以上。
アスレコ以上に不定期かも。こっちの方が更新早い可能性も全然ありますね…。
主人公は防護魔法において最強、とさせていただいてます。攻撃魔法は序盤はないけど後から覚えさせる予定。そっちは別に強いくらいに留めます、最強じゃない程度に。
翡翠の髪が靡く。細められた双眸が、下層に繋がる連絡路に蠢きながら迫る芋虫型のモンスターを見据える。
迷宮50階層。深層二つ目の
「さて……」
どうするか、と煌びやかな剣を持った少年が唸る。第一級冒険者たちが戦ってはいるものの、その新種――
「アイリス。少しいいか」
手をこまねく少年に後方から声がかかる。声の主は緑の長髪を背に流したハイエルフ、リヴェリア・リヨス・アールヴ。彼の師であり、彼の尊敬する冒険者の一人。
「レフィーヤにアレの殲滅をやらせたい」
アイリスと呼ばれた少年が、師の隣に立つ山吹色の髪の少女を見て微かに笑みを浮かべた。レフィーヤ・ウィリディス。彼の同期であり
「護れ、ということですね」
「ああ、頼めるか?」
もちろん、と右手に握られていた剣を仕舞って簡素なつくりのロッドに装備を変え、少女に目配せ。レフィーヤは頷き、詠唱を開始する。
途端、レフィーヤの発した魔力に反応したのか音を立てて地を這いずるように彼らの元に迫る
その手元には白く輝く魔法円。こと防護魔法においては師であるリヴェリアすらも越える才の持ち主が、それを証明するように障壁を展開する。
「輝ける聖なる杯、失われし十の円環。咒いと訣別は我が名のもとに――白き盾となりて我が同胞を護りたまえ」
前方に障壁が顕現する。それは不浄を払う白亜の壁、
「――――【イージス・ガラハッド】」
吐き出された腐食液が霧散し、4Mほどの巨体の突進を当然のように受け止めた。
「レフィーヤ、詠唱の続きを」
アイリスの言葉に、レフィーヤは恐れを無くした顔で詠唱を再開する。彼と同期の彼女はその障壁の硬さを知っている。彼の心が折れるまで持続する、師をも越える防護魔法の強さを。
「――同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え」
レフィーヤの詠唱が果たされた。魔法円は炎の鱗粉を舞わせ、幾千の炎の矢を装填。主神から"バカ魔力"と称され、師からも後継者として期待される、確かな才を持つ少女の力が振るわれる。
「――――【ヒュゼレイド・ファラーリカ】」
装填された幾千の矢が打ち上がり、広域を埋め尽くす炎の矢が周囲に蔓延る
胸元を抑え、咳を繰り返して苦痛に喘ぐ少年の姿。腐食液を浴びた訳ではない。アイリスが護り、レフィーヤが詠唱するというのが彼らの定石であるように、これもまたいつもの光景。
恩恵にさえも刻まれた疾患。原因不明、治す術も存在しない病が、アイリスの身体を蝕む。彼の師のリヴェリアやロキ・ファミリア団長のフィンたち、古参はその光景にいつも決まって一人の女を思い出す。
神時代以降、眷族達の中で最も才能に愛された女。それでいて生まれつき体が弱く、重病に苦み最後は自ら達の踏み台となって散った――【静寂】を。
アイリスと【静寂】に関係はない。【静寂】が散ったのは七年前に起きた大抗争、その終幕。そしてその間アイリスは学区に在学し、
「ガふッ、ゴホっ、大丈夫、大丈夫だ、から……」
肩を貸そうとするレフィーヤに首を横に振る姿を見ながら、フィンが複雑な表情を浮かべる。彼の病については認知しているし、毎度ああも苦しそうな顔をしている彼を本当に遠征に参加させてよかったのかと。
「フィン。本人も覚悟の上だ、あまり気に病むな」
リヴェリアのフォローに頷くフィン。思考を切り替え、彼はこれからのことを考え始めた。
「今回は撤退かな」
と、そこに。地震のような大きな地盤の揺れと遠方から破砕音が生じる。アイリスは体制を崩して倒れ、フィンたちが周りを見渡して原因を探るも見当たらず。
「ゴホッ、――――何か、来る」
アイリスの呟きに呼応するかのように、ソレは姿を現した。
