二人の姫と出会った少年は英雄の道を歩む   作:Kkky

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お待たせしました。
結構スローペースにはなりますがそれでもよければどうぞ。


【ヘスティア・ファミリア】

「ベル君! こっちこっち!」

 

「ひ、引っ張らないで下さい神様!」

 

 神様……ヘスティア様の【ファミリア】に入ることになった僕は早速入団の儀式を行うために神様に連れられ古ぼけた書店へと入っていった。

 書店の店主であろう老人は神様と軽口を交わした後、二階を借りるという言葉に快く了承してくれた。

 古い木の香りが漂う一室の中で僕は───

 

「さ、服を脱いで、ここに座っておくれ」

 

 ───神様に身包みを剝がされそうになっていた。

 

「え……それはちょっと……」

 

「なんで少し引いた目をしてるのさ! 背中に『神の恩恵(ファルナ)』を刻むのに服を着てたら話にならないだろ? ていうかその程度のことは君も知ってるだろ!」

 

 まあ知っていたことではあるけどいざ自分がそうなるのだとわかると少し緊張する。

 そんな僕の気持ちを知ってか知らずか神様はウキウキで僕の背中に『神の恩恵』を刻み始める。

 刻まれている間になぜ本拠でも何でもない書店で恩恵を刻むのか聞いたら神様は、

 

「ボクが初めて『恩恵』を刻むのはここだって決めてたんだよね。ボク、結構本好きだからここがボク達の始まりを迎えるのにはぴったりだと思ったんだよね! それに『物語』の始まりはたくさんの(ものがたり)で囲まれたここが相応しいと思うんだよ」

 

 と、嬉しそうなワクワクしているような笑顔で話してくれた。

 この話を聞いて僕自身もさらにこの人に見つけてもらえてよかった……と、そう思った。

 

「ベル君、ベル君。次はボクから聞いてもいいかい? 君は何で冒険者になりたいと思ったんだい?」

 

 オラリオに入る前に大勢の人の前で言った僕の目標にして夢。

 あれから少し経って色々あったけども何一つとして揺らいでいない。

 

「『英雄』になるためです」

 

 ピタッとヘスティア様の動きが止まる。

 そんなことなど大して気にせずに僕は続ける。

 

「小さいころに一緒に過ごしたあの子の『英雄』になるって……大切な人の希望になって、その人を守れるくらい強くなるって……そう、誓ったんです。そのために冒険者になりに来ました」

 

 神様の顔は見えない。だけども背中に感じる気配からこちらを嘲笑うような雰囲気は一切感じなかった。

 やがて神様が再び動き出す。その手は先ほどよりもさらに優しくなっていた。

 

「───うん、いい夢だ。ああ、とてもいい夢だとも」

 

 その言葉を最後に『神の恩恵』の刻み込みは終わった。

 背中に刻まれた【神聖文字(ヒエログリフ)】は見えないが、少し熱を持っているような感じがする。

 

 と、そんな僕の背中の文字を神様がなぞるように触れる。

 相変わらず顔は見えないが驚いているような雰囲気を感じる。

 

「神様?」

 

「! ああ、ごめん、なんでもないよ。い、今から君の【ステイタス】を写すからもうちょっと待ってておくれ」

 

 何かを隠すように、何かを迷うように机に向かう神様を不思議に思いつつも大人しく待つ。

 

(ここ……結構色んな本があるんだ……)

 

 手持ち無沙汰になった僕は周囲の本棚を物色する。

 ほとんどの本……というか英雄譚は見たことがあるものばかりだったけどいくつかまだ見たことがない英雄譚があることに気づく。

 

(今度一人できて読もうかな……いや、今からでも)

 

「ベル君、お待たせ」

 

 気になった英雄譚を取ろうとしたところで神様が紙を持って近づいてくる。

 あの紙に僕の【ステイタス】が記されているのだろう。

 

「見たら多分驚くと思うよ? ボクも驚いたからね!」

 

「え? そうなんですか?」

 

 笑みを浮かべながら神様が【ステイタス】が記された紙を手渡してくる。

 どうやら先ほど悩んでいたことは僕の【ステイタス】のことだったみたいだ。

 僕は渡された紙を見て、思わず驚きの声を漏らした。

 

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1 所属:【ヘスティア・ファミリア】

 

