それはVR世界メガドリームサポーター内に起こった異変。
フジキセキ、マーベラスサンデー、サイレンススズカ
エアシャカール、スペシャルウィーク、アドマイヤベガ
アグネスタキオン、マンハッタンカフェ
ある特定のウマ娘が走っていると聞こえる謎の声と、現れる謎のウマ娘の幻影。
サトノグループは、その異変をメガドリームサポーターのエラーと仮定し、EG5Aと名付けた。
これはそんな謎に、サトノダイヤモンドとキタサンブラックの2人が挑む話。
彼女が走っている。
そう思い、
ですが、走っている途中でいつも気づくのです。
姿形や匂い、魂が似ているだけの別人だと。
そう、いつも思い出すのです。
サ■デ■サ■■■スというお方は。
お行儀よく併走なんてしないし。
隣で走る
やること全てが狂犬のようでなくてはいけないのです。
だから、
「
「正しくは
トレセン学園カフェテリア。
日曜の今日でも多くのウマ娘達が集う憩いの場所。
そんな和気あいあいとした空気が醸し出される空間で、何やら真剣な顔をして向き合う2人のウマ娘がいた。
「あ、そっか、英語だもんね。それで結局それは何なの? 何かのエラーの名前なのは分かるけど……」
突如として出された見慣れぬ英単語の羅列に、うーんと可愛らしい声を上げるのは、キタサンブラック。
お祭りと人助けが大好きな黒髪のウマ娘である。
最近、大声で演歌を歌って赤ん坊を泣かしてしまったのが、心の傷だ。
「
真剣な顔で議題について語るのはサトノダイヤモンド。
ジンクスと不可能を破ることが趣味の、サトノ一族のお嬢様である。
最近のマイブームは、割り箸をあえて割りづらい角度で綺麗に割れるかの挑戦らしい。
「メガドリームサポーターって、VR世界で三女神様に会って色々と教えて貰える、新しいソフトだよね。本物の三女神さまに会えるなんて、ビックリしたなー」
「あくまでもサトノグループが作ったAIだけどね。それでだけど、EG5Aは存在しないはずの謎のウマ娘の総称なの」
「存在しないはずの……謎のウマ娘?」
存在しないはず。
その言葉にひょっとして、怖い話かなとキタサンブラックは少し身構える。
「うん、これはね。体験した人から実際に聞いた話なんだけどね。その人はある日の日曜日に、自主練でメガドリームサポーターを使ってVRウマレーター内を1人で走ってたらしいの。その時にね、ふと気がついたら足音が聞こえて来たらしいの。最初のうちは誰か別の子が来ただけだと思って気にしなかっただけど……ずっと、ずーっと足音はついてくるの。それで、ちょっとムキになってスピードを上げるんだけど、足音は全然離れなくて、むしろ競うように大きくなっていくの。それで、一体誰なんだろうって後ろを振り向くんだけど……」
「振り向くと…?」
ズイと顔を近づけ、雰囲気のある声でささやくサトノダイヤモンド。
ゴクリと唾を飲み、怯えるキタサンブラック。
「だーれも居ないんだって。あれだけ勢いよく追ってきたはずなのに。それで、おかしいなぁ、おかしいなぁって思いながら、前を向いたんだって……そしたら」
「そ、そしたら?」
「―――
「ひぃ! お、オバケだよね、それ!?」
案の定の怖い話に、キタサンブラックはちょっと涙目になりながら身を引けぞかせる。
そんな様子に満足そうに頷きながら、サトノダイヤモンドは微笑む。
「ふふふ、キタちゃんったら怖がりなんだから」
「いや、そんな話聞いたら誰だって怖いよ! というか、その人は今大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。今日も元気に『マーベラス!』って挨拶をしたよ」
「あ、マーベラス
怪異とかに巻き込まれても、大丈夫そうな人ランキングに上位で入る人物の名にホッと胸を撫で下ろすキタサンブラック。彼女なら例え悪霊に囲まれても、マーベラス空間に巻き込んで解決しそうだ。いや、マーベラス空間ってなんだ。
「あれ? でも、オバケならどうしてエラーなんて呼び方をしてるの?」
「現実ならともかくVR空間だもの。幽霊より、何かのエラーの方が可能性が高い……サトノグループはそう考えたの。クラちゃんも同じ考えだったみたいだし」
オバケや幽霊と言えば、古臭い場所に出るのが鉄板。
最新の科学技術の結晶であるVR空間に出るとは、誰も考えない。
そう、それはつまり。
「でもキタちゃん! これってジンクスじゃないかな!?」
「えぇ!? そ、そうかな?」
ジンクスである。
「そうだよ! オバケや幽霊は科学とは反対の存在。VR空間に出るわけがない。そんなジンクスを破る幽霊だってきっといるはず!」