さきほどまで相手にしていた
そして何より目を引く、何かが詰まった黒い腹部。第一級冒険者はもちろん、ここにいる誰もがそれが何であるかをすぐに察した。魔石だけを砕き、討伐するにしても体高6Mほどの巨体のどこにあるのかが分からず、手をこまねく面々。
「…………動いた?」
微かな動きに、アイズが反応する。おもむろにふわりと広げられた四枚から成る扁平状の腕。光の粒子、七色の鱗粉が舞う。
直後。【
「ぐ……っ――――」
直撃こそガレスに護られたことによって免れたものの、爆風に攫われ地面を転がるアイリス。勢いの落ちない身体は、軌道上にあった岩にぶつかってようやく静止した。
駆け寄るラウルにエリクサーをかけられ、傷の癒えたアイリスはフラフラと立ち上がり女体型のモンスターを翡翠の双眸で見据える。
「ゴホ、ガフ…………」
きっと団長は不本意な決断を下すのだろう、とアイリスは考えその上で思考を巡らせる。今の自分が足手まといにしかならないことは理解している。それは戦闘においても撤退においてもで。
それでもできることはあるはずだと。
「総員、撤退だ」
アイリスの予想通りの言葉が、フィンの口から放たれた。それに対し、第一級冒険者たちは抗議の声を上げる。問題を先延ばしにするのか、と。第一級冒険者としての矜恃と誇りが団長の判断に噛み付いた。
あのモンスターを野放しにしておけば、深層における重要な安全地帯が一つ失われるだけでなく、上層に上がればその被害は計り知れないものとなる。
それを理解した上で、フィンは言葉を続ける。
「僕も大いに不本意だ。でも、
そう言い、フィンは金髪金眼の少女――【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに向き直る。アイズは差し出された愛剣、デスぺレートを見てこれから何を告げられるかを察して頷いた。
一人であのモンスターを討て。その言葉に、レフィーヤが悲鳴を上げるように抗議の声を上げ、再度アイズ以外の第一級冒険者たちが噛み付く。
デスぺレートを受けとったアイズがモンスターと向き直る。フィンがしつこく抗議の声を上げる部下に冷酷な声で、威圧が彼らの反論を封じ込めた。悔しさと苛立ちを胸に、撤退の準備に移る第一級冒険者たち。
「……僕も、残ります」
そこに、口元に血まみれの手を当てるアイリスが口を開く。
こんな状態では撤退の邪魔になるし、時間なら自分が一番稼げると言う彼の言葉に少し悩む素振りを見せ、許可。
レフィーヤが目を見開き、再び抗議の声を上げようとしてアイリスが首を横に振るのを見て口を閉ざす。
「ここから十分に距離を取ったら信号を出す。それまでは時間を稼いでくれ」
と、二人に指示を出しフィンが離脱。静寂に包まれた場にアイリスの咳だけが響き、二人と一体が対峙する。
「いいの?」
アイズが口を開く。容態の心配と、
「ゲホっ、……大丈夫、です。障壁展開します」
アイリスが詠唱を始める。それはさきほど展開された物と同じ障壁。
その魔力に反応したか、女体型のモンスターが無貌かと思われた顔面部を横に裂き、
しかし、それは二人には届かず。白亜の大盾が腐食液を再度霧散させる。それに対し、七色の鱗粉を振りまく女体型。アイリスの心は健在、爆発に障壁が負けることはない。
それでも、アイリスの心と対称的に身体は悲鳴を上げていた。ドクドク、と脈拍が加速する。咳は止まらず、口から血を垂れ流しながら敵を睨みつける。
何度続いたか分からない爆発を凌ぎきれば、今度は扁平状の腕が振り払われた。障壁に軽微な、ほんの小さなヒビが入る。
「…………っがふ」
気付けば、アイリスは膝をついていた。アイズは今すぐにでも飛び出したい気持ちを抑え、彼との約束を守り動かない。それはフィンからの合図が来るまで動かず、敵の行動を見ること。
確実に、一撃で仕留められる隙を見つけるために。
