遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~ 作:shin.
本当にすみません。
今回は、他のキャラ達と関わっていく事を決めた研遊の話になります。
会話のみで、デュエルはしません。
それでは、どうぞ。
万丈目がデュエルアカデミアを去った数日後、研遊はデュエルアカデミアであちらこちらへと、積極的にイベントに参加していた。
ある日のこと、研遊がデュエルアカデミアの廊下を歩いていると、前からラーイエローの制服を着た小柄な少年と大人以上の体躯をした少年が歩いてきた。その二人に気付いた研遊が手を振りながら二人の名前を呼んだ。
「小原ー、大原ー」
「あ、須磨くん」
「やあ」
名前を呼んだ人物が、自身の知っている人物だと気づいた二人は手を軽く振りながら研遊の方へ近づいて行った。
「あれから調子はどうだ?」
「まだデュエルする時は緊張してるけど、前よりはうまくやれてる気がするんだ。須磨くんのアドバイスのおかげだよ。僕のデッキと相性のいい『地獄の暴走召喚』や『おねだりゴブリン』とかをデッキに入れたおかげで、攻撃力の高い『キングゴブリン』をすぐ出せるようになったんだ」
「おお、よかったな」
「僕も隼人くんとよく話すようになったよ。隼人くんの絵は凄い。あの絵のおかげで色んなアイデアが浮かんでくる。あの夜、須磨くんが隼人くんを紹介してくれなかったら今みたいなアイデアも浮かんでいなかったと思う」
「大原のためになってるなら紹介した甲斐があるよ」
二人の話を聞いて、研遊はニコリと笑った。
研遊の前で笑みを浮かべる二人は、小原と大原と言う少年たちだった。二人は数日前まで夜中にオベリスクブルーの生徒にアンティルールのデュエルを仕掛け、レアカードを強奪していた。その理由は小原がオベリスクブルーの生徒に復讐するため。優しい大原は、小原の復讐に手を貸していた。しかし、正体を突き止めた十代とのデュエルに敗れ、改心した二人はレアカードを返却し、夜中にアンティルールのデュエルを行なわなくなった…というのが本来の物語だった。
十代と小原たちがデュエルを行なった日の夜。研遊は十代達と一緒に夜のデュエルアカデミアへ行き、大原たちが現れるのを待っていた。そして、本来の物語通り、十代に敗れた後、二人は闇夜に消えていく途中で、デュエルを観戦していた研遊が闇夜に消える前に二人の声を掛けた。
「待ちなよ、二人とも」
研遊の声に二人がビクンと肩を震わせ、恐る恐る振り向いた。罪の意識がある所為か、二人の表情は少しこわばっているようにも見えた。
「どうしたんだよ、研遊」
呼び止めた事を疑問に思った十代が研遊に尋ねる。研遊は「ちょっとね」と軽く手を挙げて応え、二人の方へ向き直った。
「小原ー。明日の放課後、時間あるかー?」
「えっと、特に何も無いけど…」
研遊の質問に身構えながら答える小原。研遊は「そんなに身構えなくても」と苦笑いしながら口を開いた。
「じゃあ、明日の放課後に一緒にデッキを考えようぜー。マルっとデッキを変えるんじゃなくてさ、今のデッキと相性のいいカードとかのアドバイスができると思うし」
「えっ!」
研遊の言葉に小原は目を見開いた。大原の方も「何事だ」と言わんばかりに驚いていた。驚いている二人をよそに、研遊は次に大原の方を向き口を開いた。
「大原ー。お前はゲームデザイナーを目指してるんだろ?」
「う、うん」
研遊の質問に大原はおずおずと答えた。大原の返事を聞いた研遊は「よし」と頷き再度口を開いた。
「大原も明日空き教室に来なよー。ただし、大原と話すのは俺じゃなくてこっち」
「ええ!」
研遊は隼人の方を指差しながら提案した。その言葉に指を差された隼人も驚きの表情を浮かべた。
「け、研遊!なんで俺もなんだな!?」
「隼人、どうせ明日暇だろ?」
「暇だけど…何かその言い方、ちょっと傷つくんだな」
研遊の言葉に怒ったような、そして少しだけ傷ついたような表情を浮かべた隼人だった。その様子を見て研遊は「ごめん、ごめん」と手を合わせながら謝罪した。
「そうそう。それでさ隼人。できればで良いんだけど明日の放課後までに絵を描いてくれないか?風景とかの絵を」
「絵を描くのか?」
「ああ」
隼人の質問に、研遊は頷きながら答えた。
「なんなら明日の放課後に絵を仕上げてくれてもいい。絵が上手い隼人とゲームデザイナーを目指してる大原。そんな二人が話すとお互いに良い刺激があると思わないか?」
「っ!」
「……」
隼人は研遊の言葉を聞いて驚きの表情を浮かべた。そして、大原の方も黙ったままだったが、研遊の提案を悪くないものとして考えていた。