「いるかなぁ…? そもそも本当に幽霊なの?」
「それは私にもサトノの技術者にも分からないの……と、いうことで!」
パンっと手を叩いて立ち上がるサトノダイヤモンド。
その姿に、この流れは不味いと思うキタサンブラックだったが、時すでに遅し。
「
サトノダイヤモンドは目を宝石のように輝かせて、私達でと強調してくる。
そんな顔をされては、お助けキタちゃんの異名を持つキタサンブラックは断れない。
「うーん……オバケだったら怖いけど……でも、ダイヤちゃんと一緒ならきっと大丈夫!」
「キタちゃん!」
「よし! それじゃあ、早速2人でVR世界に行こっか!」
こうして、キタサトコンビの“幽霊の正体見たり!”作戦が始まるのだった。
「うーん……聞こえないね、キタちゃん」
「1人で走っても、併走しても何も聞こえない……何がいけないんだろう」
VR世界、メガドリームサポーター内。
論より証拠とばかりに、2人でターフの上を走っていたキタサトコンビだったが、成果は芳しくない。
「もしかしたら、ただの空耳の可能性はないのかな?」
サトノダイヤモンドが言うから、協力したという感じのキタサンブラックはそもそもが聞き間違いだったのではと問いかける。それに対して、サトノダイヤモンドは小さく首を横に振る。
「私も空耳の可能性は考えたんだけど、
「夜って言うと、やっぱり丑三つ時とかじゃないとダメかな…?」
「どうしようか、キタちゃん。2人でコッソリ夜中に来てみようか」
「ええ! それって完全に門限違反……でも、どうしようか……」
ジンクスに則るみたいで気が乗らないが、一般的に幽霊が出る時間来るべきかと提案するサトノダイヤモンド。それに対して、規則違反になるのではと難しい顔をするキタサンブラックだったが、真剣な顔で悩む親友の姿にちょっと魔が差し始める。
「まあ、後で理由を話して反省文を書けば……」
「やあ、ポニーちゃん達。こんな所でコソコソ内緒話かい?」
「ふ、フジさん!?」
が、それは寮長の突然の登場によりすぐに引っ込むことになる。
「日曜日のこんな夕方まで、トレーニングに精を出すなんて感心感心。ただ、
ニコッと微笑むだけで、世の女性の半分が落ちる魔性の笑みを向けながら、フジキセキはキタサトコンビに釘を刺す。これには、キタサンブラックもいつもの柔和な顔を強張らせて頷くしかない。だが、肝心の相方の方は違った。
「あの! フジさん! 私、お聞きしたいことがあるんですが!?」
「どうぞ、ポニーちゃん。私に答えられることなら、何でも」
「フジさんも、このVR世界で走っている時に声を聞いたって本当ですか?」
校則破り? 未遂だから無罪ですけど何か?
とでも、言わんばかりに切り替えてEG5Aについて尋ねる。
「声? ああ、もしかしてサトノグループの人が言っていたエラーのことかな?」
「はい! 本来なら技術者の人を信頼して、そちらに任せるべきなんだと思います。でも……私もサトノの1人として何か出来ないかと思って、それで」
「ダイヤちゃん……」
自分もサトノの1人として原因究明に協力したい。
そう、責任感を込めて語るサトノダイヤモンド。
そんな姿を、キタサンブラックはじーんと感動した面持ちで見つめる。
「そうか、それで……」
サトノグループの人に話を聞かれたことを思い出して、一人合点するフジキセキ。
「もちろん、いいよ。ただ、こんな所で話すのも何だし、一緒にディナーでも取りながらお話しないかな?」
「あ、はい! 分かりました」
「はい、ありがとうございます」
話すことには気前よく返事を返すが、しっかりとキタサトコンビがこのままVRウマレーター内に残らないように誘導するフジキセキ。それに対し、気づかずに元気よく返事をするキタサンブラック。そして、誘導されたことを理解しつつ、フジキセキの優しさに頭を下げるサトノダイヤモンド。
「そうだ。どうせなら、
「他の子?」
こうして、フジキセキのディナーショーが始まるのだった。
「というわけで、スズカ。君も良ければ当時の状況を話してくれないかな?」
学園カフェテリアに戻ってきた3人の下に、新たな仲間が加わっていた。
「えっと……私の話と言っても走ってた時に声を聞いただけよ?」
彼女は
走ることと先頭の景色をこよなく愛する異次元の逃亡者だ。
「ええ!? スズカさんも変な声を聞いたことがあったんですか! なまらビックリだべ!」
「え? スぺちゃんも、聞いたことがあったの?」
そして、その隣にいるのはスペシャルウィーク。
