休日って、一瞬で終わりませんか?
そういう話です(適当)

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Amazon探検隊

おもしろきこともなき世をおもしろく

すみなしものは心なりけり

 

人生とはつくづくつまらぬ、上手くいかないものである。

それをいかに心得、前向きに生きて行くのか。

今や多くの人が、その答えを娯楽に求める。

忙しい現代にあって、娯楽は手軽であればあるほど喜ばれる。

しかし聞くところでは、娯楽のために密林の奥地にまで出向く者があるらしい。

彼らの行動原理とは何なのか、そして目的物は見つかるのか。

その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった——

 

朝8時。

空路を経て、取材班が空港に到着。

迎えてくれたのは、いかにも地元風な格好の男性だった。

が、なぜか端末を手渡しただけでそそくさと帰ろうとする。

全員が狐につままれたようになる中、1人が問いを発した。

「すみません、勘違いでしたら申し訳ないのですが……あなたはガイドの方ではないのですか?」

男性は返事に困ったように「あー」と声を漏らす。

「昔はガイドだなんて呼び方をされた頃もあった。でも今は、そっちの方が的確に答えを出せるからね」

彼はスタッフが手に持つ端末機を指差してそう言った。

かつて、男性の方が的確な答えを出せていた時期があったのだろうか?

「それではこの端末がガイドだ、という認識でよろしいですか?」

「似たようなもんさ。あ、でも」

男性が思い付いたように付け加える。

「ソイツの言う事を信用しすぎない方がいい。決断はあくまで自己責任で頼むぜ」

 

9時30分。

取材班は密林エリアの入口にいた。

土曜日という事もあってか人が多い。

それだけ人を惹きつける何かがジャングルの中にあるのだろう。

ガイド端末(?)を起動し、我々はまだ見ぬ世界へ足を踏み入れた。

 

それは奇妙な密林だった。

そこかしこに、電化製品や雑貨が安置してある。

端末をかざすと、それら安置物のスペックや年代モデル、時価といった情報が表示される。

しかしさらに奇妙なのは、密林に集まった人々がそれらを興味津々に眺めていた事である。

彼らもまた端末をかざし、一生懸命にデータを確認していた。

また、安置物は持ち帰って良いらしい。

思い思いの品を選ぶと、どこからか “カート” を呼び出して詰めていく。

彼らの使う “カート” はスーパーマーケットで見かけるそれと全く同じである。

どこかから召喚されてはどこかに消える、という点を除けば。

ガイド端末曰く、あの “カート” も安置物も実体の無いモノだそうだ。

彼らは密林エリアを出る際、 “カート” 内の安置物の保有権を購入する事ができ、購入すれば実体を伴った “本物” が自宅に届く。

わざわざ重い荷物を運ぶ買い物は、もはや時代遅れなのであろう。

 

1時間ほど歩き回った頃、取材班はとある安置物の前で足を止めた。

某有名メーカーの最新型イヤホンである。

「めっちゃ安いですやんこれ」

誰かがそう口にした。

希望小売価格の30%OFF。

しかも、製造元は滅多に割引をしない事で有名な大手メーカーである。

詐欺商品にありがちな支離滅裂な商品説明は見受けられない。

それどころか、ガイド端末にはオススメ品と表示されている。

「あ、おにーさん。それ、やめといた方がいっすよ」

唐突な声の主はアバンギャルドな風貌の女性。

「それ、前買ったけど酷かったんすよ」

「何かあったんですか?」

「届いたのがね、箱入りの粘土」

「えっ」

「いやね、箱はちゃんとした商品の箱やったんすよ?でも中に入ってたのが、本物と同じ重さの粘土やったという」

決断は自己責任で。

空港での言葉がにわかに色づく。

オススメ品、とは一体何の事だったのであろうか。

 

また歩いていると、今度は底なし沼で動けない人の姿が目に入った。

20人くらいだろうか。

少なくない人数が沼に捕まっている。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。浸かってるだけですし、心配いりませんよ」

「でもこれ、我々第3者からすると大丈夫に見えないんですが」

沼にはまり込んでいる人々は全く身動きが取れていない。

ただただ、この場で時間の経過を待っているだけの状況。

これではいくら時間があっても、有意義な探索などできるはずがない。

しかし、当の本人たちは何食わぬ顔で沼に入り浸っている。

それは一切の苦痛を排除した、仏にも似た表情であった。

「脱力効果でもあるんですかね」

ぼそりと漏らすADに対し、

「何も考えてねーな、ありゃ。俺も1回でいいから、何も考えずに生きてみたいもんだ」

 

12時30分。

取材班は密林を後にし、空港へと戻ってきた。

そこには先ほどの男性が待っていた。

「どうだった」

「おかげさまで良い画が撮れました」

「そうかい、そりゃ良かった」

「それで……これなんですが」

ADが右手に人差し指と親指で輪っかを作る。

「お代か?いらないよ。昔と違って、仕事はその端末機が全部やってしまうからな」

「とすると、昔はやはりガイド業を?」

朝にも男性の過去の話がチラついた瞬間があった。

間違いなく、密林の端末機と男性の過去はどこかで繋がっている。

しかし男性は答えない。

ハブアグッドデイ、良い1日を。

微笑とともにそう言い残し、男性は雑踏の中へと消えていった。

 


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