※本当に某ロボット百合学園アニメとは関係ありません!タイトルも似てません!
拝啓、お父様。
私が春に村を出てから半年がたち、世間では秋になりました。私が街に来た時はあんなに青々としていた木々達が少しずつ木の葉を落としていき、もうじき冬が訪れるのだと寂しく思います。
村のみんなは元気ですか?
私のことを天才だと褒めてくれた司祭様。
仕事の手伝いをするとよく獲物を分けてくれた猟師さん。
そして、親不孝にも何も返せず、故郷に残してしまったお父様。
なにか病気にかかっていませんか?故郷のことを思うといつも心が締め付けられます。
私は今、街の全員からやべー奴だと思われて困っています。
□□□
ここまで書いて手紙を破り捨てたくなる衝動に襲われた。
いや、待て、アン、これは羊皮紙。私の少ない稼ぎの中でコツコツと貯金して、市場で格安だったから衝動買いした大事な羊皮紙だ。大人しくナイフで文字を削ろう。
文字を消してる間に手紙の内容を考えよう。まずどこで間違えたのか?
半年前、私はここ『シンシャの街』にやってきた。シンシャの街は王国の大河に出来た都市のひとつで、私がいた村と違って石材の大きな城壁で囲まれている。それもそのはずシンシャの街の近くには魔族領があり、人間の国である王国を攻めようと魔王を中心にいつも画策しているらしい。それもあってかこのあたりに人は寄り付かず強力な魔物が現れる。
侵略する魔族に強力な魔物、そういう需要もあってかここは王国の冒険者の憧れの地となっている。冒険者とは魔物の討伐やダンジョンの攻略を生業とする人達で、実態は何でも屋に近いが中には人類未踏の偉業を成し遂げる冒険者もいて、子供なら一度は憧れる職業でもある。
かく言う私も冒険者になるべくシンシャの街にやってきたのだ。シンシャの街が魔族領に近いといっても、街の周辺は在籍する冒険者たちによってスライムなどの下級魔物しか出現しない。つまり初心者から上級者向けのダンジョンが街の周辺にそろっている、それがシンシャの街が冒険者の憧れの地と呼ばれれる由縁だ。
しかし私が本当になりたい職業は冒険者ではない。
私がなりたいのは魔術師、世界の神秘を使役して『魔術』という形で使用する者達、それが魔術師だ。
王国で魔術師と認められるには王都にある魔術師協会でテストを受けるのが一番だが、テストを受けるには実力とコネが必要だ。つまり魔術師にはお貴族様が多い、大貴族ともなれば魔術の
そのため魔術の実力、つまりレベルを上げるために私は冒険者になったのだ。魔術師協会と違って冒険者組合は常に冒険者不足のため門戸が広い、冒険者になれば一般には入ることが禁止されているダンジョンが入ることができ、最高位のS級とはいかずともA、B級の魔術使いであれば魔術師協会への推薦状が手に入るため私にとってはそっちこそ本命なのだ。
さて、シンシャの街に入り、晴れて冒険者となった私はまずパーティを組むことにした。当然ながら魔術師、魔術使いは接近戦にめっぽう弱い、それを補うため冒険者や軍隊は前衛職と後衛職で組み合わせを作る、それを冒険者はパーティと呼ぶらしい。
らしい、というのは冒険者組合の受付の人にそう教わったからだ、魔術師になりたいのなら一番大事なのは自分の命だ、死んでは魔術師になれないのだから安全というのは重要な部分だろう。私は受付の人からのアドバイスを素直に受け取りパーティ要員、特に近接戦闘ができる前衛職を探した。
「おれは剣士!新米どうし仲良くしようぜ!」
案外早く見つかった。
春の時期というのは私と同じように村から出てきて冒険者になる者が多いみたいだ、組合の建物で何人かに掛け合ってみればその多くが最近冒険者になったと言っていた。その中でもこの剣士さんは私と同世代だったため話が合いそうだと思ったのでパーティを組むことにした。
世間話もそこそこに互いに実力を確かめるために街の外に出て、魔物を相手することになった。
「ピギュ!」
▶スライム出現!
