特に
それ以降も彼女の活躍はタマモクロスとの勝負やスーパークリーク、イナリワンと並び平成三強と呼ばれ、バブル期の勢いもあり、第二次ウマ娘ブームを作り上げた。
その後もアイネスフウジン、メジロライアン、メジロマックイーンなどの名ウマ娘がバブル期からバブル崩壊頃に活躍し、老若男女問わずウマ娘界隈は人気を博していた。
同時に彼女らは他の日本全国のウマ娘達にも夢を与え、希望を持たせ、多くのウマ娘達が東京都府中市にある日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園への入学を目指していた。
オレはやっとトレセン学園の校門前に到着する。
「ここがトレセン学園か、ホンマにエラいデカイな」
……それにしてもホンマに大変やった。
サツに署に連行されそうになるし、なんなんや……。
とりあえずトレセン学園に無事に着いたんやから、これで何も問題あらへん……はず!
校門の方に向かうと一人の女性がそこに立って居た。
「新しく赴任された倉塚文志トレーナーさんですね、おはようございます」
そう話す彼女は全身緑色の制服を着ている職員らしき人、一体何者なんや?
「オレの名前知ってるって、アンタ
オレは彼女を睨みつけながらそう言った途端に彼女ははっと何かに気づき、彼女自身の自己紹介を始める。
「申し訳ございません!履歴書とトレーナーライセンスでお顔を拝見いたしましたのですぐに声をかけてしまいましたので挨拶が遅れましたね。私はトレセン学園の理事長秘書、駿川たづなです。よろしくお願いしますね、新しいトレーナーさん」
なんやこの人、エラいべっぴんさんやないか……。
この学校はウマ娘以外にも人間もべっぴんさんやないか……。
たづなさん……とりあえず彼女の名前は覚えておこか。
それにしても大分前に暇で取ったトレーナーライセンス、ホンマに使えるんやな。
競バ新聞や雑誌で勉強したけど、合格するとは思ってなかったからな………まあ多分、おやっさんの働きやろな……。
何故なら大学どころか高校すら卒業してへん、中卒やからなオレは……。
「ではまずトレセン学園の案内を致しますね、私に付いて来て下さい」
「おう、よろしゅう頼んます!」
オレはたづなさんにトレセン学園を案内してもらった。
まるでバブル期のリゾート施設の様な広大さと設備の豊富さに圧巻する。
高く聳える飛び込み台付きの室内プール、様々な種類の練習用コース、食事が無料で提供されている食堂、図書室などのありとあらゆる施設が揃っている。
まさにウマ娘にとって夢のような場所であり、完璧なトレーニングが出来る施設だとすぐに認識出来たわ。
逆にバブル期でぼろ儲けして、こんな施設で悠々自適に生活しているウマ娘に対して羨ましさと妬ましさ、そして怒りを覚えてきたわ。
同じ年頃のオレは必死に汗水垂らして、恐怖に怯えながら泥水啜って必死に生きてきたのにと……。
「ホンマ、バブルで儲けたんやなぁ……ウマ娘業界は…」
「どうされました?」
「いやなんでもないわ、独り言や…」
「そうですか……そういえば倉塚さんの前のお仕事を伺っても大丈夫でしょうか?履歴書がウマ娘に関わるものがほとんど無くて、理事長から推薦状を貰ったという事だけしか聞いておりませんので」
「ああ、オレの前の職業は極……」
「……ごく?」
あ、危ねぇぇぇ!?危うく極道言う所やったわ!!
これが誘導尋問かいな、気をつけな。
こんな所でバレたら何されるんか分からへんし、とりあえずなんとか誤魔化さへんといかん!
「ご、極寒の地でカニ漁をしてたんや!」
「か、カニ漁ですか!?」
「そや、カニ漁や!」
オレがそう言うとたづなさんは頭を傾げ、懐疑的な目でこちらを見る。
「その……カニ漁とトレーナー業に関係性はあるんでしょうか?」
「あ、当たり前田のクラッカーやんか!乗組員の体調管理とかで多分ウチのお偉いさんがトレーナーとかに推薦したんやと思うわ!ハハハ……」
まあ闇金で借金返せなかった奴らをベーリング海にカニ漁行かせたのはホンマやからな。
一応そいつらの体調管理(遠隔)もやってたから嘘やない!大丈夫や!!
たづなさんはじーっとこちらを見るが、オレは冷や汗を掻いてはいたが、バレないように平静を保っている。
「……まあ倉塚さんの過去を掘り起こしたら失礼ですし、詮索はここまでにしておきます」
た、助かったわ、なんとなく誤魔化せたで……。
オレはため息を吐いて、緊張を解した。
「ではコースでの練習風景でも見ていきましょう。今の時間なら今年入学した新入生が練習していると思いますよ」
ほう新入生か、つまり舎弟を……ちゃうちゃう、相棒をここで探すんやな!
