偽りだらけの聖杯戦争に現れる正真正銘のイレギュラー。
彼の出現が壊れた歯車を加速させる。
世界を救った最後のマスターが見る未来は破滅か希望か。


1 / 1
Fate/extra Fake

アメリカ合衆国、スノーフィールド。

人口約82万人の小さな街。

だが80年という短い期間で成長したアメリカンドリームを具現化した輝かしい街でもある。

表向きは。

奇跡を再現するために作られた器に過ぎず、黒幕にとっては袖についた埃程度の存在。

そして願いは正道から意図して外れていく。

完成したなら正しく()()()となりうる存在。

それを彼らが見逃すわけが無い。

あまたの例外に立ち向かい肯定してきた星詠みが。

 

 

 

 

 

 

この街にはいくつもの情報網が敷かれている。

現代と魔術。

2面を組み合わせて取れる完璧な網。

大抵の魔術師の行動は筒抜け。

捕まらないのは情報の知りたい聖杯戦争参加者ぐらいだろう。

スノーフィールド警察署長であるオーランド・リーヴの元に1つの情報が報告された。

 

「新たなマスターが現れたのか」

 

「はい。令呪の確認も取れたので確実かと。しかし街へ入った履歴が無いのです」

 

渡された資料には1人の青年が写されていた。

黒髪に青色の瞳、顔と肌の雰囲気から東洋系だと感じ取れる。

 

「偽装パスポートや偽装魔術の線はないのか」

 

女性警官は静かに首を横に振った。

だがマスターと認定された以上、経歴など些細なこと。

問題は何を呼び出したか。

横には短く整えられたピンク髪の少女がいた。

 

「彼女がサーヴァントか」

 

「魔力を微妙に感知しましたがサーヴァントかどうかは判断出来てません」

 

あの神父が連れてきた付き人の可能性も捨てきれない。

第四次聖杯戦争では言峰綺礼神父がアサシンのマスターとして参加していた事例がある。

 

「彼も警戒しておけ。ただ無闇に近寄るな」

 

あまり期待はしていないがしないよりかはマシのレベル。

だが署長はこの判断を少し悔やむ事になる。

彼の異質さが己の計画すら壊すのだから。

 

 

 

森の主となったエルキドゥの前に1人の少女が立っていた。

ただでさえ異常な出で立ちなのに頭に生えた大きな2つの角が存在の異質さを増していた。

 

「君は…会った事がある…?」

 

「やはり覚えてないの。母はとても悲しい…」

 

悲しそうに下を俯く。

 

「聖杯戦争に参加しているのかい?」

 

「違う。私たちは止めに来た」

 

「私たち?」

 

「この聖杯戦争は間違っている。もし成就したら歴史そのものが変わってしまう。だからマスターと共にこの街に来たの」

 

聖杯から与えられたルールが意味を無してない。

それに今はマスターの保護が優先であるから大きな動きはしない。

 

「申し訳ないけど君たちの力にはなれない。その代わり背後から刺すことはしないから安心して」

 

「分かった。私はマスターの所に帰る」

 

ザワザワと森全体がざわめき出す。

枯れ枝や草の1つまでエルキドゥの手足のようになっていて人が迷い込むことはあっても最深部までたどり着け無い。

それを容易く乗り越えエルキドゥの霊気そのものを揺らしている。

ニコリと少女らしい笑みを浮かべ夜空に飛んで行った。

一筋の光となった後もずっとみていた。

 

 

アメリカは多種人種の国。

肌の色、言葉、文化が混ざり作られた世界。

通りを歩くだけでも新鮮な感覚が更新される。

 

「これがアメリカかぁ。街が輝いて見えるよ」

 

「はい。とても美しいです」

 

日本人の少年とピンク髪の少女は大通りを歩いていた。

当然観光目的では無い…いや、少しは浮かれてるかもしれないが。

 

『こら、2人とも観光気分で居られると困るんだよ。そこがどれだけヤバい所かブリーフィングで聞いてるでしょ?』

 

通信から少女の声が聞こえた。

 

「分かっています。ちゃんと霊脈の調査もしていますので」

 

事の始まりは数時間前。

人理保証機関ノウム・カルデアに緊張が走った。

ペーパームーンがアメリカ大陸に異常を検知した。

それは魔術王の仕組んだ特異点、クリプターが作り上げた異聞帯とは異なる歪み。

トリスメギストス2も『早急な対応をしなければ人理に固定され咎を払ったとしても逸脱する』と判断を下した。

更に一部サーヴァントがカルデアより消失、その中にはギルガメッシュ王やヘラクレスも混ざっていた。

事態を重く見たゴルドルフ新所長によりオーディール・コールを一時凍結しアメリカの地へレイシフトを決行。

その際に、同行したサーヴァントと離れ離れになってしまった。

パスは繋がっているため無事なのは感覚で把握している。

 

『それにしても同行可能なのがエクストラクラスだけとはね。ただでさえ冤罪を晴らそうとしてる最中なのに』

 

カルデアの者より与えられた試練。

本来乱用してはならないルーラー、アヴェンジャー、アルターエゴ。

この3クラスの歪みを払い除けるのが目標。

今回の特異点はその目標に真っ向から否定する形になっている。

 

「これまでの特異点では誰かの願いが昇華し現れました。このスノーフィールドも同じだと思いますが」

 

『でも異質過ぎるんだよ。白紙化前の地図を見ても街そのものはあった。けど、発展の仕方が異常なんだ。まるで何かに合わせているかのようにね』

 

