廃虚の乱立する廃都会、灰橋道。
そんな灰橋道にだって、七夕の季節はやってくる。

これは、廃都会に住まうとある少女たちの、日常の1ページ。
色々と欠損した彼女達は、今日も元気に都会を駆ける。


※本作はRmwool氏原作のフリーゲーム「PLANTUM」の二次創作です。
結構キャラ崩壊してるので注意。

◇本家様
https://plicy.net/GamePlay/157935

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PLANTUM プロタゴニストの七夕

 

 

 その街は、異様な雰囲気に包まれていた。

 無駄にビカビカとネオンを光らせる中心街。冷たく寂れた廃アーケイド。迷路のように入り組んだ下町。巨大なフォークの突き刺さった廃マンション。年中猛暑に包まれたビーチ。

 さまざまな廃墟が乱立したその様は、さながら異世界のようだった。

 ここは廃墟の乱立する廃都会、廃橋道(はいきょうどう)

 この街では今日も、個性豊かな少女達が、さしたる目的を持たずにぶらぶらしながら、日々を過ごしている。

 

 

 

 

 

 そんな廃都会の一角、放棄された一軒家を改装したと思わしきとある建物内。

 

「みんな、七夕祭りしようよ! 」

 

 義足の少女・紺焼戈未海(こんしょうかみう)が、思い立ったかのように突然そんなことを提案してきた。

 チーム・プロタゴニスト。

 一人を除いて全員が身体的なハンデを有しているものの、健気に、そして前向きに日々を過ごしている。

 

「七夕かぁ…………あーそうか、もう時期そんな季節かー」

 

 みうの言葉にいち早く反応したのは、右目を眼帯で覆ったセーラー服の少女・水疲目芽揺(みずひめめゆり)

 お人好しで社交的な性格から、普段から割と色んな女の子から絡まれているぞ。

 

「この街、地区によって季節が違うから、外の季節がどんなものかわかんなくなっちゃうんだよね。ハート地区は年中冬だし」

「そうそう。季節の行事とは無縁だものねー」

「にゃあ」

 

 めゆりの言葉に乗っかったのは、白い小柄な少女・夜七子白海(やななししろみ)。メンバー最年少ということで、色々な意味で可愛がられているぞ。

 愛猫(かぞく)のロジコと戯れあいながら、しろみは考える。

 

「でもこの街に笹なんてあったかしら……」

「竹材ならあるよ。それとも桜の木(レイクチェリー)使う? 」

「花見と七夕混ぜるな。訳わからなくなるから」

「ふっふっふっふ…………! 」

 

 と、ここでみうが、おもむろに不敵な笑みを浮かべる。

 

「おいおい皆さんや、ここは灰橋道だよ? ないなら街を探索するまでさっ。今までだってそうしてきたじゃん」

「そ、そうか……」

「街中駆け回って探す…………ね。その方がらしいかも。ヤマイはどうする? 」

「…………っ! 」

 

 めゆりにそう訊かれた少女・痕乃喜夜眛(こんのぎやまい)は、嬉しそうにこくこくと頷く。

 生まれつき声を出せないヤマイだが、その分表情は人一倍豊かだ。

 にこにこと笑顔を浮かべながら身支度をするヤマイの様子は、どこかほっこりするものがある。

 と、そこに、やけに呑気な声と共に、大きなヘッドホンをつけた桃色の髪の少女が、ロフトから顔をのぞかせる。

 

「あれ、みんなどっかに出かけるの? 」

「あ、ひよりちゃん。あーそうだ、えーっと…………」

 

 彼女の名は空風邪姫依(からかぜひより)

 ひよりは訳あって耳が聞こえない。故に彼女とコミュニケーションをとるときはジェスチャーが必須なのだ。

 

「うんわかった! さっそく行こう! 」

 

 めゆりのジェスチャーのおかげで話を理解できたひよりは、無邪気な笑みを浮かべながら、颯爽と出発しようとする。

 

「ひより、弁当忘れてるから! 」

「〜っ! 」

 