「ま、物は試しって言うし。明日だけでもやってみないか?」
「……わかった。大原もいいよな?」
「うん。隼人くんもいいかい?」
「あ、ああ。俺も明日の放課後にお邪魔するんだな」
小原・大原・隼人の三人は明日の放課後に集まる事に了承した。そして、小原と大原はくるりと踵を返し、闇夜に消えて行った。
「なあ、研遊!デッキの話するってんなら俺も行っていいか!」
成り行きを見守っていた十代が我慢できないと言わんばかりに、研遊に向かって提案した。十代の隣では翔の方もうんうんと頷き「自分も参加したい」と言っているように見えた。しかし、
「いや、お前らはレポート書かないといけないから参加できないだろ」
研遊がぴしゃりと言い放ち、十代と翔は「忘れてた!」と頭を抱えながらショックを受けた様子で、隼人はそんな二人を見ながら苦笑いを浮かべた。
そう。本来この話は、オベリスクブルーの生徒を襲っている男を見つけ出す代わりにレポートを免除するという十代とクロノスの約束の話でもある。この話のオチとしては、小原たちはオベリスクブルーの生徒たちにレアカードを返却した一方で、小原たちを見逃した為、十代は大量のレポートを書くことになる。
結果的に明日の放課後、研遊や隼人が小原と大原の二人と接点を持つという事以外は変わっていない為、十代達がレポートを書く未来に変わりはなかった。
その日の翌日、十代と翔がクロノスの監視の下レポートを仕上げている時、ある場所では自身のカードが手元に戻ってきたことを喜ぶ生徒たちがおり、またある場所では四人の生徒のデッキ構築の話や絵から受けたインスピレーションの話が聞こえていたのだった。
そういった経緯の元、研遊は小原や大原と繋がりを持つことができ、今ではこうして世間話をする仲まで進展した。また、大原は研遊を介さずとも隼人と連絡を取るようになっており、研遊も時々隼人からその話を聞く事があるほどだった。
「二人とも調子が良さそうでよかったよ。小原は神楽坂ともデュエルをしてるんだろ?」
「うん。やっぱり彼は凄いよ。彼の記憶力の良さは相当だし、いろんなカードも上手く使うんだ。多分、オベリスクブルーに昇格する日も近いんじゃないかな」
研遊の質問に、小原は自身の感想を交えながら答えた。その返答を聞いて研遊は「そっか」と一つ頷いた。
「小原も大原も神楽坂も。皆、頑張ってるんだな。よかったよかった」
「須磨くん、今度は僕とデュエルしてよ。この前みたいにあっさりと負けないようしっかり腕を磨いておくからさ」
「お、いいぜ。その時は神楽坂も呼ぶか。あんまりデュエル出来て無かったし。なんなら大原も一緒にやるか?」
「い、いいよ。僕は観戦してるだけでも楽しいから」
研遊は小原の提案を快く引き受けたと同時に、一人の級友を呼ぶ事とちょっとしたからかいを含めた提案をした。その言葉を聞いて当の本人である大原はアハハと困ったように笑った。
「まあ、その時じゃなくてもさ。デュエルはしようぜ、試験とかも関わってくる訳だし」
「うっ」
「大丈夫だよ大原。僕がついてるから」
「ありがとう、小原くん」
一瞬落ち込んだ表情になった大原だが、小原の言葉を聞いて笑顔を取り戻した。その二人を見て研遊も笑みを浮かべた。
「じゃあ、神楽坂を見かけたらデュエルの件を話しておくよ」
「うん。僕らも彼を見かけたら話しておくね。またね、須磨くん」
「ああ、またな」
三人は手を振り別れを告げ、自身が向かう場所へと歩みを進めた。
研遊は、二人と別れ廊下を歩きながら先程の会話に出てきた神楽坂の事を考えていた。
「(神楽坂と小原。元々、ラーイエローでもあるしデュエルの腕は高いから二人をぶつけたらいい刺激になるかなって思ってたけど、いい方向に進んでるみたいだな)」
自身の提案が良い方向へと向かっていると思った研遊はうんうんと頷き、神楽坂の事を考えながら歩みを進めた。
神楽坂というのは研遊と同じラーイエローの生徒である。武藤遊戯や海馬瀬人、丸藤亮やクロノスなど、あらゆるトップデュエリスト達のデュエルを研究しており、そのせいでデッキが誰かのコピーデッキとなってしまうという人物だった。原作では、展示されている武藤遊戯のデッキを盗み出し、十代とデュエルを行なう。その結果、デュエルに敗北し十代とそのデュエルを観戦していた亮から“デッキを信じる気持ち”を説かれる。だが、「デッキを信じれなかったのは相手になりきれていなかったせいだ」と思ってしまい、最終的に十代のコスプレをして決め台詞や決めポーズのダメ出しを受けてその話は幕を下ろした。
