ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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キリが悪いのですが、役所に申請して行方不明になっていた書類が発見されまして。
急に手続きが再開されて、打ち合わせをしないといけないので、
ちょっと書く時間がとれそうもありません。
一段落したら戻って参りますので、申し訳ありませんがお待ちください。

再開時期は、活動報告でお知らせさせて頂きます。



第百二話 聖弓ヒヒ

タークスは黒い魔法の筒を複数手にし、それを放り投げた。

 

スカルブレード、ブラッドソード、しびれだんびら、呪いのつるぎ、アックスヘッドなど、

武器系の魔物を呼び出し、魔物達はタークスの周囲に控えている。

 

 

「甘いなぁ……一対一で戦うと思っていたのかな?」

 

「もっと卑劣な手を打ってくると思っていましたよタークス。

数に頼むというのなら、対策のしようはある」

 

「ふふふっ……対策? 対策ねぇ……」

 

 

タークスの指がアバン殿を指し示し、武器系の魔物達が一斉に襲いかかった。

余裕たっぷり話し始めるタークス。

恐らくは勝利を確信しているのだろう。

 

 

「勇者アバン。ベルクスの敗因は君を捕らえようとしたことだった。

だからこそ、いま、容赦なく攻撃を加えられるのなら、

我々が敗れる要因はなくなったわけさ」

 

「本気を出せば勝てると、そう言っているように聞こえるが……?」

 

 

アックスヘッドを大地斬で真正面から叩き割り、

しびれだんびらに斬り付けられる前に海破斬で迎撃。

呪いのつるぎを空裂斬で倒したアバン殿は、ガイアの剣を鎖に変化させてタークスに相対した。

 

 

「鎖対鎖……武器を合わせましたよ。

今度は逃げませんよね魔鎖のタークス?」

 

「フン……新生ベルクスがどれほど強くなったか、

後悔しながらその身に刻むといい、勇者アバン!」

 

 

追加の魔法の筒から武器の魔物を出しながら、

爆烈呪文(イオラ)を使うタークスの攻撃を回避しつつ、アバン殿は魔物達を迎え撃った。

 

 

 

テンペストは変幻自在の切っ先で、マトリフ殿に接近戦を挑もうとしている。

しかし、マトリフ殿はやはり上手く、地爆呪文(ジバリア)でテンペストの移動を阻害し、

進行ルートの選択肢を狭めた上で、閃熱呪文(ベギラマ)爆烈呪文(イオラ)を使って、

容易に近づかせずに巧妙に立ち回っていた。

 

 

「その切っ先を使い、魔法陣をかなりの速さで刻んでたなあんた?

予め魔法陣が必要な呪法の使用に、時と場所を選ばないのは強いじゃねぇか」

 

「褒めて頂いたようね。お礼に他の技も見せてあげましょうか?

……魔妖奥義、氷魔旋風」

 

 

テンペストが眼前に刻んだ魔法陣から、冷気を漂わせる青白い甲冑が姿を現す。

その甲冑は呪文ではなく、吹雪や氷柱での攻撃をしてきた。

……姿形が、氷魔フィルグレアに似ているが……まさかあんな化け物ではないだろうな。

 

 

「おいおい、器用な真似すんじゃねぇか!」

 

「減らず口がいつまで叩けるか見物ね。追加よ……!」

 

 

分裂するように一体出現し、

合計二体の青白い甲冑が現れて攻撃を開始する。

マトリフ殿は防御光膜文(フバーハ)で攻撃をしのぎ、

瞬間移動呪文(ルーラ)で距離を取って、杖を構えた。

 

 

魔甲剣をまとったレイラ殿の動きは素早いが、魔槍のフーガはその名の通り、

間合いが広い武器である槍を使っている。

リーチの差があり、なおかつそれを知り尽くした槍の達人の動きは巧妙だ。

敏捷で身が軽いが、リーチが短いレイラ殿を懐へ入れない。

 

 

「チッ……人間の割に素早いですね。火炎呪文(メラゾーマ)!」

 

「そんなもの……!」

 

 