 弁当すら持たずに飛び出して行ったひよりを追いかけ、ヤマイとめゆりも飛び出してゆく。

 みうも3人に続こうとするが、重い義足をつけているが故に早く歩けない。

 

「ちょっと待ってよ……みんな早いって」

「はいごはん。ロジコは留守番お願いね」

「にゃあ」

 

 最後に残ったしろみは、猫缶の封を切ってロジコに手渡してから、みうと共に拠点を出て行く。

 今日もまた、素材を求めて街を駆けずり回る一日が幕を開けようとしていた。

 

 


 

 

 クローバー地区・灰橋道森林

 

 

「とゆーわけでやって来ましたっ、灰橋道森林っ! 」

「…………誰に向かって言ってるのかしら」

 

 彼女達がやって来たのは、灰橋道の北東に広がる大森林。

 木々が生い茂り、一日中薄暗くじめじめとした森の中を、5人は迷いなく進んでゆく。

 ちなみに無断で入ったり不法投棄したら街のお偉いさんに射殺されるから、良い子は真似しちゃダメだぞ。

 

「相変わらず辺鄙なところよね……あ、きのこ生えてる。採っちゃえ」

「…………♪ (きのこピッツァが食べたいな)」

「おーう、ヤマイちゃんが目を輝かせてるぅ」

 

 所々に生えてるキノコを収穫しながら進んでいた一行は、やがて広い沼地に着いた。

 沼の上には所々崩落した桟橋がかかっている上、沼の底は見えない。落ちたら2度と這い上がれなくなりそうだ。

 

「ひえ〜っ、いつ見ても気味悪いなぁ」

「…………っ! (幅跳びならまかせろ) 」

 

 沼を覗きながら震え上がるみう。

 そこにヤマイが、まるでみうを安心させるかの様に、サムズアップをしながら肩に手を置いてくる。

 

「よし、頼むわよヤマイ! 貴女の身体能力なら、こんな沼地なんかひとっ飛びよ! 」

「……ッ! 」

 

 しろみの声援を受けながら、ヤマイが走り出す。

 目指すは崩れた桟橋の向こう側、鬱蒼と生い茂った木々に囲まれた小さな小屋。

 桟橋を軋ませながら走るヤマイ。

 そしの足が、勢いよく飛び上が———

 

 

 ———る、その直前。

 バキバキバキバキッ‼︎ と。

 激しい音を立てて、ヤマイの足元の桟橋が崩れ落ちた。

 

「〜〜〜〜〜〜っ‼︎⁉︎ 」

「ぬぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎⁉︎ 」

「ヤマイちゃーんっ‼︎‼︎ 」

 

 悲鳴をあげる皆の前で、見るからにヤバそうな色をした底なし沼に沈んでゆくヤマイ。

 

「どどどどうしよう⁉︎ このままじゃヤマイちゃん死んじゃうよぉッ⁉︎ 」

「慌てるな……みう、今こそその義足の真価を発揮する時だ」

「…………なんかいやな予感がする」

 

 妙に自信ありげなめゆりの様子に、一抹の不安を感じるみう。

 が、彼女に拒否権はなかった。

 みうが何か言うよりも早く、めゆりがみうのスカートを捲りあげ、義足の付け根部分のスイッチを押した。

 すると、なんだがガションガシャンッ‼︎ と煩い音を出しながら、みうの義足が凄まじい勢いで伸び出した。

 それは底なし沼に勢いよく突っ込んでいき、沈みつつあったヤマイを引き上げる。

 

「っ…………(死ぬかと思った)」

「わぁーっ、凄い! みうちゃんかっこいい! 」

「…………なにこれ、なんか知らないうちにわたしの義足が魔改造されてるんだけど⁉︎ めちゃくちゃ怖い! 」

 

 怖がるみうの意に反し、長いマジックアームに変形した義足は、ヤマイを沼から引き上げ、その辺の桟橋に寝転がされる。

 ともあれ、ヤマイは助かった。

 すっかり疲弊した一行は、桟橋の上に腰を下ろす。

 そこに、新たな脅威が現れる。

 

「魔女の森で騒がしくしている悪い子はだーれだ? 」

「ッ‼︎ この声は確かッ……‼︎ 」

 