食べることと食べることが大好きな、道産子ウマ娘である。
「あの! よければお2人ともお話してくれませんか!?」
「それは、大丈夫よ。面白い話かどうかは分からないけど」
「はい! 先輩として何でも答えてあげます!」
食い気味に頼み込むサトノダイヤモンドに、若干気圧され気味なサイレンススズカ。
反対にいつもは後輩扱いされることが多いスペシャルウィークは、張り切って胸を張る。
「それじゃあ、私からいきますね! スズカさん」
「ええ、お願いスぺちゃん」
先頭景色は譲らないが、別に話す順番には興味が無いのか、あっさりと先を譲るサイレンススズカ。
「えーっとですね。私がVRウマレーターで走ってた時なんですけど。後ろから足音がしてきて、振り返ったんですけど。でも、誰も居なくて、気のせいだと思って前を向いたら、声がして、えっと……
ぶるっと身震いをしてホラー体験を思い出すスペシャルウィーク。
そんな彼女に気を使って、フジキセキが温かい飲み物を差し出す。
「ありがとう、ポニーちゃん。私も大体同じ経験だったよ。あなたじゃないって声がして、何かが通り過ぎていく気配を感じた。こんな所だったね」
「なるほど……貴重なお話ありがとうございます」
スペシャルウィークとフジキセキの話に頷き、メモを取るサトノダイヤモンド。
ここまでは事前に知っていた情報と同じ。
恐らくは、声を聞いた者は同様の経験をしているのだろう。
そう、結論付けようとしたところで。
「私も2人と同じよ。
「黒いウマ娘? スズカさんは姿まで見えたんですか?」
「ええ? スぺちゃんも見たんじゃないの?」
「私は声と気配しか……フジさんはどうですか?」
サイレンススズカから食い違う意見。
否、さらに興味深い証言が出される。
「私も姿は見ていないね……スズカ、詳しく聞いてもいいかな?」
突如として場の視線を独り占めしてしまったことに、驚きながらもサイレンススズカはぽつぽつと語りだす。
「詳しくと言っても……一瞬視界がぼやけて、その時に目に黒いウマ娘の背中が映っただけよ」
「「姿の詳細は分かりますか!?」」
「え、ええと……何だか記憶みたいにぼやけてて、ハッキリとは見えなかったわ。でも、そうね。何となくの印象だけど」
ガバッと身を乗り出して来たキタサトコンビに、若干引き気味になりながらもサイレンススズカは必死に
「マンハッタンカフェさんに似てたわ」
自分で言うのもお恥ずかしいですが、
その名を知らぬ者はいない名家に生まれ、誰もが羨む才を神より頂いた。
周囲も、
そう、思っていました。
影のように黒い彼女が現れるまでは。
自分の恥を晒すようでお恥ずかしいですが、私は初めてあの方と出会った時、醜いと。
そう、ハッキリと思ったのを覚えています。
事故で負った無数の傷を隠すこともしない容姿。
見るに堪えない程に内側に曲がった脚。
何より、まるで背中に死神でも背負っているかのような陰鬱な空気。
それらが、あの時の私にはとても醜く見えました。
ええ、若輩者の愚か者のたわ言です。
彼女へのイメージは共に走ったことで、すぐに変わりました。
真冬並みの気温に、前日の豪雨が生み出した水場。
まるで沼の中を走るかのような荒れたバ場。
私がそれらに苦戦する中、彼女は平然と走り切っていきました。
そして、神からの試練とも言える天候を軽々と乗り越えた彼女の瞳を見た時。
―――美しい、と私は思いました。
まるで運命に噛みついていくような鋭い眼光。
神が己に死の運命を望むのなら、悪魔にでもなると言わんばかりの気迫。
私もあのようになりたいと、憧れを抱きました。
ええ、今の私にならハッキリと分かります。
あの日、あの瞬間に、私は――
―――サ■デーサ■レ■スに惚れこんだのです。
「おやおや、これは珍しいお客さんだねぇ。どういった要件だい?」
「タキオンさん、カフェさんはいますか? 実は――」
科学とオカルトがせめぎ合っているかのような不思議な空間。
またの名をアグネスタキオンとマンハッタンカフェの共同スペース。
サイレンススズカの話を聞いた翌日、キタサトコンビはそこの主の1人であるアグネスタキオンに事情の説明を行っていた。
「
怪しげな赤い瞳を面白そうに細めるアグネスタキオン。
まさに、その姿は新しい
「それで、オカルトに詳しそうなカフェさんを訪ねてみたんですけど」
「残念ながら、カフェならどこかに出かけているよ。
「そうですか……なら、また今度来てみます」
お目当ての人物はどうやらここにはいないらしい。
そう、判断しこの場を立ち去ろうとするサトノダイヤモンドだったが。