冒険者としての初陣はスライム相手となった。スライムは全身がぷにぷにとした主に水辺に住む魔物だ、王国であればどこにでも湧く魔物で珍しいわけでもない。私も村で一度倒したことがある。
「じゃあまずはおれが!」
そう言って剣士さんは木剣を振るう。
▶剣士の攻撃、スライムにすこしのダメージ
私には剣術のことはわからないが、木剣が当たったスライムは怯んでいる。剣の型が悪いわけではなくただ単純に装備の問題だと感じた。
「では次に私が!」
「おう期待してるぞ!」
村を出てから久しく使っていなかった、私が唯一使える『魔術』を放つ。
「メテオ!」
その瞬間、空が光る。その光は徐々に大きくなっていく、それは次第に赤みを帯びてこちらに向かっていることが分かる、そしてその街の全員が確認するだろう。その光はただの星の光ではなくこちらに向かって落ちてくる隕石であることに。混乱の元になった隕石はただ術者の望むように従う。その隕石は主人が相対するスライムに直撃した。
▶魔術使いの「メテオ」、スライムは消し炭も残さなかった
私のメテオは無事スライムに直撃し、1メートル程のクレーターを残すのみとなった。そこでふと気づく、これではスライムの換金アイテムが手に入らないのではと。私が罪悪感を胸に剣士さんの方を見る。
私の前衛として前にいた剣士さんは古びた車輪のようにギギギッとこちらに振り向いた。
○△□
そこからは質問の嵐となった。途中、周辺の冒険者も質問に参加し根掘り葉掘り私のことを聞いてきた。そこで私は最近村から出てきたこと、メテオは私がレベル1になった時に使えるようになったこと、メテオは何回でも撃てるということを話した。
冒険者のみんなは私のことを、冒険者期待の新人、未来の賢者様、王国一の魔術師だと褒めてくれ、私もまんざらじゃなかった。
そう、ここまでは良かった。
一通りの質問が終わり、再びパーティの連携練習に戻った。そして大勢の冒険者が見守る中、メテオのある重要な欠点が判明した。
それは、メテオは非常に危ないのだ。
まず、前衛である剣士さんが攻撃する。これは魔物の注意を前衛職に促し、間違っても後衛職に魔物を接近させない為である。そして後衛職は前衛と魔物の攻防の隙を狙うように遠距離から攻撃を仕掛ける、魔物がひるんだ隙にまた前衛が攻撃を再開する。
実際の戦闘では魔物の数や種類によってこう上手くいくことは少ないらしいが、これが冒険者の基本的な作戦だ。では私達のパーティではどうなるのか?
① 剣士さんが攻撃を仕掛ける、
→
② 無事、スライムの注意が剣士さんに向く、
→
③ 私が隙を見つけ魔術を放つ。
→
④ メテオ
→
⑤ スライムは死ぬ、近くにいた剣士さんも死にかける。
さらっと私、はじめての殺人未遂であった。
「メテオ」は賢者様が魔王軍だとか、眠れる古竜などを倒す時に使う『魔術』 その賢者様の物語に前衛だとか作戦だとかは存在しない。メテオの被害は私も全く考えていなかったのだ。最初こそ笑って許してくれていた剣士さんも、2回、3回と死にかけるうちにひきつった顔に変わっていった。
そして個人的にもう一つ気にしたのが....、
ヒソヒソ(スライムにメテオはやりすぎじゃね....?)