動きを止めようと放たれた火炎呪文(メラゾーマ)を光明のマントで弾き、

弾き飛ばした火炎呪文(メラゾーマ)の火炎と共に飛んで短剣の間合いに入った。

 

よし、ちゃんと呪文を反射する機能は働いているな。

私とマトリフ殿が魔力を籠めたので、それこそ我々を越える魔法使いでもこなければ、

呪文を反射できないと言うことはない。

 

反射された火炎呪文(メラゾーマ)を、ヤリを回転させて捌くフーガ。

その隙を見逃さず、フーガの至近に近づいていたレイラ殿が一撃を加える。

 

 

「アバン流刀殺法……海破斬!」

 

「くっ!? ちょこざいな!」

 

 

海破斬をまともに食らって片腕になるフーガ。

かなり強引に槍を振り回し、距離を取ったフーガが、

近くにいた死霊の騎士から骨を強奪して腕を補強していた。

 

腕を補ったフーガが振るう槍の一閃を、身を低くしてかわすレイラ殿。

近づかれまいと、槍の柄で地面を突いて間合いを広げるフーガ。

お互いに有利な間合いを取り合う戦いになっているな……

 

レイラ殿はカール騎士団の剣技を覚えようとしたが、

戦闘スタイルに合わないので断念した。

アバン殿からアバン流刀殺法を学んだので、

いまのレイラ殿は海破斬までの技が使えるようになっている。

 

 

 

スイグンとロカ殿の戦いは力vs力の真っ向勝負だった。

お互いに大剣同士の戦いであり、

スイグンはヒュンケルを百メートル近く吹っ飛ばした怪力の持ち主だ。

 

彼は鞘をサソリに変形させ、それをまとって胸当てとして扱い、

一種の鎧化(アムド)のような事をしているため、

非常に防御力が高い。

 

そのためかスイグンはロカ殿の攻撃を受けても、

あまりダメージを受けていない。

むしろ、回避せずに当てさせてにいっているあたり、

己の胸当てに相当な自信があるのだろうか。

 

そのスイグンの頑強さに感心したのか、

ロカ殿が声をかけた。

 

 

「あんた、鉄塊を殴ってるような防御力だ。正直驚いた。

力も相当に強いしな」

 

「フン。吾輩の力に対抗できる人間がいるとは思わなかったぞ」

 

 

ロカ殿は剣を突き立て、カール騎士団正統の構えを取る。

 

 

「だが、あんたより腕力があるクロコダインって人を知っててな。

あんたに負けちまったら、顔向けできないぜ!」

 

「ほう……確かグロイサンがかつて挑んだ、最強の獣人。

クロコダインという名だったな……」

 

 

構えたロカ殿に、スイグンの横薙ぎの一撃が飛び、

ロカ殿の豪破一刀がそれを真正面からねじ伏せた。

 

 

 

ベアーチェと戦っているマァムは、その攻撃を捌きながら、

順調にダメージを与えて行く。

暗黒闘気を宿した爪の猛攻を、全て豪破一刀で撃ち落とした。

 

 

「人間がぁああああ! 調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

「そちらから戦を仕掛けてきておいて何を言っているの!

パプニカの平和を乱したあなたたちを私は絶対に許さない!」

 

「ふざけるな! 食らえ! 魔甲奥義 殺死熊(デッドシグマ)!!」

 

 

魔甲に暗黒闘気を纏ったベアーチェが、真正面からマァムに突っ込んでいく。

豪破一刀で迎撃するが、その攻撃の重さに、マァムは対応仕切れていないようだ。

 

 

「手も足もでないじゃないか! 口だけだな人間!!」

 

「それはどうかしら……」

 

 

マァムの足元に闘気が流れ込み、光輝く武鋒円が形成される。

武鋒円にベアーチェの攻撃が叩き込まれるが、

暗黒闘気を纏った爪を武鋒円は通さない。

 

 

「攻撃が、通らない!?」

 

「武鋒・豪破一刀……!」

 

 