 力 :I 0

 耐久:I 0

 器用:I 0

 敏捷:I 0

 魔力:I 0

 

《魔法》

【ケラウノス】

 ・付与魔法(エンチャント)

 ・雷属性。

 ・詠唱式【目覚めよ(ブロンテ)

 

《スキル》

風精誓約(エアリエル・オース)

 ・誓いを交わした者の魔法の発現(魔法スロットは使用しない)

 ・行使条件:詠唱文と対象魔法効果の完全把握。

 ・怪物種に対し攻撃力高域強化。

 ・誓いを違えた時、効果消失。

妖精王絆(アールヴ・ヴィンクルム)

 ・妖精王の魔法の発現(魔法スロットは使用しない)

 ・行使条件:詠唱文と対象魔法効果の完全把握。

 ・魔法効果増幅、射程拡大。

 ・戦闘時、発展アビリティ『魔導』の一時発現。

英雄運命(アルゴノゥト)

 ・能動的行動(アクティブアクション)に対するチャージ実行権。

 ・発動時、周囲の味方の戦意高揚。

 

 

 

 

【ステイタス】について特に詳しくもない僕が見てもはっきりとわかる異様な【ステイタス】。

 スキルが何か発現してくれないかとちょっと期待してたけどもスキルどころか魔法まで発現してくれるなんて……

 

「この『スキル』……あれ、最後のこれ……」

 

「ボクもまだあまり知らないんだけど、『スキル』っていうのはその人の本質や望みを映し出す……ようは鏡みたいなものなんだ。それと最後のは気にしないでおくれ。ちょっと手元が狂っちゃったんだ」

 

 少し気になるが嘘をつくところでもないしまあ本当のことだろう。

『スキル』については知っている。お母さんが渡してくれた本にもそう書いてあった。

 つまりこのような名前のスキルが発現したということは……

 

「やっぱりあの人たちの影響を受けてるんだな……」

 

『妖精』と『誓約』。

 あの二人に関係している単語を見て僕は少し嬉しくなった。

 まるであの二人がそばにいてくれているようで……

 

「嬉しそうな顔しちゃって……そんなに嬉しかったのかい?」

 

「はい!」

 

 窓から差し込んでくる光が僕達を祝福するように照らしてくる。

 背中に宿った二つのスキルもそれに呼応するように熱を持つ。

 

「ふふっ……さあ、ベル君。これがボクたちの始まりの一ページだ。ボクたちの【ファミリア】はここから始まるんだ!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「じゃあベル君、ギルドに冒険者登録に行っておいで! ボクはちょっと神友……知り合いに用事があるから今日のところはあの書店を宿代わりにしておくれ! おじいさんには許可をもらってるから!」

 

 そう言って神様はさっさとどこかへ行ってしまった。

 元々一人で行くつもりではあったからそこまで気にしていないけど。

 

 ギルドに入り、窓口のほうに向かう。

 

「あの、すみません。冒険者登録をしたいんですけど……」

 

「新規の冒険者登録ですね。ではこちらに必要事項の記入をお願いします」

 

 ハーフエルフの受付嬢の人から渡された羊皮紙に必要事項を書き込む。

 書き終えた羊皮紙を受付嬢に渡し、手続きを終える。

 また明日来るように言われ、ギルドを後にする。後になって聞いた話だが、この時に僕がどれくらい生き延びられるのかを賭けられていたらしい。

 

「……結構早く終わっちゃった……少しオラリオを見て回ろうかな」

 

 もしかしたらお母さん達に会えるかもしれないという淡い期待を込めてオラリオを歩く。

 結局会えることはなかったけどオラリオについて少し詳しくなったような気がした。

 

 そして翌日。

 

 再びギルドを訪れた僕はギルドの奥にある部屋へと案内される。

 少し待っているとコツコツと足音が聞こえ、扉が開かれる。

 

「───失礼します」

 

 部屋に入ってきたのはギルドの受付で僕の応対をしてくれたハーフエルフの受付嬢の人だった。

 

「本日からあなたのアドバイザーを務めることになりました、エイナ・チュールです。今日からよろしくお願いします」

 

 こちらを安心させるように穏やかな笑みを浮かべてくれる彼女に少し安心感を覚える。

 

「では早速打ち合わせのほうを進めていきたいのですが……その前に一ついいでしょうかクラネル氏」

 

「? はい」

 