まあええ人に出会えればええねんけど、反抗してくる奴は面倒臭いし、なんでも従うやつがええな。
まあ夜の街でモテモテやったオレにかかれば御茶の子さいさいや!!
そう考えながら練習用のコースに向かうとそこには驚きの光景が広がっていた。
メジロマックイーンやトウカイテイオー、ナイスネイチャやメジロパーマーなどなど、今時のメディアに引っ張りダコなウマ娘がそこには居た。
「こ、これは夢かいな!テレビとか新聞に出てる様なウマ娘ばっかりやん!!」
「トレーナーさんお静かに!練習の邪魔になります!!」
たづなさんはそう叱るが、もう遅かった。
オレがそう騒いだ途端に周りのウマ娘がこちらに振り向くと、彼女らこちらを凝視している。
すると向こうから二人のウマ娘がこちらへとやって来る。
「なんの騒ぎだ、騒々しいぞ」
オレはその声がした方を振り向くと、そこにはあの誰もが知るウマ娘がそこには居た。
「ま、まさか……嘘やろ???」
目の前に居たのはあの唯一無二の無敗の三冠ウマ娘であるシンボリルドルフと現在のウマ娘ブームを作り上げていると言われているオグリキャップがこちらに近づいてくる。
アカン、こんなん仏様とキリストが同時にやって来る様なものやないか!
たづなさんは頭を下げ、たづなさんもオレの頭を押さえて頭を下げさせる。
いや、ホンマに力強過ぎひん!?痛い痛い痛い!!
「騒がしくしてすみません、オグリキャップさんとシンボリルドルフさん。こちらの人は今日赴任したばかりの新しいトレーナーさんでして、倉塚文太トレーナーさんです」
「く、倉塚です、よろしゅう頼んます!」
そう名前を軽く紹介すると、シンボリルドルフがこちらに手を差し伸べる。
「よろしく頼むよ、理事長からは話を聞いている。有名なウマ娘に出会えて喜んでいるのは分かるが他のウマ娘の練習を邪魔するのはトレーナー失格だからトレーニング時以外の大声は控えるように」
「す、すみません、以後気ぃつけます!」
ええっ、めっちゃ凛々しいやん。
ウマ娘は美形が多いって聞くけど、ホンマやないか……。
すると横に居たオグリキャップがオレの周りをグルグルと回りながら見ている。
「……クラツカはタマの親戚なのか?」
「た、タマ?」
タマってなんや……まさか
コイツ、オレが極道から足を洗ったって雰囲気で気づいたんかいな!
やはりウマ娘ブームを作り上げた伝説のウマ娘、侮りがたしやで……。
するとシンボリルドルフはオグリキャップの発言に笑みを浮かべる。
「ハハハ。オグリキャップ、彼はタマモクロスと同じ関西弁で話している関西出身なだけでタマモクロスの親戚とかでは無いぞ」
「そ、そうなのか!それは失礼したクラツカ……」
「いいいいや、別にだだだ大丈夫やで」
アカン、二人が来てから緊張しっぱなしや。
タマモクロスの親戚のボケ、ツッコまなアカンのかどうか困惑するぐらいに緊張してて、ごっつシンドい。
元はとはいえオレは極道や、堂々とシャキッとせなあかん!
「とりあえず私はここで失礼するよ。倉塚トレーナー、君に良いウマ娘との出会いが出来る事を楽しみにしているよ」
「クラツカ頑張れ、私も応援している」
そう言って彼女らは去って行った。
まるで嵐の様な出来事か思うぐらいの彼女の登場に周りに居たウマ娘達がどよめいていた。
「さ、さて倉塚トレーナー。新しいウマ娘を探しに行きましょうか!」
そうたづなさんは言うが、周りのウマ娘はオレを見るやいなや目を逸らし、避けている。
なんでや……立派な背広来て真面目感出してるやないか。
まさかこの目つきがアカンのか!