 ほっと一息つこうとしたその直後。

 ザバァッ‼︎‼︎ と大きな水飛沫をたてながら、沼の底からとんがり帽子を被った赤髪の魔女っ子が現れる。

 彼女の名はエリザベッタ。灰橋道に住まう魔女のひとりであり、爆裂魔法を得意とする危険人物だ。

 

「なんで沼の底からでてきたのかな。汚くないのかな? 」

「いやー、なんかやたらと騒いでいる子がいるなぁと思ったらキミたちかぁ〜」

 

 沼の水面を歩きながら、のんびりとした調子で語りかけてくるエリザベッタ。

 ———次の瞬間、彼女の雰囲気がガラリと変わる。

 

「キミたちさ、桟橋ぶっ壊したでしょ? 」

「え⁉︎ いや、でもほら、この桟橋すっごいボロボロだったし……むしろこうなる可能性はいくらでもあったよね? 」

「はい言い訳は聞かない。ふぇへへっ、とりあえずオラクルナイフに代わって、桟橋ぶっ壊した報いは受けてもらわなきゃね〜」

「え」

 

 瞬間、めゆり達に悪寒が走る。

 一瞬で辺りが異様な雰囲気に包まれる中、独特な笑い声を浮かべながら、エリザベッタは水面を歩いてくる。

 ———両手に自作の爆裂魔法(ダイナマイト)を携えながら。

 

「ふぇへへへへへへへへ〜、恨みっこなしだからね〜」

「まって爆裂魔法こんなとこでぶっp

 

 

 

 瞬間。

 沼地のど真ん中に馬鹿でかい水飛沫が飛んだ。

 

 


 

 

 スペード地区・すなの道

 

 

 その後、命からがら森を抜け出しためゆり達。

 

「や、やばかった…………死ぬかと思った」

「というか一瞬目の前暗くなったよ。間違いなく一回GAME OVER(死ん)だよ」

「なんであの子、あんなに怒っていたのかな。誰か知ってる? 」

 

 耳が聞こえないが故に、先程の流れが理解できていないひよりがしきりに聞いてくるが、めゆりやしろみには答えるだけの気力がなかった。

 一応ヤマイが皆を引きずる形でなんとかその場を逃げおおせたが、あれではとうぶんあの森には顔を出せそうにないだろう。魔女を怒らせるとヤバいのです。

 

「……それにしても、随分遠くまで走って来たよねえ。ヤマイちゃんお疲れ様」

「………………( ´△`)」

「疲労困憊って顔してるわね」

 

 そんな一行が続いてやってきたのは、街の南東・スペード地区に広がるビーチ。

 プラズマの影響で気候がバグっているため、スペード地区は一年中真夏日なのだ。めちゃくちゃ暑い。

 

「で、ひよりとめゆりはなんでちゃっかり水着スタイルになってんのかなぁ」

「え、だって暑いし」

「だって暑いもん」

 

 ビーチに行くと決めた途端、めゆりとひよりは速攻でお着替えタイムに突入し、めゆりはビキニに、ひよりはちょっとぶかぶかな白いワンピースに着替えてきた。

 いやほんと羨ましいにも程がある。

 

「でもさ、なんでビーチに来たの? こんなところに笹なんかあるわけないと思うんだけど」

「もしかしたら笹が流れついてるかもしれないじゃん」

「無えよ。暑さでイカれたのか? 」

「どったのみうちゃん、お腹痛いの? 」

 

 めゆりの突拍子のない意見を、キツイ言葉で否定するみう。

 彼女も彼女で、暑さのせいで冷静さを書いている模様。見かねたひよりが的外れな心配をかけてくるが、それはみうには届かない。

 一方、ヤマイとしろみは波止場に腰を下ろしながら、目の前に広がる廃都会の海を眺めていた。

 

「…………(素潜りで魚でも獲ってこようか? と提案するかの様な目)」

「ヤマイ、目だけで言わんとしていることはわかる…………多分だけどそれはバカンスじゃなくてサバイバルだからね? 」

「っ‼︎ 」

「めちゃくちゃショック受けてる……」

 