ヒソヒソ(見ろよ....塵も残ってねえぞ....。)
ヒソヒソ(スライムさん可哀想....。)
周囲の冒険者の視線であった。
スライムは下級も下級、最底辺の魔物。メテオなんぞ当てなくても一般的な攻撃魔術、それこそ水属性が苦手な『火魔術』の「ファイヤボール」でも一発なのだ。そこに暴走した魔物の群れを止めるために使うようなメテオを放てば、塵も残らないのは当然だろう。
しかし、冒険者の目にはいささか過剰すぎる暴力に見えたようなのだ。
私からすればわざわざ火属性のファイヤボールで水属性のスライムの身体を燃やし尽くすのも残虐さではそう変わらないと思うが....。
しかし一度ついてしまった印象というのはなかなか変わることはない、スライムにメテオを放つ女と認識された私は冒険者の面々から次第に避けられるようになった。そして一緒にパーティを組んでいた剣士さんも
「きみのような才能あふれる天才と凡人の僕ではつりあわない!」
と、脱兎の如くパーティを離脱した。
正直、剣士さんは何度も殺しかけたためこの離脱には恨みはない。むしろ二人だけになってしまった時、殺しかけた後にどう話を切り出せば良いのかわからず気まずかったため、ほっとしたのも噓ではない。
それに魔術を使うたびに仲間を殺しかけていればパーティを組む以前の問題だろう。私がパーティを組むために必要なのは使い勝手のいい魔術、歴戦の賢者が使わないような魔術が必要だと結論を出した。
新しい魔術を覚える方法、それは、
レベリングである。
□■□
「ピギy」
▶スライム出現!
「メテオ」
▶魔術使いの「メテオ」、スライムは消し炭も残さなかった
私は毎日街の外に出て、一人でも倒せる魔物、スライムを見当たり次第にメテオを放った。
もちろん私もこのレベリングは効率が悪いと思っていた。しかし、安全性を第一に考えると確実に私一人で倒せるスライムから経験値を稼ぐしかないのだ。
二ヶ月ほど私は草原で換金用の薬草を摘みつつ、スライムを見かけるとメテオを放った。
....今に思えば、この日課を始めてから冒険者が目を逸らすようになった気がする。
そして私がこの街に来てから二か月が経った頃、私は冒険者組合に呼び出しを受けていた。もしかして
「平原での薬草の採取とスライムの討伐をただちにやめてください。さもなければ貴女を冒険者組合から追放します。」
つい、ほう....?
職員さんの話をよくよく聞けば全ての非は私にあった。薬草採取とスライム討伐、それら単体ではなんの問題もない冒険者に許可されている権利であった。しかしまたしても「メテオ」に問題があった。
「メテオ」を使ったある老婆は、メテオによって1キロメートルほどのクレーターを造り、残ったクレーターには川から水が流れ湖になったらしい。
私のメテオは威力を抑えているのでせいぜい1メートルほどだが、塵も積もれば山となる山とは真逆だが、組合の調査によると二か月の間にメテオのクレーターによって街の周辺は四割ほどが荒野になっているとのこと。そこに加えて薬草の採取なのだから何も言うまい。
話を聞いた私はすぐに頭を地面にこすりつけた。街の共有財産を破壊したという村八分当然の行いため、冒険者権利の剝奪、さらに払えない程の罰金まで覚悟していたが自覚ない犯罪ということで情状酌量をもらい薬草の採取とスライム討伐を辞めることで許してもらった。魔術師になるために冒険者を辞めるわけにいかなかったのでこの判断には感謝しかなかった。
....しかし、この後からなぜだか冒険者だけでなく街の人にも避けられるようになった気がする。