ベアーチェの殺死熊(デッドシグマ)を押さえた上で、

光の闘気をため込んだ一刀を叩きつける。

盛大に胸骨を吹き飛ばされたベアーチェは、魔法の筒から魔物を出して、

マァムにけしかけて自分は後方へ瞬間移動呪文(ルーラ)で移動した。

 

 

「チッ……ベアーチェめ。もっと冷静に戦ってもらわないと……」

 

 

そう言いながら魔法の筒から魔物を呼び出し、アバン殿に部下をけしかけるタークス。

まったく一騎打ちをする気が無いようだ。

 

 

「さて、準備が終わった。

君たちの奮戦に敬意を表して、縁ある人物にこの戦のフィナーレを飾って貰おうと思う」

 

「どういう意味です、タークス?」

 

「ふふふ……これ、なーんだ?」

 

 

タークスが手に持った紫色の魔法の筒から、何かモンスターを解放した。

5mほどある大きな蜘蛛が姿を現す。

暗い赤紫の頭蓋骨から、直接八本の蜘蛛の足が生えているおぞましい姿の魔物である。

 

あれはスカルスパイダーか。

ゾンビ系の最強の魔物だが、一体、どこであんな魔物を手に入れたのか?

 

しかし、よく見てみると、赤い光を宿していたはずの眼窩は暗く、

額の辺りにテムジンの顔が張り付いたおぞましい姿をしていた。

 

ばかな……先ほどマトリフ殿に倒されていたはず……?

 

 

「空の技……だったかな? あれで滅ぼされなくて良かった。

テムジンはデスカール様が特殊な呪法で、

すぐこの肉体に魂が引き戻されるようになっていたのさ……」

 

 

スカルスパイダーが伸ばした八本の足を、

ゆっくり伸ばしながら立ち上がっていく。

 

タークスがいたずらの種明かしをするような口調で話を続けた。

 

 

「デスカール様がこの男を重用していた理由の一つに、

飽くなき欲望と非常に歪んだ他者への憎悪があってね……。

つまり、暗黒闘気で肉体を補った、このスカルスパイダーゾンビと相性が良い」

 

 

"暗黒闘気の増幅器(ブースター)だと思って欲しい"

というタークスの声を、おぞましいメリメリという音がかき消す。

軋んだ音と共に暗黒闘気を黒い炎のように吹き出しながら、

スカルスパイダー、いや、スカルスパイダーゾンビは巨大化していく。

城とは言わないまでも、ちょっとした小さな砦規模の大きさになった。

 

飛翔呪文(トベルーラ)で浮かんでいたタークスの側に、

いつの間にかベルクスたちが集まっている。

 

 

「さて、みなさん。お時間のようだ。もし、生き残れたらまたお会いし……」

 

「タークス。いい気になっているようだが、お前たちの企みは必ず私が潰します」

 

「くっ……既にあの方の計画は動き出している。

君らが知る頃にはどうにもならなくなっているさ……」

 

 

アバン殿の気迫に対して、怯みながらタークスは意味深な言葉を吐き捨て、

ベルクスたちは瞬間移動呪文(ルーラ)で去って行った。

 

残されたスカルスパイダーゾンビは、目を瞑っていた額のテムジンの顔が、

クワッと目を見開き回りを見渡して急に笑い出す。

 

 

「ハハハハハハ! 懐かしのパプニカ……! そう、そうなのだぁ!!

この国を真に愛しているのはこのわし、テムジンだけよ!」

 

 

昨日今日来たわけでもあるまいし、どうやら記憶が混乱しているようだ。

急に妙なことを、戦場に響き渡るほどの大音声でわめき出すテムジン。

その声が大きすぎて、戦いの喧噪が一旦静まり返り、

敵も味方もテムジンの方を見ていた。

 

 

「だからこそ、我が政策に反対する王妃を毒殺し、三賢者を謀殺した!