十代からダメ出しを受けて背中を丸めながらトボトボと歩く神楽坂(十代のコスプレをしたまま)の姿を見つけ、研遊はたまらず声を掛けた。
「よう、神楽坂」
「……ああ、須磨か」
神楽坂が呼ばれた声に気が付き、振り返ると同じ寮生であることが分かり力なく返事をした。
「大丈夫か?やけに疲れてるじゃないか」
「実は、さっき十代になりきろうと服装や髪形も真似たんだ。そして決め台詞なんかも真似したんだが、かなりダメ出しを食らってな。しかも、散々ダメ出しを食らった後に“俺やカイザーが言いたかったのはそういう事じゃないんだよ!”と言われ、困り果ててるんだ」
神楽坂は「はぁ」と溜息をつきながら研遊の質問に答えた。その答えを聞きながら研遊は一考し口を開いた。
「神楽坂。お前さ、色んなデュエリストのデッキを研究とかコピーとかしたんだよな?」
「ああ。それもう沢山したぞ。まさか、全てのデュエリストになりきれっていうのか!?」
神楽坂は信じられないという顔で研遊の方を向いた。当の研遊はやや呆れながら「違う違う」と手を振り否定した。
「何でそうなるんだよ。そうじゃなくて、それだけ沢山の研究をしたのなら“これを使ってみたい!”ってカードは無かったのか?」
「……えっ?」
神楽坂は研遊の言葉を聞いて、頭に疑問符を浮かべながら首を傾げた。その様子を見て研遊は言葉を続けた。
「いや、カードだけじゃなくテーマでもジャンルでもいいんだけどさ。極端な話、融合モンスターや最上級モンスターを召喚してみたいとかでもいいけど。そういうのは無かったのか?」
「お、俺は……」
研遊の質問に、神楽坂は言葉を詰まらせた。まるで「その発想は無かった」と言わんばかりの反応だった。
「もしかして、勝つことだけを考えて“このカードで勝つ”ってのは考えたこと無かったのか?」
「あ、ああ」
頷く事しかできない神楽坂を見て、研遊は「それなら」と口を開いた。
「じゃあさ、まず切り札というかエースを決めないか?」
「き、切り札?」
「そうそう。例えばだけど、クロノス先生みたいに【アンティーク・ギア】だったら『古代の機械巨人』とか、十代みたいに【E・HERO】だったら『E・HERO』の融合モンスターとかさ」
「なるほど」
「うーん」と神楽坂は首を捻りながら考えていた。十分程時間が過ぎた頃、神楽坂は「そういえば」と何かを思い付いた様子でデッキケースの中からカードの束を取り出し、パラパラとめくり始めた。
「とあるプロデュエリストが使っていたんだけど、印象に残ったカードがあったんだ。ただ、クロノス先生やカイザーはデッキに入れていなかったから、同じように俺も入れてなかったんだけど………。お、あったあった。このカードだ」
神楽坂はカードの束から二枚のカード抜き取り研遊に見せた。片方は雷族の融合モンスター。もう片方は上級の悪魔族モンスターだった。その二枚のカードを見て、研遊は「ほう」と一つ頷く。
「そのプロデュエリストは、その二枚を使っていたのか?」
「いや、違う。それぞれ別のデュエリストだ」
「ああ、やっぱそうだよな。なるほど」
研遊は手を口に当て、考える素振りを見せた。神楽坂は「どうしたんだ」と尋ねようと口を開こうとした時だった。
「神楽坂。その二枚をエースにしたらどうだ?」
「なにぃ!?」
研遊の提案に、神楽坂は飛び上がり「何を言っているんだ!」と驚きの声を上げた。
「俺の研究したデュエリストの中にこの二枚のカードを入れてる奴なんて居なかったぞ!」
「だからだよ。俺だってその二枚を使ってるデュエリストなんて見たことない。だからこそ、自分なりのデッキができるんじゃないか?」
「なっ!」
「切欠が俺っていうのは嫌かもしれないけどさ。神楽坂の記憶力や知識でその二枚を生かすデッキを作ってみなよ。そこからデッキを信じる気持ちってのが湧くんじゃないか?何せ、誰のデッキでもない神楽坂オリジナルのデッキなんだから」
「俺の…オリジナルのデッキ…」
研遊の言葉を受けて、神楽坂はポツリと呟いた。しばしの沈黙の後、手にした二枚のカードへ視線を送り、力強く頷いた。
「よし、俺はやるぞ!コピーなんかじゃない!俺の!俺が考えたデッキを作ってやる!俺のオリジナルのデッキをな!」
神楽坂は右手を突き上げ二枚のカードを天高く掲げた。そして、二枚のカードを大事にしまうと、髪をわしゃわしゃとかき乱し普段の髪型へと戻した。
「須磨!俺は今からデッキを構築してくる!その時は試運転も兼ねてデュエルしてくれ!」
「勿論だ。俺でよければ力になるよ。あ、その時は小原も誘っていいか?小原も最近デッキを調整してるみたいなんだ。俺だけじゃなく他の人ともデュエルした方が良いだろうし」
