「くっ……ここまでの実力…色彩だろう!」
「……煩い、黙って。」
気付けば、私の芸術もかなり消耗していた。打ち倒されてこそないものの、これ以上の損壊は見過ごせない。
強い。色彩から得た力であろうと、血みどろの努力からくる力であろうと。ここまで圧倒されてしまえば、いくら私であろうと、出るはずのない溜め息を零したくなる。
「…そこ。」
「っ!貴様…ァ!」
僅か。ほんの僅かな隙をぬって、私に銃弾をねじ込む。相当な苦痛が、私の身体を巡る。その痛みと共に、目の前の小娘に対する怒りも湧き出る。
倒さねばならない敵、理解の領域を超えた存在、許されていない
「随分と消耗してますね。助けますよ。」
「……黒服か。」
どこからもなく、黒服が横に。普段であれば、皮肉の一つや二つをくれてやるところだが、今は素直に受け取る事にする。既に、満身創痍であるから。
「隙を作って下さい。後はどうにかします。」
「ふっ!そのくらい、出来るとも!」
さぁ、踊るといい。魅せる戦いは、得意だとも。
────────
「先生!」
ルシフについて考察し、ヘイムダルについて対策を練っていた頃。妙に切羽詰まったような声色で、私を呼ぶハスミ。何事かと、その場の一同は焦りを浮かべる。
その中で、ゴルコンダは険しげな雰囲気を纏う。
焦燥気味のハスミを宥め、何があったのかと聞いてみる。
「トリニティが……敵に襲撃されています!」
その言葉を聞いて真っ先に顔を歪めたのは、サクラコ。幸い、ナギサは既にトリニティに戻らせていたので、トリニティが緊急事態に対して機能しない、という事態は免れた。
とはいえ、緊急事態である事には変わらず、対処は慎重に決めなければ。
「敵は?」
「…一個体が多数の敵を従えている様子でした。」
ケセドのような感じと捉えて良いのだろうか?だとすれば、トリニティでも対処可能にも感じる。が、ハスミの焦り様からして、それで済まない敵なのだろう。
とにかく、ハスミの言う一個体について知る必要がある。
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「救護が必要な方はこちらに!自力では困難な人は、我々が!」
「アズサちゃん!そっちの援護をお願い!」
「分かった!」
「……熾烈、ですね。」
私は先程まで、巨大兵器との戦闘をしていました。先生に言われてトリニティに帰ったのも束の間、ミネさんから敵の知らせ。休む間もなく、指揮に。
思わず、熾烈という言葉が漏れてしまうのも、無理はない。何せ……。
「あ〜もうっ!数が多過ぎる〜!」
「ミカさん!文句言わないで下さい!一番叫びたいのは私なんです!」
そして、
それは……。
「っ!コハルちゃん!」
「え?………きゃぁ!?」
圧倒的な、個体。形も性能も、連れている数多とは違う。一つだけが、異様に洗練されている。剣のようなモノを携えているソレは、あの巨大兵器と似た雰囲気を感じる。
近距離戦をしようと近付けば、その剣を振るいながら肉薄。銃撃戦に持ち込もうとして距離を置けば、光線や背中の武装から鉛玉の嵐。その上、スナイパーやサポートにまで注意を向けるときました。
……嗚呼、どうしたらいいのでしょう。勿論、トリニティの生徒を信用していない訳ではありません。が、信用を強さがねじ伏せてしまっているのです。無闇矢鱈に、キャンパスに黒を塗ったくるように。
…せめて、周りの敵をどうにか出来れば。それが出来さえすれば、解決の糸口が見える気がするのですが。
「はぁ…………こんな者達に力を貸すのは、だいぶ気が引けるのですが。」
その声が、どうしてここで聞こえるのか。
ベアトリーチェ。アリウスを利用し、トリニティとゲヘナを混乱の渦に巻き込んだ張本人。
いるべきではない、大人。
「何故、貴女がここに……!」
「勘違いなさらないように。この世界が私以外の手で滅ぶのが気に食わないだけです。あくまで、私とゲマトリアの総意です。」
ゲマトリアの総意。つまり、ゴルコンダという大人が私達と敵対しなかったのも、偶然ではなかったのでしょう。とするならば、先生が懸念していたゲマトリアとの衝突は杞憂になりそうです。
等と考えていると、ベアトリーチェが口を挟んでくる。
「考え事ですか?随分余裕ですのね?」
「こちらも、考えを巡らせるので手一杯なんです……!」
とはいえど、戦力が増えた事は、紛れもなく朗報。打倒の目処が立てられるかもしれない。
「ベアトリーチェ、貴女は取り巻きを始末してください。足りなければ、何人かそちらに回すので。」
「……言いますね、貴女。いいでしょう。大物を狩れない、などという事態は止めてくださいね?」
「言われなくても、そのつもりです!」
かの敵と組む事は真に不服ですが。今は四の五の言ってる場合ではありません。
トリニティを守れずして、何がティーパーティー代表でしょうか。
─異界に定まりし大罪の化身、
────────
「…………遂に、SINとも衝突したか。」
始まった。始まってしまった。ここまでくれば、最早戻る事は出来ない。元より、戻るつもりなどない訳だが。
この地で、このキヴォトスで。かつてない死闘が巻き起こる。紛れもない、私のせいで。後悔はない。未練など、微塵も無い。
……この闘いで起こる結果が何であれ、私はそれを受け入れよう。目的を果たせれば万々歳だが……キヴォトスの事だ、滅亡の運命すら捻じ曲げてしまい得るだろう。
「動かすのか?この要塞を。」
「……あぁ。」
「…………良いのか?起動してしまえば、貴様の未来は無いぞ?」
「構わん。…元々、この時の為だけに生きていたようなものだ。」
その言葉を聞いたファルストは、どこか不満気な表情を浮かべていた。ゲマトリアらしからぬ、感情を持った表情。
…何故、今更になって懐かしくなるのか。そんな感情は、とうの昔に捨て去った筈だというのに。
「…これで、貴様との契約は終了だな。」
「あぁ。……後は、好きにするといい。」
「…………成功、する事を願っとる。」
それはどうも。
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「…っ!?この揺れは…!?」
マエストロと黒服を仕留めそこねた。そして、次に狙う標的を決めていた時。地面が、揺れた。
ただならぬ揺れ。色彩に、キヴォトスを滅茶苦茶にされた時くらいに。
「………あれは…。」
空を、見る。
光の柱がそびえ立ち、一つの町のようなモノが隆起し始める。……いや、違う。あれは……。
「…空中要塞?そんなもの、このキヴォトスには無かった筈。」
不思議なオーラを纏う、それでいて神秘的な要塞。それも、恐ろしく巨大。先程まで相手していた敵なんて、比にならないくらいに大きい。
……誰が、あんなものを。いくらゲマトリアといえど、あんなモノを仕込む程ではないはず。だとしたら……。
「…嫌な予感がする。行こう、
この世界を、正しい道に戻す為に。
─たった一つの道の為の方舟、
─LUCIF=ABYSSの起動に伴い、本記録の上書きを開始。
─…成功しました。本記録の主題を、『昏く儚い復讐譚』に変更します。
─更に、本記録の章題の一部変更を開始。
─……成功しました。