あの戦いからしばらく経ったオラリオ、ロキファミリアのホーム。
戦後の後処理も落ち着いたある日、リヴェリアは部屋で一人、地図と見つめ合っていた。
そこに一人の女神が入ってくる。
「おーいリヴェリアー、ちょっと……何しとん?」
彼女の名はロキ。リヴェリア達の主神にして、都市二大派閥の主神である。
「む……ロキか。どうかしたのか?」
「ああ、いや……ウチのはそんな大した話じゃあらへんから気にせんといてや……ほんでリヴェリアは何しとったんや?」
「……戦いの傷も癒えた。そこである
そういうともう一度リヴェリアは机上の地図に目を落とす。
ロキも覗き込み、少し顔を顰める。
なぜならその地図は───
「あー……都市外の
リヴェリアが見ていたのは都市外の地図。
都市内の地図を見ているのであればロキも特に何も言うことはなかっただろう。だが都市外の地図となると話は変わってくる。
「ロイマンが騒ぎそうやなー。んで? 依頼主は誰なんや?」
「……秘密だ」
「ん?」
「悪いが秘密にさせてもらっている。例えお前やフィンにガレスであろうとも話すつもりはない」
珍しく顔に感情が出ており、明らかに話したくない、話すわけにはいかないといった表情を見せるリヴェリア。
かなり気になるところであったが、あのリヴェリアが表情を崩すほどに隠そうとする案件だ。あまり聞くのも酷だろう。
「……ま、ええわ。そんで? なんて所に行くんや?」
「……確か……───という村だ」
「……んー……ん? この辺やないか?」
「何? ……本当だな」
リヴェリアが見つけられなかった目的の村をあっさりと見つけるロキ。
ニヤニヤとした笑みを浮かべているロキを張っ倒しそうになるリヴェリアだったがここは抑える。
「助かった、感謝する」
「ええってことよ。いつ出発するんや?」
「許可が下り次第すぐにでも。それからどれくらいかかるかわからないが大丈夫そうか?」
「……んー、まあなんとかなるやろ。フィンもガレスもいるしな。あ! ええこと思いついたわ!! フィンもガレスも休ませて他の子らに頑張ってもらうってのはどうや! いつまでもリヴェリア達に頼り切るわけにはいかんからその試しとしてちょうどええかもしれんぞ」
「ふむ……まあ上手く使ってくれるのならこちらとしてもありがたいな」
地図をしまい、椅子から立ち上がるリヴェリア。
そのままロキと共に部屋の外へと向かう。
「待てよ……リヴェリアがいないっちゅうことはアイズたんに好き放題でき───」
廊下を歩く際にロキがこんなことを口走ったが───
「ああ、言い忘れていたがアイズも共に連れて行く。これが
そんなリヴェリアの言葉にあっさり撃沈するのであった。
数日後の早朝、都市外へと出る許可が下りたリヴェリアとアイズは都市門の前に立っていた。そこに停められた馬車へ荷物を載せていると一人の神とその眷属が近づいてきた。
「ごめんなさい、少し良いかしら?」
その神の名はアストレア。
隣に立つアリーゼ・ローヴェルが所属しているファミリアの主神だ。
「神アストレア……何か?」
「ええ、ちょっと伝えておきたいことがあるの」
そう言うとアストレアは懐から一枚の紙を取り出してリヴェリアに手渡してきた。
「……? これは一体……」
不思議そうに紙を開こうとするとその手をそっと止められる。
辺りを少し見渡し、人の目が少ないことを確認するとさらに小さな声でリヴェリアに喋りかける。
「アルフィアがエレボスに託していたという書き置きよ。馬車の中で見てもらってもいいかしら」
「アルフィアの……感謝する、神アストレア」
「礼なんていいのよ。それにこれはあなたが持っておくべきものだわ……アルフィアに何かを託されたあなたが……ね」
最後にニコリと笑顔を向けるとリヴェリアから離れる。
隣のアリーゼに目を向けると彼女はアイズと喋っていた。
「いい、おチビちゃん! 【九魔姫《ナインヘル》】にあまり迷惑をかけちゃダメよ?」
「……うるさい……あとチビじゃない……」
「あら、ごめんなさい!」
イライラしたようなアイズとバチコーンとウィンクをするアリーゼは対照的だった。
そんな二人に少し眉間を揉みながらリヴェリアが近づく。
「【
「刺激してるつもりなんてないわ! ……まあとりあえず、あまり心配はいらないかもしれないけど気をつけて行くのよ、【剣姫】」
「…………あなたに言われなくても……大丈夫」
「そう……ならいいわ!」
ニコリと妹を見守る姉のような笑顔を浮かべてアリーゼがアイズから離れる。
珍しくむすっとした表情を見せていたアイズだったがそれもやがて収まる。
「では、そろそろ行くとするか。アイズ、先に乗りなさい」
「ん……わかった」
ひょいと軽い身のこなしでアイズが馬車へと乗り込んでいく。
リヴェリアは軽くアストレアとアリーゼに頭を下げ、こちらも馬車へと乗り込む。
二人が乗り込んだのを確認するとゆっくりと馬車が動き出し、目標の村へと向かって走り出した。
「……アリーゼ、私たちも戻りましょう。今日もやらなければいけないことが多いのだから」
「はい! アストレア様!」
二人が乗り込んだ馬車を見送り、まだ日があまり出ていない街を歩き、ホームへと帰って行く。
その道中、ふと気になったことをアリーゼがアストレアに聞く。
「そういえばアストレア様。あの紙にはなんて書かれていたんですか?」
「……んー、あなたたちも聞いていたみたいだし少しなら話しても良いかしら……あの紙にはアルフィアに関することが書かれていたのよ。例えば遺したお金のこととか」
「ほうほう……ちなみにいくらか聞いても……」
「ええと確か……四〇億は超えてたかしら……?」
「ひぇ」
そのあまりにも莫大な額に思わずアリーゼの口から変な音が出る。
四〇億なんて一生遊んで暮らしても、余程豪快に使わない限りはお釣りが出るほどの額だ。流石は【ヘラ・ファミリア】といったところか。
「よ、よんじゅうおく…………それだけあればどれだけ楽に暮らせるか……」
「ふふっ、そうね……でもあれはアルフィアがアルフィアにとって大事な人のために遺したもの……欲しいなんて思っちゃダメよ?」
「わ、わかってます! ちゃんと自分で稼ぎます!」
「頑張ってね、アリーゼ」
少し動揺したアリーゼを揶揄いながら二人で人通りが少ない街を歩き、家族が待つホームへと帰って行く。
あの言葉が耳の奥に残っているアリーゼとしてはかなり気にかかるところだがこれ以上の詮索はしなかった。
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