「提案なのですが、話し方を砕けさせてもらってもよろしいでしょうか」

 

「もちろん、大丈夫です」

 

 僕の返答に嬉しそうな笑みを浮かべてくれる彼女。

 なんだかこっちまで嬉しくなってくるような笑みだ。

 

「ありがとう! これからは二人三脚で行くことになるから堅苦しい関係じゃなくて気軽な関係で行きたかったんだ。じゃあ改めてよろしくね、ベル君」

 

「こちらこそよろしくお願いします、チュールさん」

 

「ふふっ、エイナでいいよ」

 

 差し出された手を握り、エイナさんと握手と笑みを交わす。

 

「じゃあまずはこれ、支給品の軽装(ライトアーマー)。ベル君は武器は持ってるみたいだから手続き通り軽装だけにしたけど、予備の武器はなくて良かった?」

 

「はい、それで大丈夫です」

 

 防具を用意できるだけのお金はまだ残っていたはずだけどこれは出来れば【ヘスティア・ファミリア】で過ごす資金として残しておきたい。

 正直ダンジョン以上にオラリオでの生活のほうが不安なのだ。

 

「ん、良かった。私に言ってくれれば武器の用意もしてあげられるから遠慮なく言って。ギルド支給の最低ランクのモノになっちゃうけどね……あとはこれも」

 

 そう言ってエイナさんが軽装とともに手渡してくれたのはバックパックにレッグホルスター。

 これはギルドの支給になかったはずだけど……

 僕が不思議そうにその二つを見ているとエイナさんは内緒だよ、と言って人差し指を唇の前に立てて微笑む。

 

「本当は支給品じゃないんだけど特別。ベル君の【ファミリア】は結成されたばかりっていうから……ちょっとだけおまけね?」

 

 雰囲気からでもわかるけど特別扱いというわけでなく純粋な厚意からこの二つをおまけしてくれたのだろう。

【ファミリア】としてのお金が全くない今の僕にとってこの厚意はとてもありがたい。

 

「さて、渡すものも渡したし……ベル君、これからダンジョンについて勉強しようか」

 

「勉強、ですか?」

 

「そう、こればっかりは強制だからね。ダンジョンでは何が起こるのかわからないんだから」

 

 ごもっともだ。お母さんから学んでいたとはいえダンジョンについて無知で潜るのは自殺行為と言っても過言ではない。

 それにエイナさんから“冒険者達に死んでほしくない”という思いがすごく伝わってくる以上断ることなどできない。

 

「わかりました。よろしくお願いします」

 

「ありがとう、それじゃあ早速───」

 

 嬉しそうにエイナさんは笑い、そう言うとどこからともなく教材を取り出して机にドンっと置く。

 極厚の本、数は三冊。

 

「今日のところはこれだけ覚えて帰ろうか。大丈夫、日付が変わるころには終わるから」

 

 後からギルドの他の職員に聞いたことだけどエイナさんはギルドでも有名なスパルタ指導員らしい。その指導は通称『妖精の試練(フェアリー・ブレイク)』と呼ばれて恐れられている……とのことだ。

 

「さあ、頑張ろう!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ミィシャ、ミィシャ!」

 

 とても嬉しそうな、それでいて驚いているような同僚の声が夜の事務室に響く。

 なんだなんだと周囲の視線を集める同僚が笑顔でこちらに近づいてくる。

 

「聞いて聞いて!」

 

「もうどうしたのエイナ。そんなに嬉しそうな顔をして」

 

 こんなに嬉しそうに感情を爆発させるエイナの姿は久々に見たかもしれない。

 何かあったのかと心当たりを探ってみるけどこんなに笑顔になるような心当たりは特に思い浮かばない。

 他のことだったら新しく担当アドバイザーになったという冒険者のことだろうか。

 

「ベルく……ええっと新しく担当することになった冒険者の子がすごいの!」

 

 最後の予想が当たっていたみたいだ。

 ただすごいと言われてもわからないけど次に放ったエイナの言葉に目を大きく見開くことになる。

 

「私の座学に一切弱音を吐かないでついてきて、しかも私が出したテストも全部満点を取ったの! それどころか私の答えよりもずっと正確な答えを出してくれたり……とにかくすごいの!」

 

 驚きの声が私以外の周囲の人からも聞こえてくる。

 エイナの勉強会は第一級冒険者ですら悲鳴を上げるほどきついことで有名。

 それなのに新人の、しかも見た感じまだ子供の冒険者が満点を取ったというのだ。

 

「……あの時来てた子よね? その子、本当に新人? なんか訳アリの子とかじゃないでしょうね」

 

「失礼ですよローズさん!」

 

 それを聞いた獣人(ウェアウルフ)の受付嬢のローズさんが疑いの目をエイナに向ける。

 心外だといわんばかりに怒るエイナを受け流しながらローズさんは事務室から出て行ってしまった。

 

「まったく! ねえミィシャはどう思う?」

 

「私? ……うーん、すごいことだと思うけどちょっと不安になってくるよね。そういう人は結構……その、調子に乗りやすいというか……」

 

「あ……うん、そうだね。そこは気を付けないと。ちょっと浮かれてたみたい」

 

 はっとした顔を浮かべるエイナが珍しくてつい笑ってしまう。

 そんな顔を浮かべるくらいにその冒険者の出来に浮かれてたみたいだ。

 

「でも楽しみだね! その子……ベル・クラネル君だっけ?」

 

「うん! それに『賭け』のこともあるし見返してやらないとね」

 

『賭け』については私はよく知らない。

 けどその『賭け』はやっぱりギルドの受付嬢として、エルフとして、エイナ個人としても腹立たしい出来事だったみたいだ。

 

「あ! まだ用事残ってるからちょっと行ってくるね!」

 

「はーい。……エイナ、すごく嬉しそうだったな。エイナにあんな顔させる子……今度私も会って話してみたいなあ」

 

 一度チラッと見えただけの白髪の男の子。少し見えたけどとても優しそうな子だった。

 あの子とエイナがこれからどんな関係になるのか少し予想しながら私も窓口に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 時を少し遡り、ベルと別れた直後のヘスティア。

 

「さーて…………これ、どうしようかな」

 

 ヘスティアは迷っていた。

 道に迷ったのではなく原因は手元にあるベルの【ステイタス】の写しだ。

 

 

 

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 

 ・超早熟する。

 ・懸想(おもい)が続く限り効果持続。

 ・誓いを違えない限り、懸想の丈により効果向上。

 

 

 

 

「他のスキルもとんでもないものばっかりだったけどこれは別格だよなあ……」

 

 ベルに渡した紙には三つのスキルが書かれていた。

 しかし実際に発現したスキルの数は四。そのうちの一つをヘスティアはあえて隠していた。

 

(成長補正のスキル……このスキルは多分下界で未確認のスキルのうちの一つ。こんなのが他の神に知れ渡りでもしたら……)

 

 間違いなく他の神は興味を持つ。そしてちょっかいをかけに来るだろう。

 中には既にヘスティアと契約しているのにも関わらず自分の【ファミリア】に勧誘してくる馬鹿者もいるだろう。

 このスキルだけでなく他の三つのスキルまで知れ渡りでもしたらほとんどの神々が勧誘してくることもあり得る。中には門前払いしたという【ファミリア】もいるかもしれない。

 

(あの三つのスキルは知っていればあの子の命を救うカギになる。けどこのスキルは知っていても今のあの子にはあまり良い影響はない。知ってしまったことで逆に意識してスキルを隠そうとあの子に悪影響が出てしまうかもしれない……)

 

 それだけは避けなくてはいけない、とヘスティアは胸の中で決意する。

 悪影響が出て純粋なベルの心が、魂が曇ることなどあってはならない。

 

「ボクの勘でしかないけどあの子はきっとどんどん強くなる。ならボクはあの子が全力で走れるように支えてあげられるようにならないとね……さあ頑張るぞ、ボク!」

 

 ヘスティアはまだ知らない。

 ベルがどんどん強くなるどころかまさに飛躍と言えるような速さで強くなり、『英雄』の道を駆け上がることを。

 その過程で多くの人を救い、多くの苦しみを背負うことになってしまうことを。

 

「あとこの魔法……まさかあの愚弟がベル君と一緒にいたなんてことは……ありえるなあ……」

 

 またスキルとは別に少し頭が痛くなるような事実が判明したこともヘスティアの中の秘密である。




いつも感想、評価、お気に入り登録、誤字脱字報告ありがとうございます。

この作品のベルの魔法とスキルの名前、効果は現状このような形になります。
どうかこれからもよろしくおねがいします。
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