どうも、Cross Alcannaです。
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では、どうぞ。
「なんだ……あれは。」
巨大兵器……いや、ヘイムダル(ゴルコンダが呼称)との戦闘中、ヘイムダルとは違う震源の揺れ。あのヘイムダルの巨体すらも平然と揺らしてしまうその衝撃を、当然私達が気にしない訳にもいかず。あまりの衝撃に、思わず戦線を一つ下げる指示を送ってしまう。
最初は、震源と思わしき場所が隆起し出したとしか思っていなかった。……こうとしか思わなくなった慣れが怖い、という話は置いておくとして。しかし、そんな雑多な考えはすぐに引っ込む事に。
超巨大な要塞。それも、浮遊している。どんな仕組みで浮かんでいるのかと、疑問に感じる程に巨大。今目の前にしているヘイムダルすらも、小さいと錯覚してしまう。
ミレニアムで見た地下都市と同等程度の技術力を醸していて、それでいて強固。迫撃砲や主砲、対空砲まで備えているようにも見える。文字通り、強靭。
「…いや、今はヘイムダルに集中しないと……!」
確かに、アレについて疑問は尽きないし不安は募るばかりだが、それがヘイムダルを疎かにしていい理由ではない。何をしてくるか分からない以上、下手に触れる方が良くない。それに、ヘイムダルは見逃していい規模の有事でもない。
……とはいえ、どうしたものか。ルシフとホシノが何とかヘイトを買って攻撃の隙を作ってくれているものの、どうも活路が見い出せそうにない。恐らく、弱点はある。が、その弱点をどう露呈させるか。
ゴルコンダは、「手はあります。それを用意するのに、暫く時間を要しますので、耐えて頂けると。」と言って、別行動。現在、その手段に縋っている状況。それ以外に、何か策はないか。ゴルコンダの手が不発に終わった時、第二第三の手段は必要だろう。
……そういえば。ルシフの剣、他の生徒の攻撃より僅かながら与えている傷が深い…?よく目を凝らして目で追ってみる。
するとどうだろう。当たっていた。敵も、剣での攻撃に備えていなかったのか、どうやら剣での傷まで抑えきれていないように思う。
……賭けるしかないか?
「ルシフ!こっちまで下がって欲しい!他の皆は、少しの間耐えれる!?」
「?はい!」
「うへ〜、これ以上のヘイトを買わないといけない感じ?」
「ん、キツいけどやらないといけない。」
「分かってるってば〜。」
どうやら、可能らしい。流石は皆だ。
私の指示で戦線から離脱したルシフに対して、私は新たな指示を出す事にした。
「さっきまでは敵の気をひいてもらっていたけど、ここからは君にも本格的に攻撃に転じて貰いたい。それも、剣で。」
「つまり……最前線で剣を使いながら攻撃し続ける、と?」
「…うん。」
我ながら、酷な命令だと思う。あんな巨躯の敵に対して近接戦闘のみを強いるのだ。誰よりも危険な場所と役回りについてくれ、と言っているのと変わらない。
……ごめん、本当に。彼女一人に重荷を背負わせなければならない自分の無力さに、腹立たしさを覚えてしまう。
「…そんな顔をしないで下さい。私は大丈夫ですから!」
「ごめんね。…ゴルコンダが合流するまでは、君が頼りだ。……生きて、戻ってくるんだよ。」
「はい!」
…行こう。このキヴォトスに、あんな音色は要らない。
────────
「この楔……見た事ない。」
空中要塞の近くに向かって歩を進めていた。その途中で、光の柱の根元に辿り着いた。
よく見てみると、何やらメカメカしい楔が打たれていた。光がどんな影響を齎すのか分からない以上、迂闊に触るのはよくない……。
「……っ、もしかして。」
僅かながらに感じ取った嫌な予感に従って、目の前の楔を銃で乱射。楔は、かなり強固だった。が、数十分の後に崩れていく。そびえ立っていた柱も、徐々にひいていく。
……やっぱり。
「……
……そうなると、あの柱は吸い上げたモノをどこかに転送している…?やっぱり、ゲマトリアの仕業?益々分からない。
「……どう思う?