あと、一歩、あと一歩の所を……ザボエラァ! 貴様が!!」

 

 

無数にある足から闇魔法呪文(ドルクマ)を私に連射してくるテムジン。

バルトス殿とヒュンケルがおり、ガンガディア殿も封印されたままだ。

ここを動くわけにはいかない。

 

ケインが魔力を宿した爪で迎撃し、残りは私が呪文返し(マホカンタ)ではじき返した。

だが、テムジンは極大闇魔法呪文(ドルモーア)を用意している。

 

万事休すかと思った所、まず、マトリフ殿が横合いから極大閃熱呪文(ベギラゴン)で、

テムジンの極大闇魔法呪文(ドルモーア)を迎撃する。

極大闇魔法呪文(ドルモーア)の余波は、ロカ殿とマァムが私の前に割り込み、

豪破一刀の威力で極大闇魔法呪文(ドルモーア)を切り裂いて霧散させてくれた。

 

そして、アバン殿が瞬間移動呪文(ルーラ)で移動して駆けつけてくれる。

 

 

「間に合って良かった。

しかし、あんな隠し球を用意しているとは思いませんでした」

 

「仰るとおりですな。

まずは眼前のテムジンの亡霊を倒さねばなりませんが……」

 

 

私とアバン殿が話し合っていると、テムジンの世迷い言が響いた。

 

 

「そう! 王など不要! パプニカの神々よ御照覧あれ!

パプニカ司教たるこのテムジンが教皇として君臨し、

パプニカを未来永劫、正義と秩序の元支配してくれましょうぞ!!」

 

 

言っていることは滅茶苦茶だが、この絶対的な自己正当化が、

歪んだ意味での暗黒闘気と相性がいいのだろう。

実際、濃密な暗黒闘気がテムジンを中心として、嵐のように沸きあがっている。

そして、まとわりつくような、排気ガスのような暗黒闘気を放出した。

 

それを受けた不死騎団が、一斉に活性化して活動を再開する。

パプニカ軍に背を向けてこちらへ進軍したが、アポロが極大爆烈呪文(イオナズン)を放って、

不死騎団の注意を引いてくれた。

 

 

「勇者アバン殿は逆賊テムジンと戦っておられる! 我々は不死騎団を引きつけるのだ!

パプニカ魔法兵団よ、勇者のために戦う時だ! 呪文を放て!!」

 

 

アポロ殿の言葉にコルキ殿が応じて、魔法兵団を指揮して一斉に呪文を放つ。

火炎呪文(メラミ)閃熱呪文(ベギラマ)氷結呪文(ヒャダルコ)爆烈呪文(イオラ)

真空呪文(バギマ)退散呪文(ニフラム)……様々な呪文がそれぞれの音を立てて飛ぶ。

 

それで怯んだ不死騎団に、パプニカ戦士団が切り込んだ。

 

 

「ザボエラ殿は動けぬようだ! 大地の賢者をお守りしろ!

クロコダインに見せて貰った勇気を、いまこそ振り絞るときだ!!」

 

 

そう叫び、戦士団を鼓舞するバダック殿の声が響く。

キラーマシンを引き連れたパプニカ戦士団が、

不死騎団の魔物達を真っ向から切って捨てている。

 

マトリフ殿が感心したように笑い、私に声をかけてきた。

 

 

「お前さんはオーザム、ベンガーナ、ロモスと連戦してきてんだ。

ちぃいとばかし休んでてもいいだろう?」

 

「あとはオレたちに任せておけよザボさん!」

 

「ヒュンケルとお父さんを守ってあげてください」

 

 

ロカ殿やマァムも口々に言ってくれる。

私は長年の苦労が報われたような気持ちになった。

ダイの大冒険が始まったとき、世界は終わりを迎えようとしていた。

物語が終わった後、確かに世界は救われたが、幾つもの国が滅んだ世界を、

何十年かけて立て直すのだろうという気持ちになってしまっていた。

 

だが、私が小賢しく奔走した結果、まだ、原作より被害が少ない状態である。

パプニカも依然として無事だ。

私はみなに深々と頭を下げるだけだった……。

 

と、私が一人感慨深く浸っているのを許さぬかのように、

凄まじい勢いの瞬間移動呪文(ルーラ)で私の近くに降り立った者がいた。

なんと、レオナ姫だ。

 

 

「テムジン! 見苦しい姿を晒してよく言ったものね!