■■■
こうして私の冒険者活動は大きく制限されることになった。経験値が得られなくなるのは本当に痛いところだが、むしろこれは冒険者として新たなことに挑戦できると捉えるべきだろう。
新魔術が惜しいがこの街では宿住みの生活、生きていくにはお金を稼がないといけない。パーティを組まないで訪れるには少し危ないが初心者向けダンジョンである「メアリの森林」にやってきた。
村での生活には野草採取は日常であった。私の故郷は辺境にあり、周りを山や森に囲まれた自然豊かな土地柄だった。それすなわち麦畑が少ないことでもあり、すこしでも食卓におかずを足すため野草が並ぶことも多々あった。
なので村の子供たちは山や森を駆け回る傍らにそういった食べれる野草を摘む、そうすれば親に褒めらるし、何かやらかしたときに目こぼしをもらえる。それが子供たちなりの生活の知恵だった。
自慢ではないが、私は村で最も野草を見分けるのが上手かった。見分けの源は実家にあった薬草図鑑だ。元々お母さんがお父さんと結婚した時に持ってきたらしいが、お母さんが家を出てからはその存在を忘れてすっかり私の蔵書になった。
小さな頃はまだ文字が複雑すぎて読めなかったが丁寧な挿絵が描かれていたため、それを参考に私も山や森で実際の野草と比較した。水仙を食卓に出し、失敗することもあったがめげずに勉強を続け、薬草、魔術用野草、儀式用野草、野菜、etc....とりあえず図鑑の全ての野草は見分けるようになった。
しかし、それでも私は村ではいつも一人で野草を摘んでいた。いつも誰かを誘おうとすると、
「あ、アン....、え?野草摘みにいこう? ....ごめんなさい、実は今日、おばあちゃんが危篤で....。え?昨日はおじいちゃんが危篤だった? ....わ、私の家系は代々この時期になると瘴気に襲われるのよだからごめんなさい命だけは命だけは。」
と、いつも皆、用事があるか拒否されるのだ。どうしてなのだろう?村のまわりの草花はだいたい判別できるし、魔物だってだいたいはメテオで潰せるのに。
そういうわけで「メアリの森」には薬草採取にために来ていた。
シンシャの街からほど近い初心者向けダンジョン、それがメアリの森だ。行くにあたって事前に調べたところ、この森は最初こそ普通の森であったが、その昔、川を遡って王都から逃げてきた魔女がこの森に逃げ込んだことにより魔物が発生するようになり、その後、魔術師協会によりD級ダンジョンと認定された。ということらしい。
組合にあったその時の調査報告書によると、確認こそできなかったらしいがダンジョン特有の魔力源があるらしく、品質は期待できないが魔術用の野草も期待できるとのこと。実際来てみると森の外縁部でも誰も見向きもしないのか予想以上の豊作であった。
お!これは魔力ポーションに使われるマチョ草!採取の時は下にの大きな葉っぱから取っていくのがマナーだけど誰も取ってないなんて珍しい!
こっちは麻痺直しの材料に使われるダミドク草!葉に独特なニオイがあるのが特徴だけどお母さんはよくお茶にしていたなあ。
あ、ワラビ、一応とっとこ。
おお!こっちは伝説の魔虹草!かつて賢者さまの一人がエリクサーの材料に挙げてたけどいまだ薬用としての正確な記録が残ってない花が虹色の伝説の薬草!好奇心がそそられる!摘んでいこう!
あ、タラの芽、うーん、荷物がいっぱいでいらないなあ。
そんなこんなで薬草採取をしていた私だったが気づいたら森の奥深くに入ってしまったようだ。それがわかったのは、
「ブルルルㇷ!」
▶オーガボア出現!