「まあ、待ちたまえ。ここは科学的なアプローチも試してみようじゃないか。いや、ぜひとも試してみたい!」
「え? 手伝っていただけるんですか?」
「ああ、私としても、常々カフェの周りで起こる怪奇現象を解き明かしたいと思っていてね」
クククと悪の科学者のように笑いながら、アグネスタキオンは語る。
「スズカくんが見たという、カフェに似たウマ娘。ひょっとするとそれは
「お友達?」
お友達という聞き慣れているようで、どこか違うニュアンスの言葉に疑問符を浮かべるキタサンブラック。
そんな彼女に対し、白衣の袖を振り乱しながらアグネスタキオンは説明を行う。
お友達とは何者なのかの。
「お友達はその名の通り、カフェの友人のことさ。ただ、カフェ以外には声も姿も確認できていない、と注釈がつくがね」
「ゆ、幽霊のお友達!?」
「世間一般の言い方であれば、恐らくはそういった類なのだろう。だが! 目に見えず、触れられないからと言って存在しないとするのは、非科学的な考えとは思わないかい?」
「はい。それもジンクスですね!」
目に見えないお友達という存在に、ちょっと怖気づくキタサンブラック。
反対に、幽霊がいないなんてジンクスをぶち壊そうとするサトノダイヤモンド。
そんな対照的な2人を面白そうに見つめながら、アグネスタキオンは白衣の袖をクルクルと回す。
「私達ウマ娘が良い例だ。筋肉量で言えば、男性よりも下。だが、彼らの何倍も力がある。そもそも、人体の構造上出せない速度で平然と走る。まさに目に見えず触れられぬ存在を扱っていると言ってもいい。そして、VRウマレーターとは私達のデータをVR世界に送る装置でもある。つまり、どういったことか分かるかい? ダイヤくん」
まるで、絵本の中の科学者のように振舞いながらアグネスタキオンは問いかける。
VRウマレーターは何を可能としているかを。
「目に見えず触れられぬ存在をデータ化し、VR世界に出現させることも出来る……ですね」
「その通り!」
ホワイトボードに何やら見慣れぬ数式を書きなぐりながら、アグネスタキオンは意気揚々と説明を続ける。
「エラーと銘打ってあるが、これは必然の可能性もあるのだよ。何らかの因子を持つ者が特殊な行動を起こすことで、メガドリームサポーター内のデータにある特定のデータが普段は起こらない現象を発生させる。ふぅン、何に例えれば分かりやすいかね」
「分かります。つまり、ゲームで特定のキャラをパーティーに入れて特定のキャラに話しかけると、特殊イベントが発生するってことですね!」
「あ、ダイヤちゃん分かりやすい! きっと、そういうことなんですよね、タキオンさん」
「ゲームは詳しくはないが、そういう認識で構わないよ」
ホワイトボードが真っ黒に見えるまで、数式を書いたところでようやく満足したのか、アグネスタキオンはポンとペンを投げ捨てる。もちろん、キャップは閉じない。きっと、後でデジタルかカフェかモルモットが後片付けをするのだろう。
「さて、そして今回の場合だと特定のキャラというのは、謎の声を聞いたウマ娘達だ。そして、特定のキャラに話しかけるという行動はおそらく」
「メガドリームサポーター内で走る、ということですね」
「ああ、その通りさ。声を聞いたウマ娘全員で模擬レースでもすれば、よりハッキリとした正体が現れるかもしれないねぇ。ひょっとすると、スズカくんが見た姿が現れる可能性も……フフフ、面白くなってきたじゃないか」
未知の存在との遭遇が叶うかもしれない。
そのことに興奮して、妖しく笑うアグネスタキオン。
そんな姿を若干引いた様子で眺めながら、キタサンブラックが提案を出す。
「じゃあ、私謎の声を聞いた人達に模擬レースが出来ないか聞いてきます!」
「ああ、そうするといい。私の方も何人か心当たりがあるから、声をかけておくよ」
「よーし! みんなで模擬レース、何だかお祭りみたいになってきたぞぉー!」
こうして、VR世界内での模擬レースの開催が決定したのだった。
違う。
違う!
違う!!
あなた方は彼女の足元にも及ばないッ!!
どうして■ン■ー■イ■ン■の因子を受け継いでいるのに、その程度なのですか?
どうして、
あの方なら、この程度の速度なら簡単に追いついてきた。
あの方なら、こちらを噛み殺す気迫で決して前を譲らなかった。
あの方なら、この程度の不利など朝飯前とばかりに乗り越えた。
証明してみせてください。その血に流れる誇りを。
決まった運命など関係ないと噛みつきなさい。
そうして、この――
―――イー■ー■アを倒してみなさい!
