夏油転生~異世界行ったらポケモ〇マスター~   作:らららん

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事故

 これは誰が悪いのか?

 

「うぅ……、酷いよルディ」

「……え、は………?」

「どうした! は? これどういう状況だ?」

「あ、師匠」

 

 パウロの目に入った光景は、訳がわからないものだった。

 裸になり泣いているシルフィエット、「シルフが……女?」と蚊が鳴くような声を呟くルーデウス、そして罪悪感がそのまま顔に出て申し訳なさそうにしている彼。

 

「……何があったか、説明してくれるか?」

「はい……、あれはワタシ達が魔術を使っていた時です」

 

 

◇

 

 

「ルディ、これ見てくれ」

 

 そう言って彼は、怪我をした指を見せる。興味を持ったルーデウスと、ルーデウスから魔術を習っていた途中のシルフィエットも視線を向ける。

 

 すると、彼の怪我した指辺りが光り始める。ルーデウスとシルフィエットは、それが魔術の光だとすぐに気づき、治った指を見て何をしたのか理解した。

 

「もしかして、無詠唱治癒魔術か?」

「そうだけど、それだけじゃない」

「ん? どういうことだ?」

 

 実はね、と彼は機嫌よく語る。

 

 彼が今やった魔術は2つ、解析魔術と初級治癒魔術だ。

 解析魔術とは彼が考案し、習得した新たな魔術だ。その効果は、自身の体もしくは触れているものを魔力で視ること。魔術とはイメージだ。そのイメージは詳細で、鮮明であればあるほど魔術として完成度が高くなる。

 

 解析魔術を自分に使い、どこがどのように傷ついているかを魔力で視る。すると、視覚的あるいは触覚的に大体理解していた傷を、さらに詳細に視ることで情報量が増え、その情報からより鮮明な治癒魔術を使う事ができ、魔力使用量が格段に少なくなったのだ。

 

 つまり、ものすごく治癒魔術のコスパがよくなった。

 

「へぇ、それすごいな。そういえば解析魔術って具体的にどうやるんだ? 俺も使ってみたいんだけど」

「ずずーっと身体に魔力を回すとできるよ」

 

 ―――あ、そういえばパウロと同じ感覚派だったな、コイツ。

 

 ルーデウスは理解するのを諦めた。

 

 

 

「あ、雨降ってきたな」

「ルディが魔術で天気を変えればいいんじゃないかい?」

「いや、もう結構濡れてるし、俺の家に来ないか?」

「そうしようか」

 

 彼等は急いでルーデウス邸に向かった。その走っている最中、一番早く着いた人が勝ちという謎のゲームが発生した。外は酷い雨風で、最悪の天気だが彼等にはその非日常を楽しめる心があった。一番はルーデウスとシルフィエットを常時煽っていた彼だった。因みに、彼に煽っていた自覚はない。

 

 家に着いた彼等は、玄関でルーデウス達が濡れてくることを予想していたリーリャに「お湯を準備しております」と言われ、ルーデウスの部屋に入った。

 

「ふぅ、雨でべたべただ。風邪ひかないように脱ごう」

「……え、ぅあ」

「別々に着替えるんじゃないのかい?」

「え? 必要ないだろ」

 

 ルーデウスは事も無げに言う。それにシルフィエットは白い肌を真っ赤に染めて恥ずかしがり、彼はシルフィエットをチラリと見て、それはダメだろうと思い、ルーデウスを止めようとした。

 

「なんだよお前ら、脱がないのか?」

「はぁ……ルディ、親しき仲にも礼儀ありだよ。人が嫌がることを、進んでやるんじゃない」

「それ常に人を煽ってるお前が言うか? でもさ、脱がないと風邪ひいちゃうかもしれないし、安全のために必要な事だろう?」

 

 やれやれ、と彼は深くため息をつく。彼としては、まさかルーデウスがここまで女性との距離感が近いとは知らなかったのだ。まさか、子供とは言え裸を見せ合うことに平気とは。

 

 シルフィエットは未だに恥ずかしがっており、服を脱ぐ気配はない。

 

 ここでルーデウスの中の悪戯心が芽生える。

 

 ―――ははーん? こいつらアソコ見せるのが恥ずかしいのか? やれやれ、それでは立派な漢にはなれないぞ? となれば俺がそのパンツを剥ぎ取って、羞恥心を消してやろう。

 

「シルフ、ワタシ達は部屋の外に出ているから、先に湯を浴びるといい。リーリャさんに替えの服も用意してもらうよう、言っておくよ」

「あ、ありがとうルーグス」

「気にしなくて良い、当然だよ」

 

 そう言って彼は背を向け、扉に向かう。彼としては、ルーデウスも付いてくるだろうと思って、先に出ようとしただけだ。シルフィエットも安堵故か、先ほどまであった警戒心が緩んだ。

 そこをルーデウスは隙と見た。

 

「とうりゃっ」

 

 シルフィエットに近づき、そのズボンをパンツごと下ろした。ルーデウスも小学校時代はよくやった動きだったので、慣れていた。シルフィエットは無防備に、その下半身をルーデウスに曝け出した。

 

「ぃ、いやあああ!」

「へ、へぁ?」

「何やってるんだいルディ!?」

 

 シルフィエットには男にあるべきものが付いていなかった、それをルーデウスは見た。それを見たルーデウスはしかし事実を受け止めきれず、頭の中はメチャクチャで混乱状態だった。

 しかし身体は正直なのか、混乱状態であるルーデウスとは裏腹に若きマグナムは直立していた。

 

 

◇

 

 

「というようなことがありました」

「なるほどな……」

 

 パウロは思った。ルディが悪いじゃん、と。しかし、彼はルーデウスを責めてもいいのかと考えた。また前のように正論で攻められ、言い負かされるのではないかと思った。

 

「すみませんでした……」

「お、おう。俺じゃなくて、シルフィエットちゃんに謝れよ。ルディ」

 

 しかし今回のルーデウスは素直だった。

 パウロはここで父の威厳を見せようと考えたが、自分も昔は我慢ができなくて色々やらかしたことを思い出し、叱るに叱れないと思った。

 

 ―――ルディにも、しっかりとグレイラットの血が入ってるんだなァ。

 

「ルディ、今回は君が悪いよ。やっていいこととダメなことくらい分かるだろう?」

「うぅ、マジでごめん」

「それはシルフに言ってやってくれ。全く、これは止めなかったワタシも怒られるのかな……」

「本当に、すまん」

 

 彼は今回、巻き込まれただけだ。しかし、彼に過失は無いのかと言えば、無いことはないだろう。例えばルーデウスがシルフィエットを、日頃男扱いしている場面を何度も見ているのだから普通は気づく。しかし彼は、この世界に転生してから色々と鈍感になっているのだ。

 

「ルディ、さっきからワタシと師匠に謝っているけど、君が謝るべきは他にいるだろう? ワタシも一緒に謝るから、シルフの所へ行こう」

「そうだな、ルーグス。シルフィエットちゃんはゼニスとリーリャが一階で慰めてるみたいだから、ちゃんと謝るんだぞ?」

「はい、父様」

 

 そして彼等は降りて、泣いているシルフィエットをその視界に納める。ルーデウスが一歩前に出る。

 どうやらルーデウスが最初に謝るようだ。

 

「ごめんシルフ! 髪も短かったし、今までずっと男だと思ってた!」

 

 ―――ルディは完璧に見えて案外、馬鹿なのかもしれない。

 

 パウロは息子に対して失礼なことを思った。

 

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