 そんな感じにビーチでぐだぐだしていた一行。

 そこに、

 

「おーおーおー、なんかビキニが眩しい子がいるなあと思ったら、めゆりちゃんじゃありませんかぁっ! 」

「げっ」

 

 その声を聞いた途端、露骨に嫌そうな顔をするめゆり。

 振り向くと、どこかめゆりに似た顔立ちをした金髪の女性がいた。

 

「な、ナツメさん? どうしてここに……? 」

「おねえちゃん…………? ホーンデッドやホローに引き籠ってる筈じゃ……⁈ 」

「何というか、“馬鹿なっ⁉︎ アイツ死んだ筈じゃ⁉︎ ” みたいなノリで驚かれるのは心外だなぁ……お姉ちゃん悲しいぞ」

 

 彼女の名は水疲目(みずひめ)ナツメ。

 めゆりの姉にして、プラズマ研究の第一人者。

 めゆりをしょっちゅう弄り倒しているが為に、彼女からはちょっぴり苦手意識を持たれているゾ。

 

「……(ナツメさんはどうしてここに? と聞きたそうにしている)」

「んー、なんとなくめゆりちゃんを弄りたい気分になっててさあ。拠点留守だったからここまで来たんだよ」

「なんでピンポイントでここに辿り着けるの……」

「お姉ちゃんだからね」

「暴論の極み! 」

 

 完全に返答が変態のソレである。

 悪寒に包まれためゆりは、凄まじい速さでナツメから距離を取る。

 そこに、 

 

「あれーっ、皆さんお揃いでバカンスですか? 折角ですし混ぜてくださいよ」

 

 新たに、片眼鏡をつけた少女がやって来た。

 彼女はロア。灰橋道にて製鉄工場の工場長をしているぞ。

 

「今度はロアさんだー。今日は色んな人と会うね」

「ロアさんはどうしてここに? 」

「いやー…………金目のモノがないかなぁ、と思いまして。ほら、わたしって普段から工事の維持費や趣味で金欠じゃないですか」

「ほんとに精鋭ユニットなんだろうか……」

 

 どこかギラギラとした目つきのロアに若干引き気味のみう。

 こんなんでも、街のお偉いさんに選ばれた実力者なのだ。訳わかんねえ。

 なんかめんどくさい展開になりそうだったのを察し、めゆりはそろりそろりとその場から立ち去ろうとする。

 が。

 ここに更なる来訪者がやってきた。

 

「ふふふふふっ……科学者とビーチ、見事なミスマッチ……」

「らむねおいしいなあ、ごくごく」

「あ、めゆりちゃん達お久しぶり〜っ、ネカ以来じゃん! 」

 

 目のイった白衣の少女に、らむねのように青い髪の少女に、明朗そうな金髪少女にその他大勢。

 どいつもこいつも、灰橋道に名を轟かせているブレイン達だ。

 

「らむねさんにケテリーナさんにネクリッツァさん……あとその他諸々」

「なんかマッドサイエンティスト達がゾロゾロやって来たんだけど……? 」

「なにこれ怖い怖い怖い。今から何始まるの? 第三次大戦とかやめてよ? 」

「わーっ、大集合だーっ! 」

 

 灰橋道に名を轟かせる学者(マッドサイエンティスト)達が次々と集まってくる光景は、一般市民であるめゆり達にはとても恐ろしいものにしか見えなかった。

 一部例外はいるけど、めゆり達にとっては些細なことだ。

 その中でも、一際目がイってる白衣の少女・ネクリッツァが、ペットボトル片手に興奮気味に語りかけてくる。

 

「夏といえば自由研究、自由研究といえばペットボトルロケット。これより我々は、ペットボトルロケットを使ったサバイバルバトルを開催することにしたっ! 」

「パーフェクトなまでに夏関係ないッ! 」

「ヤバいよ、この人達全員目がイってるよ‼︎ 絶対碌なことにならないよ‼︎ 」

 

 めゆり達の脳内の危険察知センサーが、一斉にアラートを出しまくる。

 ここにいてはいけない。

 逃げなければならない。

 