「それは願ったり叶ったりだ!沢山の相手とデュエルした方がデッキ作りの参考になるからな!こちらこそ、よろしく頼む!では、俺はデッキ作りに励むとするぞ!またな、須磨!」
神楽坂は右手を挙げ、駆け足でこの場を去り寮の方へと向かって行った。研遊は軽く手を振りながらその背中を見送っていた。
その数日後、神楽坂はデッキを作成し研遊とデュエルを行なった。結果としては研遊が勝利したが、神楽坂は落ち込むことなく「次はこうしてみよう!」と意欲的な様子を見せ、デッキ作りに精を出していた。何度か研遊とデュエルを行なった後、小原や大原も誘い一緒にデュエルをしてお互いが順調にデッキを組み立てていった。
そして現在、デュエルフィールドでは小原と神楽坂がデュエルを行なっており、その様子を研遊と大原が見学していた。
「よう、宝石の融合使い」
「ん?おう、三沢か」
二つ名を呼ばれた研遊が振り返ると、三沢が手を振りながら近づいて来た。大原も軽く頭を下げ、三沢も「やあ」と手を振り返した。
「最近、忙しそうにしてるなと思っていたら三人の相手をしてたのか」
三沢は現在の様子を見て「ふむ」と頷く。三沢の様子に研遊は「あはは」と軽く笑った。
「こういう言い方は失礼かもしれないけど、二人の実力は本物だからな。小原のタクティクスも神楽坂の記憶力も、デュエルには欠かせない能力だ。それに大原の夢も協力できると思ったからさ。まあ、大原の方は今では俺はあんまり意味ないかもしれないけど」
「いや、須磨くんのおかげで僕は隼人くんと話すことが出来たんだ。感謝してもしきれないよ」
研遊の言葉に大原が反応し感謝の言葉を述べた。大原の真っ直ぐな感謝を聞いて研遊は頬を掻きながら「どーも」と軽く返した。それは分かりやすい照れ隠しだったためか、三沢と大原が顔を見合わせニコリと笑った。
「ほ、ほら。小原と神楽坂のデュエルを見ようぜ」
二人が笑ったことを察した研遊が誤魔化すようにフィールドを指差し視線を誘導した。二人は一つ頷き、研遊が言うように小原と神楽坂のデュエルを見守った。
「俺のターン、ドロー!俺は手札の『サンダー・ドラゴン』の効果発動だ!このカードを捨てて、デッキから『サンダー・ドラゴン』を二枚手札に加える!そして、『融合』発動!『サンダー・ドラゴン』二体を融合し、『双頭の雷龍』を融合召喚だ!」
神楽坂の声と共に現れたのは、双“頭”と言いながらも双“口”を持つ雷の化身。出現したモンスターを見て三沢は驚きの表情を浮かべた。
「『双頭の雷龍』だと!」
「ああ。神楽坂って色んなデッキのコピーをしてきただろ?だから印象に残ったカードが無いかを聞いたんだ。そしたら『双頭の雷龍』と、あるカードが印象に残ったって言ってたからその二枚をエースにしてデッキを組んだらって言ったんだ。そしたら一先ずは形になったから、俺とか小原とかとデュエルをしてもっといいデッキする為に研究中なのさ」
「なるほどな」
三沢は納得した様子で頷く。研遊も説明し終えた後、フィールドの方へと視線を向きなおした。
「バトルだ!『双頭の雷龍』で小原の『おねだりゴブリン』に攻撃!サンダーバースト!」
雷の化身の口からバチバチと雷が生まれたかと思うと、その雷が一直線に壷を持った小鬼の体に直撃した。その雷に耐えられるはずもなく小鬼は爆散したが、守備表示であったため、小原がダメージを受けることは無かった。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ!」
「ぼ、僕のターン、ドロー!」
神楽坂のターンが終わり、小原は緊張した面持ちでデッキからカードを引き抜いた。そして手札を見ながら戦術を考えていた。その様子を見て大原が「がんばれ」と小さく呟いたのが研遊と三沢の耳に入った。
「僕はリバースカード発動!『リビングデッドの呼び声』!この効果により墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!僕は『鬼ゴブリン』を特殊召喚!そして、速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚した時、そのモンスターと同名のモンスターをデッキ、手札、墓地から可能な限り特殊召喚できる!僕はデッキから二体の『鬼ゴブリン』を特殊召喚!」
フィールドにタオルを持ち眼帯をした小鬼が姿を現したかと思うと、同じ姿をした小鬼が二体現れた。現れた当初は不気味に笑っていたが、雷の化身が目に入ると表情が一変し怯えた表情に変わった。それは「俺たちではアイツに勝てない」と悟っているようにも見えた。