「さて、それでは早速実験の開始と行こうじゃないか。ダイヤくん、キタサンくん、計測はお任せするよ」
「はい、お任せください! ……ですが、タキオンさんも走られるんですね。てっきり、観測する側に回ると思っていました」
VRウマレーター内、EG5Aの正体を調べるために模擬レースに出走するのは8人のウマ娘達。
1人目はアグネスタキオン。
「なに、何事も実際に経験してみるのが一番というわけさ。それに、私が出走することが協力の条件にもなっているからねぇ。そうだろう、シャカールくん?」
「ああ、お前のデータを取るのが協力の条件だ。にしても、謎の声なんぞのためにお前がそこまでする意味があんのか?」
「好奇心というやつさ。それに、君だって謎の声を聞いたんだろう? だから、ここに来た。証明できないものを放置するのはロジカルでないからねぇ」
「……ふん、言ってろ」
2人目はエアシャカール。
全てのものをロジカルに考え、己の勝利を証明しようとするウマ娘だ。
「アヤベくんも引き受けてくれて感謝するよ。てっきり私はいつものように断られると思っていたんだが」
「……別に、ただ声の正体があの子でないか、確認したいだけよ」
3人目はアドマイヤベガ。
生まれる前に死んだ双子の妹のために、勝利を捧げることを己の使命とするウマ娘だ。
「うーん! 不思議な声の人と一緒に走れるかもしれないんだね! それってすっごくマーベラス!!」
「確かに、素敵な出会いになるかもしれないね」
4人目はマーベラスサンデー。
この世のもの全てにマーベラスを見出す、ウマ娘である。
5人目はフジキセキ。
乗り掛かった舟ということで、そのまま協力を申し出てくれた。
「ううぅ、ほ、本当に幽霊が現れたらどうしましょうか、スズカさん」
「大丈夫よ、スぺちゃん。この前は負けたけど……先頭の景色は決して譲らないわ」
そして、6人目と7人目はスペシャルウィークとサイレンススズカ。
幽霊が出現したらどうしようと、若干しり込みしているスペシャルウィークに対し、サイレンススズカは、抜き去られた幻影に今度は負けないと闘志を燃やす。
「…………」
最後の1人、8人目はマンハッタンカフェ。
謎の声の主に似ていると言われる彼女は、どういう訳か何も言葉を発しない。
まさに影のように静かにそこに佇むだけだ。
「それでは! みなさんゲートに入ってください!! えーと、距離はみなさんの適性を考慮して2000Mの中距離です!」
ターフの上にゲートが用意され、キタサンブラックの掛け声とともに全員がゲートにつく。
8人に対し、用意されたゲートの数は9つ。
タキオンいわく、謎の声の主のために用意したらしい。
「準備は良いですか? それでは―――スタート!!」
ゲートが一斉に開かれ、
そう、9人だ。
「え…! えぇええッ!? だ、ダイヤちゃん! あれ! あれ!?」
「うん……私にも見えてるよ。黒い靄みたいなウマ娘が……」
存在しない9人目のウマ娘が何食わぬ顔で走っている。
いや、顔は靄に包まれて見えないのだが、憎悪でも恨みを宿す走りと言うより、非常に真面目にお行儀よく走っているのだ。
「あれが……
キタサトコンビが衝撃に慄く中で、走っているウマ娘達と言えば非常に冷静だった。
初めは驚いたものの、そこはレース中。
そんなもので脚を緩めるのなら、ウマ娘は名乗れない。
(ふぅん、少し試してみたいことが出来たぞ)
(こいつが声の主……実体があるのか見てみるか)
まず動いたのはアグネスタキオンとエアシャカールだった。
謎のウマ娘を囲うように距離を詰め、彼女(?)の進路を塞ぎにかかる。
(さあ、進路を塞いだらどう出るかな? 実体を持つなら抜け出れないはずだが)
(こいつが実体を伴わねえ幽霊なら、すり抜けなんてこともするかもしれねえからな)
2人が今やっている行為は、やり過ぎると反則になる行為だ。
だが、今の2人は謎の存在の正体を知りたいがために敢えて、違反行為に手を染める。
そのため、普通のレースで行われる進路妨害よりも遥かに厳しいものとなっていた。
だが。
「
あっさりと、その妨害は躱されてしまう。
霊体がすり抜けたわけではなく、純粋に。
(こいつ、上手えッ!?)
外に回って抜けるという力の差を見せつけて。
あっさりと、アグネスタキオンとエアシャカールの囲いを突破するのだった。
(だが、今の動きで分かったぞ。外に回るという動きを見せたということは、すり抜けは出来ないということ。つまり、実体を持っているということだ!)
しかし、2人もただで突破されたわけではない。
この謎のウマ娘には実体があるという確信を手にすることに成功した。
しかしながら。
「
(競り合おうとしても、まるで近づけない!)
実体があるからと言って、勝てるとは限らない。
フジキセキが近づこうとするが、謎のウマ娘は桁外れのパワーで寄せ付けない。
「
(まだ中盤なのにペースが速すぎるよ!?)