目の前に魔物が現れてからだった。
あの魔物はオーガボア、通常の猪よりも体格が大きく、縄張り意識が非常に高く、どんな相手だろうが縄張りに入ったら攻撃を仕掛けることで有名な魔物だ。私の村の周囲にはいない魔物でこうやって相対するのは始めてだ。つまり私は非常に緊張していた。
「ブルウ!」
▶オーガボアの攻撃、オーガボアは突進を仕掛けた。
そうオーガボアが声を上げるとこちらに向って突進を仕掛けてきた。いつもであれば魔物を見つけた時点でメテオを放っていたが今回は突然遭遇したので、思考が間に合わなかった。慌てた私はつい口走ってしまった。
「メメっメテオ!メテオ、メテオ!」
「ブルぅ!?」
▶魔術使いの「メテオ」、オーガボアにはあたらなかった
▶魔術使いの「メテオ」、ヒット、オーガボアは息絶えた
▶魔術使いの「メテオ」、オーガボアは木っ端微塵だ
突進してくるオーガボアに向かって思わずメテオを三連続でメテオってしまった。メテオを連続で放つなんて....、なんて魔力のもったいないことを....。
しかしこれでこの「メアリの森」の魔物、少なくともオーガボアは倒せることがわかった。幸いにも魔力補給のマチョ草も自生していることだし。そうなればやることは一つだ。
「メテオ!」
「ゴブゥ!?」
▶ゴブリンにメテオ、ゴブリンは弾けた
「メテオ!」
「ピリャァ!?」
▶カンカン鳥にメテオ、カンカン鳥は焼き鳥になった
「メテオ!」
「グモぉ!?」
▶オーガグリズリーにメテオ、オーガグリズリーは潰れた
と、「メアリの森」に出現するだいたいの魔物にメテオってきたが未だにレベルが上がる気配がない。平原でのスライム狩りを合わせればかなりの経験値があるはずだが、それでも私の能力(ステータス)はウンともスンとも。
私のレベルの上げ方が間違っているのか? しかし経験値を得る以外にレベルを上げる方法がないのがこの世界の常識だ。
一応、自分のレベルに頼らない魔術もあるにはあるが、高レベルのステータスによる多量の魔力、それがなければ習得することが出来ない。そういうこともあって新魔術も渇望しているが、魔術師になるためにレベル上げが必要、それなのに....それなのに、
「一向にレベルが上がる気配がしないいいぃ!」
「ブルぅぅ!?!?」
「メテオ!!!!」
彼女がそう叫ぶとメアリの森の上空に隕石が現れた。隕石は少女の心を反映したように、いつもより大きく、速く、そして力強かった。通常の『メテオ』ですら魔物にとって致命傷だというのにその何倍もの隕石はゆっくりと魔物の頭上に落下した。その後にはただただ大きなクレーターが残るのみで、訪れた者を自分に落下してきたらと考えさせずにいられない。
▶オーガボアは、何も残さなかった!
ふう........、
ちょっと、感情的になりすぎたかも。
うん、最近は、根を詰めすぎたのかもしれない。
平原のスライム狩りからまだそれ程経っていないし疲れが溜まっている、のかもしれない。
ほら肩だって、うん....、たぶんこれは凝ってる。杖、いっぱい振ったし。
それにもう夕方だ、夜になれば当然視界が悪くなるし、獣系の魔物は狩りを行うため活気づく。そうなればいくら初級ダンジョンでも歩きなれた冒険者でなければ非常に危険だ。
そういうわけで、まだレベルが上がってないが帰路につくとする。
長い間使っている宿に着けば、やはり、疲れが溜まっていたのかすぐに眠気が来た。うん、いい夢が見れそうだ。
なお、次の日。また冒険者組合に呼び出しをいただいた。どうやらメテオはシンシャの街からでもバッチリ見えていたらしい。
私は頭をこすりつけた。
□□☆
うん、振り返ってみると、こころが抉られる!