卑劣漢め、恥を知りなさい!」

 

「レオナ姫、このような場所に来ては危険ですぞ!」

 

「分かってます。でも、許せなかった……!」

 

 

そうして、背負っている聖弓ヒヒを構える。

 

 

「ヒヒ。お前さん、動けるのかね?」

 

「体は馴染んだよザボエラ殿。それに、姫が出るというのでな。

放ってはおけんだろう」

 

「ヒヒ! 矢降雨、行くわよ!」

 

「心得た!」

 

 

聖弓ヒヒ。

古のベルクスがヒヒという弓の名手へ送った魔弓である。

それがロン・ベルク殿の手により打ち直され、文字通り生まれ変わった。

パプニカの法術や聖水を作るのと同じ過程で、

月光によって清められたその身は、聖なる力を宿している。

 

 

「聖弓奥義、矢降雨……」

 

「アバン流弓殺法、海洋射……!」

 

 

ヒヒが用意した無数の矢は、真っ白な光り輝く聖なる矢だ。

それを、レオナ姫がアバン流弓殺法で打ち出す。

全てがテムジンに命中し、先ほどまで炎のようにまとっていた暗黒闘気を霧散させた。

 

怒りの形相のテムジン=スカルスパイダーゾンビが、激高して喚き散らす。

 

 

「姫ぇええええ……いや、レオナァアアア!

わしの真にパプニカを愛する心を踏みにじ──」

 

「うるさい、卑怯者! 母上……。そして、デルポイ、セイド、ルメスたち先の三賢者たち。

みなの仇をいまここで討ってやるわ! 死しても黄泉返る生き汚さ、いまここで絶つッ!」

 

 

とあっけにとられているアバン殿に、"アバン先生、タッチ!"とヒヒを渡す。

 

 

「姫、これは……」

 

「残念だけどあたしのアバン流弓殺法では、あいつは倒せない。

だから、先生の弓殺法で、ヒヒと一緒に倒して欲しいの……テムジンを!」

 

 

苦笑したアバン殿は、ガイアの剣を鞘に仕舞い、

託されたヒヒに声をかける。

 

 

「私のことは覚えていますか、ヒヒ」

 

「鮮烈にな、勇者アバンよ。

お主のアバンストラッシュは、まさしく一世一代の名人芸だったよ」

 

「ヒヒがそれをあたしによく言うのよ。

先生、お手本を見せてくださいね!」

 

 

手を合わせて拝むレオナ姫。

アバン殿が受け取ったヒヒを力強く握りしめ、みなの方を見て話し始める。

 

 

「みんな、援護してください。私が最後は弓のアバンストラッシュで決めます。

ただ、その前にあの巨体を貫けるだけの、闘気をため込む必要があります」

 

「わかった。任せろよアバン。

マァム、行くぞ。あのバケモノの足をたたき折ってやろうぜ」

 

「はい、父さん!」

 

「もお……お淑やかな感じに育てたかったのに……」

 

「はっはっは! まぁ、お前さんとロカの娘だ。

なかなか、そうはならねぇと思うぞ」

 

 

そして、アバン殿に必殺の一矢を撃たせるために、

勇者パーティーが散開していく。

 

テムジンの前に立ちはだかり、豪破一刀で足を切り落とすロカ殿とマァム。

まるで空を飛ぶように俊敏に立ち回り、真空呪文(バギクロス)でスカルスパイダーの身体を、

何カ所も傷付けては離れ、魔甲剣で関節を切り飛ばすレイラ殿。

氷結呪文(マヒャド)で足を凍らせ、極大爆烈呪文(イオナズン)を放ち、

テムジンの闇魔法呪文(ドルクマ)を真っ向からねじ伏せるマトリフ殿。

 

 

「くそぅ! どういうことだ! デスカールは!

デスカールはこの肉体は無敵だと言ったはずだぁあ!!」

 

「それはウソではないでしょうか?」

 

 

崖の上に立ち、聖弓ヒヒを構えて闘気を高めるアバン殿。

 

 

「う、ウソ……ウソだとぉおおお!」

 

「なぜなら無敵の肉体を部下に与えては、反乱された時にどうしようもないでしょ?