(追いたくても追いつけない…!)
(こんなに差をつけられたらマーベラスなレースにできないよぉ!)
スペシャルウィークが。
アドマイヤベガが。
マーベラスサンデーが。
圧倒的過ぎるスピードについていくことが出来ない。
「
(うそでしょ!? まだ速度が上がるの!?)
逃げを打つ気などないくせに、スペック差でサイレンススズカに追いつく。
まるで親と子供。桁が違う走りを見せて、謎のウマ娘は走って行く。
だが、その顔には。
「
喜びも、余裕もない。
ただ、失望の色だけが濃く映し出されていた。
「Not you‼ Not you‼ Not you‼ Not you‼ Not you‼ Not you‼」
ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR!
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ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR! ERROR!
「ど、どうしようキタちゃん!? 外の世界と連絡が取れなくなっちゃった!」
「ダ、ダイヤちゃん!? それって大丈夫なの!?」
突如としてVR世界を覆うエラーの文字。
一目で不味いことになっていると分かる事実に、キタサトコンビは慌てふためく。
そして、走っているウマ娘達にも異常が発生する。
(な、なに? 急に前のウマ娘の姿が別の人に……いえ、これは記憶…?)
(カフェさんみたいなウマ娘?)
それはマンハッタンカフェによく似た黒いウマ娘の背中。
どれだけ追いかけても、どれだけ走っても決して届かない背中。
憧れ、憎み、尊敬し、愛した背中。
だが、その背中は――
「Where is Sunday Silence!!」
―――どこにも居ない。
「……ダイヤちゃん、どうにかしてあげられないかな」
「キタちゃん?」
「あの人はきっと……ライバルともう一度走りたいだけなんだと思うんだ」
どこか悲しみに満ちた声を聞き、先程の動揺も忘れてキタサンブラックはどうにかしたいと願う。
その悲しみは自分も身に覚えのあることだったから。
「今度こそは勝とうと思っていたのに、いつの間にか居なくなってた。そんな悲しい想いを持ってる……そんな気がするんだ」
「そっか……うん! 私達で何とかしてあげないとね!」
それに対し、サトノダイヤモンドも気を取り直してどうにかしてあげようと思う。
だが、どうすればいいか分からない。
相手はトゥインクルシリーズの第一線で活躍するウマ娘を一蹴しているのだ。
走っても同じ結果になるだけかもしれない。
「優しいのですね……あなた達は」
そんな諦めに似た考えが浮かぶ中、
レースに出走しているはずのマンハッタンカフェが。
「え? カフェさん………え!?」
「あ、あの、カフェさんは今は走ってるはずじゃ…?」
「もしかして、ドッペルゲンガー!?」
コースに居るカフェと目の前に居るカフェを交互に見ながら、混乱した表情を見せるキタサトコンビ。そんな2人の様子を気にした様子もなく、マンハッタンカフェはゆっくりと腰を下ろし、走っているもう1人の自分を見つめる。否。
「ご安心を。あれはドッペルゲンガーではありません。三女神様の協力で形を得た、私の……お友達です」
お友達を見つめるのだった。
申し訳ございません。
申し訳ございません。私が先に死ななければまた出会たのに。
申し訳ございません。病の運命に私は勝つことが出来なかった。
あなたは異国の地で、新たな道を歩んでいるというのに。
私はただ立ち止まり、死の運命を受け入れるしかなかった。
我が身を呪います。
誰もが期待をしてくれていたのに、それに応えられなかったこと。
あなたの好敵手でありながら、凡庸な人生しか送れなかったこと。
何よりも。
あなたともう一度戦えなかったことを。
私は呪います。
「Where is Sunday Silence!!」
怒りと、悲しみと、苦しみの慟哭がVR世界に響き渡る。
そう、彼女はとあるウマ娘の残滓。
過去から今に至る全てのウマ娘のデータを蓄積する、メガドリームサポーターに残った記録。
もう二度と、好敵手と戦うことが出来ぬと知ったウマ娘が残した恨悔の記憶。
ウマ娘―――イージーゴアの記憶。
「カフェさん、お友達って一体?」
「お友達はお友達です。……私にとっての。そして」
悲痛な叫びがこだまするターフから目を離すことなく、カフェが告げる。
そして、その視線の先では。
「あの方にとっての
「
マンハッタンカフェ、否、お友達がイージーゴアに体当たりをかましていた。
「
お友達の反則スレスレの体当たりに、イージーゴアの体が僅かに揺れる。
そして、まるで煤が落ちるように体から
