灰になるまで   作:ギガマツタケ

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第六話 栄華の孔雀

 NOCTURNE専用ラウンジには、七つの席があった。

 

 今、埋まっている席は二つだけだった。

 

 羽鳥麗華の席。

 

 榊原真咲の席。

 

 それ以外は、空席だった。

 

 黒川愛衣の席。

 篠原琴音の席。

 白石小春の席。

 霧崎奈々の席。

 水瀬千尋の席。

 

 五つの空席は、ただの空席ではなかった。

 

 それぞれに、声があった。

 

 愛衣の軽い笑い声。

 琴音の冷たい訂正。

 小春が手を擦り合わせる音。

 奈々が煙草の箱を回す音。

 千尋の柔らかい声。

 

 もう誰もいない。

 

 けれど、消えたわけではない。

 

 少なくとも、麗華にはそう見えていた。

 

 消えた女達。

 

 灰になった女達。

 

 それでも、見ていた者の記憶の中には残る。

 

 ならば、見られることには意味がある。

 

 忘れられないことには価値がある。

 

 麗華は脚を組んで、グラスを持ち上げた。

 

 中身は入っていない。

 

 それでも、持ち方は美しかった。

 

 爪の形。

 手首の角度。

 グラスを傾ける所作。

 

 どれも計算されている。

 

 無意識でさえ、演出されている。

 

「羽鳥さん」

 

 真咲が言った。

 

「今夜のイベントについて、未承認項目があります」

 

「でしょうね」

 

 麗華は微笑んだ。

 

 驚きはない。

 

「分かっているなら、修正してください」

 

「それは難しいわ」

 

「理由を」

 

「もう始まっているから」

 

 真咲の指が止まった。

 

「告知だけではなく、開催そのものが進行中という意味ですか」

 

「ええ」

 

「許可していません」

 

「許可を待つと、機会を逃すの」

 

 麗華はスマホをテーブルに置いた。

 

 画面には、イベント会場の写真が並んでいる。

 

 照明。

 花。

 ドレスコード。

 美容関係者。

 投資家。

 インフルエンサー。

 招待客。

 小さなステージ。

 

 美しく整えられた空間。

 

 そのすべてが、麗華の手の中にあるようだった。

 

「羽鳥さん」

 

 真咲の声は低い。

 

「現在、NOCTURNE構成員は二名です。ライダーとの接触リスクも高い。大規模な社交的接触は中止すべきです」

 

「今だからこそ、やるのよ」

 

「合理性がありません」

 

「あるわ」

 

 麗華は真咲を見る。

 

「五人が灰になった。NOCTURNEは欠けた。スマートブレインは継続性を疑う。あなたは、残存構成員の管理に失敗したと見なされる」

 

「事実です」

 

「でも、成果があれば話は変わる」

 

 麗華は微笑む。

 

「大規模使徒再生。社会的影響力のある人間の選別。覚醒不成立個体の処理。成功すれば、NOCTURNEにはまだ価値があると示せる」

 

「失敗時の損害が大きすぎます」

 

「損害を恐れて舞台を降りる女に、栄華は残らないわ」

 

 真咲は立ち上がった。

 

「イベントの中止を命じます」

 

「命令?」

 

「はい」

 

「真咲さん」

 

 麗華はグラスを置く。

 

 静かな音が鳴った。

 

「あなた、私を止められる?」

 

 ラウンジが静かになる。

 

 五つの空席が、二人を見ているようだった。

 

 真咲は麗華を見た。

 

 羽鳥麗華。

 

 ピーコックオルフェノク。

 

 NOCTURNE構成員中、社会浸透能力は最上位。

 

 影響力。

 人脈。

 視線誘導。

 場の支配。

 

 戦闘能力も高い。

 

 ただし、真咲には止める権限がある。

 

 必要であれば、実力行使も認められている。

 

 だが。

 

「今ここで制止した場合、外部会場での不測事態に対応できません」

 

「そうね」

 