実質、外での活動を禁止された私だがシンシャの街の中でも依頼はあり、清掃、届け物、ポーション納品をこなし、なんとか貯金が出来るぐらいには依頼をこなしている。
だけれどレベルが上がり、新しい魔術を覚えないことには私の冒険者活動はままならない。
そこで日々の依頼だ。勘違いする人も多いが経験値というのは魔物を倒すこと以外でも手に入る、とある賢者は借金返済のためポーションを作り続けてた時にレベルが上がったという話がある。魔物を倒すのが経験値を稼ぐ最効率なのだが、それが出来ない以上、藁にもすがる思いでポーションを納品している。
他にも何がきっかけになるか分からないので様々な依頼を受けているが....。
今のところレベルが上がる気配はない。それどころか清掃作業では街の人に怯えられ。
配達作業では私が来た途端に家から出てこないってことがある。
ポーション作りでも魔虹草を使ったエリクサー作成に進展はみられない。唯一の発見は球根を油で揚げると美味しいぐらいだ。
ともかく、ここに二ヶ月でいやほど街の人にやべー奴と思われてるか知ったのだった。
これをどうして相談したものかと考えていると外がやけに静かだと気づいた。
いつもなら昼前でも喧騒が聞こえてくるのにと思って、窓の外を見ても誰もいない。
机を離れ、宿の外に出ても誰もいない。それどころかいつも受付にいる目の死んだ女将すらいない。
うーん?別世界に紛れ込んだとか?非現実な妄想で現実逃避しつつ、高い所から確認すればいいと思いつく、もしかしたらシンシャの街特有の祭りでもやっているのかもと、石材の外壁を階段で上がっていく。
街を見回せる高さまで上がったとき、それは楽観的だったと気づく。
街の中には誰もいなかった。しかし街の外、残った草原を見ればそれを覆い尽くすほどの軍勢がいた。一人一人をよく見れば赤い肌に二本の角、青い肌に蝙蝠のような翼、どの兵士も色とりどりの薄暗い肌色だ。空を見ればワイバーンだろうか?10体ほどが鷹のように旋回している。
薄暗い肌の魔族にそれに従う魔物、本や御伽話で聞く魔王軍そのものだった。
☆☆☆
しまった、逃げ遅れた。
そう気づくのに時間はいらなかった。この立派な城壁は、石造りの街は、魔王軍を前に住民から見捨てられたのだと。
そして私も見捨てられた。
....心当たりはあるけれどおお!!あるんだけどおおお!!
せめて、「魔王軍、来るらしいよ?」ぐらい誰か声かけてくれても。あ”ー!私はやべー奴だから声かけられないよねえ!そうだよねー!?
っにしても逃げ足が早すぎる!!事前に魔族と予行練習でもしてたの!?いやそんなことはないんだろうけど。
流石、魔族領との最前線、駄目だとわかった時の行動が早い。誰一人として戦わないのだ。私も今すぐ逃げよう。
しかし、すぐに逃げ出さず、外壁の上でしばらく魔王軍を眺めていたためか彼方にも視認されていたようだ。魔族の何人かがこちらを見つめていて、中には指をさして笑っている魔族もいる。
まずいまずいと。逃げるべきだと心の警鐘が鳴るが、たとえ逃げ出したとしても私の脚では人類より高性能な魔族にすぐ追いつかれてしまうだろう。
じゃあ隠れるか?いや、あの人数に見つからずに隠れ続けるのは現実的ではない。
追い詰められた私の理性は戦うことを考える。
幸いにも私には「メテオ」がある。古の賢者様の伝説を創り、私が唯一使うことが出来るこの『魔術』なら人類より強靭な魔族にも通用するだろう。しかし通常の威力では目の前の魔王軍を壊滅させることはできず、残った魔族や魔物の反撃を受けるだろう。そうなったら近接戦の出来ない私は死ぬ。たぶんムゴく死ぬ。
だったら逃げながら戦う。最初に数を減らした後に街に逃げ込み、メテオで追っ手を墜としながら戦う。これならば近接戦に持ち込まれることなく戦える、街の中は組合の依頼で駆け回ったので地の利はこっちにある。メテオで街が壊れるだろうが今、街に誰もいない。魔族を倒せるなら許容できるはずだ、うん。
しかし新たな問題に行き着いてしまった、魔力量だ。