観測して気づいたのは街の規模。

2人が送ってきた映像を元に街の大きさを計算すると本来よりも数倍大きかった。

 

『何かあったら連絡してね。と言っても面白い所で繋がらなくなるんだろうけど』

 

「何とか維持には努めます。では」

 

通信を終え再び街に目を向ける。

 

「こんな街で聖杯戦争が…」

 

「状況が動くまで見ていましょう。場合によっては既に動き出して…」

 

突然鳴り響いた爆音が街を通り抜ける。

反射的に耳を塞ぎ頭を丸める。

 

「無事ですかマスター!!」

 

「大丈夫!今のは…!」

 

当たりを見回し音の発生源を探る。

 

「あれを!!」

 

少女が指さす先にあったのは煙をあげる豪華なホテル。

そこから一筋の黄金の光が飛び出した。

 

『このパターンは…間違いない!ギルガメッシュ王だ!!』

 

「行こう!!」

 

「はい!!」

 

2人は人の波を掻き分け光の元へ向かう。

それを勇敢と言うか無謀と言うかは別の話。

 

 

 

 

暖かな陽の光が差す平凡な庭に1人の少女が駆け回っていた。

周りには犬や猫がおり、鳥のさえずりも聞こえる。

まさに絵本の世界と表現出来る。

木の影にそびえる影さえなければ。

 

「どうも可愛らしい少女さん」

 

そんな世界に第三者の優しい声が聞こえる。

どこから入ったのか分からないが男性が静かに立っていた。

水色と白の柔らかな服に身を包み黄金に輝く小さな冠を被っていた。

そして足元まで広がるマントについていたのは腰あたりまで伸びる黄色の蝶の羽。

 

「わぁ〜!妖精さんみたい!!」

 

「よく分かったね。そう!僕は皆に好かれる妖精さ!!」

 

両手を広げクルクルと回る。

軽やかに舞う姿はまさに妖精そのもの。

 

「その羽根って本物なの!?」

 

「もちろんさ!でも触っちゃダメだよ。触ったら魔法の粉が取れて飛べなくなっちゃうからね」

 

「分かったよ!だったら魔法を見せて欲しいな!!」

 

「うーん…魔法と呼べるか分からないけどこれならどうだい?」

 

膝をつき握った拳を広げるとそこには白い蛾がいた。

 

「凄い凄い!!」

 

少女は輝く瞳を蛾に向けながら拍手を送った。

背後まで迫っていた黒い影は再び木に戻る。

名も知らない第三者が対象に近づけば誰だって警戒する。

しかし、男の行動に敵意を感じず少女も楽しそうにしている。

だが2人はまだ知らない、いや知る由もなかった。

彼がこの世で最低の大嘘つきだという事を。

 

 

 

白髪の男はビルの上から街を見下ろす。

声を上げ逃げ惑う人々が見える。

 

「何処までも愚かだ。危険が見えていたのに見えていないフリをして自ら穴に落ちるとは」

 

ゴミを見るような目で群衆を睨んでいたが目を閉じる。

 

「それにしても愛しの彼女はどこへ行ったんだ。早く顔を見せて欲しい!そして私の前で歪み嘆き跪いてくれ!!」

 

カッと目を開き空に輝く白い月を仰ぐ。

先程とは変わり酔ったような笑みを浮かべていた。

 

「何か匂うと思ったらとんだ変態だったね」

 

「誰だお前。私の賛美を無断で聞くとは」

 

首だけを動かし声の主の方を向く。

月の光に照らされたヘリポートが白く輝く。

短い金髪に赤い目、服装は動きやすくショートスカートになっていたが腰周りの布が足元まで垂れていた。

 

「へぇ、こっちでもいるんだ。私がいた所より少し弱く見えるけど」

 

ニヤリと笑いながら少女は挑発する。

 

「私の事を知ってるな。だが、知ってて売るとは身の程知らずにも程がある」

 

「それ本気で言ってる?私って威厳無いのかな…」

 

困惑したように腕を組み唸っていた。

男はその隙を逃さず瞬時に近づき腕を胸元へ突き出す。

だが心臓を抉るために伸ばされた腕は既で止まる。

緑に光るツタが腕を多い止めていた。

そして捻るように腕が容易に引きちぎれていく。

 

「ほう?」

 

いつ巻かれたのか気づかなかった。

それだけ早いのか元から仕掛けていたのか。

 

「手荒い事はしたくないけど状況が状況だもんね。姫として真っ向から行くわ!」

 

月はそんな2人を静かに照らす。

この街で起こり始めている事態はほんの導入に過ぎない。

神すらも巻き込んだ詐欺ゲーム。

その先に見えるのはトゥルーかバットか。

幕は焼け落ち上がったばかりなのだから。




信じられないと思うが聞いてくれ…
ゆゆゆの日常パートを書いていたらふと『たまには戦闘描写もいいなぁ…』って思ってたら手元にFake全巻と読み切り小説があったんだ!!
訳が分からないが自分でもさっぱり分からない!

というのはさておき、結論言えばアニメ見てどハマりしました。
そこでとち狂った聖杯戦争にカルデアとエクストラクラス組を放り込んだらどうなるかというストーリー。
短編なので有り得そうな出会いを適当にピックアップして書きました。
成田先生のような書き方には遠く及びませんが久しぶりの三者目線に挑戦しました。
もし好評だったら連載も…
まぁ二番煎じっぽくなりますけどね。

ゆゆゆの方はちゃんと書いてるのでご安心を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。