昏く儚い復讐譚   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

前々回辺りに言っていた事とは裏腹に投稿が続いていますが、通学時間などのスキマ時間に書いています。そうして書けたものを投稿してる次第です。
もしかしたら、休止とは言ったものの、休止とまではいかずに済むかもしれません。ただ、頻度が落ちるのは間違いありませんので、振り回してしまう事をお許し下さい。

では、どうぞ。


外の者

 

「潜影?聞いた事がありませんね。」

 

 

「注意するに越した事はない。噂程度ではあるものの、実在すると踏んでいい。何より、キヴォトスでも随一の実力者とも言われている。」

 

 

突然、マエストロから忠告される。

 

何でも、キヴォトスですら正体を掴めていない生徒……と思わしき人物がいるのだとか。実物を見ていない以上、警戒すべきとは考えが行き着くものの、どうも知的好奇心が勝って仕方ない。

 

個人的には、私達と同じ存在では無いかと思うのだが。いや待て、噂頼りで結論に行き着くのは早計か。

 

……ふむ、難しい問題だ。

 

 

「とは言っても、行くのだろう。お前の知的好奇心とやらは、私ですら計り知れないからな。きっと、埒外な事をしでかすに違いない。」

 

 

「おやおや、変な信頼の寄せ方ですね。悲しいものです。」

 

 

「微塵も思っていないだろう。」

 

 

そこまで即答されてしまうとは。考えが違うとはいえ、同じゲマトリア同士だというのに。

 

まぁ、悲しいなどとは思っていないのですが。

 

 

「が、私も潜影については気になる。もし接触の機会があれば、情報の共有を頼めるか?」

 

 

「いいでしょう。私もそこまで鬼畜ではありませんので。」

 

 

「これからやらかすヤツが、何を言う。」

 

 

おや、正論過ぎて何も言えませんね。こういう時は、黙って誤魔化すとしましょうか。ふふふ。

 

 

 

──────

 

 

 

「……いませんねぇ。噂では路地裏に出没する、との事でしたが。」

 

 

マエストロを置いて、キヴォトスに来たものの。潜影の姿形も見当たらない。もし潜影がキヴォトスの味方的立ち位置であるなら、私のような人間は格好の悪だろうと思ったのですが。

 

単に様子を伺っているだけならば、いい。もし、そうでないならば。潜影の出没条件の悪が、私を範疇としないならば。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…おっと、物騒ですね。潜影?」

 

 

思考に没頭している最中、突然視界の外から剣が地面に刺さる。投擲でもしてきたのでしょうか。

 

随分と、地面が抉れている気がしますが、ね。

 

 

「……黒服、か。」

 

 

「おや、私も随分有名になったものですね。」

 

 

どの伝手で私について把握したのか、些か気にはなりますが……まぁいいでしょう。私の目的は、果たせたのですから。

 

しかし、あちらも流石に警戒していますか。無理もない。

 

恐らく、潜影は子ども。私達のような大人ではないでしょう。私の勘が、そう告げていますし。だとすれば、単独で動き続けているのは、見過ごせない疑問ですね。

 

 

「貴女、キヴォトスの学園に所属していないので?」

 

 

「…………一応は、な。」

 

 

果たして、どちらか。恐らく、この疑問についてこれ以上言及したところで、核心をつく事は出来ないだろう。およそ子どもとは思えない程、合理的である。

 

 

「貴女について、色々な噂があります。貴女が悪党を狩る理由は如何様で?」

 

 

その質問をすると、考え込むように黙る。……私がゲマトリアの黒服と知りながら、それもキヴォトスの学園生であるのにも関わらず、私と普通に対話を試みる。

 

……妙だ。

 

 

「…深追いされる事も少ないからな。対象が悪党でなければ、例の先生とやらに目をつけられかねん。」

 

 

只者では無い。若くして、そこまで心理について心得ているとは。自身の立場と行動の為のヘイト管理、それを実行に移す行動力。そのどれもが、一流。私ですら真似したくなる程に、およそ理想的であった。

 

それこそ、物語だの創作だのに出てくる人物以上に、である。

 

 

「……貴女、本当に子どもなので?」

 

 

「…………環境は、人を変える。」

 

 

元々そうでない、とでも言いたげに語る。その姿も見てみたかったものだが。

 

……引き込みたい。が、リスクも大きい。()()の匙加減で、私達の危険はすぐ側に。その逆も然りではあるが。

 

しかし、引き込むメリットは大きい。それこそ、デメリットが霞むのではないかと思うくらいには。

 

それに、こんな興味心をくすぐる人間を、傍に置いておきたいと思ってしまう。仲間とは、危険を孕んでいて然るべきだろう。そうでなければ、()()()()()()

 

 

「……私につきませんか?」

 

 

「…………正気か?」

 

 

そんな反応、妥当も妥当。何せ、いつの間にかその言葉を放った事にようやく気付いた今の私ですら、そう思うので。しかし、いつかは提案しようと思ってはいたのだから、丁度良いといえば、そうでもある。

 

 

「…いいだろう。」

 

 

「……これはこれは。てっきり、この話は持ち帰るとばかり。」

 

 

()()()()()()()()()()()からな。うまい話には乗っかる。上手く生きていくのには必須だろう?」

 

 

あっけらかんと、真顔でそう言いのけてしまう彼女を見て、私は笑いをこらえる事は出来なかった。「…急に笑うな、気色悪い。」とは言われてしまったが、無理もないだろう。

 

()()()()()()()()()()()。それが、確信に変わってしまったのだから。先生の味方であるという当たり前だと考えていた前提が、本人の口から呆気なく覆ってしまったのだから。

 

妙だと思った私の考えは、当たっていた。"果たして先生の味方であるのか"という先程の疑問が、そもそも違っていた。恐らく、彼女はこちら側に近しい。でなければ、キヴォトスに敵対する側に与する事等、有り得ない。

 

これでスパイ目的だったとしたら、お見事と言う他ない。

 

 

「……が、条件を提示する。」

 

 

「条件、ですか。その条件とは?」

 

 

突如彼女の口から発せられたその言葉に、私は内容を問う。返ってきた言葉は、これまた面白いものだった。

 

 

「──────」

 

 

「……ほう。理由が聞きたいところではありますが、聞かないでおきましょう。そして、その条件をのみましょう。」

 

 

交渉も上手いとは。私の気が乗っている時に条件を提示し、デメリットに対する忌避感を弱めるとは。私がそのデメリットをそこまで痛いと感じなかったとはいえ、見事な交渉術。

 

私もそういった心得はありますが、見習いたい事だらけな人間に出会うとは。

 

恐らく。先にも後にも、これ程先生に同情する時はこないでしょう。その条件からは、彼女の粗方を理解するのに、十分であった。

 

先生、貴方が彼女を見つけ出せなかった事のみが。そんな些細な事が貴方達を苦しめるでしょう。

 

 

─こんな化け物を、野ざらしにしていた事を。

 

 

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