爆光と爆発音が鳴り響く。依然障壁は健在。しかし既にヒビは亀裂といえるほどに広がっている。アイリスの頬を嫌な汗が伝った。悪寒が止まらず、いつ倒れてもおかしくない状況。
「それ、でも……っ!」
仲間を守るために。足手まといにならないように。振り払われた扁平状の腕を受け止めた。ミシミシ、と障壁のヒビが広がっていく。既に身体は限界を迎えている。それでもまだ障壁の形を保てているのは、彼の心の強さの証明。
憧れた
そして、遠方から閃光が打ち上がった。撤退完了の合図、目標撃破の許可。緊張の糸が切れたように、アイリスは気を失い障壁も失われた。自らを守る物がなくなったアイズが前に出る。
「ありがとう、アイリス。――【
風を纏う。纏われた風は荒れ狂い、木々を薙ぎ倒しながら担い手が動くのを今か今かと待ちわびる。それは、仲間を。後輩を苦しめた敵への怒りか。心做しか
一筋の疾風となり、女体型のモンスターと交差する。すれ違いざまに斬り付けた片足を失い、バランスを崩す敵にさらに畳み掛ける。身体を駆け上りながら、至るところを斬り裂いていく。
意図せず振り撒かれた鱗粉の爆発、そしてそれが呼ぶ自滅の爆光。絶叫を上げ、残った腕を振り回しながら悶え苦しむ。その攻撃とも言えない攻撃を飛び退いて回避し、
アイズが、己の主神に騙されていることにも気付かず必殺技の名を唇に乗せる。風がさらに荒れ狂い、彼女はもはや神風となって敵を穿たんと飛び出した。
「――――リル・ラファーガ」
――――風の矢が、一閃した。風穴の空いたモンスターは、硬直し膨張。桁外れの大爆発と共に、爆粉となって四散する。
着地したアイズはアイリスを抱えてその場を去る。
無事でよかったと心からの安堵を感じながら。
*
遠征からの帰還中、ミノタウロスの
その光景を見て、恐怖を感じたか。モンスターでありながら逃亡を始めたミノタウロスの姿に、一瞬硬直する冒険者たちだがすぐに我を取り戻して追跡を開始する。
返り血を浴びた、兎を彷彿とさせる真っ白な髪に赤色の眼の少年。ミノタウロスから逃げ惑い、行き止まりに追い込まれたところをアイズに救われたのだろうと推測する。
ベテラン冒険者が見れば、抱腹して笑い転げかねない状況に置かれた少年だが、アイリスは感じ取った。
彼の物語の始まりを。――いつかの自分を映し出したかのような、何かに憧憬を覚えたその眼を。
*
その夜。先着十名と主神が気まぐれに決めたステイタス更新の列に、アイリスの姿があった。
「次、入ってええでー!」
主神の声に、アイリスが雑多な物品の溢れかえる部屋に入る。彼の所属する
「お、アイリスたんか! 今回も頑張ったみたいやなー」
「…………迷惑を、かけました」
遠征先が深層やからしゃーない、と背を向けたアイリスをフォローする。慣れた手つきで器具一式から針を取り出して指の腹に血を浮かばせ、アイリスの背にステイタスを浮かび上がらせる。
更新されたステイタスの概要を羽根ペンで羊皮紙に書き写してアイリスに手渡し、自らのステイタスを記された羊皮紙を受け取ったアイリスが視線を走らせる。
〜〜
アイリス・セイクリド
Lv.3
力: C 646→652
耐久: C 662→670
器用: B 739→776
敏捷: A 853→864
魔力: S 892→908
耐異常:D
〜〜
順調に上がるアビリティの熟練度。まだ昇華に至る偉業は成し遂げていないが、すぐにLv.4に至ってしまいそうな状況にロキは複雑な表情を浮かべる。もちろん、
恩恵によりスキル化された病魔の源。先の戦いでもアイリスを苦しめたあの疾患。いつ起こるかわからないその危険性にロキは幾度も注意しアイリスは頷く。
気をつけようがないことであることは分かっている。なるべく無理はせず、一人での迷宮探索をしないようにと釘をさされたアイリスは再度頷いてロキの部屋をあとにした。
いずれ来るであろう
確認はしたけど誤字脱字ありそう。
主人公はかっこいいよりかわいい系の顔。
ガラハッド、いいよね……(唐突)
全然詳しくないけど……(ゴミ)
ではノシ