「僕は更に『キングゴブリン』を召喚!」
次に現れたのは王の名を持つ冠を被った小鬼。しかし、名前とは裏腹に子供のような体躯をしたモンスターだった。
「『キングゴブリン』の特殊効果!このカード以外の悪魔族がいる限り、相手はこのモンスターを攻撃対象に出来ない!そして、『キングゴブリン』の攻撃力と守備力は自身以外の悪魔族モンスターの数×1000ポイントとなる!よって攻撃力3000だっ!」
小原の説明が終わると同時に、小さな体躯をした小鬼が目を光らせると、巨大な体躯へと急成長し王の名に恥じぬ姿へと変貌した。
小原の戦術を見て三沢は更に驚きの表情を浮かべていた。
「うまい!『暴走召喚』で悪魔族を大量展開し、『キングゴブリン』の攻撃力を一気に上げた!『暴走召喚』はデメリットとして、相手のモンスターも特殊召喚してしまうが、それはあくまでデッキ、墓地、手札にあった場合だ。今回は融合モンスターの『双頭の雷龍』しかいないため、相手フィールドのモンスターを増やすこともない!」
「まあ、仮に融合モンスターじゃなかったとしても、攻撃力が3000まで上がってるなら大抵のモンスターは倒せるしな」
三沢の解説を聞いて、研遊も頷きながら一言付け加えた。大原は「いいぞー、小原くん!」と手を上げながら応援していた。
「永続魔法『一族の結束』を発動!自分の墓地のモンスターが全て同じ種族の場合、自分フィールドのその種族の攻撃力を800ポイントアップする!これにより『キングゴブリン』の攻撃力は3800!『鬼ゴブリン』たちの攻撃力は2000だ!」
さらに力を得た小鬼の王が咆哮を上げ、怯えていた小鬼たちも「俺たちは力を得た」と言わんばかりに表情が不気味な笑顔へと変わっていた。
「バトルだ!『キングゴブリン』で『双頭の雷龍』に攻撃!ゴブリンナックル!」
王の拳を受け、雷の化身が粉砕された。そして、ダメージを受けた神楽坂が腕で顔を守るように覆った。
「これで最後だ!『鬼ゴブリン』たちで神楽坂くんにダイレクトアタック!」
小原の宣言を受けて、小鬼たちは手に持ったタオルを振り回しながら神楽坂へ向かって行った時だった。
「リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!」
「なっ!同じカード!?」
驚く小原を見て、神楽坂は「上手くいった」と言わんばかりにニヤリと笑う。
「甦れ!『双頭の雷龍』!!」
再び現れた雷の化身に、小鬼たちは立ち止まり表情を一変させ、すぐに踵を返し主人のフィールドへと足早に戻っていった。
「くっ、『鬼ゴブリン』じゃ『双頭の雷龍』を突破できない。ターンエンド」
「ふっふっふ!俺のターン、ドロー!」
追撃が失敗し悔しそうな表情を浮かべる小原をよそに、神楽坂は追撃を防ぐことが出来て得意げな表情を浮かべ意気揚々とカードを引き抜いた。
「行くぞ!俺は『双頭の雷龍』を生贄に捧げ、『偉大魔獣 ガーゼット』を召喚!」
雷の化身が姿を消し、次に現れたのは巨大な腕を組んだ長髪の悪魔だった。その悪魔は相手のフィールドに居る同族たちを静かに見下ろしていた。
「『ガーゼット』の特殊効果!このカードの攻撃力は、生贄に捧げたモンスターの攻撃力の倍になる!よって攻撃力は5600だ!」
雷の化身の純粋な力を得た悪魔が、組んでいた腕を解き咆哮する。その咆哮は先ほどの小鬼の王よりも大きく荒々しいものだった。
「『ガーゼット』だと!」
「おお。今回は『ガーゼット』まで出てきたか」
現れた悪魔に驚く三沢をよそに、研遊は小さな拍手をしていた。研遊のリアクションを見て、三沢は研遊に向かって口を開いた。
「研遊。先程言っていたあるカードと言うのはもしかして」
「そうそう。『ガーゼット』のことだ。ただ、毎回出て来る訳じゃ無いけどな。『双頭の雷龍』だけが出て来ることもあるし、その逆もまたしかりだけどね」
三沢の言葉に、あっけらかんと答えた研遊だった。その様子を見て三沢は更に驚きの表情を浮かべた。
「まさか『雷龍』と『ガーゼット』が一緒に入っているデッキだとは。どちらかが入っているデッキはプロのデュエルでも観戦したことはあったが、両方と言うのは少なくとも俺は見た事が無いぞ」
「だからこそだよ。さっきも言った通り、神楽坂は『雷龍』と『ガーゼット』が気になったって言ったからね。神楽坂の記憶力なら、この二枚でも面白い構築ができると思ったからな。それにエースモンスターを作ると、デッキにもカードにも愛着も沸くだろ?そうすれば“デッキを信じる気持ち”が分かるかなって」
研遊の言葉に三沢は「ほう」と感心した様子を見せた。