さすがに追ってくる魔王軍、一人一人にメテオっていれば、何発でも撃てる私でも魔力が尽きてしまう。「メアリの森」でのレベリングも無茶した方だったのに、魔王軍全員にメテオを撃つことは出来ない。
どうしようもない詰みだけが私の目の前に横たわっていた。
・・・
突然、お母さんは私とお父様を置いて、村を出ていった。
お母さんは村でただ一人の魔術師で、お父様が耕す畑の隣に小さな庭を造って、そこで摘んだ薬草からよく回復ポーションを作っては近所に配っていた。村では司祭様と並ぶ知恵者だと言われ、頼りにされていた。私はそんなお母さんを自慢に思っていた。
そんなお母さんが出て行ったのは私が12歳になった誕生日、その次の日の朝だった。
私はその時をよく覚えていない。誕生日だからとても幸せで、夜遅くまではしゃぎ過ぎたのだ。ベットで寝ぼけている私に「じゃあね、アン」と言ったのが私の聞いたお母さんの最後の言葉だった。
お父様は、「自由な人だったから狭いこの村とは合わなかったんだ」といつも笑って話を濁す。
お母さんの庭には小さなアイアンテーブルがあって、そこでお母さんに森で見つけた物を話すのが好きだった。淹れてくれたダミドクのハーブティーの独特な匂いが好きだった。そしてお母さんが話してくれる魔術師のお話がなによりも好きだった。
私の夢は、魔術師になること。
だけどその気持ちと同じくらい。わたしはお母さんにもう一度会いたい。
お母さんに会って、大人なった自分を見てほしい。
魔術使いとして頑張っている私を、褒めてほしい。
あの庭でまたお母さんのお話を聞ききたい。
だから、こんなところで
「あきらめちゃダメだ」
そう口からこぼれた。
□□□
私には奥の手がある。
誕生日のあの日、私はお母さんと約束した。それは「メテオ」を本当の呪文で唱えないこと。
『アン、その魔術はあなたにとって身を守る最高の盾にも槍にもなるわ』
『でも、強すぎる槍は振り回すと周りの人も傷つけてしまう』
『だから約束して、「メテオ」を使う時は短縮詠唱で使うこと』
『そしたら、「メテオ」の威力は少し、うん、ちょっとは下がるはずだから』
私はこの約束を破る、
具体的に言えば私の「メテオ」に魔力を全部乗っけて、詠唱全開で魔王軍にぶつける、下手すればしばらくの間、魔術が使えなくなるがもうこれしかない。
お母さんとの最後にした約束を破ることになってしまうが、私の命、そして私の夢よりも守るべきではないだろう。
私はゆっくりと思い出しながら本当の呪文を唱えた。
□□□
「群星を除く星屑の」
エイブラ歴436年、その年の秋、大陸の国々に衝撃が走った。
「小さな願いを聞き給え」
予期せぬ魔王軍の襲来、そしてシンシャの民の逃亡ともいえる避難、
「我らは破壊を望む者」
S級冒険者の不在や市民の士気の低さ、それらの原因によって長年、王国、最硬の城市と謳われていたシンシャの街は陥落しただろう、と。
それすなわち人間の世界が破られたのと同義、報告を受けた国王を含めた王国官僚たちは伝説に語られる魔人大戦が再び起こるのだと顔を青ざめた。
....が、
「力を願いに!」
人々は見た、西の空、シンシャの街の方に集まる星々を。
太陽が出ているのに見えるその星々は赤黒く、我々の目にも見えるぐらいに大きく、
一つの塊に徐々に姿を変えていき
「
衝撃、聞いたことがないような衝撃。その音をこの都の全員が聞いたのだ。
市民はこの世の終わりだと混乱し、
貴族はあれは何だと従者に問いつめ、
魔術師はなにかを理解したように呆然と西を見ている。
誰もが状況を理解していないなか、私は王城の窓から確かに見ていた。巨大な塊になったそれを、「メテオ」を。術者によって呼ばれた隕石は敵対者、後の調査によると魔王軍に直撃した。
その隕石の速さに翼のある者は叩き落とされ、力のある者は隕石の質量になすすべもなく潰されたであろう。その様子を克明に語る者はおらず、ただ街に残されたかつて平原だったクレーターが唯一の語り部となった。
こうして魔王軍の危機は去った。しかし、この衝撃が彼女の幕開けの合図に過ぎないと私は回顧する。
――「魔女の空」より抜粋
□□□
.