「あなたの目的は、私に止めさせないことですか」

 

「違うわ」

 

 麗華は立ち上がった。

 

「私を見に来てほしいの」

 

「業務としてですか」

 

「それでもいいわ」

 

 麗華は唇を湿らせるように、静かに舌先でなぞった。

 

 襲撃前のルーティン。

 

 だが今は、襲撃の前というより、舞台へ上がる前の仕草に見えた。

 

「最後の舞台になるかもしれないもの」

 

「不吉な表現です」

 

「事実よ」

 

 麗華は真咲へ背を向ける。

 

「愛衣さんも、琴音さんも、小春さんも、奈々さんも、千尋さんも。みんな灰になった。次が私でない保証はない」

 

「ならば、なおさら中止すべきです」

 

「いいえ」

 

 麗華は振り返った。

 

「灰になるなら、見られていたい」

 

 その声は静かだった。

 

 けれど、揺るぎがなかった。

 

「私は、忘れられたくないの」

 

 真咲は答えなかった。

 

 麗華は微笑む。

 

「会場で待っているわ」

 

 そう言って、ラウンジを出ていった。

 

   *

 

 会場は、美しかった。

 

 都心の高層階にあるイベントホール。

 

 ガラス張りの壁。

 夜景。

 シャンデリア。

 白い花。

 シャンパン。

 上質な香水の匂い。

 

 集まっているのは、美容業界関係者、経営者、投資家、モデル、インフルエンサー、招待制の会員達。

 

 表向きは、羽鳥麗華の新規美容ブランド発表会。

 

 招待状には、こう書かれていた。

 

 今夜だけの特別なショー。

 

 麗華は、ステージ袖にいた。

 

 深い色のドレス。

 艶のある髪。

 完璧に整えられた化粧。

 首元に光る細いアクセサリー。

 

 人間としての羽鳥麗華は、完成されていた。

 

 誰もが視線を向ける。

 

 彼女が歩けば、会話が止まる。

 彼女が微笑めば、相手は自分が選ばれたような錯覚をする。

 彼女が手を伸ばせば、人はその手を取りたくなる。

 

 それが麗華の力だった。

 

 怪物になる前から、彼女は人を支配できた。

 

 見られることで。

 

 見せることで。

 

 真咲は会場の後方にいた。

 

 黒いスーツ。

 社員証は隠している。

 端末は手元にある。

 

 止めるべきだった。

 

 だが、もう客は集まっている。

 警備も配置されている。

 会場の映像は配信されていないが、各所にスマホがある。

 

 この場で麗華を制止すれば、より大きな混乱が起きる。

 

 現時点では監視。

 

 必要時に介入。

 

 真咲はそう判断した。

 

 ステージに照明が集まる。

 

 司会の声。

 

 拍手。

 

 そして、麗華がステージへ出た。

 

 会場全体の空気が変わる。

 

 麗華はマイクを持たずに立った。

 

 それでも、視線は彼女に集まる。

 

「皆様、今夜はお越しいただきありがとうございます」

 

 声はよく通った。

 

「美しさとは、何でしょうか」

 

 会場が静かになる。

 

「若さ。肌。形。香り。装い。視線。記憶。人脈。成功」

 

 麗華は微笑む。

 

「どれも正解です」

 

 真咲の指が端末上で止まる。

 

 麗華の言葉には、明らかな高揚があった。

 

「けれど、美しさは保たなければ消えてしまう。誰にも見られなければ、なかったことにされる。忘れられれば、それは死と同じです」

 

 招待客の何人かが、不思議そうに顔を見合わせる。

 

 麗華は続けた。

 

「だから今夜、私は皆様に特別な体験をお見せします」

 

 真咲が一歩前に出る。

 

「羽鳥さん」

 

 声は届かない。

 

 あるいは、届いていて無視された。

 

 麗華は唇を湿らせるように、静かに舌先でなぞった。

 

「私が、あなた達を選びます」

 