それならサングラス掛ければ……
そうサングラスを胸ポケットから取り出し、掛けようとすると、たづなさんが腕を掴み、全力で止めようとする。
「それ以上はやめましょう、とりあえずコースで走っている彼女達を見に行きましょう」
「せやけど、サングラスを……」
「見に行きましょう!」
「お……せ、せやな!!」
なんやたづなさんが笑顔で腕掴んでるが、全然動かへん。
まるで鋼鉄やで、人間ちゃうやろこの強さ……。
これ以上怒らせたらアカンわ…嫌な予感する。
とりあえずコースを眺めるか……。
コースを眺めると様々なウマ娘が走ったり、準備運動をしている。
「ほー、こんな中からあのトゥインクルシリーズを勝っていくウマ娘が出てくるんか」
「そうですよ、ここから新たなみなさんの夢を与えるウマ娘が誕生するのかもしれません」
「そりゃすげぇな……ん?」
すると見覚えのある黒鹿毛のウマ娘を見つける。
周りの子と比べて小さく、人形の様な可愛さと同時に不安げな印象がある子や。
「あのお嬢、大丈夫かいな……」
「『あのお嬢』と言うのは?」
「あの黒毛の子や、朝ぶつかってオレを見て一目散に逃げたウマ娘や」
「黒毛……ライスシャワーさんのことですね」
「ほう、ライスシャワーってあの結婚式やつかいな?」
「はい、結婚式のライスシャワーのように本馬に触れる全ての人々に幸福が訪れるようにとの意味が込められた名前を持った子ですよ。今からデビュー前レースが行われますが、見ていきますか?」
「ほう、それは楽しみや!」
確かにあの嬢は小柄やけど、大抵の人はオレにぶつかれば地面に尻餅ついて盛大にコケる。
せやけどあのお嬢はぶつかっても微動だにせず、立ってた。
オレなら分かる、あのお嬢は只もんやない。
だが見物人が少ないのは何故なんや?
生徒もおろかトレーナーもまばらで注目されてへん。
「あのお嬢もそうやけど、他のウマ娘に対して誰も彼女らのレースに誰も興味ないんか?」
たづなさんにそう言うと、彼女は悩みのある顔をしながら話し始める。
「いえ、彼女らも優秀であり日本中のウマ娘でも優秀かつ才能のある子達です。ただ見た目が小柄だったり病弱な子達は敬遠される傾向があります。ただケイエスミラクルのような病気から奇跡的に回復をした子も居ますよ」
「ケイエスミラクル……じゃあ逆に病弱じゃなかったり小柄なウマ娘はどうなんや?」
「既に個人、または選抜レースでスカウトされていたり、チームに自主的に参加とかしていますよ。今年の注目枠ならミホノブルボンさんやマチカネタンホイザさんが居ます」
せやけど、あの黒毛のお嬢は小柄かもしれへんが、身体は強靭やしあの子なら絶対に大物に育つ。
誰も気が付かないウチにあのお嬢を狙うのがチャンスや。
そんな事を話しているとお嬢や他のウマ娘のゲートインの準備が整っている。
そしてゲートが開いた。
1000mの短距離のレースだが、黒毛のお嬢はいとも容易くそのレースを勝利した。
見物客は拍手を送っていたりしていたが、やはり注目されていないのか大半はそのまま帰る人が多かった。
コースに居たウマ娘は唇を噛み締める者、地面を強く叩き悔しがる者、その場で号泣する者など様々。
だが黒毛のお嬢、いやライスシャワーは涙を流さず、息を整え、その場をゆっくりと去っていく。
「なんや、そんなにあのライスシャワーに負けるのが悔しいんか?」
「いえ、大半のウマ娘はトレーナーさんにスカウトされなければ重賞やOPどころかデビュー戦すら参加は出来ません。もし参加したとしてもトレーナーからのトレーニングを受けなければ勝つ事は難しいです。ウマ娘の世界はそんな過酷な世界で育っているのですよ」
「なんやそれ、余りにも可哀想やないか…」
せやけど、尚更好都合や。
つまりあのお嬢はフリーって事や。
今のうちに彼女をスカウトせな!
「じゃあオレはあのライスシャワーをスカウトするんで、たづなさん、案内してくれてホンマおおきにな!」
「はい、トレーナーさんも彼女のスカウトに頑張って下さいね!」
オレは急いで黒毛のお嬢に走り追いつき、そして息を切らした声で彼女に声をかける。
「ライスシャワー!オレにお前の背中託さへんか?お前をオレが名前の通り、勝利の祝福を与えて勝利させてやるわ!」
そう自信満々にオレは言い、ライスシャワーは足を止め、振り返る。
その瞬間ライスシャワーは酷く恐れた様な顔をしている。
「ご、ごめんなさい!ま、間に合ってますので…!!」
ライスシャワーはそう言って、その場から一目散に逃げる。
オレは無事にスカウトに失敗した(?)
周りに居たウマ娘はオレを見てクスクスと笑い、たづなさんの方を見るとこちらを見ないで目を逸らしている。
「………は?このオレが拒否された……やと??」
あのアマァ…オレを恥かかせるなんて、絶対逃がさへんぞゴラァ!!
待っとけやライスシャワー、オレをオマエの担当トレーナーにしたるさかい覚悟せぇや!!
オレはすぐさまライスシャワーを追っかけ走った。
第1話になります
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