脚から
胴体から靄が消え、女性の全てが羨むようなプロポーションが映しだされる。
そして、最後に顔があらわになる。
たなびく栗色の髪。気品に満ちた
「
深窓の令嬢。彼女に抱く第一印象は多くの人がそう口にするだろう。
だが、彼女の本質はそこではない。
サファイアの瞳の奥に悠然と燃える炎。
その炎の名前を――
「
「
人は執念と言う。
貪欲までの勝利への執念。
それこそが、イージーゴアの本質だ。
そして、その執念の炎を燃え上がらせたのは他でもない。
「待っていましたわ! この時を! もう一度あなたと走れるこの日を!!」
「だからうるせえって言ってんだろ? クソお嬢様は下々の人間の言葉は理解できねえってか?」
サンデーサイレンス。
イージーゴアの生涯のライバル。
その体に残る無数の傷跡は、全て死神を追い返した証だ。
「今回は私が勝たせてもらいます!」
「ハッ、やってみろよ。この距離ならこっちが有利だ」
「相手の庭で勝ってこそ、勝利に価値が出るというものですわ」
体をぶつけあうように2人のウマ娘が走る。
後ろに居る他のウマ娘などはなから眼中にない。
これは2人だけのマッチレース。
「な、なにあれ? こんなレース見たことないよ……」
「通信が回復しました! 外の人と連絡を取って、何とかあの2人の
「……お友達があんなに楽しそうな姿……初めて見ました」
どちらも先頭を譲ることなく、走り続ける。
時に嚙みつきに行ったり、時に尻尾で相手を打ち払ったり。
とてもではないが、観客にお見せできるような代物ではない。
だが、そんな無茶苦茶なレースであっても、2人のウマ娘は。
速かった。
「30秒以上ずっと競り合い続けてる…!」
「それにお互いにどんどん加速してる!」
「ですが……ゴールまでもう僅かです」
隣の相手にだけは負けてたまるものかと、闘志をむき出しにして走り続ける。
犬歯剥き出しにして嗤いながら、2人のウマ娘は久方ぶりのマッチレースを楽しむ。
誰も追いつけない。誰も入り込めない。2人だけの世界。
だとしても、そんな夢のような時間も。
「ここで決まります…!」
いつかは終わる。
ゴール目前で、2人のペースがさらに上がる。
特殊な技も、驚異の身体能力もすべて出し切った。
2人がぶつけ合っている物は、最後の最後に残った―――勝利への執念。
「そこをお退きなさいッ!!」
「こっちのセリフだよッ!!」
最後のスパートで2人が完全に並ぶ。
頭をぶつけ合わせる程に近い距離で、2人はほぼ同時にゴールの線を超える。
そして。
「……また、負けですか」
「ハッ、長距離で出直してきな」
ハナ差で勝利を飾ったのはサンデーサイレンスだった。
「たく、オレと走るためだけに化けて出てくるなんざ、相変わらず分からんお嬢様だ」
「そういうあなたも化けて出ているではないですか」
「オレはいいんだよ。ガキどものお守りついでだ」
走り切り満足したとばかりに、笑みを浮かべながら荒い息を整えるイージーゴア。
それをサンデーサイレンスは呆れた目で見つめる。
「子ども……ああ、道理であなたと似た匂いがするわけですわ」
イージーゴアはチラリと、こちらを遠目に見つめるスペシャルウィーク達を見つめる。
「あの方達にはご迷惑をおかけました。謝罪をしなければ」
そして、生前の気品の高さを取り戻したのか、優雅な足取りで近づこうとし、気づく。
踏み出そうとした足が透けてなくなっていることに。
「……なるほど、未練が無くなったら消えるのが運命なのですね」
「そういう訳だ。とっとと消えちまいな、クソお嬢様」
「また、あなたは言葉遣いには気をつけなさいと何度も……いえ、それでこそあなたですね」
生前のように言い返そうとするが、糸が解けるように消えていく体ではそんな時間も惜しい。
そう、考えたのかイージーゴアは軽く首を振り、サンデーサイレンスに笑みを向ける。
「感謝します。我が永遠の好敵手、サンデーサイレンス。あなたのおかげで最後の未練が断ち切れました」
「……礼なら、この場を整えたガキどもに言いな」
「もう、時間がありませんので、あなたからお願いします」
下半身が消え、残ったのは上半身だけ。
そんな状態でイージーゴアは右手をサンデーサイレンスに差し出す。
生前であれば、間違いなく払っていただろう、ライバルの手。
その手を。
「フン、クソお嬢様と握手なんぞごめんだ」
サンデーサイレンスは生前のように払いのける。
「まったく……いえ、それでこそ私の――」
払われた手も消えていき、最後に顔だけになりながらイージーゴアは笑う。
とびっきりの満面の笑顔を浮かべ、最後の最後に。
「―――大っ嫌いなサンデーサイレンスですわ」
罵倒を1つ残して、消える。
「……オレも大嫌いだよ、クソお嬢様が」
