昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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世界への布告

 

「そちらも、無事で何よりです。」

 

 

「……で、アレは何だったのだ?少なくとも、我等の知らぬ勢力がいる事は確定なのだろう?」

 

 

「そう見て、相違ないでしょう。貴方と黒服が対峙した勢力とも別である可能性も考えねばなりません。…かなり、苦難な状況です。」

 

 

「そういうこった!」と、デカルコマニーのその声が響くこの空間。ハッキリ言うと、異質。

 

私が休息から覚めた時には、どうやらヘイムダルとの戦闘は終わっていたようで、私を守るように生徒が座っていて、それを気にも留めずに話をしていたらしい黒服とゴルコンダ。そこにマエストロとベアトリーチェもやって来て、今に至る。

 

ゲマトリアと私、そしてキヴォトスの生徒。これが一同に同じ場所に集う事は、敵対してる時以外に無かったし、これからも無いと思っていた。それ程、異質なのだ。

 

 

「あの異物の勢力である可能性は……いや、厳しいか。」

 

 

「私と貴方が戦ったアレは、貴方と黒服が対峙したソレと本質が違うのでしょう?であれば、およそ味方同士と言うには早計でしょう。」

 

 

「ベアトリーチェの言う通りです。味方であるならば、相当のイレギュラーでもない限り、本質は著しく似通う筈。何より、我々がそれではありませんか。」

 

 

こうして、ゲマトリア同士のしっかりとした会話を聞くのは初めてだった気がする。何と言うか、大人だ。生徒との作戦会議や日常会話を日頃からしているのもあって、それとつい比べてしまう。勿論、しっかりとした内容や口調で話をする子もいるけれど、それでも根は子ども。何処かで、子どもらしさが垣間見える事が殆ど。

 

対してゲマトリアは、そんな事は無い。会話に無駄はなく、子どもらしさが垣間見える等といった事もない。働かせるべきところで理性を働かせているところが、やはり子どもと大人との違いなのだろうかと、つい考えてしまう。

 

それはさて置き。ゲマトリアの言う事について、私も少し考えよう。

 

まず、マエストロ達が接敵した存在。最初に接敵したのが、あの()()()()()()()()の事で間違いないだろう。私達がドローン映像で見た光景と一致している訳だし。

 

そして、その後にトリニティに現れた敵。マエストロはソレをSIN VIIと呼称していたので、私もそれにあやかる事にしよう。……いや、シンの方が良いか。何となくだが。

 

それで、そのシンについて。マエストロが言うには、「()()()()()()()()()()()()()()()のナニカを模倣したモノだとみていいだろう」との事。私には理解しにくい言葉だったけど、時間をかけて噛み砕いてみると、多少は理解出来た。

 

そんな思考を置き去りに、会話は進む。

 

 

「先生、いかがしますか?我々の考察も、貴方の指揮が決まってこそです。」

 

 

催促するように、黒服の一言。

 

…正直な話、結構悩んでいる。シロコのような誰かも、正直どうにかしないといけない予感はしている。でも、それ以上に危険な存在がいて、それも現在進行形で猛威を振るっている。

 

シンやヘイルダムはというと、撤退していったらしい。それも加味すると、果たしてどうすべきなのか。

 

そんな時、ベアトリーチェが一言放った。

 

 

「撤退先を特定できれば、どうにかなるのではありませんこと?」

 

 

確かに。仮に全く別のところに身を潜めているなら、また先程のような迎撃戦をすべきだし、両方が本拠点(恐らくあの空中都市)に撤退したのなら、叩きに行くべきだ。

 

私は、ヒマリにそれらの居場所の特定を頼んだ。二言なく引き受けてくれたが、心なしか声が弾んでいるような。頼られて嬉しいのか、それともいつもの事か。

 

 

「今、アレの特定を頼んだ。それまでは、一時休憩にした方がいいと思う。」

 

 

忘れてはいけないのが、生徒達も私達大人も、満身創痍である事。何も、かなりの余力を残した上でここにいる人は、殆どいない。

 

急がば回れ。今は焦る時間じゃない。そうして足元を掬われるなんて、洒落にならない段階にまできている訳で。

 

 

「っ!?先生!あれ……!」

 

 

ふと、私の近くにいたセリナから呼び掛けられる。普段滅多に焦りを見せない彼女が放った焦燥の言葉に、私は気が向く。

 

セリナが指を差した方を見る。そこには、砂嵐を映した巨大モニター。何事かと思っているのも束の間。

 

 

─随分、疲弊しきっているな。

 

 

砂嵐から一転、映し出されたのは潜影。依然、顔は隠したままだった。

 

画面越しに聞こえた声は、まるで私達を煽っているようだ。若干の苛立ちを覚える。そんな感情を置き去りにするように、声は続く。

 

 

─宣告しよう。布告しよう。私が、この箱庭の敵だ。

 

 

それは、まるで毅然としていて。まるで当然かのように告げられた。今日の朝ごはんは目玉焼き、それを告げるくらいにあっさりと。

 

 

─終焉を告げる奏者も、異界の大罪の化身も、私が作り上げた。

 

 

再び告げられた、驚愕の事実。驚く暇も与えられない。

 

 

─私の目的を知りたければ。私を止めたいならば。来い。

 

 

確かな意思を、その言葉に感じた。覚悟、怒り、恨み。何らかの目的を、果たさんとする決意。表情は分からない。けれど、読み取るには十分だった。

 

気付けば、映像は終わっていた。周りをくるりと見てみると、未だモニターから目を離していない生徒も。

 

 

「成程……まさか彼女が敵だったとは。」

 

 

そう言ったのは、黒服。確かに、黒服と潜影は一時期手を組んでいた。それも少し懐かしく思うのは、不謹慎かもしれない。

 

……ん?

 

 

「”彼女”?どういう事?」

 

 

それは、些細な言葉の突っかかり。黒服の言う”彼女”とは、恐らく潜影の事。私はてっきり、カイザー理事やゲマトリアのような男性だと思っていた。

 

黒服がいったその言葉は、女性を指す言葉。そこから導かれるのは。

 

 

「おや、先生は知らなかったのですか?潜影は、貴方もよく知っている人物ですよ?……貴方も、どこかで心当たりがあるのでは?」

 

 

嘘だ。

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 

そんな訳無い。そんな事、無いはず。よりによって、その可能性は。

 

でも、納得出来てしまう。今までの事が全部線で繋がってしまう。色々な仮説の合理性を、全部打ち消すくらいには。

 

 

 

─嘘だと言ってよ。お願いだから。

 

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