「(研遊。これほどまでに相手の事を考えていたのか。今までの研遊はどちらかと言うと、一歩引いた所から俺たちを見ていたような気がしていたが。言い方を変えれば少し遠慮をしていたような印象だった。しかし、今の研遊は積極的に周りの人間と関わっている。しかも、ここにいる三人は研遊と関わった事で良い方向に向かっているようだ。俺も、うかうかしていられないな)」
三沢は少しだけ様子の変わった級友の事を考えながら、視線をフィールドの方へと戻した。
「俺は手札を一枚捨てて装備魔法『閃光の双剣-トライス』を『ガーゼット』に装備する!この効果で攻撃力は500ポイント減少するが、二回の攻撃が可能となる!」
神楽坂の宣言と共に、悪魔が双剣を装備し小鬼たちを今にも切り掛からんとしていた。そして、その様子を見て小原は目を見開いた。
「しまった!『キングゴブリン』は自身の効果で攻撃対象にはならないけど『鬼ゴブリン』たちは……」
「今回は俺の勝ちだな!行けぇ!『ガーゼット』で二体の『鬼ゴブリン』に攻撃!ガーゼットスラァァッシュ!!」
悪魔が剣を振るい、小鬼たちを切り刻むと同時に爆発した。その爆風が小原を襲い、小原のライフポイントを全て削り取って行った。
「よし!今回は俺の勝ちだ!」
「くそっ!まさか、『雷龍』も『ガーゼット』も出て来るなんて!」
腰に手を当てて得意げに笑う神楽坂と、悔しそうな表情で神楽坂を見つめる小原。大原は小原に駆け寄り心配そうな表情をしていた。小原は「大丈夫」と大原に告げ笑みを浮かべ、大原も笑顔で頷いた。そして、神楽坂と小原は今のデュエルを次に生かそうと考える様子を見せていた。
「す、素晴らしいデュエルだった」
二人のデュエルを観戦していた三沢は、今のデュエルに敬意を表すかのように自然と拍手をしており、その様子を見て研遊はニッと笑った。
「二人とも凄いよな。メキメキと腕を上げてる。俺たちも油断してたら足元をすくわれるぜ」
「ああ。俺も負けていられない。何だか熱くなってきた!」
先程のデュエルに触発されたのか、三沢はグッと拳を握った。その様子を見て研遊が笑みを浮かべている時だった。
「須磨くん!今度は僕とデュエルしてくれない?さっきのデュエルを生かして、今日こそ君に勝つよ!」
「三沢!俺のデッキはもっと強くなる!そのために色んな相手と戦いたい!だから俺とデュエルしてくれ!」
小原と神楽坂が、それぞれ対戦相手を指名した。その表情は嬉々としており、“自分のステップアップの為には、君たちが必要だ!”と言っているようにも見えた。そして、指名された研遊と三沢は顔を見合わせた後、ニッと笑った。
「いいよ、小原。楽しいデュエルをしようか」
「神楽坂とデュエルするのは久しぶりだな。どれほど強くなったか、俺のデッキで試してやるぞ」
二人は「受けて立つ」という表情でフィールドに上がりデュエルディスクを構えた。
「「「「デュエル!!!」」」」
デュエルをしている四人も、観戦している大原も、このデュエルが自身の良い糧となる事を本能的に理解しており、そのことを嬉しく思いながらその日を過ごしていった。
そして、さらに数日がたったある日のこと。レッド寮に転入生がやって来た。その転入生の名前は早乙女レイ。彼……いや、彼女は性別と年齢を偽り、デュエルアカデミアへやって来た。その理由は、一目惚れした丸藤亮のもとへ行く為である。
結果として、レイは十代とデュエルをした後、亮へ思いを告げるが振られてしまう。更に小学五年生と言う事で、両親の迎えのもと島を去るが、デュエルをしたことを切欠に十代に恋心を抱き、後の話では十代に猛アタックをする人物である。
予めレイの事を知っていた研遊は、さりげなく十代達を通してレイと関わることができた。当初、研遊の事は違う寮生だからか、若しくは男性が増えたことを良く思わなかったのか。ともかく、研遊に対してあまり好印象は持たれなかった。しかし、デッキやカードの話を聞き、自分とは異なる考え方を聞いて良い刺激になったのか、研遊の話を興味深そうに聞いていた。研遊も歳の離れた妹を相手にするようにレイとの話に花を咲かせていた。
時が過ぎ、今研遊たちの目の間で十代とレイのデュエルが行われていた。デュエルは大詰めを迎え、十代のフィールドに『フレイム・ウィングマン』が現れ、レイのモンスターへ攻撃後、このデュエルの決着がついた。そして、レイは自身の一途な思いを亮へ伝えたが、残念ながらその思いが実ることはなく失恋と言う結果になってしまった。そして、レイの年齢を聞いて十代達が驚いた後、十代の笑い声につられて、その場にいる全員が笑みを浮かべていた。