 瞳が灰色に濁る。

 

 会場の照明が、彼女の輪郭を歪ませる。

 

 ドレスの背中が裂けるように広がる。

 

 肩から華やかな装甲が浮かび上がる。

 腕はしなやかに、しかし鋭く変わる。

 頭部には冠羽のような意匠。

 背中から、巨大な孔雀羽状の装甲が展開する。

 

 腹部には、共通のオルフェノクレスト。

 

 ピーコックオルフェノク。

 

 華麗だった。

 

 怪物でありながら、会場の誰よりも美しかった。

 

 悲鳴が起きるより早く、麗華は巨大な羽を広げた。

 

 孔雀羽状の装甲が、ステージの光を受けて輝く。

 

 それは翼ではない。

 

 視線を奪うための刃。

 

 会場全体に、灰色の因子が散った。

 

 一斉使徒再生。

 

 招待客達が次々に苦しみ始める。

 

 立っていた女が崩れる。

 グラスを持っていた男が喉を押さえる。

 投資家が椅子から転げ落ちる。

 モデルが悲鳴を上げる。

 インフルエンサーがスマホを落とす。

 

 ある者は、一瞬だけ身体を変質させかけた。

 

 灰色の筋が肌に浮かび、骨格が軋み、目が濁る。

 

 だが、ほとんどは耐えられない。

 

 覚醒不成立。

 

 人間達が、次々に灰になっていく。

 

 悲鳴。

 粉塵。

 割れるグラス。

 倒れる椅子。

 舞い上がる灰。

 

 会場は、一瞬で灰の舞台になった。

 

 麗華はステージ中央で羽を広げたまま、微笑んでいた。

 

「ご覧なさい」

 

 その声は、誰に向けたものか分からない。

 

 客か。

 真咲か。

 スマートブレインか。

 もういないNOCTURNEの五人か。

 

「これが、私のショーです」

 

 真咲は端末を握りしめた。

 

 社会的影響、大。

 未承認大規模使徒再生。

 覚醒不成立個体、多数。

 記録映像削除必要。

 現場処理班要請。

 

 入力すべき項目は、次々に浮かぶ。

 

 だが、今はそれよりも。

 

「羽鳥さん、撤収してください!」

 

 真咲は初めて、声を張った。

 

 麗華はステージ上から真咲を見た。

 

 微笑む。

 

「まだ終わっていないわ」

 

   *

 

 会場から逃げ出した者が、数名いた。

 

 完全に因子を受けきらなかった者。

 混乱の中で灰化を免れた者。

 会場外の廊下へ逃げ、非常階段へ向かった者達。

 

 麗華はそれを見逃さなかった。

 

 ステージから降りる。

 

 孔雀羽を閉じる。

 

 灰の舞う会場を歩く。

 

 その姿は、惨劇の中でも優雅だった。

 

 真咲が追う。

 

「羽鳥さん。これ以上は――」

 

「逃げた観客を残して、舞台は終われないわ」

 

「対象処理は現場班に任せます」

 

「私の舞台よ」

 

 麗華は振り返らない。

 

「幕引きまで、私がやる」

 

 非常階段を抜け、建物の外へ出る。

 

 夜風が灰を払う。

 

 会場の裏手は、搬入口に繋がる広い屋外スペースだった。

 

 そこに逃げた数名がいた。

 

 息を切らし、倒れ込み、何が起きたか理解できない顔で震えている。

 

 麗華は、その前に立った。

 

「だめよ」

 

 優しい声だった。

 

「途中で席を立つなんて」

 

 孔雀羽が再び開く。

 

 灰色の因子が放たれる。

 

 逃げた者達は、今度こそ耐えられなかった。

 

 一人。

 二人。

 三人。

 

 次々に灰になった。

 

 夜風が吹き、灰が舞う。

 

 麗華は満足そうに目を細めた。

 

「綺麗」

 

 その時だった。

 

 暗がりの向こうに、赤いラインが浮かび上がった。

 