せいぜい、何かの実験をあなたで行っていたのですよデスカールは」

 

「ふ、ふざけるなぁあ!!!!」

 

 

叫び声と共に暗黒衝撃波が放たれるが、それを迎え撃つべく、

アバン殿は高めた闘気を聖弓ヒヒに纏わせ、弓を後ろ手に構えた。

 

 

「見せて貰おうか。お主の放つ最高の一矢を……!」

 

「ご期待に添いましょうか、ヒヒ!

アバン……ストラッシュ……!!」

 

 

聖なる輝きをまとった一矢は、テムジンの暗黒衝撃波を易々と切り裂き、

スカルスパイダーゾンビの額にあるテムジンの顔に突き刺さり、そのまま肉体を両断した。

 

初めて見る……これが弓のアバンストラッシュ……。

打ち直されたヒヒの宿した聖なる力の賜物なのか、

アバン殿の闘気がそれほど凄まじいのか、あるいは両方の相乗効果か……?

 

真っ二つにされたスカルスパイダーゾンビが崩れ落ちると同時に、

不死騎団を鼓舞していた暗黒闘気も霧散。

パプニカ魔法兵団、戦士団に一気に押し切られている。

 

マァムたちがスカルスパイダーゾンビの死体の側へ行き、蘇らぬように処理をした。

マトリフ殿が退散呪文(ニフラム)を使い、両断された肉体を灰と変えている。

レイラ殿も協力して手伝っていた。

ロカ殿が大剣で灰を、つんつんと突き刺している。

"もう生き返ってこないよなぁ"という呟きが聞こえた。

 

アバン殿が私の隣に瞬間移動呪文(ルーラ)で移動してきた。

ヒヒをレオナ姫に手渡す。

 

 

「お手本になりましたかね姫?」

 

「簡単にできなさそうだけど、頑張ってみるわ。ありがとう、先生」

 

 

アバン殿がガンガディア殿の千年夜曲を解き、元に戻ったガンガディア殿が、

何があったのかと話を聞いていた。

 

ほとんど撃退された不死騎団だが、モルグが何体か降伏した者達を率いて投降してきた。

ヒュンケルが迎え入れて、彼に恩があると言って庇っている。

恐らくは大丈夫だとは思うが、

デルムリン島に行くことになるだろう。

 

ガンガディア殿は封印されている間の話を聞いて、ため息をついた。

 

 

「……なるほど……。不甲斐ない姿を晒してしまいました」

 

「私も一回封印されましたからね、やむを得ませんよ」

 

 

千年夜曲をかけられた経験者の二人が話をしている。

意を決したような表情のガンガディア殿が、みなに話を始めた。

 

 

「この場に、最高の知恵者が集まっていると思い、お伝えします。

不死騎団長デスカール。彼こそが恐らく現魔王軍で一番危険な人物です」

 

「そりゃ、大魔王バーンよりもかい?」

 

 

マトリフ殿がそう声をかけたが、ガンガディア殿はそれに頷いた。

 

 

「マジかよ……ちょっと冗談だったんだがな」

 

「デスカールはヴェルザーと組んで大魔王を裏切るつもりです。

その後、ヴェルザーはかつて果たせなかった地上制覇を行うと……」

 

 

ガンガディア殿の発言は、大きな波紋を投げかけた。

 

 




独自設定
氷魔旋風
テンペストの攻撃系の奥義です。
色々と呪法が使えたのだろうと思って、
外見は氷魔フィルグレアの氷の魔物を召喚できるようにしました。

レオナ姫の母親
本作ではテムジンに毒殺されたことになっています。

先の三賢者
実際に魔のサソリに殺されたデルポイ含め、
他の三賢者セイドもルメスもテムジンに謀殺されました。

参照 第十五話 パプニカの光と影(中編)

アバン流弓殺法 海洋射
弓殺法は天空射しか出てないので、ねつ造しました。
本編で解禁されることがあったら、修正します。

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