「で、なんで普通に居るんだよクソお嬢様はよぉ!? 満足して消えたんじゃねえのか!?」
「よくよく考えると、私あなたに勝てなかったことが未練でしたのに、負けて消えるのもおかしいと思って気合で戻ってきました」
ここはVR世界メガドリームサポーター内。
そこでは、日々多くのウマ娘達が3女神の叡智を授かりながらトレーニングを行っている。
そんなメガドリームサポーターに最近新たな要素が加わった。
「そもそも、あなたも現実世界では幽霊の類でしょう。私のことを責めれるいわれがあるのですか?」
「サトノのお嬢様がいつの間にか、オレ達のデータを取ってオレ達用のアバターを作っただけで、オレはこれ以上出てくる気はなかったんだよ!」
「サトノダイヤモンドさんには足を向けられませんわね。というか、文句を言うのなら、あなたはこっちの世界に来なければいいのではなくて? 私と違って現実世界にも出られるのですし」
「カフェがこっちに来たら自動的にオレも出現する仕様になってるんだよ! 基本カフェに憑いてるからな!!」
三女神に加えて、新たなるサポーターが2人加わったのだ。
1人はイージーゴア。見た目に反して、根性育成が得意なウマ娘だ。
「て、おい! スペェッ! ペース落ちてんぞ!? また、食い過ぎたな、てめえ! それからフジ! お前は他人の面倒見てる暇があったら休め! スズカ! お前は走り過ぎだ! またケガしてぇのか!? アヤベ、お前もだ! 誰かのために走るってんなら、まずは自分の身体を守れ! マーベラス、後でマーベラスなんちゃらには付き合ってやるから今は練習に集中しろ。カフェ、お前は坂路をもう2本追加だ! 爪の状態はもう大丈夫だからな。それからタキオンッ!! 次にカフェのコーヒーに変なもん入れやがったら、お前の研究資料でバーベキューするからなッ! 未発表分も全部含めてだ!!」
そしてもう1人はサンデーサイレンス。
こちらも見た目に反して、理論的な育成を得意とする。
ただ、口調がヤクザのそれであることが玉に瑕だ。
「あら、堂に入っていますわね」
「根性だの気合だのしか言わねえ奴に比べたらな」
「でも、最後は気合でしょう? あなたを見ているとそれが良く分かりますわ」
「フン」
2人は三女神と同じサポートAIという風に発表されているが、実際の所は幽霊のようなものである。サトノの技術力でVR世界にデータ出力することに成功したので、こうしてメガドリームサポーターの中でだけ、実体を伴って動くことが出来るのだ。
「それで、指導が終わったら併走に付き合っていただけますわよね」
「付き合ってやるから、とっとと未練捨てて成仏しやがれ」
「あら? 負けてくださるんですの?」
「ッ! 上等だゴラッ! 叩き潰し続けて、永久に地獄に行け無くしてやるよ!」
「うふふ、残念。私が行く場所は天国ですわ」
こうして、2人の戦いは続いて行く。
いつか2人が満足して消えるその時まで。
「ねえねえ、キタちゃん」
「どうしたのダイヤちゃん?」
「サンデーさんやゴアさんみたいに、VR世界ではデータがあれば幽霊さんでも出現させられるよね」
「そうだね」
ここはトレセン学園、カフェテリア。
多くの生徒の憩いの場となる場所で、サトノダイヤモンドとキタサンブラックが話している。
「それで、思ったんだけどね。この技術を使えば過去のウマ娘とも走れるんじゃないのかな」
「うわー、それすごく面白そう! シンザンさんやセントライトさんとも走れるのかな?」
伝説のウマ娘達との勝負。
それが実現するかもしれないと知って、目を輝かせるキタサンブラック。
サトノダイヤモンドの方も同じように笑いながら、話を続ける。
「うん、技術が上がればきっと出来るようになると思うよ。伝説のウマ娘と走るイベントにしたら面白いと思うんだ」
「ワクワクするね! 伝説とのレース……名付けてレジェンドレース! なーんてどうかな?」
「レジェンドレース……いいね、キタちゃん! 名前はそれでいこうか」
「え、そんな簡単に決めて良いの?」
しかし、この時彼女達は忘れていた。
「大丈夫! だってキタちゃんが決めたんだから。それに、この技術があれば謎の多い伝説のウマ娘とも走れるんだよ」
「謎の多い? 例えば?」
「例えば、生涯無敗のウマ娘――」
過ぎたる技術は使い方を間違えてはならないことを。
何よりも。
「―――トキノミノルさんとか」
好奇心は猫をも殺すという言葉を。
次はトキノミノルとイツセイのライバル関係でも書いてみたい。
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『転生特典はアドマイヤベガの妹生存』のおまけを投稿しました。
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