 黒い装甲。

 

 無言の立ち姿。

 

 ファイズ。

 

 麗華はゆっくり振り返る。

 

「来たのね」

 

 真咲が息を呑む。

 

 ファイズは何も言わない。

 

 会場から逃げた者達の灰。

 裏口に立つピーコックオルフェノク。

 その後方にいる真咲。

 

 その全てを見ている。

 

 麗華は微笑んだ。

 

「あなたが、みんなを灰にした人」

 

 ファイズは答えない。

 

「小春さんも、奈々さんも、千尋さんも」

 

 沈黙。

 

「愛衣さんと琴音さんはカイザだったわね。でも、同じようなものかしら」

 

 真咲が言う。

 

「羽鳥さん、撤退を」

 

「いいえ」

 

 麗華は孔雀羽を広げた。

 

「最後の観客が来たのよ」

 

   *

 

 戦闘は、屋外で始まった。

 

 ピーコックオルフェノクの戦い方は、華やかだった。

 

 孔雀羽状の装甲を広げ、視界を奪う。

 羽の先端から鋭い光のような攻撃を放つ。

 舞うように位置を変え、相手の目を支配する。

 

 ファイズが踏み込む。

 

 麗華は横へ滑るように避ける。

 

 羽が広がる。

 

 ファイズの視界が一瞬、羽の模様に覆われる。

 

 その隙に、麗華の腕がファイズの胸を打った。

 

 火花が散る。

 

「見て」

 

 麗華は囁く。

 

「ちゃんと、私を見て」

 

 ファイズは答えない。

 

 拳を叩き込む。

 

 麗華は羽で受ける。

 

 青白い火花が散った。

 

 重い。

 

 だが、麗華は笑っていた。

 

「無口なのね」

 

 ファイズの蹴りが入る。

 

 麗華の身体が後退する。

 

 孔雀羽の一部が欠ける。

 

 欠けた破片は灰のように散った。

 

「でも、その方がいいわ」

 

 麗華は体勢を立て直す。

 

「観客は、黙って見るものだから」

 

 真咲は距離を置いて見ていた。

 

 介入できない。

 

 この戦闘に割って入れば、麗華も自分もまとめて処理される可能性が高い。

 

 記録する。

 

 判断する。

 

 撤退経路を探す。

 

 だが、麗華は撤退しない。

 

 そのことが、もう分かっていた。

 

 ファイズがベルトへ手を伸ばす。

 

 電子音が鳴る。

 

 Exceed Charge.

 

 赤い光が走る。

 

 クリムゾンスマッシュ。

 

 麗華はその光を見た。

 

 恐怖ではなく、興味に近い表情で。

 

「それで、終わらせるのね」

 

 赤い円錐状のエネルギーが麗華を拘束する。

 

 逃げ道が消える。

 

 だが、麗華は逃げようとしなかった。

 

 孔雀羽を最大まで広げる。

 

 美しく。

 

 誇らしく。

 

 最後まで、視線を奪うために。

 

 ファイズの蹴りが、ピーコックオルフェノクの胸部を貫いた。

 

 衝撃。

 

 赤い光が走る。

 

 その奥で、青い炎が灯った。

 

 麗華の巨大な孔雀羽が、一斉に燃え始める。

 

 青い炎が羽の縁をなぞり、装飾的な模様を焼き崩していく。

 

 羽が灰になる。

 

 一枚ずつ。

 一筋ずつ。

 

 視線を奪うための装甲が、夜の中へ散っていく。

 

 麗華はよろめいた。

 

 だが、倒れない。

 

 真咲が一歩踏み出す。

 

「羽鳥さん」

 

 麗華は手を上げた。

 

 止めるように。

 

 そして、自ら人間態へ戻り始めた。

 

 ピーコックオルフェノクの装甲が崩れる。

 孔雀羽が消える。

 冠羽が灰になる。

 怪物の輪郭がほどける。

 

 その中から、人間の羽鳥麗華が現れた。

 