「先ずはわたしの先攻っ! プラズマによるステルス機能を搭載したペットボトルロケット100連発をくらいやがれっ! 」

「無駄だ…………こっちのはフォークマンションから採取した白カビ入りのペットボトルロケットだ」

「なにっ……ならこっちはステンクロサス鋼を使ったペットボトルだっ! 」

 

 夏の熱に浮かされた天才(バカ)達が、一斉にペットボトルロケットを放つ。

 というかネクリッツァに関してはただのバイオテロだし、ロアに関してはもはやペットボトルですらない。端的に言ってカオスが極まっていた。

 

「ヤバい逃げようッ‼︎ ここにいたら身体中穴だらけになっちゃうっ! 」

「みうちゃんターボターボッ! 義足ぶっ壊れてもいいから走ってえっ! 」

「マジ無理ッ! 」

 

 命の危機を感じ、全速力で走り出す5人。

 そして。

 めゆり達が走り出した直後、大量のペットボトルロケットが着弾し、大量の砂が撒き散らされた。

 

 


 

 

 ダイヤモンド地区某所

 

 クローバー地区では魔女に爆破されかけ、スペード地区ではマッドサイエンティスト達の集会に巻き込まれて…………と、なかなか思うようにいかないめゆり一行。

 なんだかんだで今回もなんとか生還した5人は、ある結論に至った。

 

「そもそも、素材を拾い集めようというのが間違いだったのよ」

「……と、いいますと? 」

「見つからなければ買えばいいのよ」

 

 という訳で5人がやって来たのは、街の南東・ダイヤモンド地区にあるとある店。

 ……なのだが、みうは乗り気ではない様子。

 

「えーでもこの街の物価イかれてない? 家賃払える? 」

「偉い人は言いました…………課金(かいもの)は家賃までだって」

「それはソシャゲ廃人の思考なんだよなぁ」

「…………(まず買い物と課金はイコールじゃないと思うんだけど)」

 

 しろみの発言に呆れながらも、一同は店に入る。

 

「はろーえぶりわんっ! あまみちゃんの荒れ店だよ、いらっしゃいませー(棒)」

 

 店に入るなり、脳みそがとろけたような声が滑り込んでくる。

 店内なカウンターには、黒い帽子に白い髪、白いシャツに黒いスカートの、全身モノトーンの少女。

 雨樹宮雨実(あまのきみやあまみ)。この店の店主にして、この灰橋道という街を体現したような存在だ。

 

「あまみちゃんだよ。どったの、やきとりちゃん欲しくなっちゃった? 」

「くんくん、なんか美味しそうな匂いがするね。焼き鳥かな? 」

「焼き鳥も買うけど、今は別に欲しいものがあるのよ」

 

 めゆりはそう言うと、あまみに事情を話す。

 が、帰って来たのは、あまり芳しくないような反応だった。

 

「むーう……笹はないけど、その代わりにあまみちゃんイチオシの掘り出し物があるよ、見ていくかい? 」

「掘り出し物かぁ……でもお高いんでしょう? 」

「にこにこ」

「笑って誤魔化さないでッ! 」

 

 めゆりのツッコミを見事なまでに馬耳東風しながら、あまみは店の棚をガサゴソと漁り、あるものを取り出す。

 

「リン●ォンだよ」

「アウトォオオオオオオオオオオオオッ‼︎ 」

 

 いきなりヤバいブツが出て来た。

 極小の地獄とも呼ばれるソレは、明らかに禍々しい瘴気じみたものを放出している。まるで肌が焼け付くようなその瘴気に、しろみは命の危機を感じて瞬時に遠ざかる。

 こんなヤバいブツを目の前にしているくせに、あまみちゃんはにこにこ笑っている。めちゃくちゃ怖い。

 それどころか、あまみは追い打ちをかけてきた。

 

「コト●バコ、カイ●クくん全編、くね●ねの欠片に禁●ちゃんの髪の毛もあるよ」

「なんで特級呪物ばっかり揃えてんのよ⁉︎ わたしたちに恨みでもあるの⁉︎ てかどこで拾って来たの⁉︎ 」

「カイカクくん……? よくわからないけど、このビデオ面白そうだなぁ。観ようよ」

「ダメダメダメダメッ! 」

 