その後、十代達はレッド寮へ戻り、「女性だと分かったレイがレッド寮に戻るのは流石に…」という事で、明日香と一緒に女子寮へ泊まる事となった。研遊と亮も「寮まで送る」という事で、四人は森の中を歩いていた。その道中、研遊が亮や明日香に聞こえないようにこっそりと話しかけた。
「レイ。カイザーの事、残念だったな」
「研遊…。うん、やっぱりちょっとショックだったな」
「(全然ちょっとじゃ無さそうだけどな)」
アハハと力なくレイを見て、研遊は心配そうな表情を浮かべた。原作では明日の出向時にレイは亮の事は吹っ切れたのか、次は十代へ恋心を抱く。しかし、目の前にいる少女は目に見えてガッカリしており、未だ引きずっているように見えた。
「(うーん。俺は恋愛事には疎いからなぁ。女の子を慰める事なんて…。あ、そうだ)」
研遊がどうしたものかと悩んでいると、ある事を思い付きレイに向かって口を開いた。
「レイ。落ち込んでるときに申し訳無いんだけどさ」
「お、落ち込んでなんかない!」
レイは否定しながら拳を握り、研遊をポカポカと叩き始めた。
「ご、ごめん!ごめんって!」
研遊は、少女の力で叩かれている為、痛みはあまり感じていないが、何度も叩かれるのは勘弁と言った様子でレイに謝罪した。レイは頬を膨らませていたが、叩くのをやめて研遊の言葉を待った。
「いや、ホントごめんなさい。それでさ、レイって『ライトロード』ってカード知ってるか?」
「『ライトロード』?ああ、知ってる知ってる!最近出た新しいカードの事だよね!」
「あ、そうなんだ」
「えっ?研遊は知ってるんじゃないの?」
「いや、よく知ってはいるんだけど、最近出たのは知らなかったと言いますか」
「なにそれ」
研遊が言った意味が分からず、レイは首を傾げていた。研遊は誤魔化すようにゴホンと咳払いをして話を続けた。
「と、とにかくだ。『ライトロード』は知ってるんだよな」
「うん。僕の学校でも、かなり話題になったんだ。だけど皆は弱いからって言って全然使っては無いけど」
「そうなのか?あっ、もしかしてデッキを墓地に送る効果の所為か?」
「そうそう。デッキを自分から減らすなんてデメリットでしかないって」
レイの言葉に研遊は「なるほどな」と小さく呟く。
実際、この世界ではレイの学校だけでなく、デュエルアカデミアでもデッキから墓地へ送るという行為は「可能性を自ら潰している」という認識が強い。何故ならば、この世界に置いて墓地のカードを有効的に使えるカードが圧倒的に少ないからである。勿論、十代の『ネクロ・ガードナー』や亮の『オーバーロード・フュージョン』、アンデット族のカードなど、全く無いわけでは無いのだが、それでも墓地へ送ることでメリットが多いカードはあまりにも少ない。そのため、“墓地へ送る=可能性を捨てる”と思われていても、ある意味仕方のないことなのかもしれない。
「レイ自身は『ライトロード』についてはどう思ったんだ?」
「僕?そうだなぁ…」
研遊の質問にレイはしばらく考える。そして、考えが纏まったのかゆっくりと口を開いた。
「僕は『ライトロード』を弱いとは思わない。効果も強力なカードが多いし。勿論、デッキが減って切り札が墓地に行く可能性だってあるけど、デッキが減るってことは欲しいカードを引きやすくなるってことでもあるし。それに…」
「それに?」
「自分のデッキがなくなる前に、相手を倒しちゃえば何の問題も無いよね?」
レイは何でもないことの様に言い放ち、研遊は目を見開いた。そして、しばしの沈黙の後……
「あっはっはっは!!」
研遊は大きな声で笑った。その声を聞いて、レイだけでなく亮や明日香も「何事だ」と驚き、足を止めて研遊の方へ視線を送った。
「な、なによ!そんなに笑わなくたっていいじゃん!」
馬鹿にされたと思ったレイは、再び研遊の事をポカポカと叩き始めた。
「ごめんって!決して馬鹿にしたんじゃないんだよ!」
殴られた研遊は笑顔のままレイに謝罪した。その様子を見て、亮と明日香は「大丈夫そうだ」とお互いに頷き、再び歩き始めた。研遊とレイも二人に続き歩き始めた。レイは先程よりも頬を膨らませ、研遊を睨むように見ていた。
「さて、さっきの話の続きだけど。レイの言った通りだ。『ライトロード』は強力なカードが多い。デッキから墓地へ送る効果も、カード次第ではメリットになる。何より、デッキがなくなる前に倒しちまえば問題ない。レイ、『ライトロード』のデッキを組んでみる気はないか?」
「えっ!?」
研遊の提案に、今度はレイが目を見開いた。レイの驚いた顔を見ながら、研遊は口を開いた。