 ドレスは破れ、肩には灰が降っている。

 

 それでも、美しかった。

 

 完成された大人の美貌。

 

 少し乱れた髪。

 青い炎に照らされた肌。

 崩れかけてもなお、視線を奪う顔。

 

 麗華はファイズを見た。

 

 まっすぐに。

 

「あなたが灰にする女の顔を」

 

 声はかすれていた。

 

 けれど、笑っていた。

 

「ちゃんと見ていなさい」

 

 ファイズは動きを止めた。

 

 ほんのわずかに。

 

 それが迷いなのか、怒りなのか、悲しみなのか、何もないのか。

 

 麗華にも、真咲にも分からない。

 

 麗華は満足そうに微笑んだ。

 

「そう」

 

 青い炎が、胸元から噴き出す。

 

 人間態の肌が灰に変わっていく。

 

 首元。

 肩。

 指先。

 唇。

 

 美しい顔に、亀裂が走る。

 

 化粧を施された頬が、灰として崩れる。

 

 麗華は最後まで、視線を逸らさなかった。

 

 自分の美貌が崩れる瞬間を、ファイズに見せつけるように。

 

 そして同時に、真咲にも見せるように。

 

「忘れないで」

 

 それが最後の言葉だった。

 

 羽鳥麗華は、微笑んだまま灰になった。

 

 夜風が吹く。

 

 孔雀羽だった灰と、人間の美貌だった灰が混ざり、会場裏の暗い空へ舞い上がる。

 

 ファイズは、しばらくその場に立っていた。

 

 何も言わない。

 

 やがて背を向け、夜の中へ去っていった。

 

 真咲は、その場に立ったままだった。

 

 麗華の灰が、足元に少しだけ降り積もっていた。

 

   *

 

 スマートブレイン本社地下特別フロア。

 

 NOCTURNE専用ラウンジ。

 

 七つの席のうち、六つが空いていた。

 

 黒川愛衣の席。

 篠原琴音の席。

 白石小春の席。

 霧崎奈々の席。

 水瀬千尋の席。

 羽鳥麗華の席。

 

 残っているのは、一つだけ。

 

 榊原真咲の席。

 

 真咲は、麗華の灰化確認報告を開いた。

 

 現場処理班の報告。

 

 大規模使徒再生発生。

 覚醒不成立個体、多数。

 灰化残滓、広範囲に散布。

 会場映像、削除処理中。

 関係者情報、整理中。

 社会的影響、大。

 

 そして、羽鳥麗華。

 

 ピーコックオルフェノク。

 

 灰化確認。

 

 真咲は入力した。

 

 NOCTURNE構成員灰化報告。

 

 対象:羽鳥麗華。

 個体名:ピーコックオルフェノク。

 性質分類:栄華。

 灰化確認。

 

 交戦相手:ファイズ。

 推定必殺技:クリムゾンスマッシュ。

 

 最終行動:未承認イベント開催。

 会場内にて大規模使徒再生を実行。

 覚醒不成立個体、多数灰化。

 

 社会的影響:大。

 記録映像、削除処理中。

 関係者情報、整理中。

 

 残存構成員:一名。

 

 備考:最終段階で人間態へ復帰。

 自身の灰化過程をファイズへ視認させる行動を確認。

 

 追記:本人は最後まで視線を支配しようとしていた。

 

 送信。

 

 真咲は、麗華の席を見る。

 

 いつもなら、彼女はそこに座っていた。

 

 脚を組み、グラスを持ち、真咲の堅さを楽しむように微笑んでいた。

 

 見続けたものは、ただの対象ではなくなることがある。

 

 麗華はそう言った。

 

 真咲は、その言葉を思い出した。

 

 そして、すぐに画面へ視線を戻す。

 

 羽鳥麗華。

 

 灰化確認。

 

 残存構成員、一名。

 

 記録上は、それだけのはずだった。

 

 だが、ラウンジは広すぎた。

 

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