ルシアについて、現在頭の中のイメージを紙に描いているところです。「イメージが把握できた方がいい」等の要望があれば、公開するかも知れません。ただ、要望が特になければ(公開する可能性がある、というレベルではありますが)プロフィールなりのみに留める予定です。
では、どうぞ。
「先生、こちらの書類は片付きました。」
「ありがとう。なら、こっちに置いてくれるかな?」
分かりましたと、ルシアの声が響く。
今日のシャーレの当番は、ルシア。今日が初めてだと言うのに、かなり仕事が早い。ユウカとかから仕事について教えてもらったんだとは思うけれど、それにしたって早い。要領が良いんだろう。…天才肌、とも言うんだっけか。
ともかく、非常に助かっている。強いて言えば、会話が最低限しか無いのが、寂しい所。彼女はそこまで話す事が得意じゃないので、こういう雰囲気の方が気が楽なんだろうけども。
他の誰かと話をしていた事もあり、寂しさも一際目立つ。
「あ、ルシア。このトリニティの書類、お願い出来るかな?」
「…………はい、分かりました。」
一瞬。本当に、一瞬だった。
彼女の表情が、曇った。気の所為だとかではなく、確実に。初めて彼女のそういう表情を見た事もあり、割とすぐ判別できた。少なくとも、私との会話中であんな表情を浮かべた事は無かった。
……と、なると。
「…ルシアって、トリニティに苦手意識があるの?」
「……顔に、出ていましたか。」
その一言は、私の質問の答えを推測するのに十分過ぎた。
何でも、権力争いだとかドロドロとした人間関係、自由の効かなさが苦手なのだとか。実際にいたような言い様だった件については、「外から見ても聞き伝手でも、粗方想像できるので。」らしい。
確かに、息苦しそうだな、とは思う。在り方こそ否定はしないけど。私だったらすぐに根を上げてしまうだろう事を考えると、トリニティの子達がいかに頑張っているかを痛感する。
「……トリニティの事になると、どうしても感情的になりまして。すみません。」
「ううん、大丈夫。珍しいな、とは思ったけどね。」
彼女にも、苦手なものがあったとは。いや、人は誰しも苦手なものの一つや二つ、あって当然なんだけども。ナギサのような、完璧人間のように見えていた私にとって、衝撃的だった事は否定し難い事実であった。
……そうだ。
ふと、思いついた事をルシアに聞いてみる事にした。
「ルシアってさ、潜影の噂は知ってる?」
「そうですね、他の生徒が噂しているので。大枠だけなら。」
やはり、生徒間ではそれなりの波及がされているらしい。とすると、ユウカ辺りが話題に挙げない事も、益々疑問に残る。
ユウカは私を結構気にかけてくれる。少々自意識過剰かもしれないけど、そうした危険な噂を私に話して、注意を促してくれる。それは、過去に前例があったからこそ、言える事でもある。
「ヴァルキューレに収監されてる七囚人、くれぐれも気を付けて下さいね。今でこそ外に出る事は懸念しづらいですが。」と、態々注意喚起をしてくれる程に。脱獄した訳でもないのに、である。
……考えれば考えるほど、謎である。
「…仕事に戻るかぁ。」
「そうですね。量的には折り返しを過ぎてますので、頑張りましょう。」
…やめやめ。考えても分からない事は考えないでおこう。そうして書類を溜めてしまうと、また誰かに怒られるしね。
さ、頑張ろう。
──────
「…っ!どうして最近の不良は、戦車まで携えてるんだっての!?」
「今は戦闘に集中しなさい!こっちだって支援しているんだから!」
「分かってる!」イオリの投げやりな声が、一帯に響く。
ゲヘナの治安維持を担当する専門の機関がないので、私達風紀委員会がこうして不良の制圧に駆り出ている。だからこそ分かるのだが、イオリの言う通り、最近ではしっかりと戦力を備えた不良集団が増えたように感じる。
不良の数から作戦、果ては戦車や私達位の大きさの人型戦闘機まで。どこにそんな財源があるのかとは、最近の尽きない疑問点なのだが、それ以上に気になる事が一つ。
本当に最近までは、戦車までも備えているなんて事は稀も稀。半年に数件あるかないかくらい。それが今では、一月に数件レベルである。
おかしいと思うには、いささか十分過ぎやしないか。
「…っ、イオリ!」
私が意識を集中した矢先、イオリの方に飛んでくる一発の砲撃。死にこそしないものの、怪我は避けられない。打ち所が悪ければ、重症だって負いかねない。
咄嗟に、声が出る。しかし、間に合いそうにない。
……しかし、その砲撃がイオリに届く事はなかった。一発の銃声がしたが、それが答えだろう。そして、私含めた皆が銃撃の方を見る。
「…………」
「……潜、影!?」
潜影の姿そのままの人間が、建物の上にいた。黒髪に黒のロングコート。ただ、銃声を鳴らした銃は、手に握られていない。その代わりに握られていたのは、
そして、仮面。無機質な、そして敵対的な表情の仮面を被っている。そのせいで、気になる素顔は拝めずじまい。
無言の時間がどれ程続いただろうか。気付けば、誰かを斬りつける音が響いた。その音が、私達の意識を呼び起こす。
私達の誰かが被害に遭っていない事を確認し、その被害が不良側に及んでいる事を把握する。
見るに、斬りつけられた不良のヘイローが消えていない。身体を斬り裂き、完全に死に至らしめる程の殺傷性は無いのだろう。
「……っ、イオリ、アコ。私達も。」
ボーッとしている場合ではない。潜影が敵か味方か最終的に分からない以上、臨戦態勢を解く事は得策でない。それに、潜影が制圧しているとはいえ、元は私達の仕事。潜影に任せて後方待機、等とはいかない。
銃を構える。潜影に誤射しないかが心配ではある。何せ、剣で闘う人への配慮など、考えた事も実践した事も無い。最大限配慮はするものの、潜影が避けてくれる事を祈る他なさそうだ。
剣と銃の音という、キヴォトスでは異端な協和音が響き渡る。