..
...
▶魔族を押しつぶした
▶魔族を押しつぶした
▶魔族を押しつぶした
▶魔族を押しつぶした
▶魔族を押しつぶした
▶経験値が次の許可値を達成したことを確認
▶次の「魔術」を解放しました
▶魔族を押しつぶした
....はっ!
気絶していた!
あっっぶない! もし魔族を一人でも撃ち漏らしていれば気絶していた間に殺されていただろう。
しかし、反撃を受けなかったということは?そう思い立ち、魔王軍がいた平原を見ると
「うわぁ....。」
思わず声に出たが、辛うじて残っていた平原が全てなくなっていて、代わりに見たことのないようなクレーターが出来上がっていた。
ここまで跡形もないなら、術者の責任としてきちんと見届けるべきだったと頭をよぎったが、微かに香る甘い匂いが現実を見せた。
そういえば平原を全部荒野にしてしまった。もしかしてしなくてもこれは冒険者追放案件....?
いろんな事をぐるぐると頭の中で回していると、ふと体の中に新しい魔力の動きを感じた。もしやと思い試しに魔力を込めると、私の周りに透明な膜が現れた。
これって....、新しい私の魔術? そう気づくと体のそこから喜びが駆け上ってきた。
「やっった!! レベル2になった!!!!」
街に来てから一番嬉しい!!!!!!!!
□□★
これは、私、クリナ・アンが、
魔王から、
国王陛下から、
賢者様方から、
世界中から恐れられ、
畏怖を込めて、
「
メテオのやべー奴 設定集
魔術使い
魔術師ではない『魔術』を使う者の総称。
通常、魔術を公的に扱うには国から認められた魔術師になるが普通だが。魔術師試験に受かる程の実力がない者、脛に傷がある者など、なんらかの事情があり魔術師にならず、魔術を専門に扱う者を魔術使いと呼ぶ。地方ではありがたられることもあるが、中央からは犯罪者の温床と見なされる。
スライム
魔力と水場があればどこでも発生する下級魔物。
魔力が満ちれば強力になるが、人間の生活圏では素手で潰せるほど弱い、人類とは数百年の付き合いであり、様々な活用がされてきた。
オーガボア
ダンジョンの魔力によって凶暴になった猪。
通常の猪よりも縄張り意識が高く、自分より格上に挑んでは惨殺される。あまり縄張りを離れず、基本的に動かないので肉が美味しい。
カンカン鳥
ダンジョンで出現するハゲワシのような魔物。
くちばしが金属のように固く、この魔物が鎧をつついた音から面白がった冒険者に名付けられた。近年は鎧のない後衛職を優先して狙う。
ゴブリン
人に近いから利用したくない。まずい。侮ると強い。くさい。
オーガグリズリー
ダンジョンの魔力によって凶暴になったグリズリー。
オーガボアと同じく、自分の縄張りに入った者には容赦しない。元のグリズリーが強力なこともあって縄張りを拡大する傾向にある。地方では仕留めたら英雄になれる。手が美味しい。
マチョ草
魔力が濃い地域に生える薬草。
主にダンジョンに生える一年草であり魔力ポーションの原材料になるため需要が尽きない。そうして冒険者に集められたマチョ草は王都の魔術師のもとに集められる。
ダミドク草
特殊な環境にのみ生える薬草。
西方から持ちこまれた外来種であり、物好きがポーションに使う。
ワラビ
灰汁抜きはしっかり。
魔虹草
夏に虹色に輝く花を咲かせる伝説の薬草、名だたる賢人がこの薬草を使ったポーションの作成に挑んできたがまだ誰も明確なレシピを残していないという伝説を持つ。ユリの仲間。
タラの芽
大人が喜ぶ。
借金返済のためポーションを作り続けてた賢者様
レベルアップで「テラフレイム」を覚えたので、拘束されていた建物を破壊して彼方に消えた。