれるなよ?

 

 

潜影の最後の言葉。短く内容も大したものではないのに、やけに頭から離れない。その時とはいつなのか、何故私に死なないよう言ったのか。分かる事など、私の頭では思いつく事はなかった。

 

ヒマリに潜影の事を調査してもらっているものの、今まで掴めた足取りは、殆ど無いに等しかった。「私相手にここまで存在を隠し切りますか……許せませんね。」と、ヒマリをやる気にさせる程には、何も分からずじまい。

 

 

「……先生、今日はこの辺りにした方がいいと思います。手も進んでません。」

 

 

トキにそう言われて書類を見ると、思考に耽る前の書類と同じ。二、三項目進んだ程度しか変わっていない。

 

……今日は休もう。考える事が多すぎて、ろくに手が動いていない。

 

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