「別に今あるデッキを辞めろって言ってる訳じゃ無いからな?ただ、他のカードにも触れることで今以上の実力を身に付けることができるはずだ。レイは『ライトロード』のメリットとデメリットをしっかりと考える事が出来た。そんな奴がデッキを組んでみろ、絶対に強くなるぞ」
レイの頭をポンポンと叩きながら研遊は説明した。当のレイは一瞬ボーっとしていたが、直ぐに我に帰り研遊の手を払った。
「むーっ!子供扱いしてー!」
「俺からしたら小学五年生は十分子供だ。(何なら、転生前は成人してたからホントに子供なんだよな)」
むくれるレイをよそに、研遊は前世の事を少しだけ懐かしんでいた。
「ま、無理にとは言わない。気が向いた時にでも『ライトロード』に触れてみるといいよ」
「……なんでそこまでしてくれるの?」
「小学生があの十代をあそこまで追い込んだんだ。そりゃ、応援したくもなるさ。後は……そうだな。レイに落ち込んでる顔は似合わないって思っただけだ」
「なっ!?」
あっけからんと言い放った研遊の言葉に、レイは驚き頬を少しだけ赤く染めた。そして、首をブンブンと振り研遊の方を向いた。
「わかった!僕、『ライトロード』組んでみる!その時は相手してよね!」
「ああ。頑張れよ、レイ」
研遊はヒラヒラと手を振りながら答え、レイも満面の笑みを浮かべた。そして、四人は目的地まで歩みを進めた。その道中、レイは研遊の方をチラチラと視線を送っていたが、当の研遊は全く気付いていなかった。
翌日。レイを見送るため、昨日のメンバーが港に集まっていた。デュエルアカデミアから去っていく船に乗ったレイが両親に見守られながら、港のメンバーに向かって大きく手を振っていた。
「来年、小学校を卒業したら、またテスト受けて入学するからねー!」
レイは元気よく手を振りながら「また来るから」と港のメンバーに宣言していた。
「へへっ、だってよ」
「その時は、俺はもういないけどな」
レイが亮に向かって宣言をしたと思っている十代は、からかう様に笑みを浮かべた。
「(十代。レイはもうカイザーじゃなくて、お前に惚れてるけどな)」
レイが次に発する言葉を知っている研遊は、笑うのを堪えて口をきつく結んでいた。しかし、
「待っててねー!十代さまー!研遊さまー!」
「なぁっ!?」
「はぁっ!?」
レイは二人の名前を満面の笑みのまま、大きな声で叫んだ。その声を聞いて十代だけでなく研遊も驚きの声を上げた。
「(待て待て!!こんな展開知らないぞ!)」
「な、なんで俺たちなんだよー!」
「十代じゃなかったのか!?」
「きっと十代のデュエルと須磨くんのアドバイスに惚れたんでしょ?」
十代と研遊の疑問に、明日香が「フフフ」と悪戯っぽく笑いながら答えた。
「あとは任せた」
「じゃあ、アニキと研遊くん。先に帰るねー」
「ゆっくり見送ってあげるんだなー」
「船が見えなくなるまで、見送ってあげなきゃねー」
呆気に取られている二人をよそに、他のメンバーは港から学園の方へと帰って行った。
「待っててねー!きっとよー!十代さまー!研遊さまー!」
そんな二人の様子気に留める訳もなく、レイは身を乗り出し大きく手を振り続けていた。
「えぇ…あれぇ?うそぉ…」
「な、なんでこんなことに…」
力なく呟く十代と研遊は、船が見えなくなるまで小さく手を振る事しか出来ずにいたのであった。
「(ま、レイはこの後の物語にも出て来るし。その時は『ライトロード』を使ってるのかな?小さな楽しみにしておこう。ただ、何で俺の名前まで呼んだんだろうなあ。そこだけが分かんねえ)」
研遊は小さな楽しみと小さな疑問を持ち、首を傾げていた。その様子を見ていた精霊である騎士たちが、研遊や十代の後ろの方で「はぁ」と溜息をついたり笑ったりしていた。
「お兄ちゃん、鈍すぎるよ」
「まあ、研遊殿は一途でござったからなぁ。他の女子の好意は気付きにくいのかも知れぬ」
「アッハッハ。大将、おもしれー顔してんな」
「マスター。流石に今回は擁護できません」
「研遊…。もっと周りに目を向けて行こうな」
五人の騎士は主人に向かって暖かい目を向けていたが、当の主人である研遊はその視線に気付くことはなく、船に向かってただただ手を振っていた。
いかがでしたでしょうか。
一度しか登場しない小原たちや神楽坂、
そしてレイとの関わりを書かせていただきました。
個人的には十代と小原のデュエルが結構好きでした。
なので、ちょっと主人公とも関わったらいいなーと
思いながら書きました。
神楽坂に『サンダードラゴン』と『ガーゼット』を
使わせたのは特に理由はありません。
強いて言うなら作者がその二枚が好き位の理由です。
今回も読んで頂きありがとうございました。
皆さんが少しでも面白いと思って頂けたら幸いです。