 目の前にずらりと並べられた激ヤバ物品の数々に、しろみは危機感を丸出しにする。

 というかガチめにヤバい。

 ふと気づいたら、なんだかめゆりとみうが虚な目つきで呪物に手を伸ばそうとしている。

 アカン、このままじゃGAME OVERまっしぐらだ。

 

「あばばばばばっ…………リモデリィ! リモデリィイイイイイイイイイイイイッ‼︎ 」

「うふふふふふふふふふっ、新世界新世界新世界ぃ〜ッ‼︎ 」

 

 わけわからない言葉を口走りながら呪物達に手を伸ばす2人を、しろみは小さい身体を精一杯広げながら引き留める。

 

「正気に戻りなさいよーっ! ほらひよりも手伝って、後でよもぎ団子奢るからっ! 」

「ん、なんか楽しそうなことが起きてるね。混ぜて混ぜて〜」

「…………(いやだいぶ緊急事態なんだけどなぁ、と呆れている顔)」

「んきゃー! 」

 

 目の前で緊急事態が発生しているというのに、店主であるあまみは、いつものように気の抜けた悲鳴をあげるだけで何もしない。

 あまみちゃんはやっぱりあまみちゃんだった(語彙力ゼロ)。

 

 


 

 

 あの後、なんだかんだで危機を脱した5人は、それからも街を走り回った。

 しかし、収穫はゼロ。

 手に入ったのは数多のガラクタと疲労のみ。

 そうして、日がすっかり暮れた頃。

 

「結局収穫ゼロかぁー、ほんと骨折り損だよ…………」

「…………(疲労困憊)」

 

 カラスの鳴き声を頭から浴びせられながら、一行は帰路に着いていた。

 今日は一日中、灰橋道を縦横無尽に走り回ったため、揃いも揃って疲労困憊。体力自慢のヤマイでさえも、歩くスピードがみうと同じくらいになってしまうくらいだ。

 そんな感じで、拠点の前まで帰って来た5人。

 

「ようやく帰って来た…………あーもうクタクタだよー……」

「あ、ロジコだ」

 

 と、ここでしろみが気づく。

 拠点の一つであるトタン仕立ての小屋。その入り口の前に、ロジコがちょこんと座っていた。

 出迎えてくれたのだろうか、と思うしろみだったが、ここであるものに気づく。

 

「ん、その背後にあるのって…………」

 

 ロジコの背後。

 そこに、なんかやたらと大きな塊があった。

 それはどう見ても———

 

「笹だっ! ロジコが笹を拾って来てくれたっ! 」

「ヨッシャア! マジすごい! ロジコちゃん良くやった! 」

「んなななななっ……」

「こらーっ! 気持ちはわかるけど、わたしの家族をもみくちゃにするなーっ! 」

 

 喜びのあまりロジコをわしゃわしゃと撫で始めるみう達。

 そう。

 ロジコが拾ってきたのは、一本の笹だった。

 どうやってここまで運んできたのかは知らないが、七夕の飾り付けをするには丁度いい大きさのソレを、ロジコが見つけてここまで運んできてくれたらしい。

 

「おーっ、大きな笹だね。これなら七夕祭りができるね」

「…………(一件落着)」

 

 立派な笹を前に感心するヤマイとひより。

 そして、いまだにロジコを撫でまくるめゆりとみう。

 

「よぉ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしッ‼︎ 」

「みゃーみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃッ‼︎ 」

「……いい加減ロジコを解放しなさいっ! 」

「にびきゅっ⁈ 」

「げびゃっ⁈ 」

 

 ———あまりにもロジコをわしゃわしゃし過ぎたので、2人揃ってしろみにぶっ叩かれたのは言うまでもない。

 

 


 

 

 それから少し経って。

 しろみ達は短冊に願い事を書いていた。

 

「願い事なんて書いたの? みせてみせて〜っ」

 

 ひよりのその言葉に真っ先に反応したのはしろみだった。

 