後ろに立っている人に尋ねる。……分かっていたけれど、答えは返ってこない。
…この
「……どういう、事?」
……とにかく、進もう。立ち止まってても、何も見つからないし分からない。
あの要塞に、何か大事なモノがある。そんな気が、してやまない。
────────
「…っ!ゴルコンダはまだなのか……!?」
あれから、どれだけ時間が経っただろうか。疲弊も疲弊、最早消沈しかねない勢い。私のみならず、それは生徒も同様に。肩で息をしながら尚も戦闘を続けている。増援も追いつかず、交代出来ていない生徒もチラホラと。
ルシフの方というと、顔色が目に見えて悪くなっている。動きも鈍っており、交代させなければならないラインを、とっくに超えていた。
……が、出来なかった。ゴルコンダが来るまでの今までに、およそ現実的であろう他の策は思いつくに至らなかった。ここでまた撤退してしまえば、また振り出しになってしまいかねない。
が、同時に募る罪悪感。その罪悪感に、もう撤退を指示してしまいたい。
「申し訳ありません、かなり遅れてしまいました。」
希望の声。ようやく駆けつけてきた、最後の望み。
その声を聞いた瞬間、ルシフをはじめとする交代出来ずに疲弊しきっている面々に撤退を指示。僅かな不安を表情に表しながらも、ルシフも撤退してきた。
「おや、丁度いいですね。天童さん、貴女が鍵なのです。」
「私……ですか?」
随分前に戦線交代して十分に休息を済ませたアリスに対し、そう零すのは黒服。…何で来たのかは、この際考えないでおく。
その言葉の後にどこからともなく取り出したのは、恐らく銃に取り付けるであろうアタッチメント。それも、そこそこ大きめの。
「これは、既存の銃に取り付ける事で効力を発します。これを付けた銃に直撃した者は……」
─テクストを上書きされます。
テクストの上書き。一度聞いた所で、正直ピンとくるものでは無い。そう感じたのか、ゴルコンダが説明を加える。
「簡単な例を挙げますと、無敵な存在に”無敵でない”というテクストを付与できる……つまり、無敵でなくさせる事が出来るのです。」
それは、何という
そう考えている私を意識から呼び戻すように、ゴルコンダはまた続ける。
「…ですが、二つ程の条件もあります。」
その条件とは、ゴルコンダ曰く、アリス程の大きさの銃でないといけない点と一度の起動で数多くの神秘を消費する点。
一つ目については、「これ程の機能を外部的に付与して動かすとなると、並大抵の銃ではすぐさま決壊してしまいます。」と補足があった。二つ目の点と重ねて考えると、それ程の銃でないと銃自体がもたないのだろう。
二つ目については、要約すると、一度使用した後はしばらくのクールタイムが必要になるとの事。それに加え、本人の神秘の充填が必要になる事を考えると、アリスの戦闘運用は極力控えるべきとも。一応、他の生徒からの代理補填も出来なくは無いが、出来れば最後の手段に備えるべきだろうと黒服の言葉。
それに、二人は説明していなかったが、懸念しなければならない事がもう一つ。
「……これ、ヘイムダルだから使えるヤツだよね。」
「…その通り、ご明察です。誰に対しても有効的、という訳ではありません。それこそ、俊敏な敵に対してはそもそも命中しない懸念が大きい。」
言うまででもなかったと思いましたので、と後ろから放つ黒服。それはそう。少し考えれば、容易に辿り着き得る。
問題は、どんなテクストで上書きするか。あちらも外殻はそれなりに損傷しているので、弱点を内と外入れ替えるのは割と悪手な気がする。それに、ヘイムダルは無敵では無いし、笛の音を止めても仕方ない所は否めない。
……あの外殻にテコ入れした方が良さそうなのは、分かるんだけど。どうも、結論に踏み込めそうにない。どうしたものか。
「先生〜弱体化とか出来たりしない?」
そう言うのは、ホシノ。
そうか、それがあったか。何も、具体的である必要はないのか。外殻だけとか笛の音無効とか、引っ括めて弱めればいいのだ。
が、抽象的なテクストの付与の場合、使用する神秘の量も増大するのではないだろうか?広く浅くなテクストは、カバーしている範囲も多いように思う。
と、すると。あの要塞への対策としてこれを使えるかが怪しくなる。どちらを採るべきか。
……いや、今それを考えるのは、早いか。そもそも、ここを乗り越えられなければ、この採算も無意味になる訳で。だとしたら、まずここを乗り越えないと始まらない。
「……ゴルコンダ、全体的な弱体化はいける?」
「出来ますが……あの浮遊してるモノとの対峙までに、再度の使用が見込めるかは分かりませんよ?」
「構わない。その想定も、ここを越えないと計算しても意味無いし。」
「そうですか。…良い判断です。」
そう言いながら、付与テクストの準備に移るゴルコンダ。アイデアをくれたホシノには、ありがとうと伝えておく。
…さぁ、ヘイムダル。今度こそ終わりにしよう。
「まだ、終わる時じゃないからね。」