作家がペンで殴らず拳で殴ってどうする、馬鹿め! 作:はちみー
弟達を守る様に、オレの事も守ってくれ。
Byアンデルセン
「ねぇ貴方、プレゼントマイクの話聞かなくてもいいの?」
カエルの少女蛙吹梅雨が、説明会が始まっても尚何かを書き続ける男に声をかけた。
言わずもがなアンデルセンである。
「うん?何だ世話焼きめ、俺は見ての通り執筆中だ。担当は待っても時間は有限だ、締切は待ってくれんのだからな!」
「締切?作家さんなのかしら」
「その通り、それにあの騒音は耳を塞いでも聞こえてくる!ならこちらに意識を割いても問題ない、ないな?よし前を向け少女よ」
話は終わったとばかりに、黙々と執筆していくアンデルセン。
スラスラと書かれていく文字列に、蛙吹は感心していた所にもしやと脳内に浮かび上がる。
思った事を聞かずにはいられない性分なので、また邪魔してしまうが聞いてみる事に。
「ねぇ作家さん、もしかしてその青い髪と口の悪さ……アンデルセンって名前だったりするかしら」
「ほう、余りメディアには顔を出さないのだがよくわかったな。その通りアンデルセンという者だ、オレの駄作でも読んだか?」
「やっぱり……!えぇ勿論弟達と読んだわ、五月雨は悪い王様が好きで私は氷の女王、お母さんとさつきは人魚姫が好きだわ」
「思っていたより俺の作品を読んでいるな、オレの熱心な読者と言ってもいい。よしなら決まりだな」
「何がかしら?」
「お前がオレのファンであり、オレはお前にファンサービスをしてやる。オレは戦えんからな、手足となって実技試験を代わりにたたかってくれ。オレはサポートに徹する」
「戦えないって、実技試験なのに大丈夫なのかしら」
「お前もヒーローを目指すなら覚えておけ、戦う力が無くとも邪魔にならない程度に支援するのがサイドキックだ」
「実技試験ってそういうものなのかしら……」
そういう事だ、お前の人となりは把握したから任せたぞと言うだけ言ってアンデルセンは原稿に向き直った。
蛙吹は一抹の不安と憧れの作家の手伝いができるという気持ちで、プレゼントマイクの話を聞く事になる。
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「いいか蛙吹梅雨、オレが出来るサポートは色々あるが主に使ってやるのは身体強化と多少の足止めだ。お前はただ敵を倒せばいい」
「わかったわ。それと梅雨ちゃんって呼んで」
「それから人助けもやるぞ、この世界において英雄というのは何も敵を倒すだけでは無い。関係ない奴等もまとめて助けるお節介焼き、それも加点対象になる筈だ。理解したな?蛙吹梅雨」
「お節介はヒーローの本質だものね、梅雨ちゃんって呼んで」
頑なに梅雨ちゃん呼びを強制してくる少女に顰め面をしながら、適当にうけながす。
オレにそう呼ばせたいのなら、それ相応の働きをしろと。
「事前の取材で試験は唐突に始まり、敵役は脆いロボット兵と判明している。お前の個性はカエルだな、その跳躍力と長い舌で次々と破壊してやるといい。無双する主人公なぞ使い古された題材だがな!」
「ケロ、よく私がカエルの個性だって分かったわね」
「その口癖と容姿を見れば簡単に分かる、その程度見破れなくては作家なぞ名乗れるか」
「それが初見で出来るのは多分ひと握りだと思うわ」
「さぁ集中しろカエルの少女!始まりの幕が開けるぞ!」
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「所でアンデルセン先生は走れたりする?」
「アンデルセンでいい、編集担当を思い出す!オレは汗水垂らして動くのは取材の時だけだ、これを使う」
「それは……空飛ぶカバン*1ね」
「その通り、これに乗ってお前の後について行く」
そんな話をしていると、プレゼントマイクが開始の号令を言い放つ。急に始まった実技試験に多くの生徒が取り残される中、リサーチ済みのアンデルセン達が飛び出した。
「ケロケロ、スタートダッシュは成功ね」
「当然だな、ゲルダの涙よ心を解かせ!」
アンデルセンが筆をひと振りすると、蛙吹梅雨の背後にカイとゲルダという少年少女*2が現れる。
カイを抱き締め一筋の涙と共にキスをするゲルダ、蛙吹梅雨の身体は火照り不思議と力が漲ってきた。
「凄い効果ね!これなら何体でも相手にできそうよ」
「油断はするなよ、横からも来ている」
[テキハッケン!ブッコロス!]
「ぶっ殺すだと?はっ、やれるものならやってみるといい。全てそこの少女が蹂躙してくれる」
「とってもかっこ悪いわ」
「カッコつけるだけで身が助かるなら是非やるとも」
こうして2人は着々とポイントを稼いでいき試験は終盤、遂に巨大ロボットが姿を現した。
逃げ惑う受験生の波の中、二人は巨大ロボットに向かっていく。
「勝算はあるのかしら?」
「あの様子から見て攻略は可能だろうが、それよりも優先順位が存在する。そら見てみろ、みっともなく腰を抜かしている少年少女がいるぞ?」
「ケロッ、助けなくちゃ!」
「ではどうする?」
「勿論手伝ってもらうわ、足止め頼めるかしら」
「気は進まんが仕方ない、ほんの少しだけだ!」
アンデルセンはひとつの本を創り出し、魔法のペンで筆を走らす。
すると何も無いところから、
「赤い靴だ!」
『はい、ここに』
「出てくるな暇人め!お前が出てきてはそこそこ戦えてしまうだろうが!それからせめてシューズにしろ!」
赤いヒールは巨大ロボットの踏み出した足を破壊し、ロボットの進行が止まる。
アンデルセンが蛙吹梅雨の方を見やると、数人を長い舌で巻き取り脱出していた。
「よしオレの仕事はここ迄、それに終幕の時だ」
試験終了の知らせが鳴り響き、受験生が様々な表情を浮かべているのを愉快に眺めながらアンデルセンは合流するのであった。