「わたしは勿論、“身長を伸ばしたい”よ! 背が伸びればお子様扱い卒業も夢じゃないわ! 」

「しろみん、背が伸びた程度では大人にはなれないよ」

「しろみん言うなぁ〜っ! 」

「タンマ! インパクトハンマーは洒落にならないからっ! 」

 

 みうがしろみをお子様扱いした所、キレたしろみが馬鹿でかいハンマーを持ち出して来たので、慌ててみうは土下座モードに入る。うわようじょつよい。

 

「そういう皆はなんて書いたのよ? 」

「わたしはねぇ〜、“お腹いっぱい和菓子が食べたい”かな〜」

「毎日のように食ってるくせに? 」

「おいしいものを食べたいというのは、人間にとっての普遍的な欲求なのだーっ! 」

 

 ひよりの単純な願い事に、一同は思わず苦笑する。

 

「わたしはねえ……“これ以上義足の魔改造がとまりますように”だよね。人間辞めたくないよ」

「…………ごめんね」

 

 ひよりに続いて、涙目になりながら自らの願い事を打ち明けたのはみうだ。

 プロコダニストの中では、みうの義足は便利なアタッチメントかなんかと思われているようで、鉄塊を破壊したり電力や磁力を生み出せるようになったりと、着々と人間卒業への階段を登らされている。

 これは、みう本人にとっては大変不本意なことだ。この調子だと来年には全身サイボーグ化も夢じゃなくなってしまう。

 少女の切実な思いに、めゆり達は思わず涙してしまう。

 

「つ、次に移ろうか! 折角の七夕にこんな辛気臭い雰囲気はナシナシっ! さあお次はヤマイの番だよ! 」

「……っ! 」

「えーっと、ヤマイは“もっと身体能力が良くなりたい”…………これ以上身体能力あげてどうすんの……霊長類最強にでもなるつもり? 」

「…………(ドヤァッ‼︎ )」

 

 ドヤ顔をするヤマイ。彼女は向上心の塊だった。

 

「じゃあ最後はめゆりの番ね。さーって、何を書いたのかな〜? 」

「そんなの決まってるわよ。“来年もこの街で、皆と過ごせますように”———逆に聞くけど、これ以外にあると思う? 」

 

 そう言いながら、ドヤ顔で自らの願い事を書いた短冊をみせつけるめゆり。

 が、皆からの反応はイマイチな様子。

 

「この流れでそれかぁ」

「なんか無難というか、ありきたりというか」

「…………単純だね」

「なんで⁈ なんで微妙な空気になっちゃうのよ⁉︎ 普通にいい感じの願い事でしょ⁈ 」

 

 予想を見事に裏切った、皆の辛辣な反応に、思わず声を荒げてしまうめゆり。

 しかし、彼女にも味方はいた。

 ヤマイである。

 

「…………(わたしはイイと思うよ、めゆりらしい)」

「ヤマイいいいいい〜ッ! 流石わたしの幼馴染みいっ! 」

 

 唯一味方をしたヤマイに、泣きながらだきつくめゆり。

 その様子を見て。さすがにやりすぎだと思ったのか、しろみ達はあっさりと意見をひっくり返した。

 

「まあ、めゆりちゃんの言う通りだよ。来年もこんな感じに過ごせたらイイよね」

「…………(同意)」

「なんだかんだいって、みんなとの毎日は飽きないってのは確かね」

「なんだかよくわからないけど、ハッピーエンドなのかな? よかったよかった」

「急な手のひら返しやめて⁉︎ さっきまでの空気はなんだったの…………まあいいけどさ」 

 

 めゆりは皆の唐突な手のひら返しっぷりに呆れながら、拠点の入り口前の鉢植えに突き立てた笹に、各々の願い事を書いた短冊を吊るしてゆく。

 

「なんだかんだあったけど、無事に七夕ができてよかったわね」

「うんうん」

 

 短冊を吊るした笹を見ながら、5人は自然と笑みを漏らす。

 ささやかながらも、大切な1日が、今日も終わる。

 

 夜空には、見事な天の